第172話 金貨は使い方しだいで鈍器となる

キャーーー!キャーーー!

わーーーー!わーーーー!


『おおっと!純白の乙女達がマーガレット・ベルジェインと対峙したぞーー!。どうなるんだ!?。て言うか皆様方はだいたい予想はつくと思いますが·····。』


実況アルヘビラは金貨が流れる川で対峙する五匹の騎竜に乗る純白の乙女とノーマル種を騎乗するマーガレット・ベルジェインの状況を伝える。

観客席に座る成金貴族達の全てがマーガレット・ベルジェインとその騎竜のノーマル種が敗北すると思っていた。1番人気であるマーガレット・ベルジェインに全額賭けた貴族達は真っ青な顔で絶望感を露にしている。


「お嬢様とライナ様が最初どうなるかと思いましたけど···-。持ち直して良かったです。」


観客席で応援していた至高竜メリンは胸に手をあて安堵する。


「そうね。スタート開始早々ライナが変な翔びかたするから冷や冷やしたよ。」


ライナがスタート開始にアンバランスな飛行法を繰り広げたことにアイシャは調子が悪いのかと心配になる。


「終わりましたね。パトリシア・ハーディル。純白の乙女達が従える五匹のレア種にあのマーガレット・ベルジェインのノーマル種に勝ち目などありませわよ。」


 サルマニア・サナナビッチ婦人は羽毛の宝石付き扇を唇にあてホホと蔑む。


「まだ、結果は出てないでしょうに。決着ついたなどと早計ですよ。サルマニア婦人。」


小柄なパープル髪の令嬢は冷静に言葉を返す。


「ふん、よ迷い言を。ノーマル種がレア種に勝つなどあり得ませんことよ。貴女もマーガレット・ベルジェインのように頭が可笑しくなってしまったのではなくて。」


サルマニア婦人は冷たい冷笑を浮かべる。


「では可笑しいかどうか。自分の瞳で確かめるとよいでしょう。」


パトリシアはニコッと社交辞令なつくり笑みを浮かべる。


「ふ、ふん。負け惜しみを」


サルマニア婦人は怪訝な顔で扇を畳み握りしめる。

解説同士喧嘩しないで貰いたいんですが。

実況のアルヘビラは火花散らす二人の間に何とも言えない空気が流れ。はあっと深いため息を吐く。


       第一コース

       金貨の川付近


「ではさっさと片付けましょう。これから二番人気であるシャルロッテ・マドワーゼルとその騎竜、崇高竜を相手をしなくてはならないのです。後がつかえていますから。」


純白の乙女のリーダー格は堂々とした丁寧な勝利宣言とも言える言葉を吐く。


「じゃ、私が行くね。ノーマル種相手に時間を取らせたくないし。行くよ。シルク。」

『安心しましたよ。相手に対してよってたかってなぶるようなやり方は私の品性に欠けますから。ノーマル種なら尚更です。』


白翼竜が前に出る。

良かった。相手は油断してくれているようだな。一気にレア種五匹相手では俺とて対応しようがない。多勢に無勢ではあるが策は無いわけでない。先ずは一匹ずつ対処しよう。


白翼竜と呼ばれた騎竜は美しいシルクのような真っ白な翼をしている。不純物がないほど真っ白な羽毛である。


『私は白翼竜シルク。貴方は?。』

ギャアラギャギャアラギャ

「ノーマル種のライナだ。」

『ライナですか。弱いものをいたぶるのは私の品性に欠けますが。仕方ありません主の命です。ご覚悟を』

ギャアラギャアガアギャアラギャア

「それじゃ。こっちも覚悟するといい。」

『覚悟?。』

ギャアラギャギャ 

「金貨は結構痛いぞ。」

『?。』


バサァッ

白翼竜シルクが首を傾げる隙に俺は真下に急降下する。

ひゅうううううーーーーーー!


『逃げるのですか。ノーマル種であるならば仕方ないことです。恥じることはありません。能力の差を解らぬほうが愚かなのですよ。』


白翼竜シルクは俺が逃げると思っているようで。だが俺の目的は全然違う。うねるように流れる金貨の水面すれすれに脚を止める。真上には純白の乙女達の四匹の騎竜と追ってきた白翼竜シルクが目に入る。


「逃げても無駄です。マーガレット・ベルジェイン!。貴女はここで終わるのです。」


純白の乙女の一人白翼竜シルクの乗り手は所持する剣を構え威勢よく叫ぶ。

じゃらじゃら

脚先すれすれにはじゃらじゃらと激流のごとく流れる金貨がある。


さて、始めるか······。

上手くいくか解らないが。塊なら重量があるけど。金貨一つ一つならそれほどの重さはない筈だ。ならばできるはず。


ひゅうううう こぁおおおーーー!!


俺はくちばしから風の精霊を呼ぶ呼吸を行う。

周囲に風が流れだす。

黄緑の粒子が金貨の川一帯に集まりだす。


『はて?何でしょうか?。風など無かった筈ですが····。』


風が無いほど快晴であったのに突然風が吹いたことに目の前の白翼竜シルクは困惑する。


「何をしているの!。さっさと倒しちゃいなさい!。私達はノーマル種などに時間を取ってる暇はないのよ!。」


ノーマル種を攻撃しないことにしびれを切らした白翼竜の主人である純白乙女が声をあらげ急かす。

む、仕方ありませんね。私の品性が汚すことになりますが。主人の命ならば致し方ありません。


『我が白き翼は聖なる光。大いなる力を持って受けて下さい。ホーリーフェザー(聖光の羽根)』


白翼竜シルクは魔法の詠唱を行い魔法陣が浮かびあがる。相手の固有魔法だろう。

俺は相手の詠唱などお構い無く鉤爪の掌を真下に流れる金貨を掬う或いは子供か水遊びするかのように下から上へと鉤爪を振り上げる。


ギャアあああーーーーー!!

(竜風掌ーーー!!!)


ごおおおおおおおーーーーーー!

じゃらじゃらじゃらじゃら

ひゅひゅひゅひゅひゅひゅひゅひゅひゅひゅ


真下の多量にある金貨が風に吹き飛ばされ。そのまま物好いスピードで頭上にいた白翼竜シルクの身体に直撃する。


ひゅひゅひゅひゅひゅひゅ

バチッバチッバチッ!バチバチバチバチ‼️


『な、何ですか!?。これは····。』

「キャー!。い、痛いわ!。き、金貨が当たる!。」


白翼竜の乗り手である純白の乙女にも金貨が当たっているようである。騎竜が相手の騎竜乗りに直接攻撃できないが。間接的だからギリギリセーフであろう。多量の金貨が石つぶてのように彼等に直撃する。

一つ一つさほど威力ではないが。数が数だけにダメージは蓄積され。俺はそのまま鉤爪の両掌を真下に下げる。

風の精霊の黄緑の粒子は俺の指示するように多量の流れる金貨に付着し風に乗って金貨の石つぶてが更に威力と重量が増す。


「あっ、た、た、た、た、た、た、!。」

『痛、たたたたたたたたたたたた!!!』


最早「あ」と「た」と「い」しか言えなくなってしまった白翼竜と純白の乙女の一人がそのまま真下に押し流されいく。

じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら

金貨によって地面に追いやられた白翼竜と純白の乙女は落ちる金貨の圧力に押されそのまま小さな金貨の小山になって埋もれてしまった。


「なっ、何よ····。」

「嘘っ····。」

「あ、あり得ない·····。」


残りの純白の乙女達は茫然と眺める。リーダー格の純白の乙女も下等なノーマル種のしでかした光景に凍り付いたように固まっている。しかしリーダー格が騎乗する騎竜だけは興味深そうに静観している。



俺はすかさず更に真上にいる高見の見物を決め込んでいた残り三人の純白の乙女達のいる騎竜に向かって俺は鉤爪の両掌を掬うように大きく振り上げる。


ギャアあああーーーーー!

(竜風掌ーー!!)


ごおおおおおおおおおーーーーーー!!。


猛る風が真下から真上へと吹き上げ。それと川となっていた金貨もまるごと上空へと舞い上がる。金貨はまるでうねりをあげ螺旋如く回わりだす。他の真上にいた三人の純白の乙女達とその騎竜もろとも巻き込んでいく。


ごおおおおおおおおおーーーーーー!!

じゃらじゃらじゃらじゃら

パチッパチッパチパチパチパチッ!


「きゃあーー!何なの!?。」

『い、痛いよ~!。』

「痛い!痛い!痛い!金貨が痛いわーー!。」

『金貨は美しいですが。こんな用途は間違っている~!』

『わたくしの美しい美貌が金貨で痣だらけになってしまうわーーー!。』

『キャあああーーー!!。私、金貨よりもオスの金玉の方が好きなのに~~!。』


上空にいた残りの純白乙女とその騎竜は無数の金貨の直撃に絶叫に近い阿鼻叫喚を上げている。


最後の台詞、魅華竜だろうか?。こんなときまで下ネタぶっこんでこないで欲しい。


つむじ風のように巻き上がる風が無数の金貨を乗せて上空にいる純白乙女達と騎竜を巻き沿いながら当たっていく。洗濯機のように回りだす風に膨大な数の金貨が連続的に純白乙女とその騎竜達に石つぶてのように当たる。俺は風の精霊に金貨を乗せた風を更にたかくあげるように掌を流す。


無数の金貨が全て更なる上空に舞い上がったせいで金貨の川の底が見えるほど。干上がった状態になった。


「ふう~!。やっとおさまったわ。こんなの有り得ないわ!。」

「まさかあの穢わらしいノーマル種が!?。あり得ません!。」

「こんな自然現象みたいなことノーマル種ができるはず無いわ。何か間違いよ!。」

『ああ。私の美貌が金貨で痣だらけ。お肌のケアが大変なのに。』

『うう、金貨、痛かったよ~。』

『レース終わったら金貨じゃなくてオスの金を漁らなくちゃ♥️。』


この純白の乙女とその騎竜達は危機感が無いのだろうか。まだ、終わってないのに···。

じゃらじゃら


「何の音かしら?。」


頭上にじゃらじゃらと金目の擦れる音が響いたので純白の乙女の一人がふと空を見上げる。


「う、嘘っ!?。」


見上げた空には太陽の光に照らされた多量の金貨の束が浮遊していた。


ギャガアギャ

金に溺れなっ!(なんちって)。


俺は鉤爪の掌をおも一気し真下に振り下ろす。


ギャああーーーー!!

(竜風掌おおーー!)


ドオオオオオオオオオオオーーー!!

大量の金貨は真下へと流れ落ちる。干上がった状態の金貨の川へと戻されるように純白の乙女とその騎竜達に巻き込んで降り注ぐ。


ザッ パああーーーーーーーーーーん


「「「キャああああああああーーーーーーーー!!。」」」

ギャあああああああああああーーーーーーー!


じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら


大量の金貨が一気に滝のように真下に流される。干上がった状態の地面に止めどなく流れ落ちる。そのまま彼女とその騎竜巻き込み。まるごと一つの大きな金貨の山が出来上がる。


じゃららららららららら

降り積もってできた大きな金貨の山の中には純白の乙女とその騎竜もろともが埋もれる。


「はあ~♥️。ライナ様~♥️。」


すりすりすり

そんな様子など関係なくマーガレットお嬢様はマイペースに俺の背中に密着させ。ずっと自分の胸を擦り付けてくる。





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