第121話 完全なる敗北
「ライナ、また精霊歌を唄うね。」
ギャアラギャ
「お願いします。」
さてこの二人二頭を相手するとしてどっちに攻撃を仕掛けるか。
逃げに徹するつもりだったが。シャルローゼお嬢様のあんな大技を目の前にして逃げが無意味だと実感した。ならば最強の二人二頭を相手するしかない。
ただどちらを先に攻撃を仕掛けても返り討ちに逢う未来しか浮かばない。
白銀竜の戦闘能力は未だ未知数だし。大技を隠し持っている可能性がある。乗り手のシーア・メルギネットもシャルローゼお嬢様同様大技を隠し持っている可能性も否定できない。
さて、どうする·····
俺の竜顔は気難しそうに思考する
「ライナ、迷っているの?。なら私はシャルローゼ様と戦ってみたい。」
ギャアガアギャアラギャ·····
「シャルローゼお嬢様か····。」
俺は少し考えこみ。アイシャお嬢様の提案を聞き入れることした。
消去法として矢張戦闘の様子を確認したことがあるシャルローゼお嬢様と絶帝竜カイギスだろうなあ。ただ正直絶帝竜カイギスが誇る絶対的な防御を打ち砕く術を俺は持ち合わせてはいない。物理的法則を覆す魔法を持っている以上レースでの飛行の距離も意味を成さない。だが未だ未知のレア種の白銀竜を相手にするよりはまだましか。
俺は決意を固める。
白銀竜プラリスとシーアはシャルローゼの矢の流星雨の大技でかなり離れていた。今なら奇襲されずにすむ。
ひゅうううーーーー
俺は絶帝竜カイギス目掛けて突っ込む。
『ほう、どうやらお嬢様、ライナ様とアイシャ様は私達に攻撃を仕掛けるようです。』
「矢張そうですか。確かに世界最強の騎竜乗りシーアと最強の竜種と吟われる白銀竜を相手するよりは私達の方が幾分かはやり易いでしょう。ただそれはそれで少し舐められているような気がして癪ではありますけれど。」
『では。』
「叩きのめします!。」
シャルローゼお嬢様はコンパウンドボウを手にとり身構える。
俺は絶帝竜カイギスに一撃を喰らわす為に接近する。
右腕の鉤爪の竜の素手をありったけの力でぶちかました。
ガアッ
絶帝竜カイギスの傷だらけの鱗の図体に撃ち込んだ素手は手応えが感じられないほど拳がの力が虚空に抜ける。
くっ!硬いというよりは厚みのあるタイヤに撃ち込んでいるようだ。手応えがないとうよりは拳が威力が半減されている。剣帝竜ロゾンの鱗は鋼のように硬かったが。絶帝竜カイギス鱗の体は反発する柔軟なゴムのようだ。
『ふむ、レッドモンドの拳と比べるとまだまだですな。』
カイギスはニヤリと笑みを浮かべ師の名が竜口からでてくる。
《竜言語変換》
「貴方が師と知り合いなのは知っておりましたよ。学園に強豪の騎竜がいると。」
『ふふ、レッドモンドがそのようなことを。あやつも最強の一角の一頭であろうに』
「何だって!?。」
レッドモンドさんが最強の一角の一頭。初耳だ。俺はてっきり元トレーナーで筋肉好きの変な竜だと思っていた。
『私もかなり年季が入っておりますが。まだまだ若い者には敗けませんよ。』
「出来れば歳の功でお手柔らかにお願いしたいんですが。」
『ご冗談を。久しぶり血わき肉踊るような戦い。手を抜くなど逆に失礼ですよ。私も久しぶりに全力でお相手致します。』
ニヤリとカイギスの老いた竜口から不適な笑みがこぼれる。
はあ~どうやら絶帝竜カイギスは見た目に反して戦闘狂らしい。
俺は覚悟を決める。アイシャお嬢様の精霊歌のおかげで空気中に火、風、地、水の光の粒子が集まっている。今なら連続で精霊を使役した技が放てる。
ゴムのように硬柔な低反発な身体でも全属性の精霊技を喰らわしたなら絶帝竜カイギスでもひとたまりもないはずだ。
精霊歌により俺の一帯が精霊達で充満している。これで呼吸法がなくても連続で精霊の技を繰り出すことができる。
俺は鉤爪の竜の素手を振りかざし飛び掛かる。
『ふむ、どうやら精霊を駆使した技がくるようですな。ならばこれはどうでしょう。』
カイギスの巨体から強く魔力を放たれる。
『オールドガード(完全拒壁)』
ギャアアア!!
「竜炎掌!!。」
ごぉおおおおおおおおお!!
ライナの竜の素手を振り下ろすと弧を描くように炎が放たれる。
しかし炎は燃え移ることもなくカイギスの巨体は無傷であった。
ギャア!!。
「ならば!!。」
俺は両素手を交互に振り払う。
ギャア!!
「竜水掌!!」
ガア!!
「竜風掌!!。」
ざっぱああああーーーーん!!
ごおおおおおーーーーーー!
交互に水流と突風を両素手から放ったが。絶帝竜カイギスは何事もなかったようにそれを全て弾き飛ばす。
全然効いてない。
俺の竜顔は唖然とする。
精霊の技でさえも絶帝竜カイギスにとっては無力である。
「ライナ、援護するね。」
アイシャお嬢様は光属性の魔法の詠唱を行う。それを騎竜ではなく騎竜乗りに向けて放つ。
「セイントランス(聖光の槍)!!。」
ひゅーーん
アイシャお嬢様が初めて放った光属性の攻撃魔法だ。光の槍がそのままカイギスの巨体の背に立つシャルローゼお嬢様に向かう。
『ふむ、ではこれはどうですか。』
カイギスは更に魔力をためる。
『フェンスカウンター(反射障壁)。』
ぶあああん
カイギスの傷だらけの巨体に透明な壁が張る。光の槍は透明な壁に直撃すると進行方向が逆転して。俺とアイシャお嬢様に向かってくる。
ひゅーーん
くっ、この!
ギャアアア!!
「竜気掌!!。」
パアン
俺は竜の掌を差しだし。アイシャお嬢様の魔法だった光の槍をかきけす。
俺は険しい竜顔で鮮やかな薄目の金髪の令嬢と巨体の傷だらけの竜を睨む。
手も足も出ないとはこの事を言うのだろう。技も魔法もスキルさえも絶帝竜カイギスにとっては無力に等しい。
「では今度はこちらから参ります。」
カイギスの巨体の背に立つシャルローゼお嬢様は手に所持するコンパウンドボウのような弓を構え
俺達に狙いを定める。
ギギギィ
「ホーミングシュート(追尾連射)!!。」
ひゅッ
弦を手放すと無数の光の矢がアイシャお嬢様目掛けて襲ってくる。
まずい
俺は回避するために地上に降りようとする。
しかしシャルローゼが放った矢はアイシャお嬢様をターゲットに定めたように追尾してくる。
ちっ、追尾型かよ!。
俺はそのまま地上に降下した直前に右の竜の素手を強く地面に叩き込む。
ギャアアア!!
