第43話 レェンドゥラ(貸借竜)
帰りのホームルームに教壇に立つカーネギー教官は令嬢生徒達に今後の学園の校則や新米の騎竜乗りである令嬢生徒達にレース出場に関する説明する。
「お前達はアルナビス騎竜女学園の生徒として一人前の騎竜乗りとして学ぶのだが。お前達はこの学園が学問全てとおもわれているようだがそれは違うぞ。騎竜乗りとはレースに出てこそ騎竜乗りだ。お前達がこの学園に学ぶのは騎竜乗りノウハウであり実戦ではない。そこは勘違いするな。ここの騎竜都市ドラスヴェニアにもレースは何度か開催されている。学園から許可証貰えれば自主的に出場することも可能だ。それだけではない。ここではない他の地区や他の国のレースにも国外レースの出場許可証を申請すれば出場できる。お前達が一人前の騎竜乗りを目指すならレース出場して戦績を積むことを覚えよ!。解ったか!。」
「「「イエス!マーム!。」」」
「宜しい!。」
令嬢生徒達が一斉に返事をしカーネギー教官は満足そうに頷く。
「それとこの学園には特別な校則が存在する。このアルナビス騎竜女学園に入学した時点でお前達の騎竜はこの学園の共有財産となり。よってレェンドゥラ(貸借竜)することが可能である。」
ざわざわ
レェンドゥラ(貸借竜)という聞き慣れない言葉に令嬢生徒達は困惑する。
「?、カーネギー教官。レェンドゥラとはなんですか?。」
一人の令嬢生徒が手を上げ質問をする。
「良い質問だ。レェンドゥラ(貸借竜)とは主に騎竜の貸し借りを指す。お前達には相棒の騎竜がいるだろうが。それを他の貴族の者同士で一時的にお金を払うことで騎竜を借したり借したり借りたりできる校則だ。お前達に唯一無二の相棒であろうが。優れた騎竜乗りになるためには他の騎竜にも乗りこなすことも必要だ。金銭に関してはその騎竜の戦績に見合った価値と後は交渉する相手の騎竜の能力で相場が決まる。自分の相棒を他の誰かに借すことに抵抗があるかもしれないが。自らの騎竜乗りとして成長するために騎竜を貸したり借りたりすることも良い経験なのだ。お前達がレェンドゥラ(貸借竜)するのもしないのも自由だ。学園では強制はしない。だが一流の騎竜乗りを目指すならやっておいても損はない。まあ、金銭面に無理があるのなら仕方無いだろうが····。ではこれにて帰りのホームルームは解散とする。」
ガラガラ
クラス内の令嬢生徒達は帰りの支度を始める。
「てなことが帰りのホームルームであったんだよライナ。」
ギャガア ギャアラギャガアギャアラギャガアギャギャラギャ
「ほほう、それは何とも素晴らしいシステムで御座いますね。」
俺はフリフリと藁の寝床で尻尾を揺らす。
アイシャお嬢様は授業を終え。俺の寝床である来客用竜舎の藁の寝床に様子を見にてきていた。
レェンドゥラ(貸借竜)という学園の特別な校則システムアイシャお嬢様から教えて貰う。それはつまり騎竜契約すれば他の令嬢に股がって貰い。胸を押し付けて貰える機会が増えるということですな。何とも素晴らしい良いシステムです。それだけじゃない。他の貴族の令嬢と金銭契約して騎竜を貸すというのだから財政難であるマーヴェラス家に潤いを与えることにも繋がる。アイシャお嬢様はマーヴェラス家の復興にお金も稼げるし。俺は俺で他の貴族の令嬢に背中に股がって貰え。胸を押し付けて貰える機会が増えるのだから。俺とアイシャお嬢様は共にウインウインである。
「ライナ、どうする?。レェンドゥラ(貸借竜)。私は正直他の娘にライナを乗せるのは複雑な気分なんだけど····。」
アイシャお嬢様は何処か乗り気でない様子であった。
ギャアラギャガアギャア!ギャアラギャガアギャア!ギャアラギャガアギャアラギャガアガアギャアラギャアギャア!ギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアガアギャア!
「何を言うのですかっ!。アイシャお嬢様!。マーヴェラス家の騎竜として売り込むチャンスではありませんか!。レース優勝賞金でもマーヴェラス家の財政は良くなったと言えません!。ここは沢山の令嬢生徒達と契約して稼ぎまくりましょう!。マーヴェラス家の復興の為に!!(+他の令嬢生徒達の二つの柔らかな胸の膨らみを背中に押し付けて貰う為に!。)」
俺は力強く粘り強く唸り声を上げ熱弁する。
「そうだね····。私の我儘でマーヴェラス家の復興を果たすことなんてできないよね。解った!。私レェンドゥラ(貸借竜)を受けたら承諾するよ。」
ギャギャアガア!
「その意気です!。」
俺はウンウンと竜首を頷く。
アイシャお嬢様はがぜんやる気を出してくれた。ただ心配があるとすれば魔法も扱えぬ。スキルもない。そんなただのノーマル種にアルナビス騎竜女学園の令嬢生徒達はレェンドゥラ(貸借竜)してくれるだろうか?。
決闘では勝ったとはいえ。令嬢生徒達がレース出場にわざわざノーマル種をレェンドゥラ(貸借竜)して出場しないのではないかと不安が過る。体面を気にする貴族だからこそ余計に下等と言われるノーマル種をレェンドゥラ(貸借竜)することが無いんではないかと思ってしまう。
俺は他の令嬢生徒が俺をレェンドゥラ(貸借竜)してくれますようにと来客用竜舎内の藁の寝床で切に願った。
学園長室
「学園長はハーブティーです。」
コト
眼鏡をかけ凛とした振る舞いでティーカップをデスクに置く。
「ありがとございます。教頭。」
紫波帯びたにこやかな女性はティーカップを持ち一口含み皿に置く。
「それにしても昨日の決闘は凄かったですね。」
学園長は昨日の決闘の一部始終を魔法具の水晶球で観戦していた。学園内の庭がマーガレット・ベルジェインの騎竜によって無残に穴だらけになったことも認知している。
「ええ、マーガレット・ベルジェインのおかげで学園内の庭が無残に荒れ果ててしまいましたけどね。」
教頭はため息を吐きながら皮肉を返す。
「ベルジェイン侯爵が全面的に庭の復旧に協力すると言ってきたではありませんか。腕の良い庭術師も来てくれて前より綺麗な庭に仕上がるみたいですよ。娘であるマーガレット・ベルジェインにもしっかり叱っておくと言っておりましたし。」
「はあ~、それに関しては感謝しています。しかし二学年はともかく三学年のクレームには頭を悩ませましたよ。言っていることが正論なんですから反論もできません。何処の学園内の庭でレースをやるものがありますか!って。三学年令嬢生徒達を宥めるのも大変でしたよ。」
学園内のレースが学園長によって許可されたと知った三学年令嬢生徒達が学園長室前で猛抗議を喰らったのだ。
弁明するのにも時間がかかり。
特にブチキレたようにヒステリック状態の風紀委員長であるセラン・マカダインを抑えるのが大変であった。
「昔は私も普通に学園内の校庭で決闘のレースをよくやったもんなんですけどねえ。時代の流れなんですかねえ。」
けろっとした顔で学園長は昔の思い出すかのようにしみじみと思い出にふける。
「学園長の場合はそのせいで学園側からも生徒側からもクレームの嵐だったでしょうに···。」
教頭は眼鏡をかけたジト目の冷たい視線を学園長に投げかける。
「ただ、私はレースの戦績が良かったのはてっきりアイシャ・マーヴェラスの救世の騎竜乗りの力と思っていました。」
「いえ、あれは紛れもなくアイシャ・マーヴェラスの騎竜、ノーマル種のライナの力ですよ。」
ただ学園長はライナが扱った魔法や技を打ち消す力に見覚えがあった。昔の相棒もよくそんな特殊な技を持っていた。竜が本来持つスキルとも魔法とも違う独特な力である。その力はどちらかというと精霊、自然現象を引き落こす力に近い。どういう原理なのか相棒は最後まで教えてはくれなかった。よく相棒は秘密の一つや二つ持つことが女性に持てる秘訣だと意味不明な言葉を投げ掛けて誤魔化していた。
あの、ライナというノーマル種。もしかしたら私の相棒と関係があるのかもしれませんね。
学園長はふとそう思いが過る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます