40話 自衛隊西方への大遠征。発動!輸送艦隊護衛大作戦・・・・・・なのです! 10

 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月1日・午前9時45分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・アルガス公国・アーダマ州・アルガス公国首都・公都・リガ・ミリィー・ディーナ市・ラーデイァシュ城・公王執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ブレックス公王のクリスとアリスらに付いての昔話が終わり、話は回想録から再び現代へと戻る。



「と言う事が有ってな。」




「しかし、余りその様な話は聞いた事ありませんが・・・・・」




「マトモな頭を持って居る者なら、『そんな馬鹿な』かと言ったり、風聞と聞き流すであろうな。」




「確かに。」とカミユが頷く。




「話は逸れたが、わしが居ない間の国元の留守を居残る閣僚・幹部官僚らに任せる積りだ。」


「二人はわしと共に、二ホン国へと行って貰う。」


「彼の地での国際会議が、このアースティア世界の行く末を決める重要な事となるからだ。」


「これは今から二人の顔を売り出して置くのも、必要不可欠だと思ったからだ。」


「だからこそわしは転移国家たる二ホン国からやって来る者達を見定める為にも、そして、ブラキュリオス湖での戦に備える為にも、その者等を見に行く。」


「ブラキュリオス湖の周辺を探らせて居るクリスとは、グラダマ市の庁舎で合流する予定で居る。」



「承りました。」



「分かったぜ。」



ブレックスは、日本国とこの二人が居ればまだまだ、我が国もそう簡単には傾くまいと思った。


 何れに王位を譲る前に日本に留学させるのも良いかも知れない。



 このアースティア世界に在る頭の国々よりも進んだ社会体制と先進的な統治政治を学ぶのも後々の為に成ると、その様々な考えを巡らせるのであった。





アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月3日・午後15時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・アルガス公国・グラバラカス州・グラダマ市・グラダマ湾港及びグラダマ生鮮市場商店街にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



時は日が徐々に傾き西に太陽が夕刻へと向きかける時刻、午後3時を回り始めていた。


 西方面海自派遣艦隊・通称・ダバード・ロード王国派遣艦隊・略称ダバ派遣艦隊は、パイプ・ライン大河を更に西へと進み、ラクロアナ王国の国境を通り過ぎ、アルガス公国に入国して居た。



 途中、同国の大河を警備するアルガス公国水軍の艦隊の臨検を受けたが、日本国の名前と、ダバ派遣艦隊に同行している高雄瑞樹と愛宕千棘の両名が、コヨミ皇国が発行した書状とシベリナ連合各国大使が書いた書類を手渡すと、すんなりと通行を許可してくれた。


 そして、臨検をしていた部隊長が、かがに乗り込み停泊予定地まで同行し、同港にて通行と入国の書類にサインする。



 この日の寄港地予定は、この国の第2の大きさを誇る交易都市、グラダマ市の港の近くに各艦が分散して停泊する事と成った。



 此処では、今から午後15時00分から翌日の午前3時まで停泊する予定と成って居る。



翌日の予定は、パイプ・ライン大河の難所の一つであるアセリナ王国との国境に広がる湖、ブラキュリオス湖を通る。



 此処は南の支流一つであるシャッポロ領へと続くシャッポロ川が南から東へと曲がりくねりながら東へと流れている。



 この場所に東西に凡そ800km、南北に凡そ580kmの長さと広大な広さを持った湖が在るのだった。


 アルガス公国とアセリナ王国の両方の国境付近には、幾つかの都市と城が建てらている。


 アセリナ王国側の方には、都市名の由来と成って居るツイン・ビール半島には、灯台と砦が建てられ、国境から20キロ離れた場所にツイン・ビール市が在る。


 アルガス公国は国境監視の砦とファン・ブランク市と言う城塞都市が在る。



 このブラキュリオス湖畔が何故、難所と呼ばれて居るのかと言うと、湖の中央には、アルガス公国領のレジェンダリア諸島と言う諸島地域が在るのだ。



 現在、南部の帝国軍とは、この島を巡って戦争と紛争が絶えない状況に有る。



 両者の勢力図は、西のアセリナ王国が250キロを統治し、東側の550キロを統治して居る。



 南側の150キロを帝国が支配して居た。


 南部の領土は元々シベリナ連合各国の固有領土で在ったが、帝国との戦争によって領土を奪われて居た。



 レジェンダリア諸島は、その中央に在って東西南北の交易と軍事上の拠点でも有るのだった。




 アルガス公国は、湖畔の諸島に過ぎないこの地域を一地方州として扱って居る。


 レジェンダリア州の州都は、諸島の中央から少し離れた西側の島で、一番の大きさを持っているセイジョン・ローグリア島である。


 その島の西よりに在るのが、セイジョン・ローグリア市と言う州都として使われていた都市が在る。




 此処には、州庁舎と防衛の拠点であるセイジョン・ローグリア城が建って居て、今は島民は軍関係者以外は居ない為に、庁舎として役目が成されて居らず、同地を防衛するアルガス公国軍の地方司令長官が拠点として使って居るだけであった。


 

 この諸島内には、この城を含めて、多数の砦と城が建てられ、北東側の島には本国との連絡と防衛にの為に使われるグラブンメイル湾港要塞が在り、其処から東側の島へと行くとカントルナ島・カントルナ砦と言う帝国領の東部側を監視する出城が在る。



 西に目をやると南西の島にセイローグ聖堂砦と言う石造りの教会を砦化した場所も在る。



 ほぼ西に位置する地点に在って、帝国領の西側の監視の役目を担って居た。



 そして南側を直接防衛する為の軍船が停泊するジャイアガル島・ジャイアガル軍港基地が在り、多数の大砲と軍船が停泊して居た。



 このレジェンダリア諸島は、北部側の水深が深く、中央から南に掛けての島周辺の水深が極端に低い。



 それ故に、島と島との間は架橋し易く、又は島との接続している浅瀬は日本の自衛隊装備の車両でも、余裕で行き来が可能である。



 島内の往来に付いてだが、特に大型船を使った乗り降りを行うには、中央から南部へ向う船舶は目的の地点まで遠回りするか、州都近くの西部のロー・デッニッシュ港か、北部のグラブンメイル湾港要塞港。


 南部のジャイアガル島・ジャイアガル軍港基地と東部のカントルナ島・カントルナ砦で下船して、別ルートにて島を経由し、陸路で中央へと向うしか方法がないのである。



さて、グラダマ市に港に着いた自衛隊の隊員達は、半減休息に入り、酒類は禁止とされて居たが、必要最低限の人員を残しながら、ある者は職務で補給物資を求め、ある者は日用品を求め、ある者は休養を兼ねて観光と市内散策へと足を伸ばして居た。


 日本は事前に世界共通通貨たるエイリス貨幣をコヨミ皇国を通じて購入して居た。



 このエイリス貨幣は世界中で発行され、作られる唯一不変的なお金と成って居て、その昔に海外交易を盛んにする為に作られたと言う逸話がある。


 しかしながら日本が活動資金を得るべく、大量のエイリス貨幣を搔き集める事は、コヨミ皇国内だけでは集める事が叶わない。



 其処で今回は、足りない分は同行している瑞樹達が約束手形をコヨミ皇国から発行し、停泊した国の政府へと提出し、エイリス硬貨を手にしていた。



 シベリナ連合各国はある意味、日本が落として行くお金を歓迎して居る様子だった。




 非番とされた自衛隊員等は、艦内で予算を扱う会計科隊員に両替をして貰うと、交代で23時30分までに港に集合と言う事を言われ、夜の市内観光をするのであった。



幹部らは同市内の市長や軍関係者の歓待を受ける事に成り、市庁舎に向って居た。


 市民達は、港の沖合いに停泊する巨大艦を見に行こうと、代わる代わる行きかって居た。



 暗がりに灯る町の明かりが戦争とは無縁の様に思えてゆっくりと時を刻んで居た。



港では接岸が出きる艦艇が岸壁に着けられている。


 岸壁には多用途支援艦のひうち・すおう・あまくさ。


 はやぶさ型ミサイル艇7艇が停泊され、最低限の警備がなされ、3時間の間だけ、敵意が無い事をアピールするべく、日本国内でも見られる様な一般人向けに開かれた船の一般公開を行っていた。



