176話 新たなる嵐の前触れ 4

 さて、話はオローシャ帝国と彼の国が保有して居る兵器等に移るとしよう。


 このアースティア世界と言うのは、ユーラシナ大陸の西方に位置するユールッハ地方を中心に栄えて来た歴史が在る。


 その東部地方の北部から西部にかけて、実に3000キロ以上もの国土を有しており、国家の周囲を山脈に囲まれた天然の要塞と化している。



 冬場は雪と氷に閉ざされて居るので、ローラーナ帝国と言えども簡単には攻め込まれない土地と成って居た。



 更にオローシャ帝国は、巨人戦争時代に転移して来た旧アース世界連合国の軍事兵器を今だに稼動が出きる状態で、多数保有して居る。



 その中にへヴィ・ベース・シップ(宇宙戦艦や飛行戦艦)やナイト・マギアの前身であるギア・アーマー。これは所謂、SF世界のロボット兵器の事である。



 その他にも戦闘飛行機、戦車などを含めると、かなりの科学式の兵器が有ったが時代と共に生産設備の劣化や、数多くの支えて居た技師が少なくなり、次第に衰退して行く事に成ってしまう。


 更に残念ながら、原子炉または、核融合炉や縮退炉などの技術は封印されて居る。


 多くの超技術で作られて居るこれ等の三つを含めたタイプ型のエンジンは、後世の世では、恐らく衰退して行くだろうと技師達は考え、巨人戦争終了後に関係資料共々安全な地上施設か宇宙施設等に封じられしまう。


 そして、代替エンジンとして各地の魔法技術を使った魔導力炉の開発が始まるのである。


 多くの第2次転移国家文明の技術を取り込んだ国家は、現状で維持し続けられる生産設備、技術・設計記録を残すだけで精いっぱいであった様だ。


 これらの事情により、後に後世の世で開発されて行く事に成った兵器開発と運用等が、かなりの歪なものへと変化して行くのは、如何しても避けられなかった。


 その結果、この世界での戦争内容は、大兵力と旧文明の魔法国家の主力である白兵戦闘が戦争の主役と成ってしまう。


 一部の国では旧時代のロストテクノロジーのコピー品や部品交換をし続けて保有兵器の維持に努めるしかなかったのであった。


 それも少数の国家のみで、多くの土地では、巨人戦争時代以前の出来事を神話か何かのお伽話として語られて居る呑みと成っていた。


 そして、今日の世界中には、巨人戦争時代以前の遺物は、遺跡として残り、場合によっては、稼動可能な状態で発見される事が多かった。


 その遺物を解析して現用技術で兵器として使用をしたり、日常で使用したりして居た。


 さて、へヴィ・ベース・シップは、現在では一括りに魔導戦艦と呼称して居るが、オローシャ帝国と旧宇宙文明と深い係わり合いの有る地域でしか残って居ない改修兵器の系統派閥兵器の一つとして知られて居る。


 船体の新たな動力炉に魔力転換炉を組み込み、大気中の魔素であるマナを魔力転換炉に取り込んで魔導戦艦は動いて居た。



 オローシャ帝国の魔導戦艦は、全部で3タイプ有って、ランド・ベース・シップとスカイ・ベース・シップとマリン・ベース・シップの3種類が在る。


 ランド・ベース・シップは水陸両用戦艦、マリン・ベース・シップは海上戦艦、スカイ・ベース・シップは空中戦艦と成って居る。


 古代戦争時代に作られた巨大戦艦で大きさが200メートルから400メートル級物まである鋼鉄の戦艦であった。


 また、魔鉱石と呼ばれる元素属性によって発現する力が違う魔鉱石を使う船が有る。


 その船の付いて説明すると、木造式の帆船タイプの緑魔鉱石(風属性)を燃料とし、風で推進するものや鋼鉄で作られ、赤魔鉱石(火属性)を燃料として居る。


 推進方法の中には、ジェット推進に近い噴射方式やプロペラ方式で航行する空挺魔導戦艦も有るが、オローシャ帝国等の国々が保有して居るへヴィ・ベース・シップの技術を応用した劣化コピー版の一つで、多くの国で軍や民間で使用されて居る。


 此処までが旧宇宙文明の遺産兵器にして、改修魔導戦艦であるへヴィ・ベース・シップに付いての主な説明である。



 アースティア暦1000年・6月20日・午後21時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸南西部地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国南東部領・ゾルモン地方領・ゾルモン地方・ゾルモン内陸海・ゾルモン大島諸島・ローラーナ帝国・第四方面軍・東南方面制圧軍司令部要塞・ゾルモン要塞・ローラーナ帝国・第四方面軍・東南方面制圧軍・総司令官・アーノルド・ドズール大将司令長官室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ゾルモン要塞。


 

 正式名称は、ローラーナ帝国・第四方面軍・東南方面制圧軍司令部要塞・ゾルモン要塞と言う。



 それはローラーナ帝国本国から見れば、南東部の防衛拠点にして、東方勢力を征伐平定をする為に作られた難攻不落の大要塞である。






 その昔、ローラーナ帝国が、このユーラシナ大陸のユールッハ地方の東方地域であったゾルモン地方の国々を征服し、ゾルモン地方の王国であったゾルモン王国の城を要塞として再建築したのが、このゾルモン要塞である。



 ゾルモン要塞は、ゾルモン内陸海のど真ん中に在るゾルモン大島諸島の全地域と地下大洞窟から成り立っている要塞であり、新旧5千もの艦船から成る艦隊と400万もの大軍勢を有する勢力を誇って居た。




 数多の有能な人物や武断的な人物が統率を取って来た要塞であり、今現在は、武断的で物量戦主義な性格を持って居る人物として世界中の政府と軍部から注視されているアーノルド・ドズール大将が、このゾルモン要塞とこの地方の軍勢であるローラーナ帝国軍・第四軍団所属・ゾルモン軍団を取り仕切っていた。



「うーむ・・・・ガミトフの奴め、思いのほか健闘したと他と言う所だろうな?」




 

 ゾルモン要塞の地下深くに在る総司令室では、2メートルもの巨漢の男が、その半分ほどある机と椅子を使いつつ、身長差でとても小さく見えてしまう報告書を読んでいる。


 


 彼こそが、このゾルモン要塞を取り仕切っているアーノルド・ドズール大将その人だった。



 巨体とスキンヘッドの頭が良く目立つ人物で、身体の彼方此方には、火傷や切り傷の痕がとても良く目立って居て、歴戦の猛者である証とも見て取れていた。




 その彼はレジェンダリア諸島攻略戦、後に歴史書に刻まれ呼称されて居るブラキュリオス湖畔紛争の結果が書かれて居る報告書を読んでいた。




 ブラキュリオス湖畔紛争の終結から僅か二日余りで、この結果を知り得て居るのは、彼も優秀な諜報機関を抱えて居るからであった。



 何故かと言うと、簡単に言ってしまえば、戦闘を行っている場所付近を諜報員に遠くから眺め見させて居るからであった。




「はい。ですがドズール閣下、これで我々の当初の目的通りに事を進めらるかと・・・・・・・・・・・・・」




 この司令室には、もう1人居た。ドズールの腹心と言われる人物。デナンズ・フリーザー中将である。



 彼は冷徹で嫌らしい手口で相手を残酷に追い落とす事を得意としている。



 彼のガミトフも手駒所か捨て駒にして利用すると言う謀略策をドズールに献じて居たのも彼であるのだ。



 ドズールと違い、身長は170センチくらいで、細い体格をしている。



 ドズールと比べると、とても頼りにならなさそうに見えてしまうが、軍団の指揮と作戦力で、それをカバー出きるドズールの軍には欠かせない知能派の人物である。

 



「ぐはははっ!!そうでなければ困る。」



「折角、貴重な兵器の数々でも有る移動要塞戦艦デストロイヤーとムーラ・ザーメ帝国立兵器研究所の兵器を生贄にした意味が無い。」



「我がゾルモン軍団によるオローシャ帝国攻略作戦と東西の反ローラーナ帝国勢力の分断作戦の同時侵攻作戦。」



「これにより、ユールッハ地方は東方諸国との連絡と補給網が寸断され、何れは倒れるか、我が帝国が一気に制圧する事が何時でも可能と成る重要な大作戦。」



「しかし、その作戦を遂行するに当てって懸念材料と成ってしまって居るのが、600年振りに発生した転移災害により、異界より新たに現れたと言う異界国家ニホン国とその関係国家群。」



「そのニホンから何らかの理由で派遣された海軍艦隊は、西へと遠征して来た事は流石に焦りましたな。」




 ドズール達ゾルモン軍団は、新たな転移国家群の出現の情報を聞き付け、その動向の警戒と監視をして居た。




 そして、最近に成って行き成り西方へと派遣されて来たニホン艦隊こと、ダバ派遣艦隊の西方への派遣に慌ててしまって居た。





 その目的が親善であれ、敵対的な援軍や何らかの物資輸送であれ、今の帝国と日本の関係状況では、シベリナ連合各国に味方するであろう事は明らかと踏んで居たからだった。



 その原因が東方での各ローラーナ帝国軍勢力と異世界転移国家勢力との偶発的な武力衝突が原因だったからだ。




「全くだ。東方方面軍の連中が、面倒な騒ぎを起こしてくれおってっ!」



「特に第一外征艦隊のギワザンめが、手柄を欲しさに勇んでニホン本国の在る海域に攻め掛かり、逆に奇襲を受けた挙句、手痛く敗北しおってっ!」



「我が帝国は、勝てば官軍と声高に言えるが、帝国が戦いを挑んで負けてしまった相手が見知らぬ国では、逸早く講和か停戦の交渉しようにも交渉のしようが無い。」



「幸いな事にヴァロニカと言う田舎皇女の小娘が、昔の縁の伝手を使って彼の国と仲介に入るらしいがな。」



 どの出来事も忌々しいとドズールは吐き捨てた。




 栄えある大帝国である祖国が、敗戦して居るだけでもイライラするのに、どの戦線も見知らぬ異界国家にコテンパンに打ちのめされた事に、物凄く腹を立てて居たからだった。



 その彼が一番に嫌いな事は、別の戦線の勝手な振る舞いのせいで、自分が行う作戦の足を引っ張り、邪魔される事である。



 東方戦線のバラバラな戦いが行われたお陰で、オローシャ帝国攻略作戦に、大きな支障が出始めたからである。



 その帳尻併せに行ったのが、ガミトフの行ったレジェンダリア諸島攻略戦であった。



 だがしかし、これは彼らにとって失敗しても構わない作戦である。



 勝ったら勝ったで、忌々しく邪魔なニホン艦隊は、大打撃か逃げ帰ると見立てて居たからだった。




 それが叶わなくても、強行突破くらいは、するだろうとも彼は想定して居た。




 だが、その結果はガミトフの一方的な大敗北である。



 まぁ、これは良いと吐き捨てて、ドズールは気にせずに居る事にした。




「どの道、今は遥か遠き東方の事は、如何でも良い。」



「今の所、この世界の諸国どもは、東の果てに、物珍しい物が現れたと注目して居るだけだっ!」


「その隙を突いてオローシャ帝国とリユッセル北欧同盟を叩き潰すっ!」


「その方針は、決して変わらんのだっ!!」



「必ずやこの大作戦を成功させ、ドズール閣下の名声を益々高めてご覧に入れましょうぞっ!」


「それに我が策略に措いて、彼のニホン軍の海軍艦隊や陸軍部隊も、大分消耗仕切って居る筈。」



「如何なる精強な軍と兵器を有して居ても、兵達は疲労困憊となり士気が大分下がり切り、とても戦える状態とい言えませぬ。」


「更には予算や食料、それに弓矢の矢、それに砲弾の弾や燃料に限りが御座いますゆえ・・・・・・」



「そして、ダバード・ロード王国とオローシャ帝国の間には、パイプ・ライン大河とその支流が通っては居ますが、険しい山脈に阻まれ、陸と水上からの援軍は、そう簡単には送れませぬ。」


「更には隣国で援軍を出せる筈のダバード・ロード王国軍は、ニホン軍との合同で、レジェンダリア諸島攻略戦の阻止の為に、援軍と陽動を大規模に行いました。」


「そのせいで今一度の予算と物資に加え、軍勢を揃えての援兵の派遣等は、当面の間は出きないとの見立てすらして居ります。」


「ふっ、相変わらず我が配下の幹部将校ながら、末恐ろしい奴よ。」



「全ては我が策の内で御座います。」



 オローシャ帝国に危機が迫って居た。



 強力で大軍勢を誇るドズールが率いるゾルモン軍団の侵攻が間も無く開始され様として居たのである。

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