26話 とある魔導師の雷撃魔法 2

 祖国を追われたリナは、ダバード・ロード王国政府の厚意で、移動する為の馬車を与えられて居た。


 その馬車にリナ個人の私物と家財道具等を乗せてドラグリア白龍大帝国へと向っていた。


既に泣き止んでいた彼女だが、その目は泣き過ぎた影響で真赤に染まっている。その目は丸で復讐に燃えるかの様な真赤な目をしていた。


 国を追われたリナは、恥ずかしがり屋な性格の部分を自己催眠暗示魔法と言う物を掛けて打ち消していた。


 これは鏡を見ながら掛ける魔法で、本来の用途は自分の弱い部分の感情に打ち勝ち心を強くしたり、恐怖する心を和らげたりするのが目的だった。


 リナは己の弱い心の部分を封じ込め、代わりに普段から感情的に前へとへと出て行く心を大きくする催眠暗示を掛けて居た。


 これにより、口悪い部分が強くなり、多少事でも恥ずかしからずに無くなり、より強気でガサツな性格と成ったリナ。



 どんな困難でも前へ前へと突き進む為に、故国で育った自分を封じて、死んだ事にして、故郷には二度と戻らないと決意する。


 そして、その催眠暗示魔法をかけた事は誰にも言わない自分だけの秘密にしたのであった


それから10日後には、国境の都市であるノエリア市に入った。



 此処ノエリア市は、ドラグリア山脈の南の麓に位置し、ダバード・ロード王国、アルガス公国、アセリナ王国、ラクロアナ王国の4国家の者達は、必ずこの都市からの入国する事に成って居る。


これ以外の方法では、何方のルートも遠回りになるが、山脈を避けながら空艇と言う空飛ぶ船での移動と大陸北部にある外洋から船を使う移動方法しかないのだ。


 ドラグリアは、冬の間はとても厳しい極寒の土地になる為に、普通の人種族を始めとする多くの種族らの大使や外交官と武官らは、冬の間だけは大使館をノエリア市に構えて居るのだ。


大使館に関わる職員達は、一年の内、春から秋に掛けての間、首都のラグーリアにある大使館で業務をしている。



 リナは雪解けの始まったばかりの竜人族の国へと足を踏み入れた。



 竜人族は、少し変わっている。その殆んどが半竜半人の姿か、尻尾や角、羽が生えた姿が一般的だ。




 竜人は男性が、恐竜のような姿をしたトカゲに似ていた姿である。


まれに人間の男に近しい姿で生まれる事も有るらしい。女性は殆んどが人間の姿と変わりない美しい女性の姿である。


 だが、女性には特別な力が備わっていた。巨大な竜の姿に変身が出きるのだ。



 この国で、屈強な戦士とは、主に女性の事を指している。


しかも空を飛べるのは女性だけであり、軍人の殆んどが女性である。




 この国の軍隊の強みは飛行竜騎士隊と言う兵科が有り、此処ドラグリア白龍大帝国では白龍騎士団と名乗って居る国軍が有るのだ。


白龍騎士団の構成されている種族は白龍人族と呼ばれる色竜人族の一種で、巨大な身体で空を飛び、肉弾戦やドラグバスターと言う破壊光線を口から撃ち放つ事が竜人族の主な戦い方だった




 そして、陸戦隊とその他の後方部隊の構成員は、その殆んどが男性で構成されているのも特徴的だとも言って置こう。



この世で最も力強い強靭な肉体を持ち、鉄より堅い皮膚、空を縦横無尽に飛びまわり、少々な怪我でも平気で有り、体の一部が切り落とされたり、潰されたりとしても一部が残っていて、細胞が完全に壊死さえしていなければ、時間を掛けて治療すれば再生が出きると言う巨愛の生命力が有る種族なのだ。



竜人族の軍隊は、強力だが欠点が多い事でも知られていた。



 それは口から光線等含む攻撃技を吐き過ぎれば、息切れを起して何も出せないとか、羽が傷つき過ぎれば空を飛べない。致命傷に近い傷を負えば竜には変身が出来ないとか。


体力の消耗や空腹に成れば弱くなる等の様々な欠点等を多く抱えていた。この弱点を突かれて近年の帝国との戦争で負けが込んでいた。


 そして、竜種が生息する地であり、元同盟国であるドラグナー皇国に対して近年は戦争を避ける傾向に成りつつあった。




 そんな亜人種族中でも、ドラグリア白龍大帝国と言う国家は、同盟国や敵対的で無い国々には、門を開かれている珍しい国家なのである。



そんな竜人族の国にやって来たリナは、故国の大使館に通され、其処でドラグリアからの迎えを待たされていた。



 1時間ほど待っていたリナ。突然、待っている部屋のドアが開き、迎えの者が現れた。





 其処に現れたのは、ダボダボな感じの服を着た幼い姿をしたツインテールの竜人族の女の子だった。



「いやーっ、お待たせしたっすね。わたしは帝立学院博士にしてドラグリアの天才と謳われる学士、ミナワ・ミゴットっす。」


「リナさんの事は、アーヤ・シュチュ―ド女王陛下とダバード・ロードの外交ルートから送られて来た資料で、知っているっす。」


「此処からは、わたしが案内するっすよ。」



「宜しく。」



 自称天才と称するミナワのフレンドリーな自己紹介に、呆気に取られながらもリナは、簡単な挨拶を済ませた。ちなみに彼女みたいな感じの竜人族は稀に居る。


見た目も容姿もそうだが、戦闘に向かない固体も稀だが生まれる事が有って、変身時の姿も幼竜に成ってしまうのだ。


 そう言った者達は、学問などで身を立てようするのである。ミナワもそんな一人であった。



「そうそう、わたしがリナさんの勉強の面倒と試験官も勤めるっす。我が国は長い時間を掛けて知識と技術を発展して来た経緯が有るっす。」


「周辺国の進んだ物を取り入れて更に発展を遂げているっす。だから、リナさんの母国と変わらない環境での勉学を提供できるっすから安心してくださいっすね。」



 二人は大使館を出るとドラグリア側が用意した乗り物に乗り込む。



「これは、竜車ですか?」



 リナは珍しそうに竜車とそれに繋がれている竜を見ていた。




 リナも本等ので、竜車に付いての知識が有ったが、実物を見かける事の出来る地域は、故郷のダバード・ロード王国のドラグリア近い地域から少し南部へと下った先の南部辺りで、軍や金持ちの商人でも無い限り余り見かけなく、所有者が居ないのだ。



「南の国々にも竜車を使う事は有るっすけれど、まだまだ一般の庶民の人達からすれば珍しいっすよね。」


「竜人族以外の龍族には、幾つか種類が有るっすよ。肌色の有る高位種族である色龍族と様々な理由から多種多様な進化を遂げて、大抵は野生か家畜と成って居る下位種の亜龍族に分かれて居るっす。」


「竜車は余程の国力と経済的に余裕があるか、竜の生息数と竜の畜産に成功している国でないと珍しいっす。リナさんは初めてっすか?」



「いいえ、何回かは見かけた事は有るけど、まだ、乗った事は無いだけよ。」



竜車は重騎竜と言う4足歩行の竜を使う。



 重騎竜は2種類いて、その内一つの種類は、正面の額に角の無いのをプロトンと言い、地球で言えばプロトケラトプスに似た姿している。


 とても大人しく、比較的安く取引されていて、主に荷物の運搬や農耕の家畜として重宝されていた。



 もう一種類は、3本の角が特注的で戦場での活躍が主なトリプトドンと言うのがいる。


 これはこの異世界の戦車みたいな物で、これが正面切って戦う姿は迫力満点だろう。


 この世界では、様々な家畜が運搬や戦で活躍して居るのである。



 二人はこの竜の馬車を使って山越えするのである。



「此処から先は、馬ではキツイ山越えっす。それに竜人族と付き合いのない野生種の亜竜が多く生息する地域の近くも通る道も有るっすから、馬は竜の気配に脅えて中々思う様に進んでくれないっすよ。」


「其処で我が国では幾つかの種類の亜竜種をも生活の足としても使って居るって訳っす。」



「へえ~。」



「それじゃ、早速っすけど、竜車に乗り込むっすよ。今日中に山向こうの町まで行かないと野宿する羽目に成るっす。ドラグリア山脈の野宿は、場所を選ばないと大変に危険っすから。」



「それって亜竜種が居るから?」



「それも有るっすけど、わたしみたいな竜人族が居ても相手は山で暮らしている野生の竜達っす。」



「わたし達は、竜の縄張りを間借りしているみたいものっすから、上位下位共に、うっかり機嫌を損ねたら豪い目に遭うっす。」



 街道は綺麗に整備されて居たとしても、油断は成らないのだ。




 野生の竜は稀に遊び半分で、人に危害を向けてくる事も有るのだ。彼ら竜人族は、他の竜種と対話が出きるらしい。


ドラグリア山脈を始めとする竜が生息する地域を通る場合は、其処を避けるか、竜人を案内役として同行させるのが旅人達のマナーであり、昔からの慣習的な倣いでも有ったのである。



「何だか物凄く面倒なのね。それならサッサと行きましょう。あたしは物騒な場所での野宿は、ホンとゴメンよ。」



二人は竜車に乗り込み一路を北へと向う。竜車が向かうのは、ドラグリア白龍大帝国の首都ハイリッピンへと向った。


 ドラグリア山脈を越えて先の町で一泊、平原や川を超え湖から流れる川に沿って街道を北へと進む事2週間の旅路である。


ドラグリア白龍大帝国の本土は、 ドラグリア山脈高原地方の事を指して居る。


 ドラグリア山脈を越えた先に在る大平原の事を指す、ドラグリア白龍大帝国の国土の6割五分近くがこの平原で成り立っており、竜人族の都市の殆んどが平原や丘陵地帯に造られて居る。



 ドラグリア白龍大帝国へと入るには、陸路でノエリア市を含めた都市を経由する形での三方向の街道から入国をするか、空路を使う又は遠回りに海路を使うしかないが、冬の間は海路は使えず、空路は天候に左右され易い。




厳しい自然環境が垣間見える ドラグリア山脈高原地方の中の丘一つを超えた頂上からリナは、この国の首都であるハイリッピンを眺めた。




 都市の中央に岩山を刳り貫いて作られた城は、その全体が真っ白な色をした城である白龍大帝城が建っていた。



 この世界の北で、最も栄えた亜人族の国、それがドラグリア白龍大帝国である。


 この国は、鉱石の採掘を主要な産業としている資源大国であり、それを諸国に売って代わりに食料や日用品を諸国から仕入れていた。


 また、国交の有る諸外国から委託で家畜竜の飼育を引き受けて居る事でも知られている。



 この国が、惜しむべき点を上げれば、産業が育ち難い点である。


 この国の冬は、地球のシベリア地方や日本の北海道の様な極寒になる為に食料生産が少ない。


 先進的な農業が有れば、もう少し違ったかも知れないか、そんな都合の良い方法や技術力が無いのがこの世界の実状なのだ。


それに工業力も乏しいと言う欠点も抱えていた。




 基本的な武器や最低限の鉄工製品は作れるものの、大量生産が自国で出来ないと言うジレンマをも抱えていた。


 学業はそれなりに盛んだが、あくまで教育するのが目的となっていて卒業後の就職難が特に目立っている。


 国の殆んどが軍人と商人と学者と言うちょっと困った国体体制なのだ。



 これも帝国との戦争の影響が原因だった。


 それに国土大半の場所には、異臭を放つ黒い池や噴出する毒ガス等が多く見られていた。


 後に交援省がドラグリア白龍大帝国内を調査をすると、鉱石以外のエルネギー資源が豊富なヤバい土地だと言う事が発覚する。


 その報告書を読んだ日本政府の面々は、経産省を始め大喜びで、この地の開発支援に着手し、ガタガタだった国内の産業や経済は、次第に改善されて行くのである。

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