めだか
小さい頃から動物や生き物が好きで、今までもいろいろと飼ってきた。世田谷に住んでいた頃は、シマリスやミドリガメ、十姉妹やハムスターやカブトムシなど、いつも生き物が周りにいた。東京に住んでいたのに中日ファンだったので、父が昔の中日球場に車で連れて行ってくれたことがあったが、その際にハムスターを小さなカゴに入れて持って行ったら、中日球場で子供を産んでしまい、困った事があった。父も母も私の動向には温厚、無関心、放任で育てられたので、ハムスターが子供を産んだところで、怒られることはなかった。
日野に引っ越してからは、セキセイインコや、環境汚染はなはだしい、臭い多摩川で釣り上げてきたフナなどを飼っていた。酸素や餌をやったり、水を取り換えたり、休日はいつも魚の世話をしていた。
世田谷の時は、母が洋裁の内職をしていた。二件隣が米屋で、そこにチビという、丸丸と太ったオスのネコがいて、時々我が家に遊びに来ていた。私はネコを飼いたいと言ったが、母はこれだけは承諾してくれなかった。母の仕事柄仕方ないと子供心に諦めていたが、子供なりにネコが飼えないストレスを抱えていた。
ある日、チビがいつものように我が家にやって来た。私と姉は、何を血迷ったか、チビのヒゲをハサミで短く切ってしまった。この頃はまだ子供だったので、チビのヒゲがなくなったところで、どうなるのかなんてわからなかった。
まる子の小遣いは一日30円だが、私の小遣いは当時一日40円だった。いつもの通り10円のガムを買おうと米屋に行ったら、米屋のオヤジが怖い顔をして私に近づいて来た。
「おい、ネコのひげを切っただろ!」
「はい」
「だめなんだよ、仕事ができなくなっちまった」
「あい」
「ねこはな、ヒゲがなくなると、ネズミを捕れなくなっちまうんだぞ」
「ごめんなさい」
たいそう叱られて、這々の体で帰ってきた。姉だって共犯なのに私一人が怒られて、その旨を姉に伝えた。姉は知らんぷりをしていた。
屋久島に行き、ついにねこを飼い始めることになった。真っ白の可愛いメスで、命名センスのない私は安易に「にゃん」と名付けかわいがり、あっちこっちに連れて行った。にゃんは、車にも、飛行機にも、フェリーにも、山手線にも、東京モノレールにも、京王バスにも乗せられてしまった。ねこのことがよくわかっていなかったので、申し訳なかった。彼女もまだ子供だったので、何とか対応してくれたようだ。
この「にゃんちゃん」が縁で、私は今のカミサンと出会い、結婚して、仙台にいる。にゃんちゃんは17歳まで生き、子供のいない私たち夫婦にとってかけがえのない存在となった。
にゃんちゃんが死んでしまってから、一度は新しいねこを飼おうとも考えたが、義父が要介護になったことなどもあり、今はまだ、迎え入れるのを控えている。ねこは丈夫な個体で、上手く家の中で飼ってあげると、20年程度生きるものもいる。私たちもすでに、次の誕生日が来ると松井秀喜になってしまうので、もうそろそろ飼い始めないと、ねこが可愛そうなことになってしまう。でも、なかなか現実は難しい。
そんな中、とある道の駅に寄ったところ、入り口近くで販売されている「めだか」が目にとまった。プラスチックのケースに5匹入っており、少しばかりの水草と石とタニシ2匹が標準装備されている。これで800円。
仙台に来てからも、震災前までは金魚を飼っていた。たかが金魚だが、きちんと育ててあげるには、結構なお金と時間がかかる。濾過器で有名な水作のフィルターはすぐに汚れるし、いろいろと工夫をしたところで、すぐに苔が生えてくるし、水も汚れてくる。金魚も慣れてくると、人に寄ってくるようになるので可愛いのだけれど、いかんせん、手間とお金がかなりかかるので、これもまた躊躇していた。
私は相変わらず、財布の中に124円しかなかったので、カミサンがPayPayで900円を私のスマホに送金してくれ、カミサン監視の元でこれで決済し(未だに金額を入力するタイプのものの決済の自信がなく、カミサン同伴でレジに)、車に積んで、無事に家に帰ってきた。
先日ようやく綺麗な水槽が届き、水と石と水草を入れ、飼育の体制が整った。やっぱり生き物はどんなに小さくても可愛いものだ。カミサンも言うことを全く聞かない義父の介護関連でかなりストレスを溜めているので、とても喜んでいる。
「見て見て!」
カミサンが興奮しているので、何かと思いきや、我が家にやって来たばかりのめだかが卵を抱いている。
「朝方に産んで、昼過ぎにどこかにくっつけるんだって。大丈夫かな?」
私は一段落し、日々の世話をするモードになっていたが、カミサンは得意のスマホで、かなり情報を収集している。二人で育てていけば、上手く行きそうだ。
カミサンは忙しい仕事の合間を縫って、今日、隣町のペットショップまで、関連する物を買いに行ってくれるらしい。
二人で楽しみながら、育てていこう。
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