―獣人の里『モンストリア』―
242話 問題発生
「なんか遅いですね」
竜崎の元に謝罪とお礼をしにいったシベルとマーサ。そんな彼らをさくら達は一応待っていた。
「こってり絞られているんだろう。…絞られていて欲しいもんだ」
エルフリーデは腕を組み、フッと笑う。その様子から、恐らく竜崎はそう怒らないということが察せられた。
「まあ、あいつらが遅い理由はわかる。今、獣人の里『モンストリア』である問題が起きていてな、明日リュウザキ先生と賢者様を含んだ大規模な調査隊が派遣されるらしい。恐らくそのメンバーとして名が挙がっているのだろう」
「問題?」
「説明したいのは山々だが、これは内緒だ。行くメンバーだけに話すことになっている」
内容を明かそうとしないエルフリーデ。すると、恐る恐るモカが手を挙げた。
「あの…私、モンストリア出身なんですけど、そんな大事なんですか?」
「中々にな。…まあ隠し通せるものでもなし、すぐに情報は出回るだろう。少し待っておけ」
「私達が調査隊についていくのは駄目ですか?」
モカのその言葉を聞いたエルフリーデは少し考え込んだ。
「うーん…。危険ではあるが、他の先生方も幾人か参加するし…。街での情報収集要員とすれば…。しかしあの地は…」
ぶつぶつと呟く彼女の様子を、ドキドキしながらさくら達は見守る。と、その時だった。
「お前が喧嘩を売るからだろうが!」
「いいえ、貴方が先に先生へおべっかを使いました!」
ギスギスしながら戻ってきたシベル達。そしてその後ろからは苦笑いの竜崎が現れた。これ幸いとエルフリーデは彼に託した。
「丁度良かった。リュウザキ先生、この子達が例の件で明日ついていきたいと」
「やっぱりかー。皆、絶・対・に、勝手な行動はしないと約束できる?」
勿論と頷くさくら達。すると竜崎はシベル達に合図した。
「じゃあシベル、マーサ。さっきお願いした通り、手の空いた時で構わないから彼女達の監督役を任せていいかい?」
「お任せください!モンストリアは俺の地元ですから!」
「私も微力ながらお力添えさせていただきます」
胸を叩くシベル達。どうやらさくら達の提案は予想通りだったらしい。やったと喜ぶ彼女達を横目に、竜崎はエルフリーデに問う。
「お土産いる?」
「余裕があれば、是非。そうですね…今回は羊のぬいぐるみで」
「はいよー」
「「「「えっ」」」」
「なんだ、その目は。モンストリアは質の良いぬいぐるみが売っているんだぞ」
さくら達の驚愕の視線に、エルフリーデは臆せずそう返すのだった。
「あ…えと。それでリュウザキ先生、モンストリアで何があったのですか?」
話を逸らすように、モカは本題に入る。すると竜崎は声を少し潜めた。
「『獣母』は知っているよね?」
「はい、勿論」
獣母…かつての『禁忌魔術』の産物。遠い昔に作り出されたそれは、獣人、亜人の原型となる生物『人獣』達を文字通り
しかし先代魔王がそれを発見、解放に成功。大量に人獣を生み出していたが、竜崎達『勇者一行』の手により討伐せしめられた。
…たしかそんな感じだったな、とさくらは記憶を整理する。竜崎は話を続けた。
「『獣母』の肉体には余すことなく禁忌魔術が付与されていて、危険なものなんだ。故にその遺骸は幾つかに分けられ厳重に封印されて葬られている。そのうちの一つがモンストリアなんだけど…」
と、言葉の続きはニアロンが奪い…もとい引き継いだ。
―その封印が解かれ、墓がほじくり返された。つまり、獣母が『盗まれた』んだ―
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