第186話 強力な助っ人
キンコンカンコーン
「ではこれにて今日の授業は終える。寄り道せずに帰るのだぞ。」
「「「イエス!マーム!!。」」」
令嬢生徒達は教室で声を揃える。
「では解散!。」
ざわ ざわ
一年令嬢生徒達はカバンに教科書、ノートをつめ。各々場所へと帰路につく。
「アイシャはこれから三年先輩に風車杯の出場を頼みに三年校舎にむかうのね。私は寮で待ってるわ。」
「多人数で頼みにいくのも先輩方には迷惑だろうしね。」
「うん、解った。」
アイシャは頷き親友であるパールとレインと別れる。
「私も玄関で待っているから。アーニャ、アイシャもいるんだし。三年先輩に失礼なく。ちゃんと頼みなさいよ。」
「ふええ、わ、解ったです。」
ふわふわ
カリスの叱咤にアーニャはあわわと大きな胸を揺らし慌てふためく。
「大丈夫だよ。アーニャ。誠意を示してお願いすればきっと聞いてくれるよ。」
「そ、そうですね。モルスも頑張ろうね。」
アーニャは隣にいるモルスに話しかける。
スーーー スーー
立ったまま寝ている。
「モルス······。」
アーニャは困った顔で眉を寄せる。
アルビナス騎竜女学園の校舎は学年ごとに三区画にわけわれている。表面玄関から入り右側が一年専用の校舎、左側が三年専用校舎、奥側が二年専用校舎である。玄関から二年専用校舎まで一年専用校舎と三年専用校舎の廊下を通っていかねばならず。かなり不便せいがある。二年令嬢生徒にとってら校舎まで遠いと不満があるようで。改善策として学園は瞬間転移魔法ポートを将来的に玄関辺りに設置しようと検討しているようである。
アイシャとアーニャは三年教室がある三年専用校舎の三階に向かっていく。三年専用校舎には一階に三年専用食堂、二階に科目専用の教室、三階には三年教室と休憩室、マッサージ室まで令嬢生徒ならでは至れり尽くせりの設備が用意されている。
三年専用の校舎の階段上がり三階まで向かう。すれ違う三年令嬢生徒は階段を上がる一年令嬢生徒を不思議そうに見ていた。あまり一年令嬢生徒がようもないのに三年専用校舎に来ないからだ。交流がないわけではない。一年専用校舎と二年専用校舎と三年専用校舎の真ん中に位置する中庭ではお弁当所持している令嬢が鉢合わせしたりするからである。でも一年令嬢生徒が用も無しに三年専用校舎に来たりしない。物珍しさそうにに三年令嬢生徒は通りすぎる一年令嬢生徒に視線をやる。
「あわわ、緊張しますね。」
「私も三学年教室に行くのは初めてだから三階にあると行ってもすぐに分かるかなあ?。」
一年の二人は段々と不安になってきた。
三年専用校舎の最上階である三階まで上がり。真っ直ぐ貫いた広い廊下を進む。
「そういえば三年先輩の誰に頼むの?。」
アイシャは風車杯に誰を誘うのかを聞いていなかった。
「ふええ、はい、風紀委員長のセラン・マカダイン先輩です。レースでは風姫という二つ名で有名で。風車杯でも連勝した経験があります。風車杯で連勝経験がある先輩がスリーマンセルのレースで先導してくれれば優勝間違い無しです。」
ふわ ふわ
アーニャは自信ありげに胸を張り。雲の軽さを秘めた胸と一緒に揺れる。
廊下をすすみながらアイシャは右手の廊下の窓の下に視線を移す。いつもライナと一緒にお弁当を食べている中庭が見える。
三年専用校舎の三階の長い廊下を進むと直ぐに三年生先輩がいる教室が見えあ。ちゃんと教室の扉の上部に三学年と書かれた小さな僄しがある。
アイシャとアーニャは三年年と書かれた僄しのプレートの付いた扉の前に立つ。
「ここね·····。」
「ふええ、き、緊張します····」
「ぐうぐう·········。」
アーニャは身を震わせる。
モルスは器用に直立したまた眠って三年教室の扉前にたっている。
アイシャは扉の取っ手に手をかける。
「失礼します。」
がらがら
少し勢いよく扉を左右に開ける。
開かれた三年教室はまだ帰りのホームルームが終了した直後のようで令嬢生徒は三年教室内にまだ残っている。帰り支度せずおしゃべりで花咲かせている三年令嬢生徒もいる。アイシャは三年令嬢生徒達を目配せし。目的の三年先輩の令嬢を捜す。
アイシャは風紀委員長のセラン・マカダインという三年先輩はそれほど深い面識があるわけではないが。学園のプリンセスマドンナであるシャルローゼ・シャンゼリゼと一緒に模擬レースで戦っていたので印象に残っている。
アイシャは三年教室内を視線を巡らせ確認する。
セラン先輩は水色の髪に髪止めをしている令嬢だ。捜せば直ぐに解る。一緒にシャルローゼ先輩も捜す。シャルローゼ先輩とセラン先輩は見た感じ親友同士だから一緒に捜せば見つかる筈である。
案の定窓際の奥にシャルローゼ先輩とセラン先輩が話し込んでいた。
さて、どう話を切りだそう。部外者である三年教室に一年が入ってくるなど初めてのことである。隣のアーニャもあわわと狼狽えている。
三年クラスの先輩達も三年教室にいきなり一年生が入ってきたことに困惑する。
「どうかなされましたか?。」
一人の親切な三年令嬢生徒が声をかける。
「あっ、はい、三年のセラン・マカダイン先輩に逢いにきました。」
アイシャはしっかりとした物腰で答える。
「そうなの。セラン風紀委員長。一年生が用があるそうです!。」
三年クラスメイトの声にシャルローゼと話し込んでいたセランが気づく。
セランは少しきつめの視線を来訪してきた二人の令嬢生徒にむける。
「どうぞ。」
親切な三年令嬢生徒は優しく教室に招き入れる。
「ありがとうございます。」
「ふええ、あ、ありがとうです。」
アイシャと少しぎこちないアーニャは丁寧に先輩にお礼の挨拶をすると恐る恐る窓際の奥にいる二人の先輩目指し歩みを進める。
教室内の三年令嬢生徒達からは好奇な視線を向けられるが。アイシャは勇気をふり絞って堂々と前へでる。。
セラン先輩が座る席にたどり着く。セラン先輩の隣の席にあぐらをかいた子供っぽい容姿で耳が片翼の形をした風竜のウィンミーが座り。窓近くには鮮やかな薄めの金髪を靡かせるこの学園最強のプリンセスマドンナ、シャルローゼ・シャンゼリゼは口元をほころばせながら立っている。その隣には主人をたてるように佇む執事服に身を包んだ頭に角生やす白髪と上品な髭を生やす初老の紳士姿の絶帝竜カイギスもいる。
「久しぶりですね。アイシャ・マーヴェラス。銀姫のシーアと一緒にレースした以来ですね。」
「はい、そのせつはどうも·····。」
アイシャは学園最強と世界最強とレースで勝負でシャルローゼ先輩の騎竜、絶帝竜カイギスと。世界最強の騎竜乗りシーア・メルギネットと幻の竜種、白銀竜プラリスナーチにライナが完全敗北したときの記憶が蘇る。いずれライナと一緒に強くなって学園最強のシャルローゼ先輩と世界最強のシーア・メルギネットに本気で勝つことを心に決めている。アイシャの目標は今この二人にレースで勝つことである。
「私には用があると聞いたけど。何か
ようなのかしら?。アイシャ・マーヴェラス。」
セランは来訪の一年の二人を交互に見比べる。
「私が用なのではなくこちらのクラスメイトのアーニャがセラン先輩に頼みたいことがあるんですけど。」
「頼みたいこと?。」
セランは眉を寄せる。
アーニャは緊張した面持ちで前に出る。
「アーニャ・ハウンデルと申します。風姫として有名な騎竜乗りセラン先輩に頼みたいことがあ、あります。わ、私とアイシャと一緒に風車杯に出場してくれませんか?。」
「風車杯······。」
風車杯というレース名に思わずシャルローゼは薄目の金髪の眉が寄る。
「風車杯·····。確かスリーマンセル(三人一組)のレースで昔、お嬢様とセランお嬢様と知人の令嬢と一緒に出場していましたね。いや~懐かしい。」
絶帝竜カイギスは風車杯でのレースの光景を懐かしむ。
「風車杯をアイシャ・マーヴェラスと貴女と一緒に出場してほしいと?。」
「はい、できれば優勝したいんです!。お願いします!。」
ふわ
アーニャは深々とセラン先輩に頭を下げお願いする。
セランは困った顔を浮かべる。
「よいのではないですか?。セラン。」
「シャルローゼ?。」
「貴女にはライナに非礼をした件もあることですし。今はうやむやになっている状態ですけど。非礼を詫びる良い機会ではありませんか?。」
「あっ!?。」
セランは思い出したように口を開ける。
相棒の風竜ウィンミーの悪戯に制裁を加えようとして。アイシャ・マーヴェラスの騎竜のライナを巻き込んでしまったことがある。その日謝罪に行こうとしたが。アイシャ・マーヴェラスがレースに出場していて。留守で結局謝罪できずに有耶無耶になってしまっていた。
「アイシャ・マーヴェラス。貴女には謝らなくてはならないことがあるの。」
「謝る?。」
アイシャは不思議そうに首を傾げる。
「ちょっと前に私の相棒風竜のウィンミーに顔に悪戯され。その時に貴女のライナと鉢合わせして巻き込んでしまったことがあるの。私が考え無しに魔法ぶっぱなしてしまい。ライナを巻き込んでしまったの。本当にあの時のことはごめんなさいね。謝罪するわ。」
セランは後輩であるアイシャに申し訳なさそうに丁寧に頭を下げる。
「いいえ、気にしてませんから。ライナもきっと気にしてませんよ。」
アーニャは慌てて否定する。
ギャわくっしょん ズズズ
ん?風邪かなあ?。
行儀よく学園玄関前で待つライナは鼻水をすすり。主人であるアイシャの帰りを待っ。
「そ、それならいいのだけど···。なら、話は変わるけど。貴女達はスリーマンセルの経験はあるの?。」
「いえ、ありません。」
「私も全くありません。」
二人は口を揃えて返す。
「スリーマンセルが初めてなのに風車杯を優勝目指すなんて。レースを馬鹿にしているしかおもえないんだけど-----。」
セラン先輩は複雑そうに怪訝な顔を浮かべる。
「いえ、私は本気です。」
「ふええ、わ、私も本気です。」
ふわ
アイシャとアーニャは真剣な眼差しをセラン先輩に向ける。
「まあ····。今の貴女達の実力がどうなってるかも興味はあるけど······。」
セラン先輩は少し考え込み頷く。
「解ったわ。風車杯出場を承諾するわ。ドラゴンウィーク開けてからどれほど強くなったか見せてもらうわよ!。」
「はい!ありがとうございます。セラン先輩。」
「ふええ、本当にありがとうございます。」
ふわ
二人揃ってセラン先輩にお辞儀をする。
下げた頭を上げるとアイシャは嬉しそうにセラン先輩にライナの現状を口にする。
「後、セラン先輩。ライナはドラゴンウィークの連休の間に龍を出せるようになったんですよ。」
アイシャ自慢げにライナのことを口にする。
「ふええ、凄いですね·····。」
「··········」
アイシャは嬉しそうに発言し。アーニャはそれを素直に感心する。
「アイシャ・マーヴェラス。あのね。冗談ならもっとましな冗談を言って頂戴。ノーマル種のが西方大陸に住むと言われている龍をだせるわけないでしょう。」
セランは呆れたような様子で自慢する後輩に残念そうな視線を送る。
周囲に会話を聞き耳立てていた三年令嬢生徒達も何処かアイシャに憐れむような視線を送る
「本当なんです!。」
「はいはい、風車杯は3日後ね。しっかり準備しておきなさいね!。」
セランはアイシャの言葉を軽く受け流すようにスルーし。
アイシャは頬を膨らませ不満そうにしている。
「面白くなってきましたね。カイギス。風車杯の開催日、休めるかしら?。」
「お嬢様。休日をとるつもりですか?。レースによる休日申請ならともかく普通に休むとなると難しいと思いますが。」
「そこを何とか工面してちょうだい。」
シャルローゼお願いに渋りながら絶帝竜カイギスは静かに頷く。
「畏まりました。」
シャルローゼは親友のセランと後輩の二人令嬢を見据える。風車杯というスリーマンセルのレースでどんなレースするのか楽しみで仕方ない。
頼もしい先輩の助っ人も入り。未熟な一年の騎竜乗りは初めてのスリーマンセルのレース、風車杯へ出場し挑む。
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