第66話 言いたいことは言え!
「そ、そんなこと!出来るわけないでしょ!。」
いつもすまし顔を決めていたパトリシア・ハーディルもアイシャお嬢様の決闘の益の条件に声を荒げ動揺する。
「それがライナを賭ける決闘の条件です。それ以外にありません。無理ならライナを決闘の賭けの対象にしません!。」
アイシャお嬢様はキッパリと断りをいれる。
「馬鹿馬鹿しい。そんなデメリットのある決闘受けるわけ無いじゃない!。負ければ私が収集した全ての騎竜が喪うのよ。ノーマル種一頭の為に全ての騎竜を喪うなんて割りに合わなさ過ぎるわ!。天秤にかけてもおかしいことよ!。」
パトリシアは小さな細い眉がつり上がるほど憤慨する。
確かにアイシャお嬢様の条件は無謀に思える。パトリシア・ハーディルが決闘に乗って来なければ意味がない。
「恐いんですか?。ライナに負けるのが?。」
アイシャお嬢様をずいと圧を込めた視線でパトリシアを挑発する。
アイシャお嬢様、何だか脅しをかけているみたいでちょっと怖い~。
俺はアイシャお嬢様のまだ見ぬ側面を目撃して少しショックを受ける。
「恐いとかそういことじゃないのよ!。割りに合わないと言っているの!。」
このままだとパトリシア・ハーディルが決闘を受けようとしなくなる。パールお嬢様の騎竜レイノリアを取り返すのが目的だが。今のアイシャお嬢様はそれだけじゃなく。奪われ囚われている騎竜達を解放するところまで考えているようだ。
「お嬢様····。」
「何よ!ナーティア。」
ナーティアが会話の途中に口を出されパトリシア小さな顔が不機嫌にしかめる。
「大丈夫で御座います。どんなことがあろう私が負けることはありませんから。」
曲がりくねった羊型の角と盲目ように閉じた瞳を持つナーティアは平然と冷淡に安心感を与えるようにパトリシアを静かに宥める。
椅子に腰掛け。小さな肩が上下するほど興奮していたパトリシアだがナーティアの冷静さを秘めた不敗宣言の言葉にゆっくりと息を整え落ち着きを取り戻す。
「そ、そうね······。そうだったわ。ナーティアならどんな騎竜にも負けないのよねえ。私としたことがみっともない醜態を晒してしまったわ。」
「いいえ······。」
ナーティアは丁寧に会釈する。
パトリシアお嬢様は調子を整え。ニッコリと小さなパープル色の薄紅に染まった唇が妖しく微笑む。
「良いでしょう。アイシャ・マーヴェラスその条件を飲みましょう。どうせ私の騎竜レア種黒眼竜ナーティアには誰も敵わないのだから。」
パトリシアは自信満々に強気に出る。
これ程自信を持つパトリシア・ハーディルの騎竜、レア種、黒眼竜ナーティア。魔眼を持ちのドラゴンであり。そして初めて対戦するレア種である。騎竜の力関係を順するならレア種、エンペラー種、ロード種、エレメント種の順の強さになる。だからといって種族によって強さが決まるというものでもない。しかし実質騎竜の頂点にいるのがレア種、(希少種)なのである。
レア種に白銀竜と呼ばれるドラゴン。竜種にとっては最強種とされているものがいる。他にもレア種の中に最強の一角と呼ばれるような騎竜がいるかもしれないが。俺はまだそういった奴らと対峙したことはない。
パトリシアは膝の上に落ちたパールお嬢様のドラグネスグローブの手袋を拾い。そのままパールお嬢様目掛けて投げ付ける。
バッ
BO!! IN!!
