第262話 建国記念杯

パン パパン


ファンファンファ~~ン♪

ファンファンファ~~ン♪


ファンファンファンファ~~~~🎶

ドンドン ドンドン 

パラッパッパーパッパラ


ファンファーレが王都中に鳴り響く。

空から紙吹雪が舞い。

竜騎士団が人化を解いた相棒の騎竜と一緒に王都の大通りを列をなして行進する。太鼓とラッパを鳴らしマーチを行ない行進する。

行列の中間には豪華な馬車に乗った王様と王妃、そして三人の王女が座り。王都の国民に手をふってアピールをする。

王族の馬車近くには護衛としてシャルローゼ王女の相棒である人化のままの初老の紳士姿。絶帝竜カイギスとシャルローゼ王女のクラスメイト、親友でもあり。護衛の役目を持つセラン・マカダインが付き添うように歩いている。その周りを翼の耳をパタパタさせてはしゃぎまわる人化している疾風竜ウィンミーがいる。


「キャハハハハハ!。」

「こら!ウィンミーお行儀よくしなさい!。」


主人であるセランはパレードの周りをはしゃぎまわるウィンミーに激しく叱りつける。


「シャルローゼ王女様!」

「メディア王女様!」

「マリス王女様!」


馬車の席に座るきらびやかなドレスを着飾る三人の王女に王都の国民達は激しい熱を帯びた声援を送る。


ニコッ

馬車の席に座る二人王女は笑顔で王都の国民に手をふる。


むっすう~

ただ末のマリス王女だけは馬車の上で不貞腐れたように頬を膨らませてそっぽを向いている。


「いつまで不貞腐れているのだ····。」


末の妹の態度に姉であるメディアは深いため息を吐く。


「マリス、仕方ないのです。ライナはアイシャと一緒に建国記念杯に出場しなければならないのです。解ってあげて。」


上の姉であるシャルローゼは末の王女に優しく言い聞かせる。


「シャルローゼ姉様もメディア姉様も嫌いだ!。ライナは私の騎竜なのに。ライナは私の騎竜なのにい~~!。」


マリス王女は二人の姉の説得にも耳をかさず。ぶつくさと愚痴と小言を繰り返す。

そんな末の妹の様子に二人の姉の王女は困り果てる。

竜騎士団の行列を引き連れ。王族の馬車は王都を一周した後、王都の中心であるシャンゼベルグ城へと戻る。お城の屋上テラスから景色が一望できる場所に観戦席が用意され。王と王妃とそして娘である三姉妹の王女と一緒にそこにすわる。しかしその屋上テラスに用意された席に余分に貴賓席も用意されていた。その席には

竜の装飾が施された豪華な冠を被り。白と金の装飾に彩られた祭服を着た神竜聖導教会最高権力者、教皇バンディアムス・アクベラレネが座っていた。


「バンディアムス教皇、珍しいですね。貴方が建国記念杯を観戦するなど。あまり乗り気では無かったと思いましたが。」


屋上テラスの観戦席に座るオルドス国王かバンディアムス教皇に尋ねる。


「ええ、少し気になることがありましてね。確かに聖女様が救って下さった由緒正しき神聖なレースに竜騎士である男子が出場させるのはいかかなものかと正直思いますがねえ。」


バンディアムス教皇は紫波の眉間を寄せ。気難しそうにしている。


なら、来なきゃいいだろうに。(ボソッ)


「何か言いましたかな?。」

「いえ、何でもありませんよ。バンディアムス教皇。続けてください。」


ニコ

オルドス国王は満面な作り笑いをしてバンディアムス教皇に言葉を返す。

オルドス国王はバンディアムス教皇とは正直嫌いであった。嫌いなのが王族のしきたりや式典にいちゃもんつけてくるからである。世界に信仰されている神竜聖導教会だから大きく出れないが。王の政にまで口を出さないので欲しい。


「それよりもオルドス国王、なぜ?黙っていたのですか?。」


バンディアムス教皇の口調が突然強まり語気を荒がる。


「はて?何のことでしょう。」


突然バンディアムス教皇が機嫌悪くなったことにオルドス国王は困惑する。小言を聞かれたか?。それとも隠れて陰口たたいたのがばれたのか?。オルドス国王は何をどう粗相をばれたのか解らずじまいで対応に困った。


「惚けないで下さい。王族のペットであるノーマル種のことです。」


バンディアムス教皇は厳しげにオルドス国王に言い放つ。


「王族のペット?ノーマル種?、ああ、我が王族のペットとしてノーマル種を飼いはじめたことですか?。まさかバンディアムス教皇とあろうものが王族のペットにまで口を挟むのですか?。確かに王都ではノーマル種は蔑まれる対象の竜種ではありますが。我が娘達に気にいってるペットにまで口を挟むというのは神竜聖導教会の長としてどうかと思いますが?。」


まさか王族のペットにまで口を挟むと思わなかった。王族のペットに何を飼うかなど。そこまで神竜聖導教会の最高権力者である教皇に権限などはない。勘弁して欲しいものである。


「いえ、あなた方が何をペットにするかなど。我が教会にとってはどうでもいいことです。問題なのはそのペットのノーマル種の主人のことですよ。」


バンディアムス教皇の言葉にオルドス国王の眉が上がり動揺する。


「な、何のことですかな····。」


オルドス国王の口調がぎこちなくなり。挙動不審になったように動揺する。冷や汗が王冠からだらだらと流れ出る。

話を聞いていた王妃と王女も会話の流れに緊張感が走る。


「神竜聖導教会の情報網を甘くみないで貰いたいですなあ。オルドス国王。貴方がノーマル種の主人からノーマル種を一時的にペットとして預かっていると解っているのですよ。そう、その主人の名はアイシャ・マーヴェラス。我が神竜聖導教会が最も敬愛、信奉する救世の蒼竜プロスペリテの担い手であり。世界を救いし清き乙女、救世の聖女アルシュネシアの子孫ですよ。」


オルドス国王はだらだらと顔から汁という汁が溢れでる。神竜聖導教会にばれてはいけないことがばれていたからである。救世の騎竜乗りの子孫がよもやノーマル種の乗り手になったなどと。神竜聖導教会に知られたら信徒が暴動起こすほどの騒動である。王族として城内だけで内密にすまそうとしたが無理であった。


「オルドス国王。私は王族としてマーヴェラス家の支援を打ち切ったときは目を疑いましたよ。よもやこの世界を救って下さった救世の聖女の子孫にこのような真似ができるとは····。」

「そ、それは王侯貴族が結託して支援を断固拒否反対されたからであって·····。」

「そんなくだらない理由で支援を打ち切ったのですか?。全く聞いて呆れますね。」


はあとバンディアムス教皇は何ともいえない力の抜けたため息を吐く。

実際のところは7大貴族であるギルギディス家と王侯貴族が結託してマーヴェラス家の王家の支援を猛反対されたからである。それを神竜聖導教会に知られればマーヴェラス家を守護する王家7大貴族さえもマーヴェラス家を陥れたことがしれわたってしまう。そうなれば神竜聖導教会がよりマーヴェラス家を保護するという大義名目が成り立ってしまう。バザルニス神竜帝国のこともある。ここは事を荒立てたくはない。


「本来なら神竜聖導教会が彼女を保護せねばならぬのですが·····。」

「そ、それは·····。」


オルドス国王は言葉を濁らせ詰まらせる。


「ええ、解っておりますとも。国同士でとり決めた誓約。あれがなければ私たちが何もできませんよ。本来なら教会で彼女を保護すべきなのですがねえ·····。」


バンディアムス教皇は忌々しげに口許が渋る。


「そ、それよりもきょ、今日の建国記念杯は見所ですよバンディアムス教皇。なんでも娘から聞かされた話なんですが。アイシャ・マーヴェラスの騎竜であるノーマル種は上位種並みに強いそうなんですよ。色んなレースに出場しては勝ち星をあげ戦績を積んでるとかなんとか。」


オルドス国王は取り繕うようにバンディアムス教皇の機嫌をとる。


「ふん、何を馬鹿なことを言っているのですか?オルドス国王。ノーマル種が上位種並みに強い訳がないではありませんか?。あれは竜種のなかでは失敗作ですよ。魔法やスキルも扱えぬ。思念さえまともにできずに人間との意志疎通も叶わぬ。まさに典型的な神足る竜の加護も与えられぬ穢れし竜です。矢張救世の聖女アルシュネシアの子孫は同じく救世の蒼竜である神足る竜プロペリテ以外にはありませんよ。」


ぷるぷるぷるぷる

シャルローゼ王女は張りのある豊満な胸が膨らみがぷるぷると怒りで身を震わせる。それを妹であるメディア王女が宥めるように抑える。

不貞腐れていたマリス王女も大好きな自分のペット?であるノーマル種を馬鹿にされたことに頬を膨らませてバンディアムス教皇を睨んでいる。



パン パパン

合図の花火が上がる


「ば、バンディアムス教皇。ど、どうやらレースが始まるようですよ。」


娘達の激しい怒りを察したのか。オルドス国王は話をそらそうとレースの観戦に話題を変える。


『さあ、今宵もやって参りました。建国記念日にて学生のみで行なわれるレース、建国記念杯が今開催されようとしています!。』


わーーーーーーー!わーーーーーーーー!


王都のお城に周りに集まった観客から熱の帯びた歓声が上がる。



お城の前では建国記念杯のレース開始を待つ竜騎士と騎竜乗りと騎竜が集まっていた。

ライナとアイシャも建国記念杯のレース開始を待つ。隣にはツーマンセルで組むことになったオリンと人化を解いたオレンジ色の炎をメラメラと燃やす鳥形の竜の姿をした鳳凰竜フェニスもいる。氷結竜にリベンジをきめたレインと炎竜ガーネット、そしてペアになったラムと魔剣竜ホロホスも出場している。

他にもカリスとアーニャも建国記念杯の出場を決めたようである。人化を解いた大きな巨体で眠たそうにする地土竜モルスと物凄くライナをガン見する弩王竜ハウドもいた。他にもシャンゼルグ竜騎士校の騎竜乗り科の令嬢生徒と竜騎士科の令息生徒とその騎竜が集まっている。



『私、シャンゼルグ竜騎士校の竜騎士科所属で実況を務めさせて頂きます。サイク・ラッパーヌ。と申します。隣は同じくシャンゼルグ竜騎士校騎竜乗り科所属のネレミア・エレクトーンのです』

『宜しく。』



ギャ?ギャアラギャア?ギャアラギャアガアギャアラギャア?

(ん?実況と解説が学生?。)



建国記念杯の実況の解説が学生であることにも驚きだが。竜騎士科、騎竜乗り科所属の生徒でありながら喧嘩してないことにライナは驚く


「竜騎士科のサイク・ラッパーヌと騎竜乗り科のネレミン・エレクトーンは竜騎士科、騎竜乗り科所属だけど。お互い将来レースの実況解説を希望している特別な学生なのよ。王都では息のあったコンビでレースの実況と解説して活躍しているわ。王都外のレースでも彼らは引っ張りだこなのよ。唯一竜騎士科と騎竜乗り科の諍いには関係ない人達ね。彼らだけは喧嘩することはないわ。」


シャンゼルグ竜騎士校の内部事情に詳しいオリンお嬢様が坦々と説明する。


『建国記念杯の始まりは王国に貢献した竜騎士ベイフランサーと騎竜乗りホウリィスが互いに王都上空を競争したのが始まりでした。競争の理由は互いに婚姻をかけたものでしたが。互いに両想いだったためにあまり意味はありませんでした。結果は同着でしたが。それでも二人は晴れて結婚し結ばれたそうです。』

「何かロマンチックな話だね。ライナ。」

ギャ、ギャギャア······

(そ、そうですね······。)


今の竜騎士科と騎竜乗り科の関係とは偉い違いである。あちらはどちらが王国に貢献しているかでもめているんだが。建国記念杯のレースの誕生秘話が今の竜騎士科と騎竜乗り科の現状みると何とも言えぬ皮肉な話である。


『それでは建国記念杯の期待の優勝候補の学生達紹介致しましょう。先ずは竜騎士科の学年最強とも吟われる三竜騎士の二人がこの建国記念杯に出場しております。一人は竜騎士科一年ジェローム・アドレナリン。華麗な剣さばきを得意としております。』

ファサッ

「ふっ、華麗に決めるよ。」


カール髪の前髪をジェロームはキザったらしくかきあげる。


「キャーーーーー♥️。ジェローム様‼️。素敵♥️。」


ギャラリーの女性陣から熱い声援が飛び交う。

ジェローム・アドレナリンという竜騎士生徒、女性陣から人気があるんだな。

名前が少々アレだけど·····。

ライナは素直に感心する。


『もう一人は竜騎士科、二年ラザット・バラッカス。彼はスピアーを得意とし。突撃特攻、電光石火な突きを得意とします。』

『俺の極上のイチモツを喰らわしてやるぜええーーーー!。』

「ちょ、おま、少し黙れ‼️。放送中だ‼️。」


人化が解かれているラザットの相棒、激突竜ヘンガンの暴走にラザットは懸命にとり抑えようとする。特に口封じることに専念する。思念を飛ばしているので無意味だが。


『続いて騎竜乗り科には何とあの軍師竜がレースに出場しております。主人は騎竜乗り科一年ルベル・フォーゲン。不気味ですねえ~。戦略に長けたとされる軍師竜ですが。一体どんなレースを見せてくれるのでしょうか?。』

「ぜ、ゼノビア。何か緊張するわね。」


ルベルはレース初心者でもないものの。矢張初めての建国記念杯なので緊張していた。


『そんな時は手に人という文字を三回書いて。舌で舐めとって飲み込むといいですよ。』


ヒヤシンス色の角と鱗に覆われた竜は落ち着いた様子で主人に優しくアドバイスする。


「え、な、舐めるの?。わ、解ったわ。」


ペロッ ゴックん

ルベルは言われた通りに左手に人という文字を三回書いて舌で舐めとる。


『あ、本当だ!。緊張とれたわ。ありがとう!ゼノビア。』

『いいえ、どう致しまして。』



『続いては何と!。あの薔薇竜騎士団候補生の面々が建国記念杯に出場しております!。』


わーーーーー!!わーーーーー!

王族直属である薔薇竜騎士団の候補生が建国記念杯に出場していると聞いて観戦にきた観客が盛り上がる。


「いいですこと。私達の目的はあくまであの野蛮なノーマル種に対して私達薔薇竜騎士団の象徴でもある白薔薇竜マリアンにあのノーマル種が底辺で弱小であることを解らせることですわ!。」

「はい、シャロム様。」


特待生の白薔薇竜騎士団候補生の面々が揃って頷く。


『ああ、身近でライナ様の勇姿がみれるなんて。私、感激で倒れそうです♥️。』


真っ白な薔薇模様の鱗に覆われた美しい竜は平凡な緑色の竜の姿をうっとりとした竜の眼で見つめる。


「あのノーマル種の無様でみっともない敗北した姿を目にすればきっとマリアンも目を覚ますはずですわ!。私達で元の美しきも気高く高貴な白薔薇竜を取り戻しましょう‼️。」

「はい!シャロム様。」


『さあ、最後はこのレース中の本命中の本命!。優勝候補でもあるシャンゼルグ竜騎士校最強を誇るクラウンとタクト称号持つゼクス・ジェロニクスとエメネリス・フェレンチェだあああーーーー。』


わああああああーーーーーーーーーーーー!!


お城の周りに集まる王都の国民は盛大に盛り上がる。


「ザイン、問題ないな。」

『ああ、問題あるとしたらあのノーマル種と同じスタート地点であることを願わんばかりだが。』


無双竜ザインとしてはあのノーマル種の強さを知るためにも建国記念杯の特殊ルールのランダムであるスタート開始選択が同じであることを願う。でなければ遠回りする羽目なるからである。

   

「ああ、このレース何事も起こりませんように。」


エネメリスは胸の膨らみに手をあて。天を仰ぐよにお祈りを捧げる。


『心中お察しするわ。エネメリス。』


エネメリスはこのレースが無事に終わることを切に願う。相棒の精霊帝竜ネフィンはそれを労う。


『それでは皆さん。くじを引いてください。スタート開始地点を決めます。』

ギャ?

(くじ?)


実況の学生サイク・ラッパーヌからくじを引くように言われてライナは不思議そうに竜の長首を傾げる。


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