第54話 竜破掌

ロード種弩王竜ハウドとエレメント種地土竜モルスはいったいどんな能力を秘めた騎竜なのだろうか?。地土竜モルスに関しては地土竜というからには大地、土系統のスキルや魔法をつかうのだろうと予想できる。ロード種弩王竜ハウド関しては全然見当がつかない。痴漢、セクハラ紛いなことをしてきたロード種だけにただのセクハラドラゴンではないことは確かだ。


「ライナ、いくよ!。」

ガア


俺はアイシャお嬢様の指示に先手必勝にまず弩王竜ハウドに攻撃を仕掛ける。もう片方の地土竜モルスは半分眠たそうに気だるそうにしており。全く戦闘するというかやる気がなかった。緑森竜ロロは背に乗る主人のルゥを気遣い暫し静観している。まだ戦闘する意欲がでないようだ。


俺は取り敢えず突っ込んで突撃する。Boin走行はレースで使う加速飛行だが。戦闘ではあまり使わない。騎竜同士の戦闘はレースで経験はあるが。普通の訓練である真向勝負のような戦闘はまだ経験はない。レース中の騎竜は逃げる戦う二択の選択を選びとりレースを行うのだ。ゴール目指して逃げるのもよし!。競い合う騎竜に戦闘を行い蹴落としてゴールを目指すのもよし!。或いは逃げながら上手く戦闘を盛りこませて相手の騎竜の飛行を阻害させてそのままゴールと戦法もできる。

騎竜レースの戦闘は幅が広いのである。

上位種なら尚更その特異な能力で相手の騎竜のレースを妨害したり攻撃したりする。 

ひゅん

俺はハウドとそれに乗るカリスお嬢様に接近し翼をばたつかせ突風を放つ。

バサッ


スッ

ハウドは俺が放った鎌鼬のような突風をなんなく避ける。

ん?狙いを外したか?。


バサッバサッバサッ

俺は二連三連と翼を扇ぎ突風を起こす。しかし翼から放たれた風を何の茂も無くハウドは避ける。

これは!?俺が狙いを外したんじゃない。ハウドは読んで避けているっ!?。

ハウドは俺の翼を起こす突風を予め知っているような動きで避けていた。

まさか弩王竜ハウドのロード種の能力は予知能力か!?。炎竜の獄炎噴の翼、至高竜メリンのビームやレーザーなど世界観が崩れそうなスキル持ちがいたから予知能力を持つ騎竜がいたとしてもおかしくはない。寧ろ予知能力を持つ騎竜の方が異世界らしい。ジェット機のように噴射するような飛行やビームやレーザーを出す騎竜などファンタジーよりも寧ろSFよりである。


「ライナ、これどうしたら言い?。何か攻撃が全然当たらない。不利じゃないけれど優勢でもない気がする。」


鋭い勘を持つアイシャお嬢様もこの騎竜の戦い方はおかしいと感付いたようだ。

予知能力持ちの騎竜の対処方法などしらない。予知能力を持ってたとしてもハウドの攻撃魔法やスキルを使っていないから決定打にもなっていない。だがこのままの膠着状態が続けばジリ貧になる。


「ハウド、どうやらライナの攻撃は回避できるみたいね。エンペラー種の攻撃をかきけしてしまう特殊な力を持つノーマル種だから警戒していたけど。」


弩王竜ハウドの背に栗色のポニーテールを揺らしカリスはホッと安堵する。


『問題ないです。ノーマル種のライナは素手によって魔法や攻撃をかきけしていた。この事から推察するに接近を許さなければ問題ない筈です。それに私の弩王竜のスキル能力フォーキャスト・カルキュレイション(計算予測)は魔法攻撃でなければスキル攻撃でもない。ライナの動きを計算し。予測することによって回避可能なスキル能力です。観察したところライナは肉弾、物理攻撃を主体とした騎竜のようです。ノーマル種なのですから当たり前なのですが。接近戦を得意とし。遠距離戦はほぼ皆無でしょう。もし遠距離攻撃ができても私のスキル能力フォーキャスト・カルキュレイション(計算予測)があれば回避可能です。』


ハウドは冷静に分析し坦々と説明を述べる。


「そうね。後は攻撃ね。ハウドの攻撃が通用すればいいけど。」

『問題ないでしょう。何故なら私の攻撃は魔法攻撃でも物理攻撃でもない。只の音、声音ですから·····。』


弩王竜ハウドはロード種の中で予知能力の近いフォーキャスト・カルキュレイションというスキル能力を持つが。戦闘能力に関しては高い方ではない。寧ろロード種の中でも断トツ低い方に位置する。エレメント種の炎竜やエンペラー種の至高竜のような決定打を持つ必殺技を持ち合わせていないのだ。ロード種の弩王竜は戦闘では音による攻撃を得意とする。特殊な声音を放ち相手を混乱、錯乱させるのだ。だからといってこの攻撃自体に相手を倒しきる力はなく。あくまで混乱錯乱させる程度である。故に弩王竜というロード種は回避能力は高いが。攻撃能力が低いドラゴンなのである。しかし回避能力が高く攻撃能力が低いドラゴンだからと言って全体的に戦闘能力が低いわけではないのだ。騎竜の強さは種によって様々である。魔法もスキルも多種多様である。


「ハウド!貴女の声音をアイシャ達に放って!。」


背に乗るカリスの指示に弩王竜ハウドはくちばしをガバッと大きく広げた。


何だ!?ブレスでも吐く気か?。

俺は弩王竜ハウド動作に警戒感を強める。


『ボイス・ハウリング(咆哮の鳴音)』


ふぁああああああああああああああ!!


キィーーーーーーーーーーーーン!


突然ハウドが竜のくちばしを広げた途端耳にキィ〰️〰️ンとつんざく音が響く。

それは例えるなら間違ってスイッチのついたマイクを地面に落っことして反響する不快な音に似ていた。


「何このこの音?耳がキィ~ンとする。」


俺の背に乗るアイシャは嫌々に耳を塞ぐ。



「ルゥ~、耳が痛い!!。」


ロロの背に乗っていたルゥは嫌々に泣き声をあげる。辛そうに白い獣耳を両手で塞いでいる。シャービト族は聴覚が優れているからそれが仇となっていた。


『ふわぁああ!びっくりした〰️。ハウドの声音で目覚めちゃったよ。』


眠たそうに気だるそうにしていた地土竜モルスはどうやらハウドの放つ声音で眠気が失せ。目覚めたようである。


「モルス、やっと起きたのね!。」


アーニャはパアッと明るくなる。


ふぁああああああああ

くっ!

俺は耳を塞げないので耳につんざく声音がもろに竜耳に届く。肉体的にダメージはないが精神面でかなりのダメージをくらう。

このままでは敗ける·····。

予知能力の秘めた回避能力と精神面に直にダメージを与えてくる高周波をだす声音の弩王竜モルスの攻撃に俺は成す術はなかった。

攻撃も回避されるし。

竜気掌も不快な音をかきけす力はない。何としても弩王竜ハウドに何かしらの攻撃をくわえて声音を止めさせないと。

俺はレッドモンドさんの修業の日々を思い返す。


      《竜言語変換》


「いいか、ライナ、ノーマル種の弱点は特記するスキルも魔法もないことだ。強いて言うなら遠距離攻撃がないと言える。」

「レッドモンドさんが前に見せた遠くから岩を壊す技を使うんですか?。」

「察しがいいな。そうだ。気は魔力と違い目に見えないものだ。魔力は魔眼や魔法具とかを使い魔力量をはかることができるが。この世界の住人は気の概念を知らないから感じたとしても視野に認知できるものでもない。感じても何か凄い感覚がある程度だ。それを上手く使う。気を飛ばし。見えない何かにぶつかるという錯覚を与える。そうすれば遠距離攻撃できないノーマル種のドラゴンではなく。得体の知れない未知なる力を使うドラゴンに相手は錯覚するだろう。でもまあ気を飛ばしてもぴんぴんしているドラゴンや。気が効かない上位種もこの世界ではごまんといるがなあ。」


レッドモンドさんの竜のくちばしが思い出したように苦笑をもらす。


「その時はどうしたらいいんですか?。」

「その時がきたらその時だな。気を効かない相手がもしお前の前に立ちはだかったなら俺はこれしかか言えん。諦めるな!と。」


ぴくぴく

レッドモンド筋肉の胸板をぴくぴくさせ俺に教え伝える。

俺はふっと我にかえる。

相手が気の効かない相手でないこと願うしかないか···。

俺は三本の鉤爪の竜の手を広げ弩王竜ハウドの前で身構えた。

竜の掌に気を練り込み瞑想し神経統一する。


ギャああ嗚呼ああーー嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚ああーーーーーーーーーーーーーー。


『ん?何だ!!。何をしている。』


突然ライナの意味不明な動作にハウドは困惑する。


練り込んだ気を鉤爪の竜の掌を遠くに離れているハウド目がけてかざした。


ギャああーー!!

「竜破掌!!。」


ライナの見えない何かが弩王竜ハウド目掛けて放たれる。







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