 但し、多用途支援艦は船を乗船し、甲板を一周、はやぶさミサイル艇は、一部の性能と用途を簡単に現地語で書いた案内板を設置し、船の近くを見せるだけに留まって居た。



 各艇内では他艦で炊かれたご飯とおかず、近くの出店で作られている料理が持ち込まれて夕食を取る自衛艦の姿も見られて居た。


 結構行けると美味しそうに食べて居たが、日本人と言う奴は、お米に合えば何でもおかずにする民族らしい。


 何せ、「お好み焼きは主食、ご飯はおかず」と言う歌まで有るくらいなのだから・・・・・・・・・・・・・



 はやぶさには調理器具が無いので、普段は出航前に仕出し弁当を積み込む事が多いとか、初めての国外遠征で特に困って居る事は、食事時間らしい。



 休息の停泊時に当番と成って居る近くの決められた船まで取りに行くらしいのだから、めんどくさいと言えた。



市内にくり出した需品科の隊員は、アルガス公国軍の補給部隊の兵士に付き添われて、食料の買出しに来ていた。



 勿論、自衛隊は十分な食料を輸送艦の冷蔵庫に保管しているが、日本政府は、この世界の食材の市場における事情を探る為に、各国が信用が出きると紹介された業者の食料品を試す事にしたのである。


 それに食品は新鮮な方が良いに決まってるのも理由の一つだった。彼らが最初に訪れたのは精肉店である。



「いらっしゃいませっ!!何に致しますか?」



「此処にある肉は、何時頃に卸した物かい?」




「へい、町の外にある精肉関係の牧場で生きたまま放牧して居ります。」


「ですので、その日に売る分のみを捌いて居ります。此処に有るのは、昼以降に卸した物ですぜ。」




「ほう、中々珍しい事をして居るな。」



需品科の隊員は、思わぬ出来事に感心して居た。



 店先には、出きる限り綺麗にして居る姿が見受けられた。


 それに生臭い匂いが余りしない。


 何より氷魔鉱石と言う魔石が使われ、ショウケース内を冷やして精肉を保存する事して居る事に大変に驚かされて居た。


 地球の途上国や新興国でも市場の衛生管理には違いが多い。



 冷蔵庫も無いこの異世界の市場は、この世界に有る道具と知恵で、此処まで新鮮なもの提供して居た。



 何より無駄に肉を捌いて置かない事を需品科の隊員は大いに感心して居たのである。



 その横で見ていたアルガス兵士は声を掛けて来た。



「如何でしょう。此処の市場は、シュヴァイン農場と言う所で作られた作物や家畜の物ばかりです。」



「シュヴァイン農場は、アルガスの北にある地方都市のキグミン市の郊外の農村にある農場商会です。」


「この農場商会は、国内各地の市場に家畜と農作物を提供して居ます。」


「各地方にも多くの農場を有し、こうして毎日、新鮮な精肉も手に入れられます。」


「此処なら貴国の厳しい食料安全の基準の法律もクリア出きるかと思いますが・・・・」



「う~ん、ヨシっ!試しに買ってみようかっ!」


「店主っ!牛と豚と鶏肉を店頭に見えて居る分を全て卸してい欲しい。荷車は市場の外に用意して有るから、其処へと運んでくれっ!」



「へえっ?! 此処に有るのを全部ですかい?お支払は・・・・・・・・・」



 店主は思わず客の支払いを心配してしまう。



 彼はアルガス公国軍と共に来た客は、どう見ても新規の客と見られ、店頭の物を全て買うと言う予想外の行動に出て来た事に戸惑う。


 更にはその支払いを心配するのは、当然とも言えた。



 どんな相手か分からないからである。



「現金だ、野菜も有るだけくれ、後で取りに来る。」



店主の目の前には貨幣の使用する箱が10箱ほど会計科の隊員がドンと言う感じに置かれた。


 ポカンと言う顔をした店長は呆けていた。


 地球ではローン払いが多い世の中であり、現金の殆んどは、銀行による送金が当たり前である。


 従って高額な取引を現金払いが出来るのは、経済的に裕福な人々だろう。



 勿論、この世界でも現金払いにも限度が有る。



 貨幣は嵩張るし、大量に持ち歩けば、忽ち強盗や盗賊、海賊又は性質の悪い何処かの国軍に奪われるのも珍しくない。


 横にいる案内役の兵士も、現地の市庁舎やダバ派遣艦隊の輸送艦から降ろした現金の箱の数に驚いて居た。



日本は取りあえず現地の流通する貨幣を手に入れる一環として、国内で売れ残っていた伝統工芸品や現地でも使えて、ゴミに成り難い物品をコヨミ皇国や出入りの商人に試しに売ってみた。



 すると、竜史と同行した日本政府の官僚は、品物に付いた値段に笑いが止まらなかった。


 竜史は、丸でラノベアニメか戦略ゲームの錬金術の様だと言い、藩主にして伊達商会を営んでいる伊達愛海も視察に来ると「直に家の商会にも品物を寄こしなさい」と言って経産省の担当官僚の襟を掴んで、遂には金を巻上げが如く、首を締め上げていた。



「あのーお金が、足りてないのか?」



「いえいえ、ですがこれほどのお買い上げです。キチンと精算した上でお支払いをお願いします。」


「お支払は港にお届けさせた時に行いますので、荷車のご用意は大丈夫です。私共で用意致します。はい。」



「分りました。では港で待っています。」


「大きな船なので直に分るかと、港でまつまえとおもえは、何処かと言えば、アルガス公国軍の方に、言えば案内して貰えますよ。それではお願いしますね。」




自衛官が立ち去るとホッと言う声が店主から漏れた。


 高額な現金を目の前にすると人は生きた心地がしない物だ。店主は自衛官と一緒に立ち去ろうとするアルガス兵士に言う




「あの~兵士殿、先ほどの方は、どの様なお方で?」




「ああ、店主。嘸かし、あの者らの支払いの仕方に驚いて居たのであろうな。」




「へい、あのような買い物をされる方など、大商人でも中々居りませぬ故・・・・・・」




「ニホン国と言う国から来た兵士の者らだ。とある任務の途中でな、この都市には、休息の為に立ち寄ったのだ。」


「ニホン軍がこの市場で食料の仕入れをするのは、本国から命令だそうだ。」




「其処でアルガス公国政府が一番に良い商品を扱って居る農場商会の一つとしてシュヴァイン農場を商会したと言う訳だ。」



「それは大変に有難う御座います。ですが、高が食料品を仕入れの件が、お国からのご命令ですかい?」



「ああ、そうだ。何でも此方での家畜や作物は口に合うか、又は彼らに害は無いかを試すのが目的らしいぞ。」




「家の商品は問題無いと自負致して居りますが・・・・・・・・・・・」



 店長は、店を貶された気分になって険しい顔付きをしてしまう。



「まあ、そう不機嫌な顔をするな店主。彼の国は食料の安全基準が、とても厳しいそうだ。」


「それに貿易も念頭に入れての購入だ。其処で我が国の政府は、此処を紹介してみる事にしたのだ。」



「そそっ、そいつは大変に有り難いのですが・・・万が一、不合格にでもされたらと思うと・・・・・・」



店主の表情は更に暗く成った。


 此処でヘマをすれば、最悪の場合、自分の首だけでは済まないからだ。



 国からの推薦で、ヘマをしたら商会全体の信用に関わるからだ。



「大丈夫だ。我が国の半分の農場を経営し、販売経営をしているシュヴァイン農場だ。きっとニホンのお眼鏡にかなう筈だ。ではな店主。」



用を終えた兵士が立ち去って行く。



 其処に居残る店主は、ひょっとしたらトンでもない取引き相手に出くわしたのかかも知れないと思いつつ、品物が売り切れた店の先に閉店の札を掛け、従業員総出で自衛隊へ持って行く商品の梱包と荷出しを開始した。




 店主は、この事を直ぐにキグミン市の本店にいる総支配人に手紙を出したのである。


 手紙を書いてる最中、近くの鮮魚店や香辛料と調味料を扱う店から悲鳴に似た嬉しい声が響いて居た。


 この日、市場ではニホンマネーの噂で持ち切りと成ったのだった。



 品物の代金を一括現金で支払う謎の国家、ニホンと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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