第98話 勝利の逃避

バサッバサッ


俺は翼をはためかせゴール地点に着地する。


「勝者セシリア・サウザンド······。」


サウザンドの紋章の絵柄ついた旗を上げ。イーリスお嬢様は片言で決闘の勝者宣言をする。


キャ~~!! キャ~~!!

令嬢生徒達の歓声が沸き上がる。


「ライナ~!。」


キリネが笑顔で迎え入れる。


「あら?姉が妹のために頑張ったのに労い言葉もないのね。」


俺の背に座るキリネの姉であるセシリアお嬢様は拗ねてしまう。


「姉様には必要ないでしょう!。殆ど頑張ったのはライナだけなんだから。て言うかさっさとライナから降りてよ。」


キリネは我がままな少年のような振る舞いで姉であるセシリアに降りることを急かす。


「はいはい、せっかちねえ。」


セシリアは仕方なくライナの背から降りる。

相変わらずの姉妹仲である。


「るぅ~、ライナ!。」

『おめでとうございます。ライナさん。』


続いてルゥとロロさんも駆け寄り。勝利したことを笑顔で祝福する。


「ありがとございます。ロロさん。ルゥ。」


どうやらロロさんの怪我も大分よくなったようだ。


「待ちなさい!。」


祝福の空気の場がかん高い怒声で一気にかきけされる

っ!?。

その場にいたものは一瞬にして言葉を失い騒然となる。


何故なら俺の竜炎掌をもろに喰らったエリシャ・ハフバーレンの容姿が豹変するほど大きく変わっていたからだ。相棒のロード種跪伏竜のみつ子の騎竜は青い鱗の肌が少し黒焦げただけだったが。エリシャ・ハフバーレンの容姿は髪がチリチリパーマになっており。頭が完全にアフロである。


「あら?。イメチェンしたのですね。エリシャ・ハフバーレン。とってもお似合いですよ。」


セシリアお嬢様は上品な口調で見え見えのお世辞を言う。


「ふざけないで!。貴女の借りたノーマル種のせいで私の髪がこんなださい髪型になってしまったじゃいの!。どうしてくれるのですか!。」


エリシャ・ハフバーレンはアフロ頭でムキ~と癇癪を起こす。


アフロを舐めるなよ!。今の娘はしらないかもしれないけど。昔は女性がファッションにアフロを取り入れるほどブームになった時代があったんだぞ。この異世界でアフロ令嬢として名を連ねるかもしれないじゃないか!。

俺はそんな勝手な言い分を心の中で呻く。


「賠償してもらいます!。しかしセシリア・サウザンド、貴女には非はありません。その原因をつくったのはそのかりたノーマル種です!。ですからノーマル種の飼い主の令嬢に私の髪の賠償をさせますから。」


エリシャは堂々と胸を張る。

エリシャ・ハフバーレンはチリチリパーマのアフロ姿でそんな横暴で自分勝手でまるでモンスターペアレントのような言い分を晒す。

俺はそんなエリシャ・ハフバーレンの言葉に嫌々気げに竜顔を歪める。

はっきり言えば決闘で敗北した憂さ晴らしを家のアイシャお嬢様にさせたいだけである。この令嬢、とことん弱いもの虐めをする性格だなあ~。心入れ換えるどころか性格更に悪くなり悪化している。


全世界のアフロの人達に謝れ!。


「あら?そんなことをするなら決闘の権限を提示しますよ。」


セシリアは脅しともとれる言葉をエリシャに投げ掛ける。


「ど、どう意味よ。」


エリシャ・ハフバーレンは狼狽える。


「貴女の商会の利権を決闘の益として提示した。ならその貴女のハフバーレン家のコネを持つ商会の利権を手にした私がハフバーレン家の言う事を聞かないように言ったらどうなるでしょうか?。」


セシリアの虚の付くような言葉にエリシャ・ハフバーレンの顔色が一気に青ざめる。アフロ頭も一緒に青色になっているような気がする。


「マーヴェラス家に手を出そうものならサウザンドの権力を持って貴女の相手をしますが?。どう致しますか?。」


セシリアお嬢様の完全なる報復宣言にエリシャはガクッと力を抜けたようにぐったりと項垂れ膝をつく。

みつ子の騎竜の既に人化に戻り主人と同じように大人しくなっていた。

後にエリシャ・ハフバーレンという令嬢はこの世界で多大な財を築くこととなる。

ハフバーレン家では子々孫々全てが何故かアフロ頭となって生まれてくる奇病におそわれる。それはエリシャ・ハフバーレンがアフロ頭になった時から始まり。決闘で相手したセシリアが騎乗したノーマル種の呪いとして代々一族は口伝に伝えられ恐れおののいた。しかし、アフロ頭になったエリシャ・ハフバーレンにより。一族は多大な恩恵をもたらすこととなる。全ての稼業が成功を納め。商会との取引も上手くゆき。ハフバーレン家は重々満帆安泰となったのだ。それはエリシャ・ハフバーレンがアフロ頭になったのが原因ではないかと貴族の仲で囁かれていた。後に成功をおさめたエリシャ・ハフバーレンを貴族達からは敬愛と羨望を込めてアフロ令嬢として世界に名を轟かせたという。それはまた別の話で···。


『アフロ令嬢世界を跨ぐ。』


外伝別冊読んでね。(嘘)ちゃんちゃん


「らぁいなあー!。」


突然ゴール地点の祝福の場にドスと威圧を込めた声が飛び交う。

俺は恐る恐る声の主を振り向くと案の定そこにはアイシャお嬢様は立っていた。

眉間に紫波を寄せ。口をへの字に代わりそれはまさに仁王様の如く。


ひゅ~ ドシドシ! ドドドドドッッ!!


俺は即座に脱兎の如く竜の脚を動かしその場を逃げ出す。。


「らぁいなあ~!!。何故また逃げるの!?。」


後方からアイシャお嬢様が駆け出す足音と怒声が響く。


ドドドドドドド!!

ギャアガアギャアラギャガアガアギャア

「逃げていませんよ。トレーニングです!。」


俺は言い訳にならぬ言い訳をする。


「嘘こけ!。今度こそBoin走行が私より速い理由を聞かせてもらうからね!。」


ドドドドドドドドドドドド!!

俺は再びアイシャお嬢様と終わらない追いかけっこを繰り広げることとなった。



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