アースティア大戦史・歴史紀行・第33回
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月3日・午前10時33分頃の事でした。
日本国政府並びに異世界国家交流総合支援省・交援省防衛監督指令室が主導する防衛作戦は、いよいよ終盤戦に差し掛かろうとして居ました。
このローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊と日本国海上自衛隊・護衛隊群連合艦隊「南雲護衛隊群」との大海戦は、アースティア大戦末期序盤に措ける転換点との見方をする歴史学者も多く居り、高見竜史と言う何の変哲もない青年が偉人の一人として扱われ始めたとも言うべき出来事にも成って居ます。
しかしながら、日本国政府並びに異世界国家交流総合支援省・交援省防衛監督指令室でも、有りそうな想定外な出来事を数パターンは予想はして居たが、圧倒的な技術力の格差と各種ミサイルに長距離魚雷や戦闘機による複合攻撃により、ローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊と日本国海上自衛隊・護衛隊群連合艦隊「南雲護衛隊群」との決着を付けられそうだと見て居ました。
しかしながら、戦争と言う物は生き物に例えられる事が有る通り、結果的に見れば、決着が付けられないと言うか、防ぎ様のない事態に陥ってしまいます。
そんな難敵たる人物が、南雲一佐が率いて居る護衛隊群へと低空飛行で向う一団と成って現れたのでした。
その経緯の回顧録は、アースティア大戦後に措ける・・・・後の聞き取り取材による書籍にて、以下の通りと成って居るそうです。
「居たっ!!見付けたぞっ!!!」
ヴァロニカは、合身した赤い龍鎧器、ドラグアーマーを身に纏い、獲物を捕らえた事に喜び、ニヤリと笑って居ました。
その後ろに続くのは、紫色のドラグアーマーのアイリーと青色のドラグアーマーのコレットでした。
その指揮下で動くレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団は、120騎の精鋭で、全員が龍鎧器ドラグアーマーの形態に変身した完全武装状態でした。
これはドラグナー皇国の騎聖龍士が、日本国軍(自衛隊)が手強い敵であり、本気で渡り合えると判断して上で、全力を以てして立ち向かって来た証拠であった。
「姫さまっ!!!」
「ヴァロニカ様っ!!!やりましょうっ!!!!」
「我らはっ!!栄えあるドラグナー皇国(おうこく)のレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団ですっ!!」
「敵の顔を拝まずに、殺られたと有ってはっ!!武人の名誉を傷付けられた事と成りますっ!!」
何時もほんわかしていて、母性溢れ、物凄く怪しからん爆乳を持ったアイリーと生真面目で、姉とは対照的な洗濯板を持って居て、何時も男に間違われるコレットの二人が、非常に真剣な表情をして居たそうです。
それは敵陣に突入して、死ぬ覚悟が出きている顔付きでした。
そんな顔付をして居るのは、二人だけではありません。
此処に居る突撃部隊は、何れもヴァロニカ・サークラ・レアモンの子飼いの者達でした。
それも元々は戦をする様な女性達では無い人々から構成され居ました。
ある者は貧困、ある者は意中の男性や夫を失い。
ある者は、犯罪者等と言った出自や身分であったそうです。
そう、彼女達は、過去に何かしかの経歴の中では、様々な傷を持って居る者が多く居たでのした。
アイリーは、貧困からコレットと共に盗賊家業をしたり、盗みを働いて居た一団を率いて居ました。
男を誑かしたりして、盗み取るお金を生活の糧にして居た所をヴァロニカに討伐されたのが、主君と仰ぐヴァロニカとの出会いだったとの事です。
その際、彼女達らは死を覚悟した時に、ヴァロニカに言われたのが「更生するなら職を与えると言われ、更生しないなら裁判後に、極刑か処刑だ」と言われたそうです。
この様に言われたアイリーは、全身に稲妻の痺れを感じるかのように陥った。
そして、彼女達は、その場で年下の皇女に忠誠を誓ったのである。
斡旋して貰った仕事は、後宮のメイドであり、ヴァロニカの御付きと成ったのです。
そして、盗賊団時代の腕も買われて、騎士団の厳しい訓練にも耐えて騎士団の近衛隊としても腕を振るう事になりました。
当初はメイド仕事に苦戦していたコレットも、姉の後に続いて騎士団入りを果たして行く事に成ります。
だからである、自分達をとても大事にして貰って居る姫様の為に、文字通りに命を投げ出して居る覚悟が有りました。
それ故に、レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の団結力は大陸図一と謳われる騎士団の一つと謳われて居ました。
ローラーナ帝国に敗北しても尚も、その武名を恐れて帝国は、ドラグナー皇国とレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団とそれらを率いるヴァロニカを如何にも出来なかったと言われて居ます。
彼女達に対して、拘束も出来なかったし、ドラグナー皇国が帝国の従属国に落ちた後も、ヴァロニカとレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団を放逐するしか無かったのでした。
更には・・・・様々な言い掛かりを付けて処刑すらも出来ないし、ヴァロニカの人気に対して、ローラーナ帝国は手を出せないと言う始末。
そんな異世界最強の武人が海自艦隊に向って居た。
「ニホンの鉄槍も、攻撃目標とする対象物の至近距離に達するまで、低空飛行をして居た。」
「これらの状況判断からして、彼の鉄槍が低空飛行を取るのも、恐らく何らかの理由で、敵からの探知と発見がし辛いと見た。」
「その様ですわね。姫様、我々が此処まで近付いても何もして来ないと言う事は・・・・・・・・・」
「そうだアイリー、奴らは対人対空戦に対して備えが薄い。恐らくは異界では対人対空戦事態が無いか、廃れてしまって居るのかの何方かだろう。」
「私の考えでは有るが、異世界では対人対空戦その物が無いと見て居る。」
「その考え方が当たって居ると言う見方の結果がこの状況だと言う事に成る。」
「だから此処まで来れたと言う事に成る。」とヴァロニカは、地球世界での対空戦に措ける戦術・戦略の体型を予想や憶測でピタリと言い当て見せたのは、驚嘆に値すると言えるでしょう。
「流石は姫さまです。」と言うコレット。
「だが、この手は一度きりか、後数回限りに成るだろうな。」
「この戦での出来事を見聞きする限りでは、恐らく二ホンは、かなりの技術を持った技術立国なのであろう。」
「この様な小手先だけの手口は、何れは防がれてしまう。敵も愚かではない。」
「さて、今は敵が最も得意とする戦術を盗られたら、その持ち主たる相手がどう言う反応するだろうなが楽しみだな。」
「ふふ・・・・・・・」
楽しみだと言う顔して不敵に笑いながら、護衛艦隊との距離を詰める。
距離が9キロを切ったタイミングで、旗艦である航空護衛艦を始めとする中心艦隊艦隊の護衛を務めるごんごうを始めとする護衛艦隊は、一斉に警報を発しました。
「南雲一佐っ!!!大変ですっ!!!」
「如何したっ!?」
「レーダー班と監視班からですっ!」
「微弱な反応ですが、南東方向に微かに飛行物体の反応が有りましたっ!!!」
「それで目視の監視をして居た各艦の隊員が、一斉に此方に向かって来る物体を視認。」
「良く見ると、鎧を着た一団が南東の方角から此方に向って来ますっ!!!」
「・・・・・如何やら此処の艦隊が見つかったらしい。楽な海戦かと思って居たが、実戦と言うのは思わぬ出来事が起こるものだな。」
「各艦っ!!!総員対空戦闘よおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーいっ!!!」
「強敵が来るぞおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!」
「総員っ!!!気を引き締めて掛かれえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」
「これから来る相手は、アイアン・ブラッド・プリンセスっ!!!」
「血染めの鋼鉄姫将軍っ!!!ヴァロニカ・サークラ・レアモン姫将軍と言わる人物だっ!!!」
「それもっ!!この世界で最強の武人がなっ!!!」
「了解っ!!各艦総員っ!!全力射で迎え撃ちますっ!!!」
「我らは、何としても持ち堪えねば成らないっ!!!」
「あと少しだ、あと少しで決着が付く・・・・・・・・・・」
監視衛星からは侵攻して来た、ローラーナ帝国艦隊が、撤退を始めて居るらしいとの結果が報告され始めて居ました。
何時までかは、分からないが、一定時間の間だけ、耐える必要があったのです。
主砲や20ミリ機関砲、迎撃ミサイルが直ちに射撃体勢を取って行きます。
最初に複数のミサイルが撃ち放たれました。
「この近距離だっ!!奴らも流石に気付いたかっ!?迎撃が来るぞ!!皆っ!突っ込めえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!!」
「「「「「「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっっ!!!」」」」」」
ヴァロニカを先頭にして、レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団は、決死の覚悟の特攻を仕掛けたのです。
ガキイィィィンンンっ!!!と鳴り響かせ、魔力強化され、更には特殊な造りの剣が受けた砲弾やミサイルが切り裂かれて行きます。
機関砲は集中的に正面を厚くして張られた魔法障壁でダメージを軽減されてしまいます。
例え撃ち落とされたとしても、墜落するだけでも済んで居ました。
戦闘が無理だと感じれば、魔法障壁を応用して膜を張って水中から撤退すれば、大怪我を追わずに逃げられる事も可能でした。
「信じられませんっ!!!120人の空飛ぶ騎士を確認しましたが、脱落がたったの5人ですっ!!!」
「嘘だろ・・・砲弾にミサイル、機関砲を受けて、怯まずに来るなんて・・・・・・・・・」
「確かに・・・・アレは精鋭だ。」
「南雲一佐・・・・・・・・・」
「藤田2佐っ!全力で何としてでも防ぐんだっ!!!」
「敵は我々の想像も及ばない本物の武人だ・・・・・・」
「はっ!!」
藤田2佐が更に激を飛ばそうとした時でした。
「ほっ、本艦のちょ、直上に真紅の騎士ですっ!!!!」
「なあぁぁぁぁにいいぃぃーーーっ!?」
南雲一佐が滑走路の甲板方向の艦橋の窓から空を見上げます。
其処には、赤い彗星の如く、あかぎを魔法剣シルヴァロスから放たれる必殺技、ヴァロスカリブレイカーを放とうと構えます。
「迎撃っ!!!」と別の隊員が通信で叫ぼうとしました。
「こんごうっ!!主砲に被弾っ!!」
「しらね、青い騎士から攻撃を受けて、二番主砲とシースパロー発射機に被弾!」
「その他各艦にも、同じく被弾しましたっ!!!」
「何れも光弾と斬撃によるものと報告が来ておりますっ!!!」
航空護衛艦あかぎの撃沈を確信し、乗員の生命を優先した南雲一佐が退艦命令を出します。
「遺憾ながら、あかぎから総員退艦だっ!!!出撃中の航空隊は、沖縄基地へと退避させろっ!!!」
航空護衛艦あかぎ艦内では、退艦警報が発令され、大慌てで艦内から脱出しようと慌しく駆け回る隊員達は、整然と退艦を始めて行きます。
一方のヴァロニカは、魔力をチャージをしながら、あかぎを見下ろして高らかに名乗りを上げたそうです。
「大きいな・・・・だが・・・・・・・」
「後一歩であったなニホン軍の諸君っ!!!わたしはヴァロニカ・サークラ・レアモンっ!!!」
「ドラグナー皇国第一皇女っ!!!レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の団長であるっ!!!」
「これは散々に我ら騎士団を痛ぶってくれた礼だっ!!!得と味わうが良いっ!!!」
ヴァロニカのドラグアーマーと魔法剣シルヴァロスの二つが、真っ赤に閃光を放って居た。
周囲の景色も赤く染まろうとして居て、赤く染まった閃光からは、バチバチと音を立て居たそうです。
「全てを灰燼に滅せよっ!!!滅殺っ!!!ヴァロスっ、カリブレイカーーっ!!」
「うあああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!とーめーてえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっっ!!!」
「姫様っ!後ろっ!後ろっ!」とアイリーが、西の空から飛んで落ちて来た物体の注意喚起をしたのも空しく、ヴァロニカにぶつかってしまいます。
「えっ?!」
ヴァロニカの間抜けな声と共に、ゴチンとぶつかる音がすると飛んできた何かとヴァロスカリブレイカーを放とうとして居たヴァロニカは、クルクルと回りながら、あかぎの甲板に落ちると、ゴロゴロと転がって最後には、後部甲板から海中へとドボーンと落ちてしまいました。
「けほけほっ!!ぺっぺっぺっ!!ぷはっ!はぁはぁはぁ・・・・・ふぅーっ!!やっと止まったよ~っ!!」
「んん???」
「あれ?此処は、一体、何所なのだ?」
甲板に無我夢中で飛んで這い上がって来たのは、白い羽を持った人物でした。
突然の事に動揺する南雲は、冷静に護衛艦隊に向けて、撃ち方止めと命令を発すると、同じく想定外の展開と成ってしまったレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の者達も、自然と戦闘を止めるのでした。
「あっ?!あっ、あの人は・・・・」
「なっ?!何でっ!!こんな所にっ!?」
アイリーとコレットもポカンとした顔付きで、あかぎの甲板で、びしょ濡れの人物をじっと見詰めて居ました。
その空の彼方から航空護衛艦あかぎに降って来た人物・・・・事の成り行きは1日前前までに遡る事に成ります。
アースティア暦1000年・6月2日・午前8時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・パイプ・ライン大河沿い・アセリナ王国・イーストグリーン州 州都・リレル・ラウェル市・アルガス公国とアセリナ王国国境付上空にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この日、件の人物と成るのは、アセリナ王国の総長の事で、彼女が、早朝散歩ならぬ早朝飛行を楽しんで居た事が始まりでした。
「フンフン、フンフン、フフ~ン♪ 今日も我は絶好調なのだあああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
そのアセリナ王国の総長たるマーヤ・リリロッカ・ヨシカーナが・・・・・何故、自国と隣国の国境近くを飛んで居るかと言うと、単に仕事から抜け出して居るからとの事が、マーヤ周辺の閣僚・幹部・官僚たちらの証言が有ると言う回顧録から窺い知る事が出来ます。
「くっくっくっ、我が名はマーヤ・リリロッカ・ヨシカーナっ!!!」
「この世界の救わんとする我はっ!!この光輝く早朝に光臨するっ!!!」
「我の器たる肉体は聖なる太陽に清められっ!!今宵も悪しき者達を成敗せんとっ!!我のエクスプロン・ランサーの光の閃光に呑まれるが良いいいいぃぃぃーーーーーーーーーーっっ!!!!」
「なぁーーーっ!!はーっはっはっはっ!!なぁーーーっ!!はーっはっはっはっ!!なぁーーーっ!!はーっはっはっはっ!!なぁーーーっ!!はーっはっはっはっ!!」
ってな感じで高笑いをするマーヤは、ドヤ顔の決めポーズが決まったなんて思って居て、やっぱり中二族たるアセリナの人達の思考は、常人には分からないものでしょうか?
其処へ・・・・・・・・・・・・・・
「んんん???」
遥か東方の方角から「ゴーーーッ!!」と言う轟音が鳴り響きながら近付いて来る物体がありました。
C-130Hが7機とF‐15J戦闘機の10機の編隊が、ガイダル島の遺跡基地の改修が、概ね無事に終わったので、ガイダル基地に補給物資輸送の為に向う途中だった所をマーヤは出くわしてしまうのです。
「ふえええええぇぇぇぇっ!?なんとおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!?」
マーヤは、出会い頭に避け切れなかった先頭の戦闘機に吹き飛ばされたと、ダジャレめいたオチに陥ってしまいます。
その数分前・・・・・自衛隊側の記録が残って居ます。
C-130Hの5号機の操縦席では・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「萩村さん、この世界の空も良いスッね。」
「おう、そうだな梶。」
操縦の合間に雑談をして居るのは、C-130Hの5号機の操縦を担当している機長の萩村一射と梶二射でした。
この異世界の空は、生き物や空挺魔導艦にさえ気を付ければ、事故がほぼ有り得ない世界なのです。
二人は、この異世界アースティア世界に措いても地球世界時代と変わらずに米軍は居るが、航空管制の五月蝿くない自由な空を同僚等と共に謳歌して居ました。
転移災害以前の我が日本国内では、在日米軍の都合により自由な飛行が許されて居ない窮屈な飛行を強いられて居る事は良く知られて居ました。
それが国際飛行規定が殆んど無いに等しい世界の自由に飛べる空が嬉しいとの証言記録が残って居ます。
「今は俺達だけの空だ、小煩い国家の管制官と航空管制の整った友好国以外に無い、この異世界の空は、俺達の様な飛行機乗りに取って、正にユートピア、天国も同然だ。」
「そうッスね。無茶さえしなけりゃ、飛び方に文句が付かないのも良いッスよねぇ~」
「そうだろう、そうだろう。うんうん・・・・・・・・・」萩村一射と感慨深げに言う。
すると、其処へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヒューーウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
「ふにあああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっっ!!ムギヤッ!!」
ボテッと言う擬音が響く感じで、マーヤが操縦席の窓にぶつかる。
普通ならとっくに気が付いて飛行機の方か、又はマーヤの方からも避ける所だが、マーヤは自分が言って居た中二的な台詞に酔って居たし、航空自衛隊の隊員も高速で飛んで居るので、歩行者ならぬ飛行者なんてものを避け様としたが、如何やらダメだったみたいです。
不規則な槍捌きと突然に止まるマーヤの動きの予測が付き辛く、護衛隊のF‐15J戦闘機は、何とか回避が出来たくらいでしょう。
マーヤは、風圧等で吹き飛ばされ、C-130H編隊の5号機の操縦席付近の窓にマーヤがピタッと張り付いてしまいます。
「なっ、なっ・・なっ!?何だっ!?」
「萩村さん、ヒトッスっ!!しかもっ!!白い羽の生えた金髪の女の子ッスよっ!!」
自衛官の二人には、信じられない光景が目の前に有りました。
セミロングの金髪で、白い羽と何だか分からないが、槍の様な物を持った女の子が、操縦席の窓ガラスに張り付いて居たのです。
本当にベタな展開だが、操縦者の二人には、丸でギャグアニメかコメディ映画みたいな展開が其処には見えて居たそうです。
「なっ!?何なのだっ!?これは?新種の生き物なのか?」
「んんん?!中に・・・・・人か?」
「おーいっ!!この物体は何なのだっ!?」
マーヤは、目の前に居る自衛官二人を凝視します。
一方の自衛官の二人は、マーヤの声が、エンジン音や風圧の影響で聞き取り辛かった。
彼女は、まだアセリナ王国・外務局省で情報が精査されて居て、日本の内部事情に疎かったそうです。
日本とか言う珍しい国が見つかったと報告されて居るだけで、別段に興味がそそられる事柄では無いので、マーヤは詳しくは知らなかったのでした。
「何て言って居るんですかね?」
「ハッキリ言って、分からん。エンジン音やジェット気流なんかのせいか、外の声が聞き取り辛い。」
「でも・・・・・・これって交通事故にでも成るんっスかね?」
「バカかっ!?こんな事態、どうやったら想定が出きるかっ!!」
「万が一、予測が出きたとしても、普通は歩行者ならぬ飛行者の方が逸早く避ける物だろうがっ!!」
「そうっすよね。」
「まぁ、こんな高度でも平気な奴だ。高見大臣や政府が言ってた亜人族って奴だろう。」
「ああ、エルフとかドワーフとか人魚とかが居るって、本省や交援省にニュテレビースやネットニュースに、新聞とかで言ってましたしね。」
「ドランゴンや魔法使いにさえ気を付ければ良いと思ってたが、それ以外にも居ると報告せねばな。」
其処へ近くから見ていた護衛機のF‐15J部隊の指揮官機から通信が入る。
「五号機っ!どうした?何か張り付いて居る様だが?」
「ああ、問題ない。見辛いが如何にか飛べて居る。」
「何らかの理由で、この辺りに住んで居ると思わしき、現地の亜人種のヒトが、何処からともなく飛んで居た所に出くわしてしまったらしい。」
「怪我も無い様だし、その内、何処かに行くだろう。」
「了解。念の為だ、今のままでは風圧で起き上がれまい。少しだけスピード落としてやれ。2機の護衛を残すから、ゆっくりと追い付いて来い。」
「了解ですっ!!」
「だそうだ。それじゃ、降って沸いたお客様には、安全且つ、無事にお帰り願おう。」
萩村は機体のスピード少しばかり落としてやると、トントン叩いて中へ声を掛けつつ、物珍しそうに飛行機を見て居る頭の可笑しそうな女の子が風圧で剥がれないのを助けてあげたそうです。
「あっ!?」
「ふにあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!!」
マーヤはペロリとテープが剥がれる様にして、何処かへと別の風に煽られて吹き飛んで行ったのでした。
「おおっ!!無事に剥がれた様だな。」
「そうですけど、あの子。アレで大丈夫っすかね?」
「輸送機の軽い衝突でも平気だった様だし、平気だろう。一様、目的地に着いたら、この辺りに国土を持って居る国家の現地政府にでも、報告して置こう。外交問題にはしたくは無いからな。」
「今は長距離通信も不安定つすからね。」
「そうなんだよな。流石に、地球世界で言うユーラシア大陸の中央地域からの日本への通信は不安定だからな。」と言った感じで航空自衛隊の面々は、何事も無かった様に任務に勤めるのでした。
後日改めて、日本国・外務省とアセリナ王国・外務局省との間で、アセリナ王国総長のマーヤと航空自衛隊C-130H編隊の5号機との衝突事故に付いて、事後処理が行われました。
ですが、マーヤが仕事を放り出して、そんな空で散歩をして居たのが悪く、避けない素振りを出来なかった方が悪いとされ、特に本人も怪我が無く、自衛隊側にも損害が無かった事から、互いに責任を取らない事で決着が付き、マーヤ周辺の閣僚・幹部・官僚たちらからは、マーヤへの説教と言う裁きが下されたとの事でした。
そんなギャグアニメ的な事情からマーヤは、気流に流れに流れて、流されてしまった結果。
第二次龍雲海沖海戦の真っ最中であった航空護衛艦あかぎへと流れ着く事に成ってしまうのです。
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