外伝20話 新世界日本風土記 マーメリア海洋王国女王の非公式訪問 

アースティア暦1000年・西暦2030年・5月8日・午前11時10分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・日本列島・日本国・新日本国領・サクラ諸島県・サクラ島本島・サクラ島本島東側地域・サクラ集落地区・サクラ・マーメリーア部族長館にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 突如として現れた、この世界の全ての人魚族の宗主国・マーメリア海洋王国の女王であるメリー・サクラン・ブロッザム・マーメリア。


 彼女は、サクラ・マーメリーア部族長であるサリーの姉として、実家の重要な事柄と成る日本国亜人居住地域学術現地調査団の視察訪問の時期に合わせて、故郷であるサクラ諸島へと帰って来て居た。


その目的が何なのかを今、明かされ様として居た・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あっ、それと今回のわたくしがサクラ諸島へと帰って来たのは、あくまで実家が重要な決断をしたと言うので、その立ち合いも兼ねた故郷の地への非公式訪問・・・・・・帰郷です。」


「それでは・・・・・・・」


「はい。今日はメリー・サクラン・ブロッザム・マーメリアと先ほど名乗りましたが、今はメリー・サクラン・ブロッザムと言う事ですので、その辺りの公式な記録に成りそうな書類には、嫁に出た族長の姉が、実家の重要な決断をした、その実家の妹を心配して実家に帰って、この会談の席に同席したと言う体裁でお願いします。」


「なるほど。此処に居らっしゃるメリーさんは、あくまで実家の一大事を聞き付け、駆け付けやって来た、メリーさんのお姉さんなんですね。」


 視察団長の由紀子は、この場での記録はメリーの身分は、実家に帰った親族と言う扱いで済ませる事にした。


 ある意味、詭弁では有るものの、どうやらマーメイド族の宗主国であるマーメリア海洋王国には、何か政治的な意図が有りそうである。


 メリー・サクラン・ブロッザム・マーメリアは、マーメリア海洋王国女の女王と成って居るが、マーメリア海洋王国の王族からすれば他家の血筋の人魚である。


 何代かに一度は嫁養子に迎えられて居る家柄でもある。人魚族の家系は基本は女系継嗣が一般的である。


 メリーは王族に所縁が有る事と、妹が居た事の二つが起因する事で、マーメリア海洋王国から嫁に来て欲しいと乞われて王家へと嫁いで居た。


 そんな彼女が実家で異変が起きたと聞きつけて、女王としての責務を強引な形で棚に上げ、実家へと帰省して来て居た事も付け加えて置く。



「そう言う事に成ります。」


「今回の視察団の来訪に合わせて、マーメイド族の宗主国であるマーメリア海洋王国は、サクラ・マーメリーア部族の独自判断で、このサクラ諸島とサクラ・マーメリーア部族が日本国への保護下に入り、地方自治州と成る事に関しては、政治的な意図は一切有りません。」


「そして、我がマーメリア海洋王国は、サクラ諸島とサクラ・マーメリーア部族が日本国領と成り、日本国民と成る事に異論も異議を申し立てる事も有り得ません。」


「これは本当にサクラ・マーメリーア部族が、自治部族国として判断でした事であり、その総意は、我が妹であるサリーとサクラ・マーメリーア部族の部族民衆の総合的な判断と決断による物だと言う事を此処に正式に認めるものです。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 視察団長の由紀子は、思わずメリーが宣言した非公式訪問では有るが、サクラ諸島とサクラ・マーメリーア部族が何所に帰属するのかを公式な宣言をこの場で平然と言ってのけた事を聞いて、絶句してしまう。


「それは・・・・・本当に・・・良いのですか?」


「はい。サクラ諸島とサクラ・マーメリーア部族は、このアースティア世界に措ける世界的な慣習・慣例を基づく公式見解では、自治部族衆民であり、国と言うよりは自主独立をして居る自治部族国と言う位置付けです。」


「この世界の公式見解の慣例に措いては国家では在りません。あくまで特定の国家が諸外国に向けて保護下に在ると見なして居る事を公式に認めている独立した部族集落でしかありません。」


「ですが、今まで人魚族の宗主国であるマーメリア海洋王国の保護下に有りましたが、サクラ・マーメリーア部族長であるサリーが、自部族の部族民衆に乞われて、我が国の保護から離れ、日本国の庇護下に入る事を望みました。」


「これは我々マーメイド族の歴史上、類を見ない事例であり、後にも先にも前例が有りません。」


「この事をマーメイド族の同胞達は、様々な目で見て居ます。」


「全く、我が妹ながら、このわたくしに一言も相談も無く、一存で決めてしまう事には、本当に困った物です。」


「だってっ!!だってっ!!ユーラシナ大陸も泳いで渡るのにも遠いし、そろそろ大陸各地も、キナ臭いって、言うじゃない?」


「だったら、丁度お隣同士に成った日本なら、近所付き合いがし易いと思ったのよねーーっ!!」


「全く、貴女は昔から突拍子もない事ばかりして、このわたくしが、どれだけ他のマーメイド族を抑えるのに苦労して居るのか分かって居ますかっ!!」


「一歩間違えば、日本国とは全面戦争でしたのよっ!!」


「あのー・・・・・・」


 由紀子は姉妹の口喧嘩に恐る恐ると割って入った。


 特にメリーが言った全面戦争と言う言葉には、由紀子を始めとする面々も、流石に冷や汗ものの一言であると言えた。


「はっ?!すっ、すみませんでした。つい・・・その・・・・・」


「いいえ、いいえ。お気に為さらずに・・・・・・」



メリーは、妹との姉妹喧嘩で場を乱した空気を直ぐに仕切り直した。


「貴国の小笠原諸島近海で起きた顛末を聞いた時は、サクラ・マーメリーア部族の民達が、海上の渡り遠泳であるとは言え、無断で国境越えをした事が、日本国の法律に引っ掛かる事で、数日間は拘束される事に同胞達は怒り心頭と成りました。」


「まぁ、その事で拘束されたサクラ・マーメリーア部族民達の処遇に付いて、如何するのかで日本国内の議論が紛糾し、拘束期間が長期化と成ってしまう事が起きた場合は、わたくしがマーメイド族の宗主国として、日本国と交渉の全権を持って矢面に立とうと思いました。」


「ですが、その前に同胞を取り戻すべしと言う過激派が多数現れてしまい。わたくし自身が迂闊な行動が取れなくなってしまいました。


「ですが、そんな時にサリーが貴国と話し合い。貴国の事を・・・・・・日本国を知り、その保護下に入りたいと言う奇策に出た事で、事態一気に解決に向かいつつも、新た複雑な状況と成ってしまいました。」


「はい。我が国でも、先の小笠原諸島での一件は、本当に前例の無い異例の事態でしたので、我が国の領海を遠洋遠泳と言うやり方で無断侵入をしたサクラ・マーメリーア部族の方々を如何したものかと、小笠原村での拘留期間が長引いてしまいました。」


「はい。其れに付いての詳しい事に付いては、サリーから聞いて居ます。」


「その事で、我が国は日本国と戦争すべきだと言う話が、世界各地のマーメイド族の部族や海底王国は声を上げて居ました。」


「戦うべしとの声を上げる大本の原因は、我が種族事態に原因が有ります。」


「それとは、人魚族は種族の8割近くが女性であり、その特殊性な生態から種族の全てが美形美体を有して居ます。」


「それが原因で奴隷狩りに遭う事も珍しくは有りません。」


「それに付いては、コヨミ皇国や他の地域国家から話を聞いて居ます。」


「ですが、我が国にはその辺りの部分では心配は有りません。」


「法律で個人を不当に拘束したり、売春や人身売買等の行為を行う事は固く禁じられて居ます。」


「それに付いてもサリーからは聞き及んで居ます。ですが、社会の闇と言うのは何処にでも在るものなのです。」


「サクラ・マーメリーア部族の人魚族を含めた、いいえ、多くの亜人部族が何らかの組織や個人によって、不当な扱いを受けた歴史が有ります。」


「日本政府にはもし、その様な不当な扱いをする様な輩や組織に対する対処や処罰をすると言う確約を頂きたい。」


「それはお約束できると、この場で言いたいのですが、今の所は我が国の法律に措いてとでしか、お答えが出来ません。」


「其処から先は国交開設をしてから、正式な関連刑罰の法案の制定や犯罪取締り条約を結んだ事で、初めてお約束をしたと言う事に成ります。」


「今はそれで結構です。」


「今回の一件で異世界転移国家と言う天災で新たに現れた国家と日本国との接し方は、取り敢えずは、静観して行く方針でしたが、サクラ・マーメリーア部族の一件で、亜人の中立勢力圏の諸事情の事態が急変をしました。」


「少なくとも我が国だけは、貴国と何らかの話し合いが必要だと言う結論に至って居ます。」



「其処で我が国は、準備が整いしだい正式に日本国との国交樹立を含めた交渉を考えて居ます。」


「その序でですが、未だにローラーナ帝国と、どう対峙して行くのかを決め兼ねて日和見をして居るアセニア亜人連合同盟諸国の尻を叩いて、わたくし自ら各国の王や国家代表を連れて日本国へと乗り込ませ頂きます。」


「我が国の様に国境付近でのトラブルを避ける為にも、互いに交流して行く為にも、ルール作りが必要と成る筈です。」


「それは・・・・・・・・」


「不服でしょうか?」


「いいえ、とんでもないっ!!」


「思わぬ申し出だったので、困惑してしまいました。」


「我が国も隣国と成って居るアセニア亜人連合同盟諸国と、どう接触したら良いのかと困って居まして、シベリナ王国連合諸国で伝手が有るのは、ドラグリア白龍大帝国のエリン様だけと聞きて居りました。」


「リユッセル北欧同盟諸国もミンフィル王国東南諸国同盟にもこれと言った窓口が無いのが現状なので・・・・・・・・・・・」


「それは仕方ない事なのです。この千年間に度々の世界大戦に巻き込まれて、人口の多く減らしてしまった各亜人族は、又も人間族が中心と成って居る世界戦争に巻き込まれてしまう事に壁々として居るのです。」


「600年前を契機に、完全中立宣言をして以来、彼の帝国も・・・ちょっかいを出す事をして来ません。」


「まぁ、世界中を相手取って戦争を仕掛けて居るのですから、その内1つでも戦争をする気が無いと折角言って居るのです。」


「そんな地域に攻め入る事を後回しにして置いて、周囲を囲んでから、何れは亜人地域全体を征服する気なのでしょう。」


「ですので、我々も切っ掛けが欲しいのです。このまま座して成り行きに任せるのか?」


「それとも、もう一度だけ、人間族や他の種族と共に世界平和の為に戦うのかをです。」


「それはどう言う意味ですか?」


「この世界に措いて、新参の日本には、この意味がまだ分からないでしょうね。」


「ですが、何れにしても、ローラーナ帝国の暴走を誰かが止めねば成りません。」


「その為の一手を撃つ為にも、今一度、常識ある国々が集って話し合うべきだと、わたくし個人は考えて居ます。」


「それなら丁度良い事に、ダバード・ロード王国のアーヤ・シュチュ―ド女王陛下の呼び掛けで、我が国の首都である東京で、日本国を含めた地球系転移国家群との国交開設やこの世界の国際情勢に付いてを話し合う為に、国際会議を開こうと言う話が進められて居ます。」


「其処で如何でしょうか、アセニア亜人連合同盟諸国の方々も、我が国で開かれる予定のその国際会議に合わせて、ご来日なされては?」


「それは良い考えだわ。ローラーナ帝国に付いての話だけと言うなら、参加し辛い国も、会議内容に関わりたく無ければ、その場を退席すれば良い。」


「それなら国際会議に出席が出きると言う国も多い筈です。」


「早速、各国に提案する事に致しますね。」



 こうして、アセニア亜人連合同盟諸国は、中立同盟国の一角であるマーメリア海洋王国の女王であるメリー・サクラン・ブロッザム・マーメリアを仲介者として、東京都で開催されようとして居る東京サミットに参加する事と成ったのであった。


 

 日本国亜人居住地域学術現地調査団は、その後もメリーを交えたサクラ諸島県での視察日程を終えた後、次なる目的地である旧南鳥島とコロロッポ諸島が合併して出来た妖精族と海獣人が住まう島であるコロロッポ諸島県へと向かうのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る