第38話 上位種の対策

ちゃ

皿に添えられた充分に煮込んだソースにかけられた羊肉を上手にナイフに切り分け。上品な手つきで口に含む。

口に含んだ羊肉を何度もよく噛み締めて飲み込む。

アルビナスの制服着た可憐な金髪の令嬢は皿に添えられた肉料理を全て綺麗に平らげる。


ちゃ

学食内の階段をあがった特別席で両手に持った可憐な金髪の令嬢はナイフとフォークをテーブルにそっと置き。口許をナプキンで拭き取る。


「今日の羊肉のソテーとっても美味しいかったわ。カイギス。」


目の前の皿に用意された料理を褒め。金髪を靡かせる可憐な表情がニッコリと微笑む。


「お褒めに頂き光栄で御座います。お嬢様。」


黒のタキシードを着た白髪と白髭が整った初老の紳士が深くお辞儀をする。お嬢様専属のセバスチャンと思われたがタキシード着た初老の紳士の白髪の頭には装飾が施されたような立派な二本の角が生えていた。


「本当に、カイギスの手料理は美味しいわ。騎竜を辞めて家の専属の料理人として雇いたいくらいよ。」


金髪の可憐な令嬢の隣に水色髪を髪止めで止め。眼鏡をかけた令嬢が座っていた。


「ありがとう御座います。セランお嬢様。」

「本当、モグモグ。カイギスの料理いつ食べても飽きないよね。モグモグ、何皿も食べれるよ。モグモグ。」


水色髪に髪止めしている令嬢セランの向かい合わせの席で何皿も重ねて料理を平らげ続ける白緑色の髪をした少年が座っていた。少年も普通と違い。頭に角というよりは左右の耳上に鳥の片翼のようなものが生えていた。耳上についている片翼は頭と同化したようについており。表情の哀楽でパタパタと耳上の片翼が開いたり閉じたりする。


「ウィンミー!、しゃべりながら食事をするとは何事ですか!。お行儀悪いですよ!。」


セランは激しく隣で食事するウィンミーという耳が片翼の形をしてる少年を叱りつける。


「ねえ、あれ見てっ!!。」


突然一人の一階学食にいた令嬢生徒が窓の外に指を指す。


「何なのあれ?。」

「塀の上空がぴかぴか光ってますわ。」

「本当ですね。一体何でしょう?。」


ざわ ざわ

学食で食事していた一階の令嬢の生徒達が窓際に集まり出し騒ぎだす。

ガタッ!


「静かにしない!。ここは健全たる気品、礼節、社交性を重んじる淑女達が集まるアルビナス騎竜女学園の学食ですよ!。三学年の令嬢足るもの静かに食事も出来ないのですかっ!?。」


食事を楽しんでいたセランはスッと立ち上がり。学食の窓際で騒ぎだす令嬢生徒達を激しく叱りつける。


「し、しかしセラン風紀委員長。窓の外の塀の上空がおかしいんです!。」


窓際の集まる令嬢生徒一人が前に出て進言する。


「おかしい?。」


風紀委員長でもあるセランは水色の眉を寄せ困惑する。


「何故ですの!。何故全然当たらないのですの!。」


煌びやかなダイヤモンド原石のように輝く竜の背に乗るマーガレットはキィ~と呻き。悔しげに口許が歪む。


「メリン!、もう自棄糞ですわ!。ありったけのフラッシュゾイ・レイ(閃光の柱)をあのノーマル種にぶちこみなさい!。」

『し、しかしお嬢様そんなことしたら学園敷地内の整備された庭が本当に破壊されてしまいます。しかもここは三学年の学舎がある場所です。一学年のいる場所ならともかく他の学年のいる敷地の庭を破壊したら問題になるかと····。』


メリンは悪い予感しかしなかった。確かにカーネギー教官は競争による騎竜の飛行妨害行為は認可されている。しかしここまでのことをしでかしたなら後が物凄く怖い気がする。

メリンの竜の背中に凍てつくほどの冷たい悪寒が走る。


「構わないといっているのですわ!。我がベルジェイン家の財力を駆使すればこんな学園の庭など直ぐに復旧しますわ!。」


そういう問題じゃないんですけど·····。

メリンの煌びやかな竜顔が複雑な微妙な表情に変わる。


「さっさと放つのですわ!。」

『もう、もうどうなっても知りませんからねえ!。』


メリンの煌びやかなダイヤモンド原石の鱗は全身一斉に輝きだす。


ピカアッ!

ビ ビ ビ ビビィィーーーーーーーーーーーーーーー!

メリンの竜の図体から一斉に光の線が放たれる。


ギャアガッ!?

「マジかよっ!?」


俺の後方に飛行するメリンが放つレーザー、ビームが流星群のような数で無数に俺に向かってきていた。


ギャアガアギャア!!ギャアラギャガア

「アイシャお嬢様!!。しっかり掴まってください!。ここから荒療治で行きます!。」

「うん、」


むにゅう

アイシャお嬢様は深く俺の背中に密着するとそれと同時にアイシャお嬢様の弾力がある柔らかな膨らみが強く押し付けられる。


ギャアアアアア

俺は竜の雄叫びを上げ全力全身に突き進んだ。


ひゅん

ドン ドン ドン ドン ドン ドン

何百本の追ってくる光の線を俺は翼を回避し。時には身体を回転ずらしながら避けまくる。


ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん

ドォッ! ドォッ! ドォッ ドォン


避けて行き場を無くした光の線がそのまま学園の敷地に直撃し爆煙が上がる。

メリンの放つ流星群のような数の光線が学園の庭を穴だらけにしていく。


「何ですかあっ!?これはあっーーーっ!!。」


その光景を目撃したセランは学食の窓際で絶叫を上がる。


「レースをしているのですか?。しかし何故····?。」


学食の窓際まで降りてきた金髪の可憐な令嬢は眉を寄せ困惑する。


「それよりも驚きなのですが。私が窓際から遠目で拝見しましたが。競争している騎竜はどうやらエンペラー種とノーマル種のようです。確認しましたが背にアルビナス騎竜女学園の令嬢生徒もおります。」


隣で遠目が効く角を生やす初老の紳士カイギスは競争の状況を説明をする。


「ノーマル種?ノーマル種がエンペラー種とレースをしているのですか?。」


金髪の可憐な令嬢は眉を寄せ驚きの表情を浮かべる。


「そんなことはどうでもいいのです!。ああ···、アルビナス騎竜女学園が誇る美しい庭の敷地が見るも無惨に破壊されていく。何処のどいつです!。こんな真っ昼間に学園の敷地内で競争しているのわ!。」


セランは目くじらを立て憤慨する。

学食窓際から塀の木々が薙ぎ倒され。草花が茶色の土がはみ出すほど穴だらけになっていく。


ひゅんひゅん

ビビィーーーーーーー!!

ひゅんひゅんひゅん


ライナの後方上から流れるように無数の光線が流れる。


サッ パン パン パン

ライナは気の練り込んだ鉤爪の両手で放たれた無数の光の線を合気道をするかの如く流し。時には目にも止まらぬカンフーのような素早い手捌きで全ていなした。

メリンの糸状に伸びた光の線は全てライナによって流し掻き消される。

ドォンッ! ドォンッ

流して落ちた光線は爆音と爆煙をあがる。


レッドモンドさんの修業がここでいかされるとはなあ···。

俺はレッドモンドさんから受けた修業を思い返す。


     《竜言語変換》


「いいか、上位種が使うスキルや魔法は多彩だ。魔法やスキルといっても単発で終わるものは殆んどと言っていいほどない。だから気を練り込んだ素手で全て魔法も受けきるのも至難の技だ。」

「どうすれば良いのですか?。連続、広範囲の魔法やスキルは避けきれないと思うのですが。」


俺の竜の眉間が困ったように紫波が寄る。

魔法や技が単発とは限らない。上位であるならそれほど高度な連続、広範囲の攻撃を仕掛けてくる可能性の方が高い。それならばレッドモンドさんの気の練り込んだ竜の素手で全ての技や魔法を打ち消すのは不可能ではないだろうか?。


「その為に反応速度を上げる。反射神経と反応速度を磨き。いついかなるときも相手の上位種の騎竜に対応できるようにする。その為にも今ライナが覚えられなければならないのは主に空手と合気道、そしてカンフーの格闘技だ!。」


レッドモンドさんの発言に俺の口許が引きつく。


「空手、合気道、カンフーってレッドモンドさんあんた本当に何者っ!?。」


選手を鍛える優秀なトレーナーと聞いているがどう見ても空手、合気道、カンフーなど格闘技は関係ないと思うんだが。


「若い頃筋肉を鍛える為に色んな格闘技をかじったものだよ。おかげでこんなに筋肉に鍛えあがったんだかなあ。」


ぴくぴく ぴくぴく

レッドモンドの筋肉の竜の胸板をぴくぴくさせる。

いや転生しているから関係ないでしょ。

俺は心の中でそう突っ込む。


「だからライナ、上位種の魔法、スキルは全て気の練り込んだ素手で対処することを考えろ。後はどうにかなる。まあ、どうしようもないときもあるがその時はその時だ。今は目の前のことに集中しろ。レースはどう転ぶか解らないそれがレースだ!。」


レッドモンドさんのアドバイスを思いだし俺は筋肉のついた翼のスピードを強める。


後方から多数の光線が放たれる中ライナの竜瞳の視界に正面校舎建物のグランドが見えてきた。



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