第7話 勝利のおっぱい

ビュッ

ノーマル種ルイードが翼を広げ突っ込んでくる。それを俺は直前で避ける。ルイードは直ぐに方向転換し。竜の爪を俺を目掛けて突き立てる。俺は鋭利な竜の爪を避け。竜の脚をくるりと回り。回し蹴りを喰らわす。

ドゴッ

ルイードは懐に俺の竜の踵をのけ反る。


   《竜言語変換》


「くっ、貴族のノーマル種にしてはやるじゃねえか。」


ルイードは牙のくちばしから流れた血を竜の手の甲で拭う。


「まあな····。」


俺だってただ背中におっぱいを押し付けられる為だけの日常にいたわけじゃない。前の前世の知識と竜のレースでの妨害の対策、対処もちゃんと考えていた。レースの騎竜として絶え間ない努力もしてきたのだ。それも全てまだ見ぬ豊かな二つの胸の膨らみの感触をこの竜の背中に味わうためである。


「ふん、貴族はお高く止まっている奴ばかりだと思っていたが。お前達は違うらしい。」

「家は貧乏で没落の貴族だからな。お高く止まる暇もないよ。」

「だが、それでも貴族に舐められるのは我慢ならん。上位種の奴等に俺らノーマル種ははなっから勝てないと踏んでいるのだからなあ。」


ノーマル種ルイードは口惜しそうに牙のくちばしを軋ませる。


「あんた貴族の上位者の竜に何か言われたのか?。」


ここまで貴族や貴族の竜にこだわるのだから何かあったのだろう。


「ああ、そうだ。あいつらは俺がノーマル種だから棄権しろとほざきやがったんだ!。勝てないから出場しても無意味、無駄となあ。」


ルイードは機嫌悪そうにグルルと唸り声を上げる。


「あいつらは俺らノーマル種など眼中にない。目の前に飛ぶハエにしか思っていない。」

「だから俺とアイシャお嬢様にたいして八つ当たりをしようとしたのか?。」

「ああ····。」


ライナの言葉にルイードの竜瞳は鋭く睨み付ける。


「だってそうだろう?。貴族が気に食わないのは解る。だがあんたは俺が貴族のノーマル種だからけしかけたんだろう?。俺が貴族のノーマル種であるから勝てると踏んだ。だからアイシャお嬢様と俺に戦いを挑んだ。それは俺が上位種ではなくただのノーマル種の竜だから。だからあんたは俺に戦いを挑んだ。違うか?。」

「貴様(てめえ)ー。何が言いたい!。」


ルイードの緑の竜の顔から血管が起き上がり物凄い形相へと変わる。


「あんたは貴族に貴族の上位種に復讐したいんじゃない。没落した貴族とそのノーマル種に憂さ晴らししたいだけだ!。」

「てめえー!!。」


グルルルル

ルイードの竜の口から怒気を秘めた低い唸り声が響く。

どうやら図星のようである。


「あんたが貴族に憂さ晴らししたいのは勝手だ。だが俺は違う。俺は上位種、全ての種を越えて頂点になる。俺はアイシャお嬢様を立派な貴族にする。そしては俺は全ての女性、全て貴族の騎竜乗り、そして全ての上位種の竜のメスに背中に抱きついて貰うつもりだ。」

「お前は本当に馬鹿か!。人間の娘や貴族は知らんが、上位種の竜、しかも竜のメスに背中に抱きつかせて貰うなんてできるわけがないだろうが!。あいつらは無駄にプライドが高い。身体を触れることさえも嫌がる。それをつがいでもないものが許す分けないだろうが!。」


ルイードは激しく激昂する。

俺は上位種のメスの竜に背中に抱きついて貰うことを考えていた。上位種は人間に変身できる。そして人間に変身した竜はとても美くしく。プロポーションも抜群で胸もでかい。背中に抱きついて貰わないなんて勿体なさすぎる。確かに俺は上位種の竜のメスに背中に抱きついて貰ったことなどはまだない。パールお嬢様の上位種ロード種の騎竜レイノリアにもまだ一度も背中に抱きついて貰えていないのだ。レイノリアの場合はプライドよりも羞恥心が邪魔しているような気がする。だからこそ俺は誓った。俺はレースで上位種の竜のメスに優勝し。認めて貰ってから背中に抱きついて貰おうと。貴族の騎竜乗りが騎竜にするのはメスの比率が高い。だから騎竜の名門校に入れば貴族の娘+騎竜のメスもついてくるのだ。俺は種族にはこだらない。エルフだろうが獸人だろうがドワーフや竜だろうが。そこに二つの豊かなおっぱいがあるのなら背中に抱きついて貰いたいのだ。


「あんたが何と言おうと俺は上位種のメスの竜(人間の姿)に背中に抱きついて貰う。その為に俺はレースで上位種の竜に優勝する。」

「てめえーはそこまでして上位種の竜に勝つのか!?。ノーマル種はけっして上位種の竜に勝てはしないんだよ!!。」


どうやらノーマル種のルイードは最初から上位種の竜達に勝つことを諦めているようだ。


「だからと言って諦めるつもりなど毛頭ない。」

「てめえーは何故そこまで·····。」


ルイードはあまりの目の前にいるノーマル種の執念深さに気圧される。


「それは目の前に二つ偉大な山があるから。それと····。」


ライナは緑の翼を大きく広げ爬虫類の瞳の瞳孔が開き眼光を放つ。


「俺が根っからの男(オス)だからだっ!!。」


「·······」

「·······」


二匹の竜の間に一瞬沈黙が流れる。


「·····どうやら俺はてめえーを見誤っていたようだ。ここまでオスの本能に忠実な竜は初めてだよ。なるほど全ての上位種のメスの竜に種付けしたいとはなあ····。」


ルイードの長首が何度も頷き感心する。

あれれ~?何か意味が全然伝わっていないんですけど?。

緑色の竜の額から汗が流れ顔をしかめる。

俺は純粋に抱きついて貰いたいだけで。上位種のメス竜に種付けしたいとは一言も言ってないんだけど。ていうかメス竜の種付けってどういうプレイだよ。そんな高等で難易度の高いプレイ俺無理だよ。俺が竜の姿でメスドラゴンに交尾するとるところを想像してみた。ぞぞぞぞ〰️俺の背中が激しく身の毛がよだつ。俺は竜に転生したけど。竜のまま他の竜と種付けなど考えていない。人間であることは捨てたけど人間の心は捨てていないのだ。現に俺は人間のおっぱいに執着している。メスの竜の姿で欲情しないし。種付けつけしたいとは思わない。寧ろ竜の姿のままのメス竜に種付けしてしまったら俺は俺の男の尊厳が喪う気がする。特に人間の部分が。ドラゴンのまま種付けしたいなどと。ケモナーでも難易度は高くて誰もやりたいと思わないだろう。


「だがなライナ。」


ルイードは初めて俺の名を呼んだ。


「それは俺を倒さなきゃ意味がない。俺を倒せない程度じゃ。上位種のメスドラゴンに種付けもままならないぞ。」


だから種付けは考えてないって。

俺は微妙な竜顔を浮かべる。

ノーマル種のルイードにあらぬ誤解を与えてしまったようだ。


「なら押し通すまでだ!。」

「そうか、なら最後の決着をつけようれ。」

「ああ。」


双方の竜が翼を広げ身構える。

二人の騎竜乗りも振り落とされないようにドラグネスグローブ嵌めた掌を背中にあて身を低くし密着する。


ガアああ

ギャアアア


ドゴン

互いのクロスカウンターが決まる。


一際竜の頬に深くめり込んだ。ノーマル種のルイードはゆっくりとマンゴスチンの大樹の真下に落ちていく。真下には安全面に魔方陣が張られ。クッションになっており。騎竜や騎竜乗りがおちても大丈夫なつくりになっていた。


「これが男の本能に忠実になったオス(漢)の力か···。へっ、全て上位種のメス竜を倒し。立派な竿師になれよ。ライナ····。」


ルイードは満足な竜の笑みを浮かべ。騎竜乗りマーナと一緒に捨て台詞を残しておちていく。


ギャアガあ····

「ならねえよ····。」


ライナの緑の竜の顔が微妙な顔を浮かべ見送る。


ライナは緑の翼を広げマンゴスチン大樹のゴール地点に降り立つ。


わーーーー! わーーーー!


果樹園の観客の歓声が響く。


「ライナ、やったね!。」


アイシャお嬢様は嬉しそうに俺の背中を抱き締める。

ガア



『マンゴスチン杯優勝者はアイシャ・マーヴェラスに決まりました。』


わーー わーー


ゴール地点であるマンゴスチンの大樹に歓声が沸き上がる。

俺は無事マンゴスチン杯を優勝することができた。


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