第40話 大義
ーー 鹿児島県南端山脈地帯上空 飛空宮殿『デビルキャッスル』東塔艦橋 レナード・フォースター準男爵 ーー
『副司令、精霊連隊風水中隊より定時報告。風の精霊シルフによる警戒網に敵艦隊反応なしとのことです』
「ご苦労。引き続き警戒を頼むと伝えてくれ」
『了解』
私は艦橋中央にある司令官席から通信手に指示をしたあと、正面の戦術モニターに再び視線を移した。
沖縄の我が準男爵家の艦も合流を終え陣形は整ったが……まさかこのような陣形を取ることになるとはな。
現在男爵軍の飛空艦隊は旗艦デビルキャッスルを高度500mに置き、その下に第一艦隊と第二艦隊を配置している。さらには各艦隊の側面を重巡洋艦3隻が守っている。
これは奇襲に備え三重の魔力障壁を展開できるデビルキャッスルと、同じく魔力障壁を展開できる重巡洋艦が艦隊の盾となる布陣だ。
ロンドメルが攻めてくるなら、間違いなく艦隊を最初に狙ってくる。それは帝国本土への侵攻で証明している。それでも念のため精霊連隊の宵闇の谷忍軍とギルド隊員により、本拠地である桜島周辺の住民は古代ダンジョンへ避難させている。移民の獣人たちも山奥の避難場所に移動中だ。
南ニホン総督のオキタもニホン人の領民をまとめ、警察に万が一の敵兵上陸に備えさせている。
オキナワの領民もそうだが、このニホン人というのは非常に従順で統治しやすい。これほどおとなしい民族から、アクツ様のような苛烈な方が誕生するとは不思議なものだ。普段おとなしいがゆえの反動なのかもしれないな。
「警戒網はちゃんと機能しているようね。それにしてもコウも考えたわよね。確かにシルフなら、ただ視認できないだけの艦なら見つけることができるわ」
「はい。艦隊の高度も低く保たせており、現れる場所も限定しておりますので見つけやすいかと」
私は後方のテーブルの横に設置してあるソファーに座り、コーヒーを飲みながらモニターを見ているエスティナ様へとそう答えた。彼女の隣ではシーナ殿とオリビア殿が、忙しそうにギルドや情報局員らと通信のやり取りをしている。リズ殿だけは縛られて口を布で塞がれ、向かいのソファーで寝かされているが……彼女は地上軍に合流しようとしていたからな。言っても聞かない彼女をエスティナ様たちが取り押さえ、そのまま放置されている。
まあリズ殿のことは触れない方がいいだろう。艦長のイーナ少佐は大笑いして見ているが、刺激しないで欲しいものだ。
それよりも家令であるエスティナ様だ。彼女はアクツ様の代理として、現在アクツ男爵家と軍の最上位に位置する。幸い軍のことは全て私に任せてくれているが、アクツ様と常に連絡を取り合っていることから彼女の言葉には細心の注意を払って耳を傾けなければならない。今回の防衛陣形も姿を消すことができる敵艦隊への対処法も、彼女を通してアクツ様から指示を受けたものだ。
しかし最初に彼女からアクツ様の指示を聞いた時は驚いた。まさかロンドメル軍が隠者の結界のような物と、光学迷彩を艦隊に装備しているとはな。これではレーダーに映らず姿も見えないはずだ。光学迷彩についてはよく知らなかったので出雲大佐が詳しく教えてくれたが、その彼でさえまさか艦を覆うほどの物を作っていたとはと驚いていた。
それをアクツ様は見破り、風精霊のシルフを常時広範囲に飛ばして索敵させるように指示をした。姿を消せても船体そのものが消えるわけではない。近くに行く必要があるが、精霊であれば視覚情報には惑わされず見つけることができるだろう。それに艦の魔力も完全に隠蔽できているわけではないと聞く。これも精霊であれば見逃さないだろう。
その存在を発見できさえすれば、現在水精霊のエルフたちにより作成している特殊な液体をウンディーネにより船体に塗布する。これは魔石の粉末を混ぜた粘着性のある液体だ。ウンディーネにより船体に塗布すれば魔導レーダーに映るようになる。
まさにエルフが多くいるこの領地ならではの対処法だな。
「ふふっ、エルフのみんなは張り切ってるわ。貸した吸魔の短剣で魔力を回復しながら、50人ずつ3交代でシルフを飛ばすことになってるしきっと見つけ出してくれると思うわ」
「魔導レーダーに映りさえすれば対処は可能です。アクツ様が戻られるまで被害を最小限に抑えることができるでしょう」
「そうよね。さすがに無傷ってわけにもいかないわよね。コウがロンドメルを倒すまで来なければいいのだけど」
「それは無いでしょう。アクツ様がいないと知れば、エスティナ様や領民を人質に取ろうと攻めてくるのは間違いありません。それが貴族の常套手段ですから」
敵が強いのならば一族を狙う。帝国の貴族がアクツ様が留守のこのチャンスを逃すはずがない。
だがアクツ様がメレスロス様の後を追っていなくとも、いずれロンドメルは攻めてきただろう。あのロンドメルがアクツ様を生かしておくとは考えられない。その時にはロンドメルは皇帝となり、全ての貴族をまとめあげているはずだ。そうなれば全方位から大量の姿を消す艦隊により攻められていた可能性がある。欧州と帝国の複数の大規模基地を一夜にして壊滅させたほどの数の艦隊だ。我々とアクツ様で全てに対処できるとは思えない。恐らく領地全体に被害が及ぶだろう。
その時にアクツ様は、たった一人でこのキュウシュウ各地を飛び回り迎撃することになる。そうなれば男爵軍艦隊の守りも薄くなり多くの艦を失うだろう。
領民を見捨てれば艦隊を守ることはできよう。普通の貴族であればそうする。しかしアクツ様は見捨てないだろう。領民を見捨てられないアクツ様は甘いといえばそれまでだが、その甘さで敵対した貴族の配下であった私と一族が救われている以上何も言えない。
いずれにしろロンドメルに攻められるのは早いか遅いかの違いだ。ならばロンドメルが皇帝になる前に討ちにいく方がいい。だがアクツ様の絶対的な力を知っているロンドメルが、黙って討たれるとは思えない。アクツ様が確実にいないことがわかれば、必ずこの領地に攻めてこよう。そのためにこのニホンの近くに艦隊を忍ばせているはずだ。アクツ様は帝国にとって最大の脅威だ。それくらいの保険くらいは掛けているだろう。
「エスティナ様。アクツ様がゲートキーをお持ちとはいえ、戦闘中の状態からメレスロス様を連れ戻るには時間が掛かると思われます。その間この艦は敵の集中砲火を受けることになるでしょう。ダンジョンへ避難していただきたいのですが……」
「イヤよ。この領でコウの次に強い私たちが、仲間を置いて安全な場所に逃げるなんてできるわけないじゃない」
「しかしエスティナ様に何かあれば……」
私は死んでもいい。息子が家督を継ぐ。そしてアクツ様は殉職した私の一族を厚遇してくれるだろう。あの方はそういうお方だ。しかしエスティナ様らを死なせたとあれば話は別だ。それは副司令の私の責任であり、恋人を失ったアクツ様が怒りと絶望により私の一族を許さない可能性もある。それだけは避けなければならない。
「大丈夫よ。この女神の聖域があるから。これがあればたとえこの艦が墜ちても、艦橋のあるこの塔にいる人間は傷ひとつ負わないわ」
「女神の聖域? それは魔道具ですか? 失礼します。『鑑定』…………なっ!? 」
私はエスティナ様が収納の指輪から取り出した正方形の箱を鑑定し驚愕した。
それはそうだ。あらゆる攻撃から半径20m以内にいる者を6時間も守る魔道具など聞いたことがない。まさかこのような魔道具が存在するとは……これまで私が知らなかったことから、恐らくこれは【冥】の古代ダンジョンで手に入れた物なのだろう。
なるほど。アクツ様がエスティナ様たちを置いていくはずだ。この魔道具があればアクツ様が戻るまで彼女たちの安全は保証される。
「そういうこと。私もフォースターさんも、ここにいるみんなも死ぬことはないわ。艦が保たないと思ったら私が下に降りてこの魔道具を発動するわ。貴方はその時に艦内のクルーを迅速にこの塔に集めてちょうだい」
「ハッ! 」
「ヤンヘルさんにナルースもいるんでしょ? 」
ガタッ
シャッ!