「竜地掌!!。」
ドガッ ガガガガガガガガ‼️
地面から営利な突起物の岩が盛り上がり。一帯が針地獄の防壁とかす。
無数の追尾する光の矢はアイシャお嬢様に目指して向かっていたが。防壁の役割を果たす針型の岩石に防がれる。
ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん
ガッガッガッガガガッッ
岩石の針地獄の防壁はシャルローゼお嬢様が放った無数の光の矢に完全に防げず。削りとらていく。
ガラ パラッパラッ
針地獄の防壁は跡形もなく削りとられ。俺はその岩石が崩れた衝撃により竜身が傷だらけだけになっていた。
「ライナ、治癒するね。ヒーリングチャージ(癒しの活力)。」
慌てたアイシャお嬢様は俺に光属性の治癒魔法をかける。
俺の緑の鱗の竜身が傷が癒える
ここまでの力の差があるとは。いやこれは最早力の差の問題ではない。あの絶帝竜カイギスの竜の巨体にダメージが入らないのだ。魔法もスキルも気の技さえも絶帝竜カイギスの絶対的な防御とスキルには全て無力である。はっきりいえば絶帝竜カイギスは強さによる最強ではなく。防御による最強である。それと乗り手であるシャルローゼお嬢様の弓の腕とアクロバティックな動きもあいまって攻守バランスがとれている。防御は竜で攻撃が騎竜乗りである。俺とアイシャお嬢様の場合は攻撃は俺でアイシャお嬢様は援護の形をとっている。俺自身が絶帝竜カイギスにダメージが入らなければ意味がない。アイシャお嬢様がシャルローゼお嬢様を攻撃できだらもっと戦法の幅も戦況も変わっていたかもしれないが··。
こうなったら····
俺は竜瞳の視線を戦闘を静観していた白銀竜プラリスナーチとシーア・メルギネットに向けた。ダメージが入らないなら。ダメージが入るかもしれない相手に向けるだけだ。愚かか無謀ととらえるかもしれない。なにせ世界最強に戦いをふっかけるのだ。返り討ちになる可能性だってある。それでもダメージが通らない相手よりはダメージ通りそうな相手を選ぶ。例えそれが世界最強でもだ!。
バァサッ!!
俺は翼を広げ世界最強の騎竜乗りと最強の竜種白銀竜向けて飛び立つ。
『お嬢様、どうやらライナ様はシーア様とプラリス様の元へ向かうつもりのようです。』
「そうですか。私達に攻撃が通らないことを危惧した行動でしょうけれど。それは浅はかです。私達はなるべく白銀竜には距離を取っていました。何故なら最強の竜種、白銀竜に関しては結して接近戦はしてはいけないのです。」
シャルローゼは重く唇を閉じる。
緑の鱗に覆われた竜であるノーマル種を冷めた眼差しで世界最強の騎竜乗りシーア・メルギネットは向ける
『シーア、おのノーマル種、こっちに来るよ。』
白銀竜は無垢な竜瞳の視線を初対面ではなかったノーマル種に向ける。
シーアの感情は冷めたように落ち着いていた。
「そうですか。絶帝竜カイギスに歯が断たないから此方にきましたか。プラリス対応してください。」
シーアは冷静に指示する。
『わかった。』
プラリスの白銀の鱗が灰銀色に発光する、
シーアははあと力の抜けたため息を吐く。
甲冑の腰の左右についた鞘に双剣を静かにおさめる。
「認めましょう。ノーマル種ライナ。確かに貴方は精霊を使役できるようです。この目で確めたのですから疑うようはありません。ですが····。」
ライナの右の竜の素手から赤い光の粒子が集まる。そのまま白銀竜の目の前でゆっくりとスローモーションのように振りかざされた。
ギャアああ
「竜炎掌!!。」
『銀煌楼(ぎんこうろう)』
ぶわあああ
突然白銀竜プラリスから鱗粉のように灰銀色に輝く光の粒子が放たれる。
な、何だ!?。
鱗粉のような灰銀色の粒子が放たれた途端アイシャお嬢様の歌声で集まった精霊達の活動が停止する。
ライナの火の精霊を纏った竜の素手の炎も消え。素手に練り込んでいた気も消失した。
「それでも神足る竜と比れば貴方はあまりにも····弱すぎる····。」
『銀氷攣(ぎんひょうれん)』
シャキンッ!!
ガッ
ギャハッ!!
「ライナっ!?。」
氷銀に輝く衝撃破がライナの腹部を貫く。
アイシャは悲痛の叫びにライナの緑の竜身はそのまま崩れる。白目をむきながら学園塀の敷地の外へとゆっくりとスローモーションのようにライナの竜の身体は地上へと落下していく。
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