第160話  貝殻繋ぎ



ウッヒょぉおお~~!

むにゅう♥️むにゅう♥️


「凄いわ!。リヴァイン様に勝つなんて!。」

「見直したわ!。ノーマル種。」

「何処から龍を出しているの?。知りたいわ!。」


人魚の娘達が俺に群がり。身体を寄せてくる。あれだけ糞を撒き散らすとか。糞ドラとか罵っていたのに今はオーシャンパールの人魚達全員が俺に好感を持ち。人気者になっていた。


むにゅう♥️むにゅう♥️

人魚達はフレンドリーのようで遠慮せずに

真っ白な貝殻に包まれたおっパールを俺の身体に押し付けてすり寄ってくる。

むにゅ♥️むにゅ♥️


ウッヒョお~~~!

俺は緑色の長い尻尾をふりふりさせ歓喜する。


ちぃ~とばかし硬い貝殻が邪魔だけど。それでも真っ白な貝殻を覆う膨らみの弾力は貝殻の外でも感じることができるのでオールOK問題ない。

人魚族と人間族の決闘レースは人間族の勝利に納めた。ゴール地点に到着するより海王竜リヴァインが戦闘不能となりレース続行が不可能となっだからである。ゴールに到着しなかったことが俺としては不満だったが。人魚の女王アニスはもうレースをするのは無駄と諦め。先に降参したそうだ。約束通りパールお嬢様を返して貰うことになった。


「それではパールお嬢様を返して頂きます。」


メルドリン家の門番、元庶民出の騎竜乗りシェークが丁寧に女王に進言する。


「ああ、もう好きにしてよい。私はもう抵抗する気にも起きん。リヴァイン様が敗けた以上私はもうなす術ないからのう。ふん、何でよりによって救世の騎竜乗りが····ごにょごにょ。」


人魚の女王アニスは未練たらたらで最後にぐちぐち愚痴をこぼしていた。


「見事だったわ!。アイシャ・マーヴェラスだっけ?。」

「あ、ありがとう。」 


人魚族の王女フォソラはレースの勝利を称賛する。

アイシャお嬢様は決闘相手だった人魚の王女にぎこちなく返事を返す。 


『我の完敗だ。一体あのノーマル種は何者なのだ?。』


長い胴体をくねらせ。一応傷を癒えた海王竜リヴァインは人魚の娘達に群がられ悦んでいるノーマル種を凝視する。


「えっと、私の騎竜です。不思議な力を使ったり。精霊とかも使役できたりします。ちょっと変わったところもあるけれど。私にとって頼もしい騎竜です。」


アイシャはニッコリと笑顔で言葉を返す。


『ちょっとどころではないと思うがなあ。』


海王竜リヴァインはくちばしから深いため息がもれる。

神足る竜プラスペリテと面識を持つ海王竜リヴァインはあのノーマル種が確かに神足る竜でないことは確信を持って言える。だが、それでもあの以上なスフィアマナンの力を利用し。精霊を使役し。龍まで出す力を持つのだからただのノーマル種でないことは解る。

海王竜リヴァインはもう一頭プラスペリテと面識がある竜にたずねることにした。

プラスペリテと面識ある灰銀色の角と瑠璃色の髪を流す人化の竜はじっと問題のノーマル種を観察している。


『ソーラ。』


長い胴体をくねらせ泳いでソーラに接近する。


「あら?、何の用ですか?。リヴァイン。」


銀晶竜ソーラとは特に親しい間柄ではないが。お互い長命な竜同士。年長者として話しやすい間柄ではある。


『あのライナというノーマル種は何者だ。スフィアマナンや精霊を使役できるノーマル種など聞いたことはないぞ。』


話しかけたリヴアインに対して銀晶竜のソーラの惚けた仕種をする。


「さあ?。」

『さあって······。』


海王竜リヴァインは呆れた竜瞳の視線を銀晶竜ソーラに向ける。


「ただ、プラスペリテの精霊達に好かれていることは解ります。プラスペリテが守護していた救世の騎竜乗りの血脈であるマーヴェラス家を、主亡き後も家を従順に精霊達は守護していましたから。そこにノーマル種ライナがマーヴェラス家に飼われることになったと聞いております。マーヴェラス家を守護してきたプラスペリテの精霊達もマーヴェラス家に飼われることになったノーマル種に興味を持ったのでしょう。」

『あり得んな。プラスペリテの精霊達がノーマル種程度に興味持つなど。しかもスフィアマナン(世界の通り道)まで扱うとは。』

「ライナはスフィアマナンを扱う以前に不思議な力を使ってたようで。その特性がスフィアマナンと酷似していたからでしょう。」


ソーラの言葉に海王竜リヴァインは疑わしげに竜顔をしかめる。


『何を企んでいる?。ソーラ。お前がただおのライナとかいうノーマル種に興味を持っただけとは思えんが。』


銀晶竜ソーラはニコッと笑顔を浮かべる。


「そうですね·····。私はただ彼を見定めているのですよ。救世の騎竜乗りの業と神足る竜の業。彼はその両方を背負えるのかどうかを?。或いは私の····」


銀晶竜ソーラは微笑みをたやさずにいたが。最後の言葉辺りで言葉を濁すように途切れる。


『ソーラ、貴様は·····。』


海王竜リヴァインは何かをいいかけたが直ぐに重く竜口をつぐむ。


「全く、あんたは予想外過ぎるノーマル種ですよ。」


むにゅう♥️むにゅう♥️


ギャハハハハハハ


ギャ?ギャア?

「えっ?何が?。」


俺は人魚の娘たちの大胆なスキンシップにあい。(特におっパール)押し付けられ上機嫌に受かれている。


「人、じゃなくて竜の話をちゃんと聞きなさいよ!。はあ~。まあ···、とにかくパールお嬢様を助けてくれたことは感謝するわ。あんたの力を疑って申し訳なかったわ。」

ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアギャア

「ん、あ、いいよ。俺としては人魚達に抱きつかれ(特に背中)嬉しいから。」

「あんた、本当に変わったノーマル種ね。」


呆れ顔で水空竜ソイリは俺を眺める。

門番シェークさんとレイノリアは帰る支度を始めていた。

アイシャお嬢様とパールお嬢様、人魚族の王女ファソラ三人は談笑するほど親しくなっていた。


「騎竜乗りの学園とはどんなとこなの?。」

「えっとね·····。」


三人がおしゃべりに弾むうちに帰る準備ができたようである。

オーシャンパールの正門まで王女ファソラと海王竜リヴアインがおくり別れをしてくれた。正門で別れの挨拶をする。女王アニスはリヴァインが俺に敗北したことがあまりにもショックだったようで送り迎えにはこず。宮殿にとじ込もってしまう。不憫にも思うがパールお嬢様を拐ったのだから自業自得である。



「それじゃ、気軽に遊びに来てね。」

「ええ、機会があれば·····。」

「またね!。」


アイシャお嬢様とパールお嬢様とファソラ王女三人はオーシャンパールの正門で別れの挨拶をする。

正門から離れていく人間族と騎竜の背をファソラ王女は少し寂しそうに眺める。


「騎竜乗りの学園か······。」


親しくなった人間とその騎竜達を眺めながらファソラはふとそんな言葉を吐く。


『どうした?。ファソラ。』


海王竜リヴァインはうかなそうなファソラの様子に長い巨体をくねらせ。心配そうに長首を下げ顔色を伺う。


「ううん、何か騎竜乗りの学園とかが気になっちゃって。通ってみようかなあと思って。」

『ふむ、ならばアニスを説得すればよかろう。騎竜なら私がなろう。』

「本当?。」


ファソラは海王竜リヴァインの意外な言葉に驚く。


『ああ、正直我はなまったのだと自覚した。海底で人魚族を守護竜といわれてもノーマル種程度で敗北するなど。海を統べる竜としては面目丸つぶれだ。』

「いや、あのライナとか言うノーマル種を比較するのはどうかと······。」


あんなノーマル種が地上に沢山いたなら竜の生態系が大きく変わってしまうんじゃないかとファソラは正直にそう思う。


「じゃあまずはお母様を説得しないとね。」

『そうだな。一年のうちに承諾を得よう。同じ学年とはならないだろうが。親しくなった人間の娘とは同じ学園には通いたいだろう。』

「ありがとう。リヴァイン。」


こうして人魚族の王女ファソラは人間の騎竜学園に入学することを決めた。ファソラがアイシャ達に再び学園で出逢うのは一年先、アイシャ達が一学年上に上がった頃であった。


ザザザーー ザザザーー

海底の徒歩で進みながら海岸の岸部に到着する。メルドリン家の求愛の貝殻繋ぎの効果により。アイシャお嬢様の達の衣服はまるっきり濡れずにすんでいた。


「パール。ありがとうね。メルドリン家の家宝求愛の貝殻繋ぎのおかげで私とライナはスムーズに海底に入れたよ。」


アイシャお嬢様は笑顔でパールお嬢様に笑顔でお礼を伝える。


「いいのよアイシャ。こちらこそ私の事情に巻き込んでしまってご免なさい。」

「いいのよ。親友でしょ。」

「アイシャ······。」


微笑ましい親友同士の掛け合いである。此方までほっこりする。


「あっ!そうだ!?。求愛の貝殻繋ぎ返すね。ライナも舌から出して。」

ギャア

「いいのよ。アイシャ。求愛の貝殻繋ぎはアイシャにプレゼントするわ。」


アイシャお嬢様はキョトンとした顔を浮かべる。


「いいの?。」

「アイシャに受け取って欲しいの。ライナの分も含めてあげるわ。」


パールお嬢様は何故か頬を染めてもじもじと照れている。


「ありがとう。大事にするね。」


アイシャお嬢様はニッコリと笑顔で返す。


「懐かしいですね·····。」


二人の微笑ましい姿をメルドリン家の門番シェークさんが懐かしそうに眺めていた。


ギャギャア?

「何がですか?」


俺は竜首を傾げる。


「メルドリン家の奥様とアイシャお嬢様の母親でおられるネフィス様は同じご学友でしたんです。奥様とネフィス様はそれはもう仲のよい親友でして。大好きなネフィス様にパールお嬢様と同じように奥様は家宝である求愛の貝殻繋ぎをプレゼントしたんです。ネフィス様は奥様からのプレゼントされたことに大層喜んでおりました。メルドリン家の家宝、求愛の貝殻繋ぎには古くから言い伝えがあるのですよ。」

ギャアギャ?

「言い伝え?。」

「はい、求愛の貝殻繋ぎを同性同士にプレゼントすると指を絡ませるほど親密になるそうです。」


ギャギャア~ギャラギャアギャア·······

(へ、へえ~。そ、そうなんですか····。)


何か···その言い伝え色々怖えよ~。

··········


俺はその時竜の額からたらりと冷や汗が流れる。メルドリン家の家宝、求愛の貝殻繋ぎの真の意味を俺は理解したからである。俺は深く追及せず考えないことにする。アイシャお嬢様とパールお嬢様のまわりに何か見えないピンク色の空気流れているような気がしても気にしないでおこう。



俺はすっと竜の長首をアラバアリア海域の海岸の頭上をみあげる。真っ青な晴天である。


はあ~俺も恋人同士のような貝殻繋ぎしてみてえ~~


前世がモテない童貞であった平凡な竜はふとそんな想いが過る。



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