第105話 それぞれの思惑

レース会場で魔法具の映像からレースの状況が映し出される。


『宝輝竜のスキルにより大分脱落者がでたようだ!。さあ、先頭を飛行するのは東方の令嬢アキナイ・マカランティーヌ。そして後方では後ろにつくように強豪の騎竜乗りエルフのシャルウィ・スタット・シラ・ストーム・ラングリッサーと小人族ルルクルリ・ローネムそしてシャービド族のロコが揃ってついていく!。』


わーーー!! わーーー!!


熱の入った実況に観客席から歓声がわき上がる。


ザラザラザラ


先頭を飛行する宝輝竜のスキルにより。後方の一部の騎竜乗りが小判に飛び付き。レースを放棄する。金目に欲のないロリ騎竜乗りと年若い幼い騎竜乗りだけが順調に飛行していた。


『あちゃ~、大分残りましやん。姐さん。』

「ホホ、良いではないですか。残りの騎竜乗りと騎竜は買収した強豪の三人の騎竜乗りに任せればよいですし。」


先頭を飛行する宝輝竜を追い抜こうとする他の騎竜乗りは買収に成功した三人の強豪の騎竜乗りによって倒されていた。ロリ杯には未成年に怪我をさせないようにと幼い騎竜乗りには防壁の魔法がかけられている。さらにロリ杯のルール上幼い子にトラウマを与えるような激しい攻撃は厳禁である。ロリ杯は未成年の騎竜乗りも参加することもあって騎竜乗り同士の戦闘は無い。

買収した強豪の騎竜乗りは幼い騎竜乗りに対しては騎竜を攻撃して軽い飛行不能させる位にあしらっている。成人した騎竜乗りに対しては容赦なく攻撃し飛行不能にしている。


「軽い仕事でルル。つまらないルル。」


シャービド族のロコは竜の背で不満をもらす。

シャービド族ロコが乗る騎竜はヒレをのついた魚のように泳ぎ飛行するエレメント種の清水竜であった。


『不満を漏らすものではありませんよ。ロコ。正直、私は反対でしたのですよ。レースの不正の片棒を担ぐような真似。族長が知ったら何と言うか····。』


優雅に泳ぐように飛行する清水竜のアクラが呟く。



「何を言うアクラ!。これは村の為だルル。村は森奥深いところで貧乏ルル。他の人間や種族に舐められないようにお金必要なのだ

ルル。」


ロコは栗色の獣耳をピンと立て小柄の身体で威張るように胸を張る。(ないが)


『ならば騎竜乗りとして稼げば良いでしょうに。このような姑息な真似して稼いだお金を貰ってもシャービド族は喜びませんよ。』

「ふふん、アクラは何も解っていないルル。お金は回るものだルル。お金に綺麗も汚いもないのだルル。あの西方の貴族の令嬢からさっき逢ったノーマル種を倒せば更にボーナス分の額もくれるという話だルル。ノーマル種を倒すだけで高い報酬が手にはいるのだから楽な仕事だルル。しかし残念なことにそのノーマル種が最後尾にいるルル。倒しにいけないルル。」


ロコは栗色の獣耳をが垂れ。つまらなそうにする。


『私も一目見ましたけど。ロコ、あのノーマル種はただ者ではない気がします。私の水竜の勘はそう言っています。』


エレメント種の清水竜は五感に優れていた。


「アクラ気にすぎだルル。所詮はノーマル種だルル。エレメント種より強くないルル」


ロコは自信満々に言葉を返す。

背に乗る小柄なシャービド族のロコはノーマル種のライナのことを完全に侮っていた。

···オパパイーヨ····

あれ?今一瞬変な竜声が聞こえたような···。

清水竜のアクラは細長い竜首を傾げる。




「········。」


小人族のルルクルリは宝輝竜を前にして口を閉ざしたまま後方から来る騎竜乗りを軽くあしらいながら飛行していた。


ジジジジ

ルルクルリが乗る騎竜、草虫竜は竜というよりは昆虫の姿をしていた。透明な虫羽根と網目状の巨大な目玉は主人であるルルクルリに愛嬌よくむける。

ジジジジ


「何、そんなに嫌ならやらなければ良かったのにって。仕方ない。ルルクルリ、マームのエサ代も稼がなくちゃならない。レースに不正するよりもルルクルリはマームの方が大事。大丈夫。」


ジジジジ

マームという名の草虫竜は自分に思いやりのある主人に最後まで心から尽くそうと心に決める。



「はあ~、全く折角の金ずるがまさか最後尾にいるなんて····。」


ロリエルフのシャルウィはアキナイとバトリシアの上品な対応とは裏腹に今はふてぶてしくだらしない姿であぐらをかいていた。


「そもそもノーマル種を倒せというのが間違いなのよ。ノーマル種が私達の飛行についていける分けないでしょうに!。」


小柄のエルフは少女らしからぬ脚を崩しながら愚痴を吐く。


『そう言われましてもそのノーマル種が最後尾にいるのでは仕方ないでしょうに。それよりもお嬢様、誰か見てるかもしれませんからもう少し上品な態度を。』

「はあ?誰も見ていないわよ。形式ばったお堅い社交辞令は肩が凝るのよ。」


シャルウィは左肩に手を添え。少女がやり得ない首を左右に曲げてコキコキと肩をならす仕草をする。

シャルウィの騎竜である妖精竜マティはそんな主人の様子に何といえない微妙な竜顔を浮かべる。


『そんなんだから万年独身なんですよ(ぼそ)。』

「ああ?何か言った?。」

『いえ、何でもありません。』


再びコキコキとシャルウィは両肩をならす。

オパパイーヨ‼️

ん?今一瞬何か変な竜語が聞こえたような。

何処からともなくオパパイーヨ‼️という意味未明な言葉が竜耳に流れ込んできた。

妖精竜のマティは不思議そうに竜首を傾げる。

ジジジジ


「どうかしたか?。マール。」


草虫竜マールは虫羽根をならす。


「変な声が聞こえる?。オパパイーヨ‼️と言っているって。」


ジジジジ

「別に聞こえないけど。マールは聴覚が良すぎるから遠くから聴こえたかも。オパパイーヨ‼️と言う意味もルルクルリよく解らない。でも何かとてもいい響き。リズム感のある心地よい言葉。」


小人族のルルクルリはオパパイーヨ‼️という言葉が何故か気に入った。


「つまらないわね。宝輝竜が潜在的に恐れるノーマル種をどんなものか見たかったのに。全然追ってくる気配がないわ。」

『姐さん。ほんま事実や。わい長年レースをやっとりますけど。あんな反則的な騎竜は初めてやわ!。』


宝輝竜のオワシはぶるぶる山吹色の鱗の身体を震わす。


「オワシの早とちりじゃないの?。宝輝竜でも竜を見る目も間違えることもあるわ。」


オキナイ・マカランティーヌはオワシの言っていることに疑い始める。


オパパイーヨ····オパパイーヨ···オパパイー·····オパパイーヨ····


あれ?何か····変な竜語が後ろから聞こえる····。

オワシは突然幻聴と思えるほどの連呼した言葉が後方から竜耳に入ってくる。オワシは恐る恐る山吹色の長首を後ろへと振り向く。


ギャああーー!!

「オパパイーヨ‼️」


ひゅん!!


「「「「何っ!?」」」」


オキナイと強豪三人の騎竜乗り含めて驚き、それは一瞬にして横切った。



『おおっと!最後尾にパトリシアが乗るノーマル種が一気に先頭に躍り出た!!。』


わーーーー!! わーーーー!!

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