17話 ゼロから始める異世界の外交政策 2

 アースティア暦1000年・西暦2030年・4月11日・午後12時00分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・関東地方・東京都・千代田区・永田町・総理大臣官邸・総理執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ふうーーっ。」




「お疲れ様です。安元さん。」




溜息が漏れ、疲れきった安元に労いの言葉を掛けたのは、官房長官の高橋であった。



 お互いに一仕事を終えて、この部屋に共に来ていた。




「こんな状況に成ってるって言うのに、全く以って暢気なものだな野党の連中は・・・・・・・・・」




「全くですね。今手を打たなければ、これから先の日本がどうなるか分からないと言うのに・・・・・・・・・」




「ああ、そう言えば、浪川の奴はどうした?」




「浪川さんですか?」


「先ほど廊下で、すれ違い際に会いましたが、彼はパスタを食べに行くと言って、総理官邸から出て行きましたけど。あの様子で、この時間帯だとすると、銀座一丁目辺りに在る行きつけののイタリアンレストランでしょうね。」




「あのヘタリレアがあああぁぁぁぁーーーーーーっ!」


「昨日福岡に来た、コヨミ皇国の連絡船から受け取った、彼の国の食料輸入品に関する資料を記者会見が終わり次第に取りに来いと伝えた筈だぞっ!」




 安本の怒鳴り声が総理大臣室に響き渡る。



 浪川大介農水大臣とは、年齢は37歳で、若い頃はモデルをしていた元イケメンタレントでもある。


 少しばかりイケメンな男で、しかも独身で女性との清い交際が目立つ人物でもあった。



 それでも派手な金の散在は無いらしく。


 単純に女性にモテるだけで、未だに友達以上関係を女性と持って居ない為。


 彼のイタリア好きとヘタレな所を揶揄する様に、親しい人達の間では、あだ名でこう呼んだ。


 ヘタレリアと・・・・・・・・・・・・




「はぁ~、後で本人に届くよう手配して置きますから、安元さんも夕食にでも行って来て下さい。


「浪川さんを見習えとは言いませんが、休める時に休まないと身体が持ちませんよ。」




「ったく、こんな時に資料を取りに来ないで暢気な奴だが、変な所でローテーションを組むのが美味いから始末に負えない奴だ。」




 安元は高橋に必要事項を伝えると夕食に出掛けて行った。



 慌しい筈の日本国政府の中枢では、この日も何時もと変らない風景の一つであったのだった。




 翌日、国家内に措ける法案の可決が決まると防衛省と自衛隊の動きは早かった。



 福岡市の博多港では、先遣隊第一陣である第一輸送艦隊のおおすみ型輸送艦を中心とした輸送艦隊が編成されて居り、呉港を中心とした各母港からは次の様な輸送艦隊が出港して行くのであった。


 おおすみ、しもきた、くにさきの3隻と2020年に配備されたぼうそう型輸送艦ぼうそう、ちた、さたの3隻。



 第二輸送艦隊は退役が間じかと成っている旧式輸送艦であるあつみ型輸送艦あつみ、もとぶ、ねむろ。みうら型輸送艦みうら、おじか、さつまの計6隻。



 第三輸送艦隊は島国である日本の地理的な事を踏まえて、自衛隊の即応展開と離島揚陸を目的とした揚陸艦隊である。


 その名を揚陸護衛艦としていた。



 つがる型揚陸護衛艦のつがる、おしま、おが、おもえ、まつまえの5隻。



 それに加えて護衛艦のしらね、むらさめ、さわぎり、うみぎり、とね、ちくまの編成。



 更に各輸送艦の中には、陸自施設科の隊員に加え、陸自車両と機材が満載してあるのである。



 2030年に成っても旧式輸送艦が未だに現役なのは、おおすみ型が配備された当時以前から随時退役が持ち上がって居たが、離島防衛と日本列島各地が島であり、揚陸艦が必要なのは明白であった。



 其処でLCAC搭載の輸送艦とビーチングが出きる揚陸護衛艦の建艦案が持ち上がり、いっその事、両方の配備したらと言う事になった。



 しかし、LCAC搭載型の建艦が優先となり、2020年にぼうそう型輸送艦が先に就役となり、6年遅れてつがる型揚陸護衛艦のつがる、おしまが就役し、2年後におが、おもえ、その1年後にまつまえが就役したのである。


