16話 ゼロから始める異世界の外交政策 1

 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月15日・午後10時07分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・ゲルニアン帝国・フェリス辺境侯爵領・ガントー地方領・チバヤン州・フェリス侯爵領内・レイチェル・フェリス騎士爵領・チバヤン州・州都キラサラズ市にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 間も無くキリヤ公国連合国と大戦争を控えたゲルニアン帝国。


その最前線近くに位置して居るガントー地方領、ダンドー地方領、バンドー地方領の三地方から成る領地をフェリス侯爵家一族が治めて居た。


 このフェリス辺境侯爵家は、ゲルニアン帝国内の中央政界に措いて、国土管理運営省の上位法衣貴族官僚として活躍して居た一族である。


 その一族達が長年の功労と実績の報奨として、当時の皇帝から下賜されたフェリス侯爵家一族が、この地方を治め始めた事の始まりであった。



 だが、その真実はゲルニアン帝国中央政界からフェリス一族を地方領国へと追いやる口実に過ぎないと言う事実があった。


 同地方州区の主な構成州は、主都が在る西側のナフ州、主都名はウラガナン市。


 東側沿岸地域のチバヤン州・南側のラシノ州・北側のコビア州の4から成り立って居る。



 さて、今回の戦争でフェリス家の各一族の領主達は、ゲルニアン帝国中央政府からの命令を受け、補給物資や出兵の準備に追われて居た。



 しかも全部自腹を切らされる始末。


 これは良くある典型的な独裁体制・・・・・中央集権帝政体制から来る仕方ない事だが、その報酬は雀の涙と成って居るから更に泣けて来る物である。



 その中の一つ、ガントー地方領・チバヤン州領は、フェリス辺境侯爵家の本家の次女であるレイチェル・フェリス騎士爵が、州都キラサラズ市の在る中心地として治めて居る領地だった。


 レイチェルは現在17歳で、跡継ぎである姉のロイチェルの補佐として主都ウラガナン市の政務に関わって居た。


 フェリス侯爵家は800以上もの領土があるゲルニアン帝国内でも、良くある典型的な大領主一族の一つであった。


 その家の次女として生を受けた彼女は、跡継ぎの姉の予備として、フェリス侯爵領内の本拠地である主都ウラガナン市近くのチバヤン州の州都キラサラズ市に居残り、補佐としての人生を歩む事を強制させられた人生をこれらかも歩む・・・・・筈だった。


 だがしかし、彼女はそんな貴族としてありがちなな人生を歩む筈が、この公帝戦争に措いて、その後の人生を180度ガラリと変えてしまう子に成る、人生の転機を迎えようとして居た。


 そんな御家最大の転機を迎えようとして居るフェリス侯爵家の跡取り娘である姉のロイチェルは、キリヤ公国連合国との戦争に備えて、内陸の南西地方のダンドー地方に両親や親族達を疎開させ、同地でゲルニアン帝国から来る物資の管理の仕事をして居た。


 一つ下の三女である妹のライチェルも同じく、北西の内陸のバンドー地方領を任され、戦争に向けて同地の州都・クルサレ市軍事物資の生産を急がせて居た。


 バンドー地方自治州区の州都・クルサレ市は、港湾工業都市として栄えて居る工業都市にして、バンドー地方自治州区の州都。


 フェリス侯爵家の実に4割の租税が此処で稼がれ、各種工業物資の生産の8割が此処で行われて居るフェリス侯爵家の重要な工業地帯である。


 主に金属加工を中心とした武具や生活雑貨や建築素材に各種部品素材の加工と生産が行われ、多くの工房商会が拠点を構えていた。



 そんな中でフェリス侯爵家の現当主たるアルベルゴ・フェリスの次女であるレイチェルは、キリヤ公国連合国と戦争に向けて自領を通る交易商人達を通じて、南方諸国の動静を常に調べていた。


 それなので、政治や外交と商業に関して、とても明るい才を持って居たのであった。


 年功序列が跡取りを決める基本方針が故に、その才能を世に示せずに居る彼女は、ここ最近に成って現れた異界からの転移地域であるナデシコ地方自治州区の出現以来、その同行を調べていた程に、キリヤ公国連合国を警戒して居たゲルニアン帝国中でも珍しい部類の人物だったと言えた。


 それが彼女の手元へと届けられた報告書を読み込んで呆れて居たしまう程に愕然としてしまう。


「はぁ~もう、これじゃダメね。」


「私がキリヤ公国連合国内に送った間諜達の調べでは、キリヤ公国連合国と言う国は、トンでもない武器と兵器の宝庫って言うじゃない。」


「大砲を乗せて動き回る鋼鉄の箱車。」


「巨大な鋼鉄戦艦から成る大艦隊。」


「大空を埋め尽くすほどに空を舞う空飛ぶ