第30話 クラス紹介
アイシャは教室に入り席につく。席には貴族の家名が記され。席順はくじ引きでも多数決でもなく学園側が決めるものであった。アイシャの席は後ろから二番目の窓際の席であった。アイシャお嬢様は窓際の席につく。
「お隣ね。宜しく。」
「宜しく!。」
隣席にレイン・ルポンタージュが座る。その隣に赤いドレスを着た紅い角を生やした美女ガーネットが座る。どうやら貴族の席の隣にその貴族の騎竜の隣席を設けているようだ。それを知ったアイシャは少し寂しく感じた。ライナが人化できたら一緒の席で一緒に授業を受けられたのに。よく周りを見れば他の貴族のクラスメイトの席に角を生やすメイド姿、執事姿が見受けられる。
自分の席には騎竜用の隣席はない。ただ一席窓際にぽつんとあるだけだ。アイシャはそれがとても寂しく疎外感を覚える。
「何故!、レイン・ルポンタージュがアイシャの隣なんですか!。やり直しを要求します!。」
突然の怒鳴り声にアイシャは我にかえる。
気づいたら隣の席のレインがパールに睨まれて困った顔をしていた。
そういえばパールと一緒の席じゃない。よくみるとパールの名札は教壇がある真ん中の前の席にあった。
「仕方ないでしょう。学園側が決めたことなんだから私にあたらないでよ。」
「即、学園側に抗議してきます!。」
親友パールは本気で抗議するつもりだ。
「まあまあ、パール落ち着いて···。」
私は興奮するパールを宥める。
隣席のガーネットと目の前に立つレイノリアは縦線の瞳孔が開きお互い睨んでいた。
「ライナの席と一緒じゃなくて残念でしたね。」
「まあ、ライナはノーマル種で人化できぬからなあ。解りきったことだ。だがいつでもライナとは休み時間や昼休みに逢えにゆける。そしたらまたお互い燃え上がる関係を築くだけだ。」
「それを私が許すとでも···。」
ウフフフフ ハハハハ
お互い満面な笑顔だったが瞳は完全に嗤っていなかった。
ガラガラ
「令嬢共、席に着きなさい!」
乱暴な口ぶりで教室の扉から学園の教師とおもわれる女性が入ってくる。
教室内でおしゃべりしていた生徒も人化している騎竜達も即黙り各々の席に座る。
女教師はきっちりと身だしなみと鋭い眼光を放った強面の表情をした教師だった。雰囲気はどことなく家のメイドのカーラに似ているけど。その鋭さを帯びた覇気のようなものはカーラと違い。どちらかと言えば幾千の戦場を潜り抜けた女戦士のようである。
女教師は教室の教壇に立つ。
ガラガラ
「遅くなりました!。」
「ふぇええ、遅くなったです。」
ポニーテールとピンクの髪の少女の生徒があわただしく教室の扉を開け入ってくる。
女教師は鋭い眼光を入ってきた二人の女子生徒に向けて放つ。
「登校初日に遅刻とはいい度胸だなあ?。」
「すみません!。」
「すみません。」
ペコリ ふわ
二人は揃って頭を下げる。
ピンクの髪の少女にいたっては溢れんばかりの胸が浮かぶように揺れる。
「今日は初登校ということで許すが次やったらきついシゴキがあると知れ!。」
「はい!」
「ふぇええ、ごめんなさい。」
ポニーテールとピンク髪の生徒は謝罪し急いで席につく。角を生やした二人のメイド姿の騎竜も一緒に席につく。
ガラガラ
「申し訳ありません。遅くなりました。」
「ルゥ~。」
再び教室の扉が開き。そこから角を生やした青柳色の髪をした女性とアルナビス騎竜女学園専用の制服を着た白毛の肌と獣耳を持つ獣の少女が入ってくる。
「またか····。」
女教師はため息吐き。再び遅刻した生徒に向けてひと睨みする。
「申し訳ありません。ルゥ様が少し駄々こねてしまい。私はきつく言い聞かせますので。どうか····。」
「ルゥ~~。ごめんなさい。」
ルゥは白い獣耳を閉じて低く項垂れ。反省の態度をとる。それを女教師はじーっと見つめる。
じーーーー
「ルゥ~~~。」
じーーーー
「ルゥ~~~。」
「許すっ!!。」
❬え~~~~~~~~!!❭
クラス全員が一斉に絶句する。
女教師の強面の顔が少し緩くなっているような気がした。
ルゥとロロは用意された席につく。
「これで全員だな。」
女教師は教室内の生徒を確認する。
ガラガラ
「遅くなりました。」
「·······。」
女教師は再び深いため息を吐く。
ジロリと何食わぬ顔で入ってくるパープル色の髪をした黒ドレスを着た小柄の少女に向ける。
「パトリシア・ハーディル、遅刻だぞ。」
「あら、私は学年1位で成績が優秀な生徒の筈ですが?。」
パトリシアの小さなパープル色に染める小さな唇が悪戯げに微笑む。
「優秀な生徒なら出席日数が足りなくてテストも受けず。毎年留年する問題児じゃないだろうに。さっさと学年を上がって卒業してくれ。お前の顔など二度と観たくない!。」
女教師は嫌そうに席につくことを促すとパトリシアは自分の席に向かう。後に続くように角を生やし盲目のように閉じたメイドもついていく。
「お久しぶりね。パールティ・メルドリン。」
「ええ、お久しぶり。パトリシア・ハーディル。」
「·······。」
すれ違いに二人は挨拶を交わすがパールは警戒満ちた眼差しをパトリシアにむける。
「これで皆揃ったな。」
出席簿に生徒の人数を確認する。
「リストルアネーゼとキリネ・サウザンドがいないか。リストルアネーゼは仕方ないとして。キリネ・サウザンド、あいつも卒業する気あるのか。」
女教師は1学年で留年し続ける問題児に深いため息を吐く。
「では自己紹介しよう。私はお前達令嬢を一年間一人前の騎竜乗り仕立てあげる教官を務めさせて貰うカーネリー・アヴィレンスだ。私をカーネリー教官と呼ぶように。そしてお前達は裕福な令嬢生活していたようだが。この学園ではそれは一切通用しない!。特別扱いするつもりないないので肝に命じておけ
。そして返事はイエス!マーム!だ。返事は!?。」
「「「イエス!マーム!!。」」」
教室内の生徒が揃って返事をする。
「宜しい!。では今日は顔見せ、自己紹介をして貰う。名前と自分が乗る騎竜の竜種、騎竜の名前の答えよ!。本格的な授業は明日からだ。左から席の順に名乗り上げよ!。ではマーガレット・ベルジェイン!。」
カーネリー教官の点呼にスッと左の女子生徒が立ち上がる
「では最初は私からですわね。」
点呼に呼ばれた女子生徒は堂々と胸を張る。隣席に角を生やすメイドの少女も一緒に立ち上がる。
耳からゴージャスなロールにくるまれた金髪の女の子だった。突き出された二つの膨らみ自己紹介を自慢するかのようにがぷるんと揺れ。自己主張をする。
「私(わたくし)は高貴な家系ベルジェイン家の一人娘マーガレット・ベルジェインですわ。以後お見知りおきよ。」
マーガレットは耳から流れる金髪ロールを高飛車如くかきあげる。
「そして私の高貴な騎竜にして。最強の種にして最高。最もエレガントな種、エンペラー種の至高竜メリンですわ!。」
「ど、どうもメリンです···。」
メリンというメイド姿をした人化のエンペラー種はもじもじした感じで主人と違い謙虚な感じである。
「よし!では次。」
クラスの生徒達が次々に自分の名前と自分の騎竜を紹介を始める。しかしアイシャはその自己紹介に気まずさを感じていた。他の生徒は堂々と自分の人化した騎竜を紹介するのに自分の隣の席にライナはいない。ライナはノーマル種で人化はできない。自分の騎竜であるノーマル種を紹介することに躊躇いはない。ライナはただのノーマル種ではない。上位種の竜を負かす程の特別なノーマル種である。自分がノーマル種を騎竜にしていることに劣等感は一切感じない。寧ろ誇りに思っている。
「では、次アイシャ・マーヴェラス。」
「はい!。」
カーネリー教官に呼ばれ。アイシャ・マーヴェラスは立ち上がる。隣に人化していない騎竜のいない一人のお嬢様をクラスメイト達は皆奇異な眼差しを向けてくる。
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