第265話 童帝竜

「あはははははは!何あれ?。尻(けつ)、尻にしょ、商会のワッペンを貼ってる。し、しかも中央大陸一のヴォーミリオン商会のワッペンを。け、けつに、いっひひひひ、わ、笑わせないで!は、は腹がよじれる。くっくくく。」

「ちょ、ちょっと、シヴァ、笑いすぎよ。」


校庭グランドの魔法具スクリーンにどーんとライナのヴォーミリオン商会のワッペンが貼られたデカ尻を垣間見て。三眼竜シヴァは大爆笑し。腹を抱えて笑い転げる。

主人であるラウラは笑い転げる相棒を見て困り果てる。


「な、ななな、何をやらかしてとるか!。あの阿呆は!。」


ジオニ学園長はほぼヒステリックまがいに発狂する。


「まさか、ここまで非常識とは。流石狂姫ラチェット・メルクライの弟子。やることが予想斜めを行く。」


マキシ・マム教頭はアイシャとライナの行為にだただ呆然とする。


     シャンゼベルグ城

       屋上テラス



「何だあれは·····。」


お城の屋上テラスの貴賓席に座るバンディアムス教皇は口を開いたまま絶句する。


「ライナのお尻?。」


シャルローゼ王女は映像にでんと写るライナのお尻に首を傾げる。


「しかもヴォーミリオン商会のワッペンを貼ってるのか····。」


レースの映像をみてメディア王女はヴォーミリオン商会がライナ達の出資者になったんだと理解する。


「相変わらずの相変わらずね。風車杯で解っていたけど。」


セランは頭痛で頭を抱える。


「きゃはははは!面白ろ~い!。」

「はあ····。あやつらは普通にレースが出来ぬものなのか。」


風竜ウィンミーはライナの映像に笑いながらはしゃぎ。絶帝竜カイギスは複雑そうに白眉が寄る。




      多目的レース場


「なんですか!あれは!。商会のワッペンを竜のお尻に貼っているなんて。しかも王都一の商会であるヴォーミリオン商会様のワッペンを竜の尻(けつ)に貼るなどと。何処の騎竜乗りですか!。全く恥知らずな!。」

「全くです。我等の商会たる象徴のワッペンをあのような竜(ドラゴン)の尻に貼るなどと。何を考えているのですか!。とういうよりも何故ノーマル種がヴォーミリオン商会のワッペンを貼っているのだ?あり得ない!。」

「不謹慎じゃ!。」


多目的レース場で観戦していた商会のものたちは口々に文句が飛びかう。

けつに商会のワッペンを貼るという暴挙に商会の重鎮達は激しく憤慨する。


「ふふ、目立つ所とは言ったけど。まさかお尻に貼るとは思わなかったわ。流石はラチェット・メルクライとレッドモンドの弟子ね。私の目に狂いはなかった。絶体あのペアは大物になるわ!。今、確信したわ!。」


ヴァーミリオン商会会長の娘セネカ・ヴォーミリオンは自分の商会の象徴、看板でもあるワッペンをお尻に貼ったこなど怒るのでもなく。寧ろ嬉しそうに褒め称える。


「ちょ、ちょっと、これはどういうことよ!?。」


パトリシアは焦ったように隣席に座るセネカに詰め寄る。


「あら?どうかしたのですか?。ミス、パトリシア。」

「どうしたもこうしたも何故、貴方の商会のワッペンがライナのお尻に貼ってあるのよ!。」


レース中に騎竜の身体に商会のワッペンを貼るということは。その騎竜にはその商会の後ろ盾であるということだ。その騎竜、騎竜乗りの出資者であることの証拠でもある。


「ヴァーミリオン商会は騎竜乗りのアイシャとノーマル種ライナの出資者になったってことよ。昨日契約成立したのよ♥️。」


ヴァーミリオン商会の会長の娘でもあるセネカは嬉しそうに語る。


「くっ、しくったわ····。」

「お嬢様····。」


パトリシアは悔しげに親指を噛む。

黒眼竜ナーティアはそんな主人の様子を心配そうに見つめる。


「まさか、ヴァーミリオン商会がアイシャとライナの出資者になるなんて。」


パトリシアは先を越されたという感じで激しく悔しがる。


「過去の憂いもあって遠慮していたけど。この際そんなことどうでもいいわ!。ナーティア、私達もアイシャとライナの出資者になるわよ!。ハーディル商会は全面的にアイシャ達を協力、バックアップするわ!。ヴァーミリオン商会に先を越されてなるものか!。」


商人の意地としてパトリシア・ハーディルはライナ達の出資者になることを強く決意するのであった。


バァサッ!バァサッ!

数々の竜騎士科と騎竜乗り科の障害はあったけど何とか南方の塀塔に到着する。

南地区の見張り塔には騎竜に乗った番人が後ろの南方の塔の中にあるフラッグを守るように空中を維持していた、。

しかしその番人な更なる前に通せんぼするかのように小柄な竜に乗ったフルメタルボディに身を包む竜騎士が佇んでいた。隣に付き添うように同じ竜騎士科の騎竜と竜騎士候補生が控えている。


「ふっ、来たようだね。」


ファサ

小柄な騎竜にのる竜騎士はヘルムを被らず。カ頭部のカール髪を艶やかにかきあげる。


『遅いよ~!待ちくたびれたよ。』


小柄なサイズは子供ぽく不満を吐く。


「キャーーー!。ジェローム様あああーーー!。」


王城付近から観戦する女子から熱を上げた熱い声援が飛び交う。


『おおっと、これは!何故か南の塔の前でジェローム・アドレナリンが待ち構えている!。これはどういうことだ!?。』


実況の竜騎士科のライクは放送席から南の塔の前を通せんぽするかのように立ちはだかる三竜騎士の一人ジェローム・アドレナリンを行動に不思議がる。


「くっ、もう来てしまったのね···。」


鳳凰竜フェニスの主人である騎竜乗り科のオリン・ナターシスは南の塔の目の前に立ちはだかる小柄なサイズの竜と竜騎士に対して険しげに唇が歪む。


「矢張、ノーマル種の騎竜乗りに一番に対決するのはジェロームだったな。」

『童帝竜はエンペラー種の中でスピードに長けた竜(ドラゴン)だからな。と言っても風竜族のスピードと違い。瞬発的な加速スピードではあるが。』


竜騎士科最強の男ゼクスと無双竜ザインは目の前に立ちはだかる三竜騎士の一人と一匹に特に驚きもせずに静かに静観する。


「もう止められないのね····。」

『エネメリス。心中お察しするわ。』


騎竜乗り科最強のエネメリスはため息を吐き。精霊帝竜ネフィンはそんな主人を労う。


どういうことだ?。スタート開始地点からまだそんなに時間がたってないぞ?。確か三竜騎士のジェローム・アドレナリンは別の方角のスタート開始地点だったはず。先回りなんて出来る筈が。まさかっ!?

俺は悪い予感がした。

まさかこの一人一匹はスタート開始地点からの目的地である塔に到着してからてここまで来たのか?。

どういうコースで王都の最短距離をとることが出来たのか解らないが。既にこの南地区の塀塔に到着するほどのスピードを持つならそれは脅威でしかない。


「ふっ、」


ファサ

三竜騎士の一人ジェローム・アドレナリンはキザったらしく前髪のカール髪をかきあげる。


「私は騎竜乗り科一年、三竜騎士の一人ジェローム・アドレナリン。以後お見知りおきを。」


キャーーーー!。

ジェローム様‼️。キャーー!キャーー!。


王城や地区からスクリーンを観戦する女性陣からは熱狂的な声援が送られる。

小さな小柄サイズの竜はどんと胸をつきだす。



『ふふん。僕はエンペラー種の中のエンペラー種。その名も』 


バァサッ

小柄な竜(ドラゴン)の小さな翼を堂々と大きく広げる。



 『童帝竜。』

ギャア?

(童貞竜?)


『違っ があっーーーーう!。童貞竜じゃない!童帝竜だ!。』


童貞竜を全面的に否定する。

童帝竜という小柄サイズのエンペラー種はどうやら童貞竜と言われることを気にしているようである。


『こほん、では改めて。三竜騎士の騎竜の一匹、その名もチェリーボーイ。』


····················


··············ギャアラギャアギャギャ?

(·············やっぱ、童貞竜じゃねえか?)


『違うと言ってるだろ!ジェローム!。あのノーマル種、僕のことを馬鹿にするよ!。』

「ふっ、チェリーが女性経験あってもなくても私にとって素晴らしいパートナーさっ!。」


ファサッ

ジェロームはカール髪をかきわけ。白い歯を光らせ。相棒のチェリーを褒め称える。


『全然、フォローになってないよ~!。』


童帝竜チェリーボーイは自分の主人を激しく非難する。


「何か面白いペアだね。」

『そうですね·····。』


と言ってもスタート開始からそれほど時間がたってないのにすでに南地区の塔に到着している時点でただ者ではないことは明白である。戦闘専門の竜騎士と騎竜にレースで勝ち抜いている俺達が何処まで通用するか解らない。相手は一般学生ではなく学年クラスに選ばれた竜騎士と騎竜だ。用心にこしたことはない。


「さて、ゼクスさん。私が彼の相手しても問題ありませんね?。」


一応建前として三竜騎士の一年のジェロームは竜騎士科最強、クラウンの称号を持つ男であるゼクスに承諾を得ようとする。


「ああ···構わないさ。俺とザインはお前達三竜騎士の戦闘には手も口も出さない。好きにするといいさ。」

『つまらん戦闘はするなよなあ。チェリー。後、このノーマル種は見くびらんことだ。』


無双竜ザインは彼らに発破をかけるような威圧を放つ。


『わ、解ってるよ。たく、ザインはおっかないな·····。』


実質学園最強である騎竜の無双竜ザインは学園の騎竜からは恐れられているらしい。


「さあ~て。始めようか!。」


童帝竜チェリーボーイは小さな翼を広げ身構える。

俺は三本の鉤爪の両掌に気を練り込み身構える。ブーメランの騎竜専用武具店から買って貰ったミスリルの小手を既に装着している。

アイシャお嬢様も両手のドラグネスグローブの手の甲にある宝玉から青白い光を放ち。女神の装飾が施された二丁のブーメラン、ブルーメロイ(蒼の美神)を取り出す。


『おっと、これはもしや!三竜騎士の一人ジェローム・アドレナリンがあの例の他校のノーマル種を騎竜にする騎竜乗りと対決するらしいぞ!。これは一体どうなる!。』


わーーーーーーー!わーーーーーーー!


観戦する王都の国民達から歓声があがる。。普段はシャンゼルグ竜騎士校の最強の称号を持つ2ペアの二人二匹勝ちが通例であるが。普段のレースとは違う流れをみせ。王都国民は盛り上がりを見せる。しかし王都国民はノーマル種を騎竜にする他校生がシャンゼベルグ竜騎士校誇る学年最強である竜騎士科の三竜騎士に勝てるなど微塵も思っていなかった。ただの面白い見世物、余興としか思われていない。



    シャンゼルグ竜騎士校屋上


「何かあのノーマル種の娘(こ)。三竜騎士のジェロームと対決するみたいだね。」


のほほんとした感じで校庭に設置された巨大な魔法具スクリーンをソリシラは呑気に観戦する。


「はあ、全く。商会のワッペンを竜の尻に貼り付ける愚行を犯して尚、更に恥をさらしますか。彼女には我が教会の熱心な教育が必要ですね。」


シーシス・マザラーは非常識な彼等をかなり嫌悪していた。行いも在り方も非常識であり。神竜聖導教会にとって正に路を外れた者と言えよう。彼らには神竜聖導教会の勤勉な常識を教えらべきだと考える。


「あのノーマル種、童帝竜チェリーと対決するようだな。どう思う?クリストファー。」

「ふむ、私としてはBoin走行が見たかったのですけどね。残念です。」

「お前、それだけかよ。」


イケメン姿のである磁電竜オロスは聖光竜クリストファーのぶれない様子に半場呆れる。



       屋上テラス


「どうやらオルドス国王。マーヴェラス家である彼女が竜騎士科の三竜騎士と闘うようですなあ。」


バンディアムス教皇は不機嫌に顔をしかめる。


「そうのようですな。バンディアムス教皇。」


オルドス国王は冷や汗を垂らす。


娘の情報でマーヴェラス家のノーマル種が強い言った手前、前言撤回など出来る筈もなく。娘の言い分を信じるしかない。

兎に角あのノーマル種が強いことを願わんばかりである。でなけばバンディアムス教皇の小言を毎度聞かされる羽目になる。


『じゃ、いっくよ!。』


小柄なエンペラー種は小さな翼をひろげる。

それに乗るジェロームは長身の剣を一本脇差しから引き抜く。竜騎士科ではドラグネスグローブの収納を使わないのだろうか?。

アイシャお嬢様も二丁のブルーメロイ(蒼の美神)を持ち。投げる準備をして臨戦態勢をとる。

三竜騎士のペアの連れはオリンお嬢様と鳳凰竜フェニスが相手してくれている。


俺も三本の鉤爪に気を練り込み。精霊を呼べるように呼吸を整える。


バァサッ!


童帝竜チェリーボーイは小さな翼を広げ飛びかかろうとする。



『ライナなああああああああああああーーーーーーーーーー!っ!!!!。』


ビキィ バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ


童帝竜チェリーボーイがノーマル種のライナに飛び掛かろうとした瞬間。突然辺り一帯が一瞬で凍りく。その直後、激しい怒りに満ち満ち溢れた怒号の咆哮が南地区の塀塔一帯に響いた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る