パールお嬢様の成長しまくったはち切れんばかりのボリューム感溢れる大きな膨らみの胸にドラグネスグローブの手袋が当たり。胸の弾力により大きく跳ね返る。
手袋はポトリと地面に落ちる。
だから何故胸に当てる!?。
俺は微妙な竜顔を浮かべる。
決闘で手袋を投げ付けるのは解るけど。胸に当てる必要性が何処にあるのだろう?。もしかして?サービスシーンですか?。お約束ですか?。狙ってやっているんですか?。俺は決闘の手袋の投げつける作法に対して物申したい気持ちにかられる。
「それでは決闘の誓約書を書きましょう。アイシャ・マーヴェラスとパールティ・メルドリンの決闘の内容と益の報酬。約束を反古されないように誓約の魔法印も施すけれど宜しいかしら?。」
「ええ、構いません。」
アイシャお嬢様は毅然とした態度で返事を返す。
「そう、それでは場所変えて正式な誓約書を書きましょう。ああ今日は何て日よりでしょう。」
パトリシアお嬢様は満開な笑みを浮かべ。椅子から飛び降り有頂天な気分で温室を出ようとする。既に勝った気分でいる。
「アイシャ、本当にいいの?。」
パールお嬢様は心配そうに問いかける。
「大丈夫よパール。ライナならどんな騎竜でも敗けないわ!。魔眼を使うドラゴンにだって敗けない!。」
アイシャお嬢様は自信満々に言う。
アイシャお嬢様とパールお嬢様は一緒に温室を出ていく。
俺は一頭残るように温室に止まっていた。
温室には収集された騎竜達とレイノリアと何故かパトリシアお嬢様の騎竜であるナーティアが残っており。瞼を閉じながらじっと此方を凝視している。
《長文竜言語変換》
「ライナ、どうして?。」
レイノリアは疑問に問いかける。
内容は何故助けにきたのかだろうが·····。
「アイシャお嬢様の意志だよ。俺の意志じゃない。」
そう、レイノリアの救出を決めたのは俺ではなく主人であるアイシャお嬢様である。親友のパールお嬢様の為にレイノリアを助けにきたのだ。俺が決断した訳じゃない。
「でも、アイシャ様を止めることもできたでしょうに。」
「ああなってしまったアイシャお嬢様を止めることなんてできないよ。アイシャお嬢様は誰かを見捨てるような性格していると思うか?。レイノリアも解るだろう?。」
「でも敗けたらアイシャお嬢様からパトリシアお嬢様に奪われるのよ!貴方が!。お嬢様は私だけじゃなく。アイシャお嬢様のことでも嘆き悲しむわ。」
レイノリアは透き通る青色が潤む。
レイノリアの内気な性格にしてはハキハキとはっきり会話が出来ていた。
「敗けると決まった訳じゃない。」
「貴方では私に勝てませんよ。」
突然その場にいた黒眼竜ナーティアが口を挟む。
「私の魔眼は強力です。貴方は確かに強い。だが、オスとしての本能には逆らえない。確かに精神力が強い騎竜なら私の魔眼はあまり効果はありません。だけど観察したところ貴方に隙がある。私自身、レア種としてそれほど強くはありませんが。それでもここにいる騎竜達全てを私が倒した騎竜で御座います。」
ナーティアは閉じた瞳で冷淡に発する。
グルルル
力抜けたように項垂れ飾られるように並ぶ騎竜達はもの悲しげに唸り声を上げる。
「そうか······、だが!、敗けると決まった訳じゃない!。あんたが何と言おう俺はナーティア、あんたを倒し。アイシャお嬢様とパールお嬢様を勝利に導く。」
「無駄なことを······。」
ナーティアは深いため息を吐く。
「それよりもナーティア、あんたはそれでいいのか?。」
ぴく
ライナの意味不明な問いに眉が寄る
「何がですか?。」
「あんたの主人パトリシア・ハーディルのことだ。あんたはあんたの主人がしている行いを止めようとは思わないのか?。」
「何故止めなければならないのです?。私はお嬢様の為なら何だって出来ます。貴方を倒すことだって。」
「それが本当にあんたの本心か?。あの我が儘お嬢様マーガレット・ベルジェインの騎竜の至高竜メリンだって自分の主人であるマーガレットお嬢様に口答えはするぞ。それなのにあんたは一切しない。」
「主人に口答えする騎竜が何処におりますか?。我々騎竜は主人とともにあり。主人の為に一生遣えるのです。主人に対して反論するなど烏滸がましい。」
「主人と供にあるのが騎竜なら、主人を導くのも騎竜の務めだろう。悪いことは悪い。いけないことはいけないと教えるのも騎竜の務めではないのか!?。」
「貴方に何が解る。私はお嬢様の為ならこの命捧げても構わない!。」
「そういうことを言っているんじゃない!。あんたの本心に言っているんだ。俺はなあ。言いたいことがあるのに言わない奴が一番大嫌いなんだよ!。特にあんたのように建前で本心を隠す奴がなあ!!。」
ピキッ
何かがキレる音がした。
ゴゴゴと地鳴りのようなものが響く。
ナーティアの閉じた瞼がうっすらと大きく瞳が開かれる。
開かれた竜瞳は吸い込まれるほど暗くどす黒く。中にある鋭い縦線の瞳孔は周囲に鳥肌を与えるほど冷たく凍てつく眼光を放っている。
「本心をさらけだしたな。表情に出ているぞ。」
俺の竜口がニヤリと勝ち誇っなような笑みをつくる。
「どうやら貴方を完膚なきまでに倒す必要性があるようですね。」
ナーティアの唇から圧を込めた冷たい声を発っせられる。
「なら俺はあんたの性根を叩き直すことにしよう。」
「ら、ライナ····。」
ゴオオオオオ
互いの竜は強くにらみ合い。猛々しき闘志の炎をめぐらす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます