第153話 激昂の竜瞳

「宮殿の前は誰もいないみたいね。」


アイシャ達はライナの起こした騒ぎに乗じて人魚の女王が住まう宮殿入り口前まで来ていた。


「宮殿の警備兵までいない。あのライナって言うノーマル種何をやらかしたの?。」


ネウは思った。女王の宮殿まで警備がいなくなるなど尋常ではない。


「これがライナの力です!。」


青宮玉竜レイノリアは自慢気に宣言する。

しかしその時、ライナは都市内でう○この神となりて。人魚族に多大なる迷惑と嫌悪感と不快感を与えていることなど知るよしもない。


「今がチャンスです。宮殿に入ってパールお嬢様を救出しましょう。」


アイシャなそびえ立つ宮殿へと入る。

宮殿内は海中から抜けたように空気の空間と変わる。


「えっ!?。」

「女王の宮殿のホール内で海中ではなく。普通に空気の空間になっております。ですからここでは泳いで上へ逃げることはできません。」


宮殿内の建物は壁や扉はあるが天井が無いつくりであった。

空が海中の広い廊下を進む。


「ここの大扉の向こうが女王の間よ。今は新たな女王就任に宴会騒ぎしているはず。」


案内の人魚ネビアの言葉にアイシャ一同は決心したかのようにお互いコクと頷き。女王の間の大扉をおもいっきりあけてみる。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ

重たい扉が開かれる。


シャンシャンシャンシャン

トントトコトントン

ぴ~ひゃらら~


鈴音と太鼓笛の音が耳に飛び込む。

その音色のリズムに合わせて人魚の踊り子達が盛大な舞いを披露する。

ぞろぞろぞろぞろ

アイシャ達は女王の間へと足踏みいれる。


「アイシャ!。」

「パール!。」


二人は顔を合わせると互いに再開を喜ぶ。

人魚の女王は不快に口許が歪む。


「お久しぶりですね。サラス女王様。」


シェークが進言するかのように前に出る。


「よもや、こうも早く感付くとは。」


人魚の女王サラス・アビラニスは憎々しげに唇を歪ませる。


「パールお嬢様を帰して頂きたい。もし断るのでしたらメルドリン家と戦争をするおつもりか?。」

「ふん!人間ごときに我ら人魚族は遅れをとらん。それに我等には盟約により人魚族を守護する海王竜リヴァイン様がおられるのだから。」


女王サラス・アビラニスは勝ち誇った笑みを浮かべる。


「リヴァイン?。」


アイシャは不思議そうに首を傾げる。


「海王竜リヴァイン。この海域を統べる海竜です。実力はレア種にも引けをとらない力を持っています。大自然の海そのものの力を宿す竜(ドラゴン)です。その力は巨大で万物の自然を操ると言われのが神足る竜ならば。海王竜リヴァインは海や水を専門にその力を振るいます。」


シェークの説明にアイシャ一同は息を飲む。


『どうかしたのか?。』


天井が抜けた海中から長い巨大な胴体を唸らせる。ヒレが何ヵ所もついた巨大な竜が現れる。


「おお、リヴァイン様。曲者です!。こやつらを始末してください!。」

『何っ!?。』


鋭い青色の竜瞳の瞳孔がアイシャ一同を睨み付ける。

アイシャの頬から一筋の汗が伝い落ちる。


     


ドボーン!!



ライナは意識が戻る。水というかお湯の中にいた。ゆえにそのまま態勢崩しまま浸かる湯水の中へライナの身体が沈む。


ギャバッ バシャバシャッ‼️


ライナは溺れ死にそうなところを咄嗟にもがいて竜の長い首を上げ湯船から脱げ出す。


ザッパーーンッ!!


ギャアギャア····ラギャアギャア·····

(ギャあギャあ······なんだここは·····。)


正気を取り戻したライナは周囲を確認する。

真白な大理石の石柱が幾つか並び。装飾を施した天井が見える。天井には二匹の竜のようなものが描かれていた。


「気が付いたのね···。」


声をかけられ方に視線を向ける。

そこにはさっき俺を殴りはたき落とした真珠色の髪をバッサリとショートカットに切られた人魚の娘が同じ湯船に入っていた。

ん!?。

俺はがく然とした。

何故なら目の前の人魚の娘は一切衣服を着ていなかったからだ。下半身は魚の尾っぽなので女の子の大事なところは確認できないが。あるのかどうか知らんが。人魚がよく胸につるように覆っている白い貝殻はつけていない。

何でこの娘真っ裸なの!?。

いやまあ確かに俺のいる場所が大浴場だから違和感は無いだろうが。一緒に浸かっている意味が解らない。

目の前の人魚の娘の胸はふっくらとおおきな豊かな膨らみをつきだし。正におっパールのようである。くどいようだが···。

俺は身構え警戒する。


「そんなに警戒し無くても良いわ。貴女パールの関係者でしょ?。」


パールお嬢様の名が出たとき俺はより警戒感が増す。

パールお嬢様を知っているということはこの人魚の娘はパールお嬢様の拐った側の関係者に違いないのだ。

どういう理由で俺をこんな所(大浴場)に連れてき来たのか解らないが。


「貴方の仲間と話がしたいの。悪いようにしないわ。」


悪いようにしないと言ってはいそうですかと信じられる訳がない。

アイシャお嬢様達は今頃パールお嬢様の救出に向かっているはず。今は大人しく時間稼ぎするのが得策である。


ギャギャギャラギャガア?ギャラギャガアギャラギャガアギャギャ

「な、何のことでしょうか?。私はただ単に便意を催しだけです。」


俺はしらばっくれることにした。

相手の意図が解らないが。このままシラを切り通した方が良いに決まっている。


「そう、あくまでシラを切るのね。地上の竜は騎竜として主人に一生遣えると聞いているけれど。主人を守る為かしら?。」

ギャラギャガアギャ?ギャラギャガアギャラギャ

「何のことでしょうか?。私も一切何も知りません。」


矢張これは尋問である。相手が真っ裸で場所が浴場でもやっていることは尋問であることは変わりない。

俺は一切何も吐かないことを心に誓う。


「自己紹介遅れたわね。私は人魚族の女王の娘ファソラ・アビラニスよ。」


っ!?

この人魚が女王の娘なら尚更言える筈もない。

俺は竜口を重く口を閉じる。


バシャ!

女王の娘であるというファソラは下半身の尾っぽを翻し。近寄ってくる。


「ねえ、貴方は何処出身の竜(ドラゴン)?。ご主人様ってどんな人?。地上ってどんな所?。」


ファソラという女王の娘である人魚はフレンドリーに近寄って真っ裸であるのに俺にすり寄ってくる。


話すもんか!。俺は絶対に何も話さんぞ!。

俺は牙の口を強く閉め沈黙を保つ。


むにゅう♥️ずり。むにゅう♥️ずり、

ファソラは下半身を尾っぽをくねらせ。ペタペタあっちこっち俺に密着するようにすり寄ってくる。ファソラの上半身にあるふっくらとしたおっパールが鱗肌押しつけられ。動く度にこすれ。形が崩れる。


ぬおおおお!!生、生、生、生乳(なまちち)がああああーーああ!あああーー!!。


俺は人魚に素肌のおっパールを押しつけられ。歓喜しそうになるが。だがこれは尋問であることを心の中で訴え。理性を奥底へと押し込める。


むにゅう♥️ずるり。むにゅう♥️。ずるずるり。

こ、これは何のサービスよ。

俺は竜で相手が人魚族でパフパフみたいな状況になっていた。はたからみたらこの光景はシュールである。


「ここまで忠誠心が高いなんて。地上の竜も馬鹿にできないわね。」


ファソラは素肌の胸を押し付けて素直に感心する。

いえ、ギリギリですよ。自分はもう理性ふっ飛ぶほど歓喜して躍り回りたいくらいです。

陽動の役目をえているのだから最後までやり遂げなくてはならない。

極楽のような目にあってはいるが。任務は絶対に完遂させる。



ギィイィエエエエーーーーー!!


ギャギャラギ!?

「な、何だっ!?。」


突然巨大な竜の唸り声のよなものが浴場内に響く。


「こ、これは海竜の嘶き!?。まさかリヴァイン!。」


バシャン‼️

ファソラという人魚の女王の娘は急いで湯船から出てベールの布地の服に着替える。

俺に構わず浴場から出ていく。

俺も不吉な予感がしたので彼女の後を追う。

長く広い天井の無い廊下を進むと豪華な装飾を施こされた大扉に人魚の女王の娘ファソラが立つ。俺やっとのとこで追い付く。

ゴゴゴゴ

目の前の大扉が開かれると衝撃的な光景が目に入る。


『ぬっ?貴様は銀晶竜のソーラか?。何故ここにいる?。』

「相変わらずですね。リヴァイン。訳も聞かず襲うなど。だからプロスペリテに嫌われるのですよ。」


後方に踞るアイシャお嬢様達を守りながら海王竜リヴァインの前に立ちはだかるように銀晶竜のソーラさんは立っていた。


『ふん!戯言を。どんな理由であれ。我が守護する人魚族に害をなそうするとならば。我は容赦せぬ。』


長い巨大な胴体をくねらせる海王竜リヴァインはふんと吐き捨てるように鼻息をならす。


「ら、ライナ····。」


アイシャお嬢様と俺が目が合う。弱々しそうにこちらに視線を向ける。

アイシャお嬢様の状態が所々に傷だらけで服もボロボロである。


「もう止めて!海王竜様!!。」


パールの悲痛な叫び声が上がる。


ブチッ

何かが切れた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ

熱いマグマがライナの奥底に煮えたぎる。


ギャァ····

「てめぇ···。」


ギロ

竜瞳の瞳孔が細くなり。長い巨大な胴体を泳ぐようにくねらせる海竜王を睨み付ける。


ギャあああーーーーーーーーーーーー!!ギァッ!!

「うちのご主人様になにさらしてとるじゃ!!コラァッっ!!。」


バサッ!! 


俺は翼を広げジャンプする。右腕にありったけの気を練り込む。


『ぬっ?こやつはさっきのノーマル種かっ!?。』


気を練り込んだ竜の掌を海王竜リヴァインに向けて放つ。


ギャあああーーー!!。

「竜破掌ッ!!。」


ドゴおおおーーーーーーッ!!


『ぬうううう······。』


ズッ ズズズズズッ

気の衝撃破が海王竜の巨大な頭部に直撃し。海王竜リヴァインは首をもたげ怯む。


『きっ··貴様······。』


ドシン

ライナは力強く着地する。

虚をつかれた矮小なる竜種の攻撃に海王竜リヴァインは忌々しげに睨む。

ライナは激しい激昂に満ちた鋭い眼光を海王竜リヴァインに放つ。

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