62話 戦後処理と新たな戦いの風の前触れ 1
アースティア暦 1000年・西暦2030年・ 6月3日・午前11時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・九州島地方・福岡市東側郊外地域・神部町・異世界国家交流総合支援省・交援省防衛監督指令室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「午前11時10分の現時刻を持って停戦を確認しました。」
「皆さんお疲れ様でした。」
竜史が現場からの報告を受けて、高らかに停戦宣言をする。
僅か2時間半弱前後での戦争の終了は、この世界の常識からすれば、余り例の無い出来事である。
この世界での戦争とは、数十時間ないし、又は1日から数ヶ月に及ぶ事を指して居た。
それが2時間弱以内で、片を付けた事をシベリナ連合各国は、各々の在コヨミ皇国大使らと、博多に在る日本外交事務連絡所に、派遣されて来て居るシベリナ連合の各国の外交官が、所長を務めて居る者達からも聞かされて驚愕するのであった。
「ふぅ、何とか成った~っ!」と一安心する竜史。
「皆さん。まだ、朝食を食べ損ねて居る人は食堂へ、急ぎの人は、おにぎりとお茶などを用意してあるそうです。」と竜史は言う。
「仕事に差し支えない様に取りに行ってくれ。」
「だがしかし、今からだとお昼ご飯に成ってしまうがね」と林課長が防衛監督指令室に居る全員に声を掛けながら、そう締め括ると笑いを誘う。
戦闘が始まった事は、突然の事だった事なので、朝から慌しかった。
そんな感じで、まだ朝食を取って居ない職員の為に、朝から交援省の職員等の有志で、手漉きの料理上手な者等が集まり、食事を作ってくれて居たらしい。
勿論、各課の課長クラスの許可も出でいる。
もっとも今からだとお昼ご飯に成ってしまうのは否めないが・・・・・・・・・・・・
「しかし、良く飯なんて作れたな。」
「何でも食堂を仕切ってる職員が急遽、朝から呼び出されたらしい。」
「ああ、確かにな。飲食関連の業務は調理師の指導の下でないと作業ができんからな。」
「そう言えば、割烹着姿の紅葉殿下を見たって奴が居たな。」
「えっ?何時の間に、食堂なんかに行ったんだよ、ソイツはよっ!」
「朝食と言いたいが今からだと昼飯だな。早く飯食って、午前中にやる予定だった仕事を早く片付けたいんだとよ。」
ガヤガヤと色々な話し声が聞えてくる。
戦闘が終結して、緊張感が薄れたのも有るのだろう。
そんな賑やかな其処へと、ある人物が現れるのであった。
「さてと、林さん、藤原さん、伊丹さん。これから僕は食堂に行きます。」
「急だったので、朝ごはん食べ損なっちゃって・・・・今からだとお昼ご飯に成ってしまいますね。」
「そうなのか?だったら急いだ方が良い。」
「この後に大臣は書類の山が待ってるから、ロクに食べる暇も無くなるぞっ!!!」
林課長は、竜史に急ぐよう促した。
「はい、行ってきます。」
「それはダメですねっ!」
「えっ!?」
「少しだけ、サボる積もりでしょうが、そうは行きませんね。」
「ああっ!?まさか・・・・この声は・・・・・」
「お迎えに参りましたあああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!」
「ひひっ!!いっ、いいい何時の間にいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーっ!?」
丸でオープニングソングで「地獄っ!地獄っ!素敵な・・・・・」と言うフレーズを楽しそうに歌う地獄の閻魔様が、この世のいや、あの世の執務室で待ち伏せされて、掴まったみたいな悲鳴を竜史は上げて居たりする。
彼は後ろに振り返ると、香月徹財務課長と白井由美と言う財務省から来ている職員の二人が立って居た。
香月財務課長の別名は、官僚の鬼。
霞ヶ関の鬼とも周囲から言われて居て、今は勤め先である財務省に居るせいで、財務省の鬼と言われ恐れられて居た。
そう、彼は仕事に措ける信条に措いて、丸で何処かに居る地獄の秘書官様の如く「天国に成るのも地獄に成るのもあなた次第」と、全ての職員に言い放って居た。
正に永田町と言う場所は、亡者(代議士の先生)達がお勤めをして居る日本と言う名の地獄を正しく管理している仕事の鬼達の巣窟かも知れない。
「一息つきたいのは、分かりますが、結構な量の仕事が在るので、今からは執務室に来てやって貰います。」
「紅葉殿下が、朝食をご用意してくれて居ますので、直ぐにでも仕事に戻れますよ。」
「えっ、でもその、賑やかな方が、食事も楽しいのでないかと・・・・・・・」
「つべこべ言わない、さっさと行くんですっ!!!」
「どうして分かったのおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!?」
「高見くん、貴方は監視されて居る様な物ですよ。特に彼女にね。」
「ふぇ!?」
「良かったですね。面倒見の良いお姉さんが近くに居て、実に羨ましい。」
そんな人は、1人しかいない。
あの皇女殿下は、先回りして竜史の逃げ道を塞いだらしい。
竜史は食堂で少しだけ、休み時間を楽しむ腹積もりだったが、そうも行かないらしい。
彼は決してだらけて仕事に挑んで居ないが、仕事は至って真面目で、そつなくこなして行くタイプだった。
でも職場の中には、稀に暇をちょっとだけ作れる奴が居るだろう。
例えば役所で書類整理と言う穴場スポットで、休憩して居る男とか、こっそりと漫画を読んで要る幹部自衛官とか、勤務先の公園前派出所交番で漫画やプラモ作って居る巡査長とか、果ては異世界のに在ると在る王国で、執務を抜け出して釣りとか城下でうろついて要る国王とかね。
そんな素行を把握している紅葉は、逃げ場を塞いで、さっさと仕事しろと竜史の尻を叩いているのである。
「くうううぅぅぅ!!あの陰険皇女がああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
竜史の悲痛にも似た悲鳴が響き渡る。
職員の中には食堂でにこやかに、食事の仕度を手伝って居たのは、この為かと言って納得したのである。
しかも、竜史専用に出された料理は、母親が作って居た味付けと同じ物だったらしく。
彼は「・・・・・・・母さんもグルなのか」ぼやいて居た。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月3日・午前11時45分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本国・日本国領海・沖縄県・東シナ海近海域・日本国海上自衛隊・護衛隊群連合艦隊・通称名「南雲護衛隊群」旗艦・航空護衛艦あかぎにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もう3日も何も食べていないマーヤは、航空護衛艦あかぎに保護されて居た。
そして、彼女の容態を見た衛生長は、半ば呆れた眼つきで、単に腹を減らして目を回して居るだけと診断した。
其処で海自隊員が担架を使ってマーヤを食堂へと運び、補給長に彼女と敵国の騎士達に料理を振舞う様にと、南雲一佐からお達しが出ていると伝えられる。
「はぐはぐはぐはぐはぐっ!!!くちゃっ!!!くちゃっ!!!もぐもぐもぐもぐっ!ごっくんっ!!!おふかりなほだっ!!」
まだ口の中に食べたモノが残った状態でマーヤは、おかわりと言って居た。
今、彼女が食べているのは海自名物とも言えるカレーである。
しかも、ロースカツが乗せられて居る特性レシピのカツカレーだ。
一般の方々も良くご存知の海軍カレーとして知られて居るだろう。
海自のカレーは、一艦に一つの特性レシピが、代々継承されて居て、各基地の近くでもそのレシピカレーが食べられる所も有ると言う。
それに女の子なのに、こんなにもはしたない姿をさらして居た。
マーヤは食堂で料理の匂いがし始めると、目をパッチリと覚まして飛び起きた。
そして、どこぞの魔導師か海賊、戦闘民族みたいに食事をがっついて頬張り始めたのである。
そりゃ飲まず食わずで、数日の間、風で飛ばされ続ければ、こうなるよな。
「おいしひい。」
どうやらカレーが気に入ったらしい。
涙目で喜びながら食べる姿を補給長と補給員らは、ハムスターの如く可愛い小動物を見たかの様に、彼女の求めるままに料理を次々と出して行った。
マーヤの目の前には、ヴァロニカ達も食事をしていた。
こちらはビーフーシチューとサラダに、ご飯と味噌汁と言う日本の古き洋食食堂で見かける献立を食べていた。
何故こんなメニューが成り立ったのかと言うと、120名の騎士と1名の頭の可笑しな女の子が、お客様扱いで乗艦する事に成った。
当然ながら、手当ての後に、最低限のいや、好印象を持って貰う位の持て成しはすべきだろう。
其処で和洋の料理なら、馴染みが有る筈と紅葉が教えてくれて居た。
彼女達に出された食事は、バイキング形式を取って居て、様々な料理が並んでいる。
それらを食べ切れる分だけを持って行く形式を取って居た。
出された食事の質の良い料理の良い臭いに、ドラグナー皇国(おうこく)のレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の面々は、馴染みの無い接待の持て成しに、戸惑い気味であった。
何せ、この世界では、一時滞在の敵国の将兵に対して、高そうな医薬品で治療をし、質の良すぎる食事を振舞い、寝床まで用意してくれる破格の待遇と言うのは有り得ない。
何か有るのではと、勘ぐってしまうのも仕方が無いのだが、マーヤの遠慮の無さ過ぎる行動が、返って騎士団の者達に、考え過ぎだと言う事を示して居た。
ヴァロニカもマーヤの行動は、何時もの事だと慣れている様子で、その後に続いて「遠慮するのは相手に失礼だ。」「それに、こんな美味しそうな料理が冷めるのは、実に勿体無い。」と言って適当に好きなもの手に取って行く。
そんな中に、何故か町中に在る古き良き、食堂風のメニューが、偶然にも揃ったと言う訳である。
付け合せには、ご飯と味噌汁以外では、パンと野菜スープも用意されて居る。
パンは沖縄の陸自の輸送ヘリコプターのチヌークでの空輸であった。
何で其処までするのか?と言うかも知れないが、日本人は、何故かこう言う気遣いをするから、様々な人々達から好かれるのだろう。
それだけ、日本が今回の事後処理の会談での意気込みを感じられる出来事だった。
「うん、このスープの肉は、何と言う美味しさだ。」
「我が国では、こんな肉を作れないし、宮廷の料理人に、これと同じ調理をさせても、この味には届かないだろうな。」
何時も厳しい顔でクールな表情をして居るヴァロニカの顔に笑顔が見受けられた。
ビーフシチューに使って居る肉は、安物では有るが、国産の和牛肉である為、不味い筈が無い。
この世界の在日アメリカ海軍を取材した然るジャーナリストは、何所のお肉をお使いに成っ居るんですか?と尋ねると・・・・・・・・・・
「コーベ・ビーフっ!!!」と搬入作業していた海軍の補給科の兵士達が、一斉に返事をして居る程である。
和牛とは、そんな魔力を秘めた肉なのである。
地球に住まう全世界の人達でも、この異世界の人達でも、一口食べれば、その美味しさの虜になり、今までの肉は、何だったのだろうと思うのは想像出来る。
さて、その和牛をトロトロに成るまで野菜と一緒に煮込んであるビーフシチューを食べて居るヴァロニカは、最早ハシが止まらないならぬ手に持って居るホークとナイフが止まらないと言う状況下に有った。
一方の和食コーナーに、異界人でも見慣れないシチューに似ている料理がある。
今や家庭の味として広く知られている料理の肉じゃがも大評判であった。
肉じゃがは、明治頃に留学から帰国した人が、もう一度ビーフシチューが食べたいと料理人に有り合せの材料で作らせて所、何故か美味いと言う結果を生んで広まった料理である。
肉じゃがとは、言わば日本のビーフシチューである。
補給長と補給員らは滅多に無い外からお客様に腕を振るうと言う事態に、張り切り過ぎている間も否めなかった事も付け加えて置く。
この後ヴァロニカとレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の面々は、龍雲海沖海戦の停戦と事後処理の手続等の為に、コヨミ皇国の万代港を経由し、其処から政府専用機を使って福岡市に向う事が、日本政府内で検討され始めている。
場合によっては、交援省が間に入って面会して、雑務を終えた上での日本政府の主要な大臣クラスとの会談の可能性も視野に入っている。
因みに職務上の関係で、竜史は特別枠に当たるので、交渉の窓口と言うより受付での対応に近いとも言えた。
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