第223話 王族のペット
ほえ~~
ずっと俺を呆けた顔で様子を窺うドレスを着た幼い少女ははっと我に返ると突然口元が大きくつり上がる。
「にひっ、どらごん!。」
ビシッ‼️
豪華なドレスを着るボワボワ金髪ヘアーの幼い少女は満面な笑みを浮かべて俺に力一杯指を指す。
はい、ドラゴンです!。
俺は内心そうノリ突っ込みで返す。
きゃきゃ
「どらごん!。どらごん!。」
ペタ ペタ ペタ ペタ
ドレスを着る幼い少女は嬉しそうにと俺の腹部辺りを触れまくる。
うーんこの娘何処の娘だろう?。て言うかだいたい予想はできるのだけど。城内でフリフリなドレスを着る者なんて1人しかいない。俺はだいたい予想はついていた。
「マリス王女~、どちらにおられますか?」
中庭の庭園にある芝生迷路から声が聞こえる。背丈もある緑の芝生の合間からひょっこりとメイドの娘が姿を現す。角を生やしていないところみると普通に人間のようである。
メイドの娘が俺にタッチしまくる幼い少女に気がつくと急いで駆け寄ってくる。
「マリス王女此方におられましたか。」
メイドの娘は幼い少女の前に辿り着くとはあはあと少し息を切らしていた。かなり忙しく目の前の少女を探していたらしい。
矢張目の前のフリフリドレスを着た幼い少女はマリス王女だったようだ。ボワボワ金髪ヘア―ではあるが。シャルローゼお嬢様に何処と無く似ている気がする。
「メニー!どらごん!。」
ビシッ
再びマリス王女は俺に指を指す。。
「あら?本当ですね。て、これノーマル種じゃありませんか!?。何故ノーマル種が城内に?。」
メニーという名のメイド娘はノーマル種が城内にいることに激しく困惑していた。
「姉上が後輩の騎竜を引き取ったそうだ。」
丁度シャルローゼの妹であるメディア王女が戻ってくる。
「メディア様?。ではシャルローゼ様がお戻りに?。」
こくりとメディア王女は頷く。
「何でもこのノーマル種は上位種並みに強いそうだ。」
「ヘエ~そうなんですか。ノーマル種が上位種並みに強いだなんて聞いたことはありませんけど。」
「どらごん!。どらごん!。」
マリス王女はいつの間にか俺の背中に乗ってはしゃいでいた。
ギャラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラ
(あの、メディア王女。貴方様の妹君が俺の背中ではしゃいでいるのですが。)
俺は会話する二人にマリス王女が背中に乗っていることを伝える。
「ん?ああ、マリスは遊び相手が欲しいのだ。姉上が戻るまでどうか遊んではくれまいか?。」
メディア王女は特に妹であるマリス王女の行為に注意することもなく遊び相手になって欲しいと頼まれた。
ギャ····ギャギャア·····
(はあ···そうですか····。)
何か子守りを押し付けられてるような気がするのだが。気のせいだろうか?。
キャハハ
暫くマリス王女は俺の背中で尻尾を掴んだり。寝っ転がったりしてはしゃぎながら遊んでいた。
シャンゼベルグ城
玉座の間
シャルローゼと絶帝竜カイギスは大広間の二席の玉座の前に立っていた。左右には大臣や身分の高い王侯貴族が控えている。絶帝竜カイギスは礼儀正しく畏まる。
「お父様。只今戻りました。」
「おお、よくぞ戻った。我が娘シャルローゼ よ。」
シャルローゼの父親であるオルドス国王は目を輝かせ歓喜する。
「元気そうですね。シャルローゼ。」
隣席の玉座には銀髪を束ねた王妃がにこやかに笑顔で静かに座っている。
「お父様もお母様もご健在で何よりです。来て早々お父様にお願いがあるのですが。」
シャルローゼは直ぐにノーマル種ライナをお城に住まわせる許可を得るつもりだった。
「お願い?。何だね?。久々に我が娘が帰省したのだ。どんな我が儘でも聞いてやろう。騎竜船が欲しいのならまるごと買ってやろう。それとも新しい騎竜か欲しいか?。優秀なレア種やエンペラー種を用意して取り揃えよう。メイドが欲しいのなら我がメイド隊から選抜して送ってもよいぞ。」
「いいえ、騎竜船も騎竜もメイドもいりません。」
シャルローゼはキッパリと断る。
「ではどんなお願いだ?。王ができることなら何でもしよう。」
玉座の上でオルドス国王はニンマリと笑みをうかべる。
シャルローゼはいをけっし口を開く。
「では、後輩の騎竜を預かったので合宿期間の間置いてくれませんでしょうか?。」
「何?そんなことか。騎竜の一頭二頭など城内の竜舎に充分に空いているから問題ない。しかし何故騎竜を預かったのだ?。シャンゼルグ竜騎士校には女子寮があり。騎竜も普通に寝泊まりできるはずだが····。」
オルドス国王は眉を寄せ首を傾げる。
「実はシャンゼルグ竜騎士校にあった来客専用の竜舎が撤去解体されてしまったようなのです。」
シャルローゼは坦々と経緯を説明する。
「確かに我が国の財務大臣が一度も使われていない竜舎を税金の無駄ということで撤去解体の申請を承諾したが。」
「後輩の騎竜が寝泊まりする場所が無くて困っていたので預かりました。」
オルドス国王は更に眉を寄せる。
「騎竜なら人化出来よう。」
「いえ、後輩の騎竜は人化できません。」
オルドス国王の頭に???が続く。
左右にいる大臣達や王侯貴族達も揃って首を傾げる。
「人化できないと?。はて?して、その後輩の騎竜とは何種なのだ。」
疑問を重ねるオルドス国王は娘であるシャルローゼに尋ねる。
「はい!ノーマル種です!。」
ざわざわざわざわ
シャルローゼは堂々と胸を張りいい放つ。
左右の大臣達と王国と繋がりを持つ王侯貴族が一斉に騒ぎ出す。
第一王女で王位正統継承者でもあるあのシャルローゼ王女がノーマル種を王城に連れて来たのである。しかもそのノーマル種をお城に泊めて欲しいと頼んできたのだ。
あり得ないことである。あの底辺で下等で無能な貴族にとっては騎竜にもならない騎竜をおの気高きも美しく凛々しいシャルローゼ王女が王城に迎え入れたいと言ってきたのである。
大臣達も王国と繋がりを持つ王侯貴族さえもシャルローゼ王女が頭が可笑しくなってしまたのではないかと心配になる。
オルドス国王の玉座に触れる手がふるふると震える。
断じて感動で震えていたわけではなく。激しい怒りで震えていたのだ。
ノーマル種など家畜程度にしかならない騎竜をお城に招くなどあり得ないことである
それを理解していながら娘が平然といいのけたのである。
「何を考えている!。シャルローゼ!!。ノーマル種を城に招くなど。王女としての誇りを忘れたか!。」
「お言葉ですがお父様。後輩の騎竜ノーマル種はただのノーマル種ではありません。上位種と肩を並び。いくつものレースに出場しては優勝を重ね。戦績を積んでおります。」
ざわざわざわざわ
大臣達と王侯貴族達はノーマル種が上位種並みの強さを持つと言われ騒ぎ出す。
「何を言っているのだ!?。ノーマル種が上位種並みに強いわけなかろう。」
「事実でございます。」
「例えそのことが事実であろうともノーマル種を城に招くなど。貴族や騎士達に王として示しがつかぬ。」
「どうしても駄目ですか?。お父様!。」
「駄目だ!。例え娘の頼みでもノーマル種は城に招くなど許さぬ!。」
オルドス国王は溺愛する娘の頼みでも聞き入れてはくれなかった。シャルローゼにとっては予想通りの反応である。ノーマル種を下等と見なしているのではなく。王としての体面を気にしているのだ。ノーマル種を城に招き入れたら貴族達から悪評がつく。それを父親であるオルドス国王は気にしているのだ。ならばその体面さえも取り払うことができる建前を当たればよい。
ノーマル種を招き入れるほど大義名分があれば父親であるオルドス国王も承諾するだろうと娘であるシャルローゼはふんだ。
「ではお父様。私の後輩ノーマル種の主人の名を聞いて貰えませんでしょうか?。」
「ノーマル種の主人だと?。どうせノーマル種を騎竜にする貴族の娘など。何処かの没落した田舎貴族に違いあるまい。」
オルドス国王は玉座の上でふんと不機嫌に鼻をならす。
シャルローゼはニコと社交辞令のような笑みを浮かべ。唇を開き名を告げる。
「ノーマル種の主人はアイシャ・マーヴェラスと申します。」
「アイシャ···マーヴェラスだとっ!?。」
アイシャ・マーヴェラスと言う名にオルドス国王は驚愕し。目を見開き絶句する。
ざわざわ ひそひそ
「マーヴェラス····。」
「まさか救世の騎竜乗りですか?。」
周りの王侯貴族や大臣達は皆マーヴェラス家という名に口々に騒ぎだす。
「マーヴェラス家が····。ノーマル種を······騎竜に····したのか·······。」
突然オルドス国王は力を抜けたかのようにへなへなと崩れ落ち。玉座に持たれる。王の激しい怒りの激情さえもあっという間に消え失せる。
「それにアイシャ・マーヴェラスの騎竜であるノーマル種ライナは精霊も使役できます。」
「精霊を使役できるだと!?。まさか神足る竜。いや·····あり得ぬ。神足る竜はノーマル種などではないはずだ。」
オルドス国王の心は迷う。
「どうしますか?。お父様。再びマーヴェラス家の援助を止めたように没落したマーヴェラス家を無下にするおつもりですか?。王族として世界を救った一族に此度も蔑ろにするおつもりですか?。」
「ぐぬ。し、しかし·····。」
マーヴェラス家は世界を救った救世の騎竜乗りの子孫である。伝説の神足る竜の乗り手でもある家柄に王族として全面的に無視することはできない。しかしマーヴェラス家の騎竜がノーマル種であることが問題である。城のもの達がノーマル種を受け入れることを良くは思わないだろう。例え世界を救った子孫であるマーヴェラス家の騎竜であっても矢張ノーマル種を城に招くことには問題がある。
城の規律も乱れよう。
「貴方。迷っているのなら提案があります。」
突如沈黙を保ち。静観していた隣席の玉座に座る王妃が口を開く。
「何だ?。今は私は考えごとしている。口を挟まないで貰えないか·····。」
娘であるシャルローゼの頼みに悩ませ頭痛さえする。
「そのマーヴェラス家の騎竜であるノーマル種の騎竜に一時的に王家の首輪を与えたらどうでしょう。」
王妃の提案にオルドス国王はハッと閃く。
「そうかっ!。王家の首輪か!?。」
王家の首輪。王族のペットとして認めらたものが付けることが許される首輪である。騎竜としてではなく王族のペットとしてならば城のもの達も文句をいえまい。王家の首輪は王族のなかで代々伝わる歴史あるものである。それに異議を唱えることは王族に対する反逆罪に等しい。大臣や王侯貴族でさえも王族のペットということなら不満はあれども納得するはずだ。しかも合宿期間の一時的なものである。それに末の娘であるマリスも城に遊び相手がいなくていつも寂しそうにしていた。ノーマル種はマリスの良い遊び相手にもなろう。
「うむ、シャルローゼよ。ノーマル種の騎竜を城で受け入れよう。但し!騎竜ではなく王族のペットととして受け入れることとする。それ以上の異論は認めぬ!。」
「感謝致します·····。」
本心では正直シャルローゼは反論したかったが。これ以上ごねられると面倒になると判断し。口答えはしなかった。
「ではシャルローゼの後輩であり。アイシャ・マーヴェラスの騎竜。ノーマル種ライナを我が王族のペットととして迎え入れることとする。大臣、他のもの達も異論はないな。」
隣で会話を聞いていた王家貴族達と大臣達に念を押すように聞く。
「は、はい異論はありません!。」
「ノーマル種はともかくマーヴェラス家を無下にしようものなら教会が何か言ってくるかもしれません!。オルドス国王は良い判断をいたしました。」
王侯貴族達はノーマル種はともかく神足る竜や救世の騎竜乗りを崇拝する神竜聖導教会に目をつけられることを嫌がった。一般の貴族達よりも教会は権力を持っていた。それに目をつけられることになったら将来の地位も脅かしねないのだ。
「それではこの件はこれにて終了だ。」
オルドス国王の命で合宿期間中ノーマル種のライナを王族のペットとして迎え入れることにした。
ぐにゃ~
(ギャあ~)
ぐにゃにゃ~
(ギャギャあ~)
「きゃはははは。」
マリス王女は俺の頭に乗っかり。俺の竜口がおもいっきり引っ張ぱられる。引っ張られる度に俺の竜顔が面白い形に変わる。
「すっかり懐かれたな。マリスに。」
銀髪レイヤーショートヘアーのプリンセスDynamite‼️のお胸を持ちのメディア王女は含み笑いをする。
ギャアラギャアギャギャガアギャアラギャアガアギャギャラギャアガアギャアラギャギャ~ガアガア~
(そうでふか?ふぎぎ。遊ばれているようなぶぎゃぎゃ。気もしないですがぎゃぎゃ~。はあ···はあ···。)
マリス王女は俺の竜口を容赦なくゴムのように引っ張ってくる。
はあ~疲れる。
「マリスのこと少し頼むよ。姉上が戻るまでの辛抱だ。」
ギャギャラギャアギャギャアラギャギャ
(わ、わきゃりました。ぶぎゃぎゃきゃ。)
ライナはマリス王女から竜口を引っ張られながらも承諾する。
しかしライナは知らなかった。シャンゼベルグ城でいつの間にか王族のペットにされてしまっていたことを。
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