94話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦  (グリクス地方奇襲戦 10)

 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月6日・午前1時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国領・グリクス地方州・グリクス地方軍団・グリクス地方西方戦線区・グリクス市・グリクス要塞から西へ凡そ、60キロ付近・グリクス第7要塞近隣から13キロ地点・日シベ合同作戦軍第二部隊にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 陸自第一小隊とアルガス公国軍・第一上陸小隊との合同部隊たる日シベ合同作戦軍第一部隊が、帝国軍の輸送大隊に対して、攻撃を開始した同時刻。


 陸自第二小隊とアルガス公国軍・第二上陸小隊との合同部隊である日シベ合同作戦軍第二部隊は、上陸地点から凡そ13キロの所に在るグリクス第7要塞に攻め掛かろうして居た。


 第二合同部隊は、体勢を整えつつ、攻撃開始の合図を待っていた。



陸自第二小隊に所属する普通科隊員等は、雷帝の魔導師と言われて居るリナ・ミーサガ・リンバースが、この部隊に同行をして居た。



 日シベ合同作戦軍第二部隊が、攻め入ろうとして居る第7要塞の周辺には、グリクス地方軍団・第7要塞に所属する将兵の為に築かれた、福利厚生と物流の維持を目的とした町が築かれて居る。


 この町が築かれた目的とは、将校や騎士、それに兵士らが住む専用の福祉軍事を兼ねて居る施設である。



 警備の薄い西側周りで、町に潜入した陸自第二小隊とリナらは、歩哨や警備隊に所属して居る帝国兵士達を次々と無力化して制圧して行く。


「スリープ。」


 リナが唱えた眠りの魔法でパタパタと倒れて行く警備隊の帝国兵士。


 それをナイフで止めを刺して行く陸自隊員たち。


 捕縛ではなく確実に息の根を止める。


 如何なる戦場と成った場所に措いての中途半端な手心を加えた行為は、作戦の成否を分けるとの決意から置鮎一佐は、要塞戦での戦いでは、相対する敵将兵に容赦しない覚悟を決めると訓示して居た。


「何か、貴方達だけに嫌な事をさせてるわね。」


「いえ、思う所は・・・・我々にも有ります。」


「ですが、卑怯とは考えない様にして居ます。」


「実戦・・・これが初めてなんでしょ?」


「はい・・・・・・」


「気分が悪くなったら言いなさい。」


「余り得意じゃないけど、催眠魔法で気分くらいは紛れる様にするから。」


「気を使って貰って、何だかすみません。」


「ホントは派手に暴れた方が、貴方達の負担が減るのだけれど、この要塞を落とすと成ると、手始めに内部へと潜入して、其処に居る人員を無力化してから、ぶっ潰すのが、一番に楽な方法だから。」


 リナは、この要塞襲撃の戦いが、初の実戦だという自衛隊員らを気遣いつつ、何時もの様に仕事をこなして居た。


 勿論、同行して居る自衛隊らも真剣な表情で任務に勤めていた。


 銃口にはサイレンサーが付けられ、選抜して居る全ての隊員達は、陸自の精鋭たる第1空挺団には、やや及ばないかも知れないが、何れもレンジャー訓練に合格を果たして居るレンジャー持ち隊員達であった。


 この世界に現れた日本国自衛隊の陸上自衛隊内では、来るべき脅威に備えてレンジャー課程・教育を受けている隊員達が多く居るが全体の12パーセントしか居ない様だ。


 現実世界に措ける陸上自衛官約14万人のうち、約8%の隊員がレンジャー資格を持つらしい。


 なお、レンジャー隊員に成っても、手当が増額するなど、直接的な待遇面での優遇は無い様だ。


 その中でも優秀な隊員達が第一空挺団に入る事も在り、更に精鋭中の精鋭隊員は、特殊作戦群への入隊が許されるが、其処への道のりは狭き門である事は、素人目であって有名な話と聞く事もあるだろう。


 そんな訳でダバ派遣艦隊に参加をして居る陸自レンジャー持ちの隊員達らは、決して弱くは無い事を付け加えて置く。


 そんな陸自隊員達が戦う戦場に措いて、パシュ、パシュと音が小さく聞える銃声が、静かに町中に響き、制圧ヶ所を徐々に増やして行きつつ、街中へと自衛隊員等が徐々に浸透して行く。


 作戦開始から25分、南に向って進んで行く隊員らは、第7要塞の北門前へと到達する事に成功をして居た。


「行けっ!」


 通信機とハンドサインで、指示を出して行く各隊員。


「慌てるな、配置完了の知らせが入るまでは、各分隊や小隊との動きを併せろ。」


 やがて準備が整い北門部隊の配置が終わる。


「こちら第1分隊、東門配置完了。」


「第3分隊配置完了。」


 各分隊の配置が終わった。


 因みに南門は開けて在る。


 閉じ篭られた敵の将兵達が、やけっぱちに成って、頑強に抵抗されても面倒だからと言う理由からだ。


 まぁ、それでもアパッチが追い回す事に成るのだが・・・・・・・・・・


「よしっ!!突入カウントダウンっ!!5秒前っ!4、3、2、1。今っ!!突入っ!!!」


 自衛隊らは門を警備している守衛所に襲い掛かった。


ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!


ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!


ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!


ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!


ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!ダダダダダダダダッ!!


「報告っ!」


「クリア。」


「クリア。」


「クリア。」


「クリア。」


「ルームクリア。」


 北門の制圧は終わったらしい。


「ライトニングボルトおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」


 隣の守衛所では黄色い閃光が一瞬だけ光り輝く。


 その部屋の中では、こんがりと焼けた黒墨と化した遺体が残って居た。


「こっちも制圧したわよ。」


「了解っ!!」


 リナからの報告を分隊長が答えた。


 分隊長は、リナがたった一人で、敵兵20名を倒す等と、つくづく異世界に来たのだなと感じて居た。


 同時に他の隊からも、攻撃目標を制圧したと報告を受ける。


 これで要塞以外の敵地は制圧した事に成る。


「井上一佐、各隊配置と先遣部隊の要塞外周部の制圧が、完了したとの事です。」



「分かった。これよりグリクス地方軍団・第七要塞に突入する。」


「各員っ!!奮励努力せよっ!!突入開始っ!!!」



 井上一佐の命令で、陸自車両とヘリ部隊が、一斉に第7要塞へと突入する。



「先ずは、ご挨拶するぞっ!」


「挨拶っすか、隊長?」


「構わんっ!!手始めヘルファイアを使うぞっ!!数は3発。場所は要塞中央だ」


「了解っ!!」


「こんな夜更けに、お邪魔して、どうもスミマセンってなっ!」


 黒多宗近一尉は、AH-64D戦闘ヘリコプター(アパッチ・ロングボウ)7機を率いて、第7要塞のど真ん中に向って、AGM-114ヘルファイアを発射した。


 一号機に乗って居る黒多一尉は、冗談を言いつつも何ともえげつない場所に、ロケット弾を撃ち込んだと言える。


 古今東西の軍の指揮系統の集中している要塞中央に向けての行き成りの攻撃は、その効果は絶大と言える。


 この異世界でも同じ事だと言えるだろう。


 その結果は、一気に帝国軍を混乱に陥るのだった。


 ドッカーンと派手に爆発する第7要塞の中央司令室は、司令官長官以下、主だった将校の寝室や私室も有った為、運悪く彼らは何が起きたのかさえ分からずに死体を肉片へと変えながら、バラバラにと成って散らばって行ったのだった。


「けほけほっ!!けほっ!ごほごほっ!けほっ!!今の何だっ!!!一体、何が起こったっ?」


 要塞内の警備兵や常駐している夜勤番の兵士達は、リナや自衛隊の攻撃を運良く受けて居ないので、その内部ではまだ、多数の生き残り居た。


 外の宿舎では、銃弾や焼け焦げている死体が転がり、また手榴弾での爆破の直撃を喰らう者まで居た。


 また、要塞の敷地が広いせいか、この手のある程度の大きな音は、気にしない者が多く居た為に、騒ぎが大きく成らず、奇襲部隊の進攻を許す結果とも成ってしまったのであった。


 ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!


 ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!


 ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!



 ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!


 ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!ババババババハバッ!!!ダダダダダダダダッ!!!




 アパッチのM230 30mm機関砲や5.56ミリ機関銃が各所の門で弾をばら撒く。


「がはっ!!」


「ぐはっ!!」


「けほっ!!」


「ぐげえっ!!」


 空からはヒューイことUH-1J多用途ヘリコプターとCH-47JA 輸送ヘリコプター4機が飛来し、陸自隊員をロープによる降下で要塞内を制圧して行く。


「GO!GO!GO!GO!」


 隊員達は、ヘリからの小銃や機関銃の援護を受けて、小隊事に互いに援護と連携を取りつつ、制圧をして行く。


「敵襲っ!敵襲っ!敵襲っ!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーっ!」


「何所の連中だっ!?」


「くそっ!近付けないっ!!」


 ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!


 ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!


 ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!ダダダダダダダッ!!



自衛隊の銃弾の弾幕の前に、成す術も無い帝国軍の守備兵。



「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!」」」」」


「新手の敵兵600っ!!11時の方向っ!!」


「くそっ!!流石は要塞だけは在るなっ!!!これでは手が足りないっ!!!。誰かっ!!!」


「任せてっ!!!」


 インカム通信機を付けているリナは、北側から南に向って居た所に居合わせてたCH-47JA輸送ヘリコプターの元へと走り出す。


「えっ?!」


 CH-47JA輸送ヘリコプターの一機が降りて居る地点に、果敢にも挑むローラーナ帝国軍の守備隊。


 自衛隊側の攻め手の人員が少ないせいで、自衛隊陣地の守りの一部に穴が開いて居り、その隙を突いたのである。


「うおおおりゃあああぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!サンダーアロー・フラッシャーあああぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!!」


「「「「「ぎやややあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!」」」」」



 リナは、両手を正面に向って思い切り翳すと、何百もの雷閃光の矢を雨の様に撃ち放った。


「イッチョ、上りっとっ!」



「すげぇ・・・・・・」


「正に雷帝の魔導師・・・・・・」


 一瞬で帝国の守備兵600人を打ち破る。


 自衛隊員の1人は、間じかで見るのも初めてである魔導師が撃ち放った、魔法の威力の凄まじさに驚嘆する。


「他に何所か手が足りていない?」


「こちら井上だ。リナくん。」


「そのまま南西に向ってくれ、分隊の一部が足止めを喰らって居る。」


「りょーかいっ!!!」


 井上一佐は、この戦いの序盤でのリナの戦いぶりの動きと能力が、とても使えると判断して、隊員達に積極的に協力する様に伝えて居る。


「すっげぇーよなっ!」


「ああ、そうだな。俺、あんなのは、昔のアニメでしか見た事ないぞ!」


「他にも居んのかな。ああ言うの。」


「居るだろうな。」


 凄まじいリナの活躍に、頼もしさと他にも化物染みた人間や亜人が居るのかも知れないと不安にも成る隊員達であった。


「こちら西門、RCV隊(87式偵察警戒車)門の周りは制圧した。」


 西門の制圧をして居るのは、87式偵察警戒車と89式装甲戦闘車。


 多数の普通科隊員が、89式装甲戦闘車から降車して突き進む。


「東門のMCV隊(16式機動戦闘車)こちらも門を押さえた。現在掃討戦に移行中。」


 ズドーンと言う音が、無線通信機越しに105ミリライフル砲の轟音が聞えて来て居る。


 どうやら建物に向って砲弾を撃ち込んで居るらしい。


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!



 その近くでは89式装甲戦闘車2両が待機して居た。


 12.7ミリ重機関銃M2を撃ち放って味方の援護をして居た。 


 

 87式自走機関砲2両と10式戦車3両は、要塞内の中央の奥深くまで進出して、87式自走機関砲隊が、南東方向に機関砲を向けつつ、その間隔を空けての砲撃をして居た。


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!


ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!ズダダダタダッ!!



 この戦いに措いても、対空機関砲車両と言え、立派な戦闘車両にして要塞制圧には欠かせない車両である。


 10式戦車の対空護衛として随伴していた87式自走機関砲隊。


 後方のヘリ部隊の方は、アッパッチが護衛に付いて居る形で、万全を期して居る。


 そのアパッチ隊は、司令部を攻撃した後に、飛竜騎士航空隊の飼育所と宿舎、滑走路を破壊し尽くして居た。



「くっ、こんな所にあんな怪物どもが・・・・・・・・・」


 虎の子である10式戦車隊は、敵陣中央司令部の手前で、味方の援護要請を受けて来て見ると、フレイムランドドラゴンやトリプトドンを多数配備して身を固めて居る一隊の姿を見付けた。



 冬眞友紀一射は、初の実戦と手だての分かり辛い相手に手を焼いて居た。


「隊長、撃っても撃っても切りが有りません。」


「残弾の事も有ります。」


 更に3体、何なら彼の鉱石で作られたと思わしき人形が、後方からビームを撃ち込んで来ていた。


「それに白銀色のアレは、何らかの鉱石を利用して作られたゴーレムとか言う兵器だと思われる。」


「特にあの白銀色の光線の威力の厄介だな。」


「今は正面の守りに固執して居るが、あれが前進して来たら、今度はこっちが不利に成る。」


 冬眞一射が厄介と言ってるゴーレムとは、エレクドラリュウム・ゴーレムと言って身長が55メートルある魔導人形だ。


 オリハルコン鉱石やミスリル鉱石よりも堅いとされるエレクトリュウム鉱石を多量に使われている人型無人魔動兵器で、最大の特徴は、頭部の額に有るエレクトリュウム結晶石から放たれるエレクトリュウムマギウス砲である。


 これを魔導障壁を展開せずに生身で受けたら、消し炭に成る事は間違いなしである。


 冬眞一射は、この初の実戦に措いて、指揮官として如何するかの判断に迫られてしまうのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る