外伝8話 衰退した超文明の子孫達 後編

アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月2日・午前8時00分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・賀谷野藩・賀谷野市・賀谷野港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 此処はコヨミ皇国の北東部に在る賀谷野藩は、コヨミ皇国とラクロアナ王国の飛び地でシャン・ライア州の南端に接する国境の地方藩である。 


この地は北部宣政と言う人物が治めて居る。



 この藩は、西側に点在しているシベリナ連合と南側に有る南方諸国の中継貿易で栄えて居た。


 この港は、西方からやって来る魔導輸送艦の終着点として使われて居る。 


 西はリユッセル北欧同盟の各国からだが、一番の出発地点として上げるのなら、アルビオン王国の王都、聖騎士王都ロンデニュウム市から東へと向かうルートだろう。


 其処から主要な地域を回りながら東へと進むと、オローシャ帝国の 帝都・パリーニャへと至る。


 其処から更に東へ、パイプ・ライン大河を通って只管に東を目指し、ダバード・ロード王国のアルインランド州の州都・ベルクラネル市の近くのアイリッシュ湖を通ってパイプ・ライン大河をもっともっと東へと進んで行く。



 するとその行き先には、アセリナ王国の南部に在るテムリオン州の州都・ザーキオス市。


 アルガス公国のレジェンダリア州の州都・セイジョン・ローグリア市。


 ラクロアナ王国のシャン・ライア州・ロウデニィオン市を経由して賀谷野藩・賀谷野市に至る。 



今この港には、オローシャ帝国の東方の州で、フローレイティア州を管理して居るフローレイティア家のフローレイティア輸送商船商会の商戦艦隊に所属する五隻の空挺輸送艦と6隻の空挺魔導巡洋艦。


 更には一隻の空挺魔導戦艦が、海岸沿いに建てられている空挺魔導艦専用の飛行場に入港して居た。


 そして、旗艦である空挺魔導戦艦の艦長であるシェスカーナ・フローレイティアは、海軍中佐にして、フローレイティア州を治めて居る若き20歳の当主であった。


 親しい友人などからシェスカと呼ばれていて、紅葉とは付き合いの深い親友の1人に数えられる女性だ。


 オローシャ帝国は、中央政府が貴族称号持つ貴族領州と地方自治を認められている有力家に貴族称号与え、自治統治が認められて居る自治州が在る国で、それ以外の土地は国の直轄地として治められていた。



オローシャ帝国は巨人戦争と言う戦争の後に、オローシャ正統王国(第1次転移国家郡)とアース世界連合国(第2次転移国家文明郡)が合併し、帝国議会制国家であるオローシャ帝国を建国した。



 皇帝と宰相府を頂点にして、その下に帝国議会があり、上院と下院に分かれて居る。


 上院は10年以上勤めた軍人・官僚・地方長官職・有力諸侯で運営されて居り、下院は5年以上何らかの官職を務めた者か、何らかの国への多大な貢献している市民が成れるとされて居た。



その市民の例を挙げると、総売り上げが高い商人や工商組合の長だったり、農業や魚業で成功して居る者、博識の学者等が上げられる。


 今の所、普通選挙制度が無い為に、少しでも学や何らかの能力が高くないと議員に選ばれないのである。


 また、官僚は試験さえパスすれば、オローシャ帝国の国籍を持ったどんな生まれの身分の者でも成れて、上手く出世すれば議会や閣僚、宰相へ進む道も開かれて居た。



フローレイティア家は、旧アース世界連合国の有力輸送船商会を経営していたチャイルド家の分家の子孫で、爵位は伯爵位と、そこそこ高い地位にある家柄。



 5代前に本家が途絶えた関係で、フローレイティア家がチャイルドの土地と資産を受け継いで居た事により、多額の資産を有する資産家へと躍進する。


 更には当時チャイルド州と呼ばれていたフローレイティア州の自治州の自治権をも引き継ぐ事により侯爵家とも成って居た。



 そして、州の名前を自家の名前に改めて、今日に至っている。



 皇国の北の玄関口に当たる賀谷野の港に、簪を刺した銀髪ロングのポニーテールが海風で煽られている。


 背の高い長身とスラリとした細身の身体は軍人として、鍛えられて居る様子が見て取れて居た。


 そして、女性としてのスタイルもしっかりとしていて、筋肉が目立たない様にして鍛えられても居た。


 顔立ちは冷淡な雰囲気と気の強そうなクールな眼つきをして居る。


 その女性は、故郷たるオローシャ帝国政府とコヨミ皇国の皇女からの手紙に苛立ちを露にして居た。


 シェスカの手には魔力水晶通信による自国の大使館の大使から発行された代筆によるミランダ・ランティー女帝から勅令状と、コヨミ皇国に居るオローシャ帝国大使から手渡す様にと、頼まれたと思われる紅葉からの手紙が届けられて居た。



「ったくっ!!この糞忙しい時に陛下と紅葉もっ!!私を扱き使ってくれるなっ!!」



シェスカの服装は、何処かの宇宙世紀世界の地球軍見たいな青いレディーススーツ風の軍服のデザインで、下はミニスカートを彼女は穿いて居た。


 傍から見たシェスカは、高圧的なS(サディスト)風な女性にも見えてしまう。


 しかし、真面目なだけで、仕事に専念して居ると、目付きがツリ目へとツイツイ成ってしまうのだ。



 実際、他人も厳しい面も有るので、男性からご褒美、女性からは凛々しいお姉さまとして見られて居た。


 ひょっとしたら、ボンテージに棒ムチか縄ムチ持ったら、その姿は正に女王様に見えるだろう。


 しかし、隠れた趣味は可愛いものを集めているとか有るらしい。



 あと、押しに弱いとかが有ったりする。



 彼女は本国での軍の定期任務の前に、自分の家の輸送商船商会の仕事でオローシャ帝国からコヨミ皇国まで荷を運んで来て、これからコヨミ皇国で、南方からの交易品を積み込んで帰国しようとして居た所であった。


 しかし、コヨミ皇国のオローシャ帝国大使館から待ったが掛けられたのである。


 依頼元には、便宜を図って上で、輸送艦も別に用意するので、此方の頼みを聞いて欲しいと言って来たのである。



シェスカは本国と親友から同時に自身のスケジュールを邪魔された事に怒っていた。



 本当なら紅葉の元に殴り込みを掛ける所だが、もう直ぐ今回の依頼をしてくる一団が現れると言うのだ。



「今度会ったらあいつに文句の一つでも言ってやらないと・・・・・・」



「?」



彼女の耳には、聞きなれない音が、海向こうの遠くから聞えて来た。



ボオオオオオォォォォォーーーーーーッ!!と言う音だった。



 それは汽笛の音である。



「あれは・・・・・何よアレ、家の空挺魔導艦並に大きいじゃないか・・・・・」



汽笛を2回ほど鳴らす。現れたのは海上自衛隊の護衛艦隊と第一輸送艦隊である。



 護衛艦隊は、旗艦あたごを中心に、むらさめ・うみぎり・とね・まつゆき。


 おおすみ型輸送艦を中心におおすみ・しもきた・くにさき。


 ぼうそう型輸送艦ぼうそう・ちた・さたの6隻である。


 護衛艦隊の護衛艦達は、一糸乱れぬ動きで素早く第一輸送艦隊に進路を譲ると、第一輸送艦隊は、事前に指定されている賀谷野港南部の無人の浜辺へと進路を取った。


 各艦が距離を取りつつ、後部ハッチからLCACを発信させて行く。


 LCACに積載されているのは陸自施設科と対空機関砲のVADSが30機、10両の軽装甲機動車。


 それに燃料満載のタンクローリーに民間の建築用の車両と一通りの機材である。


 あたごから哨戒ヘリに乗り込んだ艦長の栗田武男一佐がシェスカの目の前に降り立った。



「お早う御座います。貴女がシェスカーナ・フローレイティアさんですね?」



「はい、そうです。」



「私は日本国海上自衛隊、護衛艦あたごの艦長の栗田武男一佐です。」


「日本政府の命令で、ダバード・ロード王国のアイリッシュ湖、ガイダル島調査団の輸送艦隊の護衛艦隊の司令官として派遣されました。宜しくお願いします。」



「此方こそっ!私の事は、シェスカとお呼びください。」


「私はオローシャ帝国海軍では中佐で艦隊司令を務め、国軍の定期任務が無い時は家業であるフローレイティア輸送商船商会の社主を務めて居ます。」



「お若いのに軍務だけで無く、ご実家の会社の社長をなさって居るとは凄いですな。」


「それにしても・・・・これまでにコヨミ皇国を訪れていた幾つかの空挺魔導艦を見て居りますが、まさか映画かアニメの様に、宇宙戦艦みたいな艦が有るとは、更にシェスカさんの着ていらっしゃる服も、我々の感覚では、丸で軍服風のデザインをしている舞台衣装の様ですな。」



「ああ、これですか?この制服は、昔からある軍服ですね。我がオローシャ帝国軍服ですよ。それにしても、貴国は宇宙を知って居るのですか?」


 シェスカは、栗田一佐が言う映画・アニメと言った単語は理解が出来なかったが、宇宙戦艦や宇宙と言う言葉は、伝承として実家に代々聞いて居たので理解して居た。



 それよりも二ホンと言う国が宇宙を知って居た事には驚いてしまう。



「ええ、以前居た世界の地球世界では、宇宙に行く船。特に小型の宇宙船開発をして研究や調査、移民をしようとする計画が国家や民間の企業や研究機関レベルで行われて居ました。」


「シェスカさんの反応している様子を見るに、この世界やご実家かご先祖辺りに何か言われがあるのですか?」



「はい。先祖の記録では天よりもはるか上に、星の海の空が有ると言う言い伝えが伝わって居ます。」


「祖先は其処で、商船の仕事をして居たとの記録が残ってました。あの船も先祖が残した遺産だとか。」


「もう他国では、お伽話として語られて居ますが、私達は普通に科学と言う記録にしか残っていない学問や技術が、実在はて居るの事を知っ居ます。」


「今やロスト・テクノロジーですが・・・・・・・・・」



「科学と言う概念が、この世界にも在るのですかっ!?」


「これは凄いっ!後で政府に報告しなければ為らないな。あの~貴国に付いて書かれた資料を後で頂きたいのですが。宜しいでしょうか?」



「はぁ?それは、どうしてでしょう?」



シェスカは栗田一佐の言って居る事が、分からずに居た。



(科学なんて過去の遺物よ。今さら何処にも残って居る筈が・・・・・って・・・・まま、まっまさかアレってもしかしてっ!?)



 彼女は栗田一佐が乗って来た乗り物や直近くまで来ていた護衛艦を見回す。


 すると、魔力で動いて居るようには、見えない代物であるのが理解出来ていた。



「栗田さん、ひょっとして・・・あの船は・・・」



シェスカは、恐る恐る聞いて見る。


 栗田一佐は何かを察したのか、シェスカの言いたい事の答えを答えて上げた。



「はい、動力はガスタービンエンジンで動いて居ります。」


「自然界にある物理的な法則を元にして居ますので、あの船は科学力で動いて居ますよ。」



「ああ、ああのぉっ!!通信機に電装品やその他の部品って発注できますか?」


「それとも点検や修理は?この船もう、後何年使えるのか、内装部品を魔力式に切り替えて500年。」


「そりゃもうっ!騙し騙し使ってきたんですが、私を含めて国中の艦はあと百年前後が限度と言われてまして・・・・・・・・」



「ちょ、ちょっと落ち着いて下さいっ!」




 シェスカが混乱し、気が逸るのも無理はない。



 彼女を含めて、官民訪わずにオローシャ帝国が所有して居る古くて、鋼鉄で出きていた空挺魔導戦艦の殆どが700年も前に在った科学文明国家である旧アース世界連合国が、保有していた宇宙船を改修して、延命処置を施して使い続けて使用して居た代物だったのだ。


 まぁ、中には戦争で沈んだり、艦の対応年数の延命に限界が来てしまうのだが、各国家と民間組織は、何とか使い続けようと努力して来ていた。


 それでも限界はやがて訪れて来るものだ。幾ら宇宙文明まで発展を続けていた異世界の技術でも、何時かは限界が来るのだ。


 彼女の祖先や700年前の技術者達は、出来る限りの生産設備。資料データを本や電子データに残して居た。



その子孫達は、それで何とか使い繋いできた。


 且つて在ったと言う核融合炉心や縮退炉とか重力子とか、他にも色々と使っていたエンジンは、早々に廃炉にした。



 SF物の創作作品集に在る様な壊れた挙句に、お決まりの動力炉の大暴走をしたら、本当に危ないからである。


 そんな理由から宇宙で無力化してから外宇宙へと放棄したらしいと記録に残って居た。



 その代わりに、この世界でも有力なエネルギーの代替として魔鉱石をドロドロに溶かして結晶化した物であるマナクリスタル作り出している。


 更に船の心臓たる魔力式動力炉を開発して、全ての船に搭載して現在に至って居るのだった。



内装で生き残って居るのは、望遠カメラや艦内放送のマイクやスピーカー等の電子機器、ケーブル線なんかが殆んど使えなく成って居るが、如何にかして生き残らせて居る。



 そのせいで魔導機関銃と2連魔導力砲塔の照準や台座は手動式に成って、何とも情けない船へと落ちぶれていた。



「すっ、済みません。」



「いえいえ、これだげ立派な物です。」


「長い間、良く持ってますねぇ、さぞかしご苦労が有ると思います。この船の件をも含めて正式に報告したいので資料を・・・・・・」



「分かりました。私もコヨミ皇国に友人が居ますので、その娘に資料を送って置きます。」 



「宜しくお願いします。」



(こっ、これで家やオローシャ帝国の死滅寸前の船が生き延びられるかもしれないわ。)



 ハッキリ言って徐々に船は、色々とガタが来て居る。



 オローシャ帝国の先人達は、とっくの昔に船の完璧な補修と整備に関して匙を投げて居た。


 その昔、1000年前には新品で、巨人戦争で活躍し、700年前にしっかりと整備と修理をし、必要な部品と部品の生産設備と関連物資の生産設備が停止してから300年。


 代替品を使用しながらやって来たオローシャ帝国とフローレイティア家とって、技術的にロスト・テクノロジーと化して来た元宇宙船たる空挺魔導戦艦は、果たして生き延びる事ができるか?と宇宙世紀風のナレーション(永井さん)風に冗談を言って見たりして。



 これを読んでいる読者諸君もこう思う筈だ、宇宙船がそんなに長く使える筈が無いと・・・・宇宙船の関連設備なんて使えても精々100年持てば良い筈だと、確かにその通りだ。


 しかしながら、何百年も戦争している巨人型宇宙人の人達が使っている宇宙船艦や宇宙要塞が登場しているアニメの設定を参考にして居るので、超文明の生き残りと解釈して欲しい。



 その賛否は分かれるだろうが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そして、如何なる超文明も物資が不足してきた時点で衰退する。



 この世界の超科学文明は、リアルにお鬚の白い奴が存在する世界の様な黒歴史的な世界観を持って居るのかも知れない。


 或いは、人類は衰退しましたと言う感じに成るのだろうか?



 このある意味、この世紀末的な世界で・・・・・・・・・・・



 二人が色々と話して居る間に、第一輸送艦隊から続々と車両と機材や資材に各種燃料の詰まったドラム缶が荷揚げされて行く。


 今回の日本の調査団が向うのは、ダバード・ロード王国のアルインランド州の州都・ベルクラネル市の近くのアイリッシュ湖に在ると言うガイダル諸島の遺跡の調査である。


 これはダバード・ロード王国政府からの正式な依頼である。



 何でも其処にはその昔、空挺魔導戦艦の飛行場が在ったらしいのだ。



 今は航行する飛行路と都市近くの港に空挺艦の飛行場が在る為に、すっかり、使われなく成ってしまい、忘れらされた地でも在るのだ。



 ダバード・ロード王国政府は、此処を日本に無償で貸し出す積りらしい。


 調査後は日本式の飛行場として改修して貰って、使用して構わないと言って来て居る。



半日ほど掛けて、同飛行場で魔導輸送艦に日本からの物資と調査団を乗せる作業が終わる。



「それでは調査団の方々と積荷は確かにお預かりしました。此処に受領サインを・・・・・・・・・・・」



「はい。」



栗田一佐がボールペンで2通の受領書の書類に確認のサインをし、書類の控え分を受け取った。



「それでは、宜しくお願いします。」



「確かに。」



「出港する、各乗組員は、配置に付けえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」



シェスカは、キリッとした仕事人の顔付きに成り、彼女の部下達へとテキパキと指示を飛ばして行く。


 フローレイティア輸送商船商会艦隊は、大空へと舞い上がり、その一路を、パイプ・ライン大河を西へと進んで行くのであった。

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