「「ここに! 」」
「……あなた達もこの塔から離れないこと。いいわね? 」
「「御意! 奥方様をお守りいたします」」
「ならいいわ。あと天井から落ちてきた埃を掃除していってちょうだい。コーヒーを入れなおさないといけないじゃない、もう! 」
「「……ぎょ、御意」」
エスティナ様に叱られたヤンヘルとナルース夫妻は、収納の指輪から箒とちりとりを取り出し慣れた手つきで掃除をし天井裏へと戻っていった。
まったくこの夫婦は何度同じことをすれば気が済むのか……
それから30分ほど経過しただろうか。通信手が突然立ち上がり私に向けて叫んだ。
『風水中隊が南西120km高度1万5千mの位置にて、姿を消している艦を発見しました! その数3! 現在当該エリアに全シルフとウンディーネを向かわせているとのことです! 』
「やはり来たかっ! 全艦魔力障壁を張りつつ迎撃用意! 全航空機発進準備! 地上部隊にも対空砲の準備をさせよ! 」
通信手の報告に私は各所に指示を行った。レーダーにはウンディーネらしき帯状の魔力の塊が、地上から南西の上空へと向かって行くのが映し出されていた。
ウンディーネが到達するまで20分というところか。それまで耐えねばならんな。
『了解! 』
「エスティナ様はアクツ様に連絡をお願いします」
「やっぱりコウの不在を狙ってきたのね。メレスには悪いけど敵討ちはもう少し待ってもらうしかないわね。わかったわ、コウに連絡する」
「お願いします」
あとはアクツ様が戻るまでこの地を守り切るのみ。
『膨大な魔力反応が突然現れたにゃ! 敵艦の砲撃にゃ! 』
「全艦回避行動! イーナ少佐! 」
私は観測班の報告に、即座に全艦へ回避行動を取るよう指示をした。そしてこの艦のことはイーナ少佐へ任せるという思いを込めて彼女の名を呼んだ。
「あいよ! デビルキャッスル急速上昇! 艦隊の盾になりな! 安心おし! この悪魔城は墜ちないよ! なんたって魔王様の居城なんだからねぇ! 」
『了解! 急速上昇! 』
『上部結界に4発被弾! 第一障壁は破られましたが第二障壁にて防御成功! 第一障壁再展開します! 』
「魔石はいくらでもあるんだ! どんどん使いな! 」
4隻の艦の主砲と思われる砲撃を受けても耐えられるとはな。さすが皇帝の乗艦用に造られた戦艦だ。
『ウンディーネが敵艦隊がいると思われる空域に到達! 新たにシルフにより4隻の艦を発見! 魔石の粉末を塗布していきます! 』
「各艦隊照準を合わせろ! ウンディーネが退避した後に砲撃! 」
『了解! 精霊連隊へウンディーネの退避を指示! 各艦砲撃用意! 』
レーダーには次々と敵艦の姿が映し出されていく。そこには7隻の戦艦と巡洋艦らしき船影が映し出されていた。
主砲が固まって着弾したことから密集してやってきているはずだ。それなのに未だにシルフは7隻しか発見できていない。これはつまり奇襲ということで小艦隊でやって来たということだろう。恐らく10隻かそこらの艦隊の可能性がある。
奇襲を見破ったいま、男爵軍で十分対処できる数だ。ならば次はこちらの番だ。姿が見えないと安心している敵へ集中砲火を浴びせてやろう。
ーー テルミナ帝国 南部 旧コビール侯爵領北部 山岳地帯 反乱軍司令官 グリード ーー
「失礼しやす」
「イナンか。全員乗車準備は完了したか? 」
俺はテントに入ってきた狐人族のイナンへと、出撃準備の状況を確認した。
イナンには装甲車と輸送トラックなど、300両からなる車両への乗車準備を軍に行うよう指示を任せている。
「へい……いつでも乗り込めやす」
「そうか。各車両がけん引する荷台に8時間も乗っているのは辛いだろうが、辛抱するように言ってくれ」
「へい……ですがリーダー、その必要は無さそうですぜ? 」
「ん? それはどういうこ……誰だお前? 」
俺がイナンの言葉を訝しむと、イナンは不敵な笑みを浮かべた。その今まで見たことのない表情と、突然低くなった声に違和感を覚えた俺は、目の前にいる男が俺の知る男ではないことを感じ席から立ち上がり剣を抜いた。
テントにいた周囲の者は、俺のとった行動にざわついている。
「フフフ……グリードよ、拙者だ」
「なっ!? ハルロス……か!? 」
俺は突然イナンの姿がブレ、2年前に貴族への復讐を共にした仲間が現れたことに驚きつつも剣を下ろした。
なぜイナンがハルロスに? なんだ? どうなっているのだ?
「今は半蔵と名乗っている。これは思い浮かべた者の姿になれるという、幻身のネックレスというダンジョンアクセサリーの効果だ。声だけは変えられないがな。そこは忍びの技によりカバーした。安心するがいい。イナンは物置で眠っておる」
「姿を変えられるアクセサリーだと!? そんなものが……ハルロスよ、何のためにそれを使いここに? 」
姿を変えられるアイテムがあるなど信じられないが、現に目の前でイナンがハルロスに変身したのをこの目で見た。ならば存在するのだろう。ダンジョンには時折信じられない効果のアイテムが見つかるものだ。
それはそれで驚きだが、俺はなぜそこまでしてハルロスが俺の前に現れたのか気になった。姿など変えなくとも、顔見知りでアクツさんの所で親衛隊をしているこの男を俺が拒絶するはずはないというのに。
「半蔵だ。なに、殺気立っておったのでな。無用ないさかいを避けるためだ。それよりも至急西へ向かって欲しいのだ」
「西へ? ハルロ「半蔵だ」……ハンゾーよ、俺たちは東のロンドメル公爵領にある結界の塔を襲撃するつもりだ。西には用が無い」
「先ほどお屋形様がご不在の男爵領へ、目に見えぬ艦隊により襲撃を受けたとの連絡があった。そしてそれの1時間前にオズボード公爵領に潜伏している草より、オズボード軍が男爵領に向け艦隊を向かわせる準備をしているとの情報が入った。そのことから恐らくオズボードはロンドメルについたと我らは断定した。グリードらにはその艦隊の阻止または、引き返さざるを得ないよう公爵領都の襲撃を頼みたい。エルフの森から男爵領との往復に使っている飛空艦を3隻呼び寄せた。それに乗り急ぎオズボード領近くまで向かって欲しいのだ。車両はマジックバッグと収納の指輪に入るだけ入れるゆえ安心するがいい」
「なんだと!? お屋形様というのはアクツさんのことか? アクツさんが不在の男爵領にオズボードが……」
まさかこのタイミングでオズボードがアクツさんの領地に攻めるとは……
どうすればいいのだ……ロンドメルの領都を攻め、一族を捕らえ結界の塔を占拠することにより獣人の自治を得るつもりだった。そしてゆくゆくは獣人の国をと。しかし大恩あるアクツさんの領地が危機に瀕している。
アクツさんがいないなら公爵クラスの艦隊を相手に勝てるわけがない。数が圧倒的に違う。そうなればライガンとかつての仲間や、あの土地に避難した同胞がオズボード艦隊により殲滅させられるかもしれない。
「何を悩んでいる。ロンドメルの領都を制圧したとして、皇帝となり我々を再び奴隷にしようとするような男が交渉に乗るとでも本気で思っていたわけではあるまい」
「ぐっ……それは……」
確かにあの虐殺公が交渉に乗るかどうかは賭けだった。ロンドメルは結界の塔と一族を捨ててでも、俺たちを滅ぼす選択をする可能性もある。しかし皇帝を倒された以上、これしか俺たちには方法がなかった。いや、そう思おうとしていた。建国だの自治だのと言いながら俺たちはただ貴族に反抗し、獣人の力を思い知らせたかっただけなのかもしれない。違うな……ただ大切な人を失った悲しみの八つ当たりをしたかっただけだな。
「グリードよ。拙者も恋人を失った身だ。貴様の気持ちがわかるからこそ、これまで貴様のやることを見守ってきた。だがもういい加減前に進め。貴様がいくら暴れようが恋人は戻って来ぬ。大切な者を失う悲しみを知ったのならば、その悲しみを経験する者が出ないように動くのだ。それしか前に進む方法はないのだ。拙者は復讐を成し遂げた後、そうして前へと進んだ。我らが前に進めるよう導いてくださったお屋形様に恩を返せ。なにより日本にいる仲間を救うのだ。さすれば獣人の未来は開かれよう。お屋形様に全て託すのだ」
「ハルロ「半蔵だ」……ハンゾー……」
大切な人を失った悲しみを知る者は、その悲しみが繰り返されないよう動けか……
ゼナ……俺は……俺は……
「皆聞いてくれ! 俺たち獣人を奴隷から解放してくれたアクツさんが、オズボード公爵の軍によって危機に瀕している! アクツ男爵領にオズボードの本隊が攻め込もうとしているのだ! 男爵領には多くの同胞がいる! それも俺たちが送り出した女子供たちだ! 俺は同胞が殺されるのを黙って見ていることはできない! なにより恩人が危機に陥っているのを見て見ぬ振りなどできはしない! 俺たちはこれよりオズボード公爵領に向かう! そこで暴れてオズボード艦隊の出撃を阻止する! 頼む! みんなついてきてくれ! 頼む! 」
俺はテントの入口を開け、車両の前で整列する同胞たちへと向かい俺についてきてくれるよう訴えた。
獣人の未来のためといって軍を起こしておきながら、獣人を見捨てることなどできない。なにより恩人を見捨てれば、あの世でゼナにどれほど叱られるかわかったものではない。
《アクツ男爵領が……》
《ニホンには俺の女房子供がいるんだ! 》
《俺の妹もいる! 》
《俺のお袋も……》
《おいっ! 俺たちを奴隷から解放してくれた人を見捨てることなんてできるのか!? 》
《そんな不義理ができるわけねえだろ! 》
《そうだ! 俺たち獣人は恩知らずなんかじゃねえ! 》
《行くぞ! 俺は行く! この命を懸けてオズボード艦隊の出撃を阻止してみせる! 》
《どうせ死ぬつもりだったんだ。同胞を救って英雄になってやる! 》
《グリード! 俺は行くぞ! 恩を返しに! 同胞を救いに! 》
「皆……ならば我ら獣人反乱軍……いや、獣人救世軍はこれよりオズボード公爵領へと向かう! 敵はロンドメルにあらず! オズボードだ! 全軍西へ! 」
《《《オオオオオオ! 》》》
俺の号令に仲間たちは怒声をあげて車両に乗り込んだ。
やはり俺たちは獣人だ。家族と仲間を大切にし、そして受けた恩を忘れはしない。そのためならば命を懸けることができる。
「良い選択だ。この選択がここにいる者たちの未来を明るくするだろう」
「生き残ろうなんて思ってなどいない。俺たちは獣人の礎になる。アクツさんには獣人のことを頼むと伝えてくれ。皆が帝国の理不尽にさらされないように頼むと……」
「お屋形様の恋人に獣人は二人もいるゆえ、何も心配する必要などない。なにより拙者と潜入している草も戦う。簡単には死にはせぬ」
「ハルロ「半蔵だ」……ハンゾー……わかった。久しぶりにともに戦おう」
俺はハルロスの肩を叩き、車両へと乗り込んだ。
俺たち獣人救世軍は、今日この時に初めて戦う大義を得たのかもしれない。
アクツさんに恩を返し同胞を救うという大義を。
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