 それに合わせて旧式輸送艦は、練習艦として使いつつ、数年後わ目途に順次、退役をして行く予定だったが、此処に来て旧式輸送艦にも最後のご奉公の機械に恵まれると言うのは、何んとも数奇な運命なのだろうかと軍事評論家たちの間では苦笑交じりに言って居た。



 そんな輸送艦隊に続いて出港するのは、補給艦のましゅう、おうみ。


 それに加えて民間の自動車運搬船団と全国から事前に公募されて集って来ていた民間建設会社の作業員と作業用の車両を乗せた船舶が30隻以上もの民間船は船団を組みながら、日本各地の港からコヨミ皇国へと出航して行った。



 中にはクレーン船やメガフロートを曳航する船の姿も在った。


 陸上自衛隊員と民間作業者らを合わせてると、その総人数は、実に5千人は越えるだろうと言われて居る。



 その民間人らには、念の為に政府が保険会社に頼んで作らせた特殊な保険に加入する様にと通達が成されて居た。


 これは万が一の保障の為の保険である。



 野党は戦時徴用とか騒いで居たが、物資備蓄と輸送の為に、現地の港湾や街道を出きる限りに、早期に改装する必要が有ると政府は考えていた。



 その序でに空港と首都までの鉄道を整備すれば、コヨミ皇国に運ぶ物資不足にも対応出きて、困らない上に事が済んだら相手国に譲渡するからコヨミ皇国側も文句は言わないだろう。



 紅葉は父である力仁と万代藩主である伊達愛海に手紙を送って日本に協力する様に伝えていた。



 アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月13日・午前8時05分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 日本からコヨミ皇国の在るユーラシナ大陸東部のコヨミ半島は、九州から西北へ600キロ、対馬からは300キロの距離に在る半島大陸国家である。



 その間に在る対馬周辺地域を流れる対馬海峡の回りの海流の交差模様は、依然と変らずであった。



 そんな対馬を越えると何故か海が穏やかに成る事が、海保の巡視船がコヨミ皇国ヘ行き帰りの航行で判明していた。



 其処で日本政府は、南西国藩との連絡の遣り取りを担う連絡船を巡視船に出迎えをさせれ事で安全に対馬に寄港させて居た。


対馬で外務省職員に書状のやり取りをさせたり、日本に滞在している紅葉らとのテレビ電話での通信での通話も許可していた。



 コヨミ皇国政府も日本に対する対策が始まったらしく、取り敢えず直轄地と万代藩の土地の借地は無償提供すると外務省を通じて日本国政府に伝えて来ていた。



 日本国からコヨミ皇国へと派遣されたコヨミ皇国先遣訪問艦隊である護衛艦隊は、2日掛けて万代藩の万代港へと到着した。



 突如として現れた鋼鉄の艦隊は、万代市に住まう市民の度肝を抜いて居た。



 万代市内は大騒ぎとなり、港は見物人にでごった返していた。



 この騒動に対処するべく、直に万代藩の直轄軍である伊達軍とコヨミ皇国軍の万代藩駐屯軍が、騒ぎの鎮圧に出向いたのである。


 因みにコヨミ皇国の国軍組織には、コヨミ皇国直轄軍と藩主の地方直轄軍の二つに分かれて、両軍を併せてコヨミ皇国軍と呼ぶのである。



 簡単に言えば、国軍内に二つの組織軍が在って、その組織図に国軍と軍閥の私設軍に別れて居ると言う構図になる。



 そんなコヨミ皇国軍内では、国内の地方独立自治国政府である藩政府内には、コヨミ皇国直轄軍の駐屯地が、藩庁政府や市役所、大名私設軍司令部近くに置かれている所が多い。



 常駐する皇国直轄軍の総数は、各地方によって違い。


 領土の大きさよって500人から最大で5千人くらいである。



 万代藩では、伊達氏の代々の信用も有る事から、伊達軍7000人に対して、コヨミ皇国軍の駐屯兵は3500人が置かれて居た。




「報告しますっ!愛海さま、鋼鉄の艦船が港に突如として現れました。」




「来たわねっ!紅葉は上手く事を運んだ様ね。」



 皇女である紅葉の事を下の名で呼び捨てにし、楽しそうに日本の船が来た報告を受ける彼女は、この万代藩72万石を治め、裏の石高が150万石とも噂され、この地方領地を若干19歳で治めて居る大名家たる伊達家当主・伊達愛海と言う人物であった。



「愛海さま、家臣と民達が混乱しています。直に御下知を・・・・・・・・・・」




 その側で控えて居るのは、筆頭家老の6歳年上の女性で片倉喜多。


 又の名を腹心の喜多と呼ばれた人物として、後世の歴史書や歴史家達からは評価を受けて居る人物として知られる事に成る。


「港に伊達と皇国の両軍の兵を向わせなさい。水軍艦隊は高雄瑞樹大将と愛宕千棘中将に指揮を任せつつ、日本艦隊出迎えさせてっ!」



「それと陸軍大将軍の足柄一葉さまと細河夕大佐殿は到着して居る?」



「昨日の夜には来て居るとの報告を聞いて居ます。」と喜多が、主からの質問に答える。



「では、今言った報せも併せて、足柄一葉さま達が滞在して居る駐屯地に伝令の早馬をっ!」




「承知しました。」 




 日本艦隊が現れると、伊達愛海はすぐさま配置命令の早馬を出した。


 日本艦隊が現れるとの報告を受けた自領軍と皇国軍達等は、愛美の命令で港をしっかりと警備を固めつつ、港では出迎えのコヨミ水軍部隊と陸軍部隊が旗や槍を持ち並び建って居る。



 その中央に和装正装姿の将校と思わしき女性が待って居た。



 黒髪のショートカットで、キキリとした印象の高雄瑞樹水軍大将と北方人特有の金髪でコヨミ人父とアルガス王国人母をお持つハーフであり、ほんわかしたお姉さんタイプの愛宕千棘水軍中将。



 それと到着がやや遅れて、兜は被って居ないが武者鎧姿の二人が現れた。



 皇国陸軍の大将軍である足柄一葉と陸軍の細河夕大佐である。



 この陸軍の二人が、日本国から先遣隊として派遣された外交官たる外務省官僚らを皇都までの案内をしてくれる予定と成って居た。



 万代港へと到着をした護衛艦しらねは、艦内から外交官達を乗せた哨戒機ヘリが舞い上がり、コヨミ皇国側の要人達への挨拶の為に、自衛隊の代表の一人として艦長の江田史郎一佐と護衛3名が乗り込んで港まで飛んで行く。



「凄いわ。鉄箱に風車が付いているだけで宙に浮くなんて・・・・・」



「本当ね。紅葉さまは凄い国との友好を結ばれたのね。」



 瑞樹と千棘は、紅葉が交渉して居ると言う日本なる国に興味を持ち始めた様だった。



「はぁ~。」



「一葉様?」



「少しは反省してるかと思えば、又もや殿下は、本当にトンでもない事をする。やはり血筋は争えぬな。」



「あ~あ~、そういう事ですか。確かにあの方は転んでもタダでは起きないですからね。」



「それもあんな物を作れる大国を動かす大それた事をするからな。」


「主上さまの胃がキリキリと痛んで居られて、葛葉様がニコニコして居られる。」



「一騒動で済めば良いが、これは国内が荒れるぞっ!」



 一葉と夕の両名は皇族女性が起す騒動と国が荒れる事の前触れに、心穏やかには居られなかった。



 そんな事を話して居る内に、ヘリが港の広場に着陸をしたのである。



「日本国海上自衛隊、護衛艦しらね艦長の江田史郎一佐であります。今回から始まる万代港の改修工事を始めとする上陸作戦計画を担う先遣艦隊の指揮官で在ります。」と護衛艦しらね艦長の江田史郎一佐が挨拶を交わすと、随伴して居た外務省官僚らも挨拶を交わして行く。


 この場の仕切りは、本来ならば外務省の仕事に成る筈だが、万代港の改修工事を始めとする上陸作戦計画と言う性質上、防衛省が現場管理責任者と成って居た。


 一方の外務省は裏方の実務に回って居る。


「この中で最高責任者の方は?」



「私だ。」



 手を上げたのは足柄一葉だった。



 この国では国皇・藩主の次には上位の地位は、宰相と総軍の司令官たる大将軍と言う職がある。



 この職は陸水軍が交互に着くのが慣例と成っていた。



「コヨミ皇国軍の総司令官である足柄一葉大将軍である。遠路遥々の任務遂行の儀、大義である。」



「大将軍閣下、自らのお出迎え感謝致します。紅葉皇女殿下が我が自衛隊の来訪をご連絡を済ませて居ると思いますが・・・・・」



「聞いて居る。殿下からの書状は主上様に届けられて居る。」



「貴公らの任務と仕事に支障が無きよう取り計らい、協力せよとのお達しだ。」



「それでは?」



「作業を始める良い。」



「了解であります。」



 江田一佐は、一旦ヘリへと戻ると無線で各艦に上陸を通達した。


 外務省官僚達は、コヨミ皇国外務省官僚らの案内で日本国に譲渡される予定の在にコヨミ皇国日本国領事館へと移動して行く。


其処で事務処理の仕事に従事する事に成るだろう。


「全艦隊揚陸を開始せよ。」



 各艦からは、了解の返事が返って来る。



「警備隊の方々と見物人の方々に、湾内全ての浜辺と港から安全の為に離れる様にお願いしますっ!」



 江田一佐は再び振り返って皇国側に注意を促した。



 LCACとビーチングする輸送艦の作業の邪魔に成る事を避ける為にである。



「分かった。直に全警備部隊と市民達等に伝えろっ!」



「ははっ!」



 直に伝令官が命令を伝える為に、早馬や徒歩で走り去って良く。



「江田殿。指揮所を後方に用意して在る。取り敢えずは其処へと移動し、指揮所を構築しながら指揮をしては如何かな?」



「はい。助かります閣下。私は用意された指揮所へと向かうから、哨戒ヘリは艦内に戻してくれっ!」



「分かりました。」



 哨戒ヘリがしらねへと戻り、主なコヨミ皇国軍の将校と江田一佐らはコヨミ皇国側の用意した指揮所へと移動して行った。



 自衛隊の指示によって指定さた地点の場所には、見物していた民達がコヨミ皇国軍兵士らが誘導指示された所まで下がらせて行く





 港や浜辺から関係者以外の人が居なくなると、港へはメガフロートを牽引した船とクレーン船が万代湾の水深を気にしながら進んで行く。



 一方の南の浜辺にはビーチングが出来るあつみ型輸送艦、みうら型輸送艦、つがる型揚陸護衛艦の11隻が一斉に揚陸を開始。



 北側の浜辺には、おおすみ型輸送艦とぼうそう型輸送艦の艦尾門扉からそれぞれ2艇つづLCACが一斉に発艦して行く。



 それを遠巻きにして、町の一画にある水軍の庁舎から見ている皇国側者達は、これが上陸戦で有れば、この世界で戦略上の全てを覆すやり方だと思った。



「これらの船が侵攻軍であれば、我がコヨミ皇国はあっと言う間に敵の侵入を許し、万代の町と港は占拠されるだろうな。」



「はい。船から直接の積荷の積み下ろし、水上を突き進むソリを使った上陸戦など誰も考え致しませんし、考えたとしても予算の都合と専用の船の開発で頓挫するでしょうし、帝国以外のどの国でも無理な事と言うでしょうね。」



 一葉と夕。そして、瑞樹と千棘の四人は、今まさに現代戦術の一旦を見て居た。



「凄い起動力と物量ね。これはこの世界の軍事常識が完全に覆る瞬間よっ!」



「あらあら、本当にね。後で見学させて貰えたら良いわね。」




 二人は圧倒されつつも冷静に自衛隊の動きを見続けていた。



 其処へ民間の建設企業の作業者代表達が、コヨミ皇国の高官達に挨拶にやって来た。



「初めまして、建設企業団の代表と成りました竹中建設株式会社の竹中重長と申します。どうか宜しくお願い申し上げます。」



「此方こそ。宜しく頼む。あなた方の工匠商会のお陰で、我がコヨミ皇国の発展にも成るろう。」



「貴国のお力に成れたら幸いです。」



 挨拶が終わると江田一佐が、竹中建設株式会社と竹中重長に関する補足説明をするのであった。



「竹中建設株式会社は400年もの歴史がある会社です。それに竹中さんは、竹中建設株式会社の20代目にあたる方で、その昔のルーツと成った御家は、武士の家系と成った御家柄でも在ります。」



「ほう、その様な家系の方なのですか?」



「まぁ、今はしがない土木建築を経営する一市民に過ぎませんが、400年前の日本、内戦が激しかったその時代に、国内統一を目指した3人の英傑に仕えて活躍した武士の家系でして、私の家は200前に枝分れした分家なんですね。」



「それでも家が絶えずに続いていらっしゃるから凄い。貴方のお家は、その英傑に貢献してニホンの統一に寄与されたのですね?」




「あははっ、恐縮です。今回も日本の歴史的な事業に関わると言うのは、何んとも因果な物と国内では言われて居りまして・・・・・・・・・・・・・・」



 竹中建設株式会社。


 それは若き日の木下藤吉郎とに乗って居た豊臣秀吉に仕えて、その子は関ケ原で東軍に付いて1万石未満の石高にも関わらず大名扱いと成った、あの有名軍師の家である。



 直系では無いが有名な家柄が経営する会社として、日本国内では割と知られて居る建設株式会社であった。



 一方の伊達愛海は、居城たる万代青葉山城から港を眺め見ていた。



 まだ、ビルも含めた大きな建造物が無い国で在るが故に、港と海上自衛隊の船が良く見えていた。



 万代市の北西に位置するのが、コヨミ伊達家居城にして後世の歴史書にコヨミ皇国100名城の一つと謳われた万代青葉山城である。


 通称は万代城と言い、彼の城は山城である。


 正確には山を削り木を切り開いて造られた城である。


 北西から万代川が城をカーブするように流れているこの川と街中の水路を作って堀として居た。



 この城を日本の歴史家が見たら、宮城県仙台市の仙台城に良く似て居ると言うだろう。



 万代市の北と南には田んぼと畑が広がって居り、その東側には港があり、軍港と交易港、漁港が開かれていた。


 沢山の外国の貿易船が見受けられ、きっと此処と似た仙台の町を持っていた彼の伊達政宗公も、この地を見たのならきっと羨ましがるかも知れない。


 因みにコヨミ皇国の伊達家と日本国の伊達家との区別する為に、後々の事に成るが、自然とコヨミ伊達家・日本仙台伊達家と区別する様に成って行く。


 後世の歴史に措いての両家は、特に交流は無いが、御家に関する名前から歴史に至るまでの経緯が、何かと似ている家柄として高名と成ってしまうのであった。


 現在は港の改築作業する為に、貿易船はもう少し北の港に全て移動していた。


 商人と漁師は最初の内は抗議の嵐だったが、万代港が更に大きくなると聞くと「流石は主上様と愛海様」と言って、抗議に振り上げた拳を下ろす事と成った。




「おおっ、見て喜多。ソリ見たいな船が、水の上を滑りながら突き進んで荷を降ろして居るわよ。」




「はい。南の船は直接浜辺に荷を降ろす船ですね。」




「それに大きな滑車を取り付けた船は、積荷の荷揚げに使うのは分かるのだけれど、船で持ち込んで来たらしい大きな浮き台は何に使う気かしら?」




「それは分かりかねますが、後でお聞きに成っては如何ですか?」




「そうね、後で労いにでも行った時にでも聞いて見ましょうか。」




 ますます、日本に対する興味が沸いて来る愛海は、ワクワクして仕方が無いのであった。




 積荷の荷降ろし作業が一日が掛かりで終わり、万代市の周辺では作業開始している。


 建設に必要な材料は、現地での採掘で賄われる予定である。



 コヨミ皇国は沢山の鉱山が点在して居るらしく、コヨミ皇家の私財も換金出きる鉱物関連の鉱山を多数天領として私有地にして居るくらいに豊富な土地柄だった。



 現地のコヨミ皇国市民に対して、広く仕事の作業者の公募公布されていた。



 作業に応募して採用されれば、作業の仕方、機材の使い方、車両の使い方を指導した上に、日本での資格習得も支援を行うと伝えられた。



 これには多くの万代市の市民が応募してきた。



 特にこの世界は長引く戦争の影響で女性の人口の方が多く、兵士や将校でもその傾向が多く見受けられている。



 男は早死にが多い事も有って、この世界の女性は非常に働き者である。


 作業の応募は仕事の斡旋を行って居るギルドと呼ばれる公共機関や口利き屋と言う私設の職業斡旋商会等が政府機関ら委託される形で応募していた。



 かなりの応募が有ったらしく、一回目の応募は告知と同時に終了し、1週間かけて面接をして1月の間に研修をする事に成る。


 其処で使えるか、やって行けるかを判断するのだ。



 後は半年から1年以上で資格が取れるレベルに到達すると、日本に資格取得の為に、試験を受けに行ける制度を設けていた。



 そして、輸送艦隊の作業が終了すると、作業終了の報告を江田一佐が報告をしにやって来ていた部下から報告を受けると、陸軍大将軍の足柄一葉に一次作業計画の終了を報告する。



「それでは、我々は一旦、日本に帰国し、再度、機材や車両と作業員を連れて戻ります。」



「万代市に滞在する者達の事を宜しくお願い致します。」



「はい、確かにお預かりします。本日ご苦労であった。」



 江田一佐が敬礼すると皇国側の面々も自国式の敬礼して見送った。



 かくして第一陣先遣隊の任務は終わって帰国の途に着いたのである。

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