第49話 初めての来客
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参考:桜島施設配置図
エルフの森から桜島へと戻ってきてから3日が経過した。
2日前にエルフの森から島の西港にゲートを繋ぐ頃にはもう日も暮れていたので、港の南にあった島の大きな体育館に魔導光球盤から光球を打ち上げマジックテントを張ることにした。
施設の職員を含む400人ほどの獣人の男女に、それぞれマジックテント特大(100人用)を3張りづつと、カップル用に通常のマジックテント(30帖ワンルーム)10張りを提供した。カップル用は順番に使ってくれと言ったら凄く喜んでくれたよ。気にすんな俺の幸せのおすそ分けだ。
子供たちにはというとマジックテント特大を3張り設置し、それぞれに施設の職員が常駐して交代で面倒をみてもらうことにした。リズとシーナにニーナたちも子供たちの世話をしているんだけど、初日も2日目の夜も子供たちに帰してもらえずに一緒に寝ていた。
でも2人ともさすがに3日目の今夜こそは、俺とティナのいるテントに戻ってくると言っていた。
俺もティナとは毎晩愛し合ってはいたし心も身体も満たされていたが、それでもリズとシーナが家にいなくて寂しく感じていた。2人とも子供たちの世話に忙しく、日中も家に全然いなかったしな。
獣人たちには2日目の昨日から、西港の北にある住宅地と学校の清掃をしてもらっている。
まだ住人がいなくなって2年ほどなのでそこまで痛んではいなかったが、魔道具が帝国から届いたらすぐに住めるように清掃と片付けをしてもらった。
ティナとシーナたちは3日目の今日もひたすら子供たちの相手だ。子供たちがはしゃいじゃって仕方ないんだよね。
自由に施設から出れることなんてなかったみたいだから、港中を駆け回って探検してで恋人たちもニーナやロイたちも疲れ果てた顔をしていたよ。
料理人の爺さんや婆さんたちは楽しそうだったけど、ニーナやポーラにレミアたちは完全に保母さんになっていたな。俺はレミアのあの胸に顔を埋めるエロガキどもが羨ましかった。
まあそんな風に皆が忙しくしている時に俺は何をしていたかとというと、2日目にダンジョンの南にある管理棟に飛行して向かい、子爵の兵士が置いていった設備の確認をしに行っていた。
そして管理棟にあった魔導通信機の隣にあった外部と繋がっている通常の電話で、三田の持つ携帯電話に連絡して彼らを迎えに行ったんだ。
三田たちは案の定青木ヶ原樹海にあるダンジョンでランク上げをしていて、俺が無事に戻ったことを喜んでくれた。まあ俺を見た時の第一声が、ケモミミは助けられたんですよね? だったけど。
三田たちを迎えにいってからゲートキーの再利用時間まで、樹海に張ったテントで食事をしながら俺はこの3日間の出来事を彼らに説明した。
まあ3人とも目ん玉飛び出るくらいに驚いていたよ。
さすがにティナたちを助けた後に帝城に乗り込んで、そこで皇帝をボコって奴隷解放させるとは想像もしてなかったらしい。ティナたちを助けた後は逃避行になるだろうから、俺とはもう合流できないと思っていたらしい。
そして桜島を日本総督府から独立させ独自の総督府を立ち上げることになったこと、仲間の復讐に帝国が協力してくれることを説明した。それに保護施設にいた獣人の身体を治して引き取ったことも話した。
そこで桜島はケモミミパラダイスだから手伝いに来て欲しいというや否や、全員が即答で来てくれることになった。
まあ日本人なら当然の反応だよな。
そして昼過ぎに三田たちと桜島に戻り、運転免許を持っていた3人に魔導車を出して練習させた。
そのあとは夜に皆を集め、ほぼ全員がCランク以上の獣人たちの中から100人規模の桜島警備隊を組織した。彼ら彼女らには鹵獲した魔銃と剣を持たせ、三田たちと一緒に島の警備をしてもらうことにした。お互い言葉が通じないから、日本語とテルミナ語の勉強も兼ねてのことだ。
三田たちはケモミミに囲まれて幸せそうだったよ。恋人ができるといいけど、この中じゃアイツらは最弱だから先は長そうだ。獣人は強い男に惹かれるからな。
警備隊のリーダーには暫定的に獣人たちの中で一番強いリズを任命し、各隊のリーダーを選出してもらいリズには主にシフトの管理を頼んだ。実働部隊には組み込まない。俺が寂しいからだ。
どうせ緊急時には俺が出動するからこれでいいんだ。
桜島警備隊は魔導車10台と魔導装甲車3台で西港と西の住宅地、ダンジョンの管理棟に東の本土と繋がる検問所を3日目の今日から24時間警備するのが仕事だ。いずれ規模を拡大して、海岸線の警備もしてもらう予定だ。
んでついさっき俺はその警備隊に仕事始めの号令を掛けたところだ。
その時にシーナが子供たちのテントから出てきて、『絶対今夜は帰りますから! 』って珍しく俺を強い眼差しで見つめながら言ってきてドキッとしちゃったよ。
俺もシーナと少しでも長く一緒にいたいから、早く帰ってきて欲しいとシーナに返した。そしたらシーナは顔を真っ赤にしながら嬉しいですって言ったりしてさ、両思いってなんでこんなに幸せなんだろう。
リズも警備隊の隊員と話しながら俺をチラチラ見ててさ、俺はリズのところに行ってリズがいなくて寂しいから今夜は帰ってきて欲しいと言ったら、『しょうがねえな〜コウはあたしがいないとホント駄目なんだから。チビたちに嫉妬すんなよ? 』って耳をピクピク尻尾をブンブン振りながら言ってた。
俺はその仕草が可愛くて思わずリズをギュッて抱きしめてキスをしちゃったよ。
警備隊にくじ引きで加入できなかった残りの獣人たちには、今日も住宅地の清掃をお願いしている。
そうそう。さっき宰相から連絡が来て、今日中には飛空艇で魔導コンロや給湯器に魔石式発電機が桜島に届くそうだ。
建築部隊はまだ時間が掛かるそうだけど、魔道具だけでも早急に手配してもらえたのはありがたい。
そしてニート特別雇用法に関わった者たちの確保が順次行われ、取り調べを始めていることも教えてくれた。
約束したとはいえすぐに手を回してくれた帝国の律儀な態度に思惑を感じつつも、今の俺には帝国の協力が必要だ。潜在的な敵だが利用できるうちはすると割り切ることにした。
そして学校の各教室と厨房に子供たちのベッドやトイレに調理器具や魔道具を設置していると、管理棟にあった小型無線機に飛空艇が近づいて来ていると警備隊から連絡があった。
俺は来たかと思い、清掃組を集めて港の南に帝国が作った飛空艇の離発着場へと向かった。
飛空艇は輸送専用の物らしく武装が無く、全長100mの胴体に大量に荷物を積める構造だった。
飛空艇が着陸すると後部ハッチが開き、そこから20台ほどの中型トラックが降りて来た。このトラックは帝国に預けてあるお金から買い取ると今朝宰相に言って了承を得たものだから、トラックを止めた後に運転手だけが降りて飛空艇へと戻っていった。
ドライバーは帝国人なんだけど、首輪なしの武器を手に持った獣人たちに囲まれてビクビクしてたな。
自分たちがなにをしてきたか自覚があるようでなによりだ。
侯爵の基地にあったトラックを入れれば、これで50台ほど所有したことになる。ジープ似た車両は30台で装甲車は5台だ。でも燃料の魔石は独特の形状をしていてこれは帝国でしか加工できないから、定期的に購入しないと使い物にならないんだけどね。地球産のトラックも何台か欲しいところだ。
俺が獣人で運転ができる者たちが次々とトラックに乗り込み港へと出発していくのを遠くから見送っていると、飛空艇から白い鎧を着た兵士に囲まれた文官とそのお付きらしき帝国人が10名ほど降りてきた。
そして兵士がトラックに乗り込む獣人に声を掛けてなにやら聞いている様子で、その獣人が俺の方を指差すと兵士は文官に耳打ちしていた。そしてその文官は30名ほどの兵士を引き連れてこちらへと向かってきた。
なにかを聞かれた獣人はその兵士の後ろ姿に思いっきり唾を吐いていた。
よほど高圧的に聞かれたようだ。
どうやらコイツらは俺に用があるようだな。てことはダンジョンの管理棟要員かな。宰相はそんなこと言ってなかったけどな。あの爺さんも年だから忘れたのかもな。
兵士の鎧が黒鉄に赤いマントてことは帝都にいた兵士たちと同じだな。
ほかの門を守ってた生き残りかな。
一般兵はマントなしに黒鉄混じりのハーフプレイトアーマーか革鎧だったから、装備の質とマントの色で階級分けしてんのかね? こっちに向かってくるCランク以上の兵士ばかりだから恐らくそうなのかもな。
しかし宰相が着ていた文官風の衣装を着た赤髪とオレンジ髪の男女5名と、そのお付きらしきなんかの制服を着た金髪の男女5名全員が面白くなさそうな顔や不機嫌そうな顔をして向かってくる。
まあ帝国領とはいえ、三等国民の地球人が古代ダンジョンを管理しているところに雑務と連絡役に来させられたんだ。プライドの高いお貴族様には耐えられないだろうな。
さて、最初が肝心だ。この島に住む人たちの為にもコイツらをのさばらせるつもりはない。
宰相がキツく言っているはずだから赤髪辺りの高位貴族は大丈夫だと思うけど、コイツらの選民思想は筋金入りだ。
地球人を魔猿と言って気分で殺すくらいだからな。
ここがどこで誰のもとに赴任させられたか理解してないようなら、この島の住人の安全のためにもキッチリ話し合っておかないといけない。
俺は帝国の文官たちを遠目に見ながらそっとデビルマスクを取り出し、サークレットを額に装着し待ち構えるのだった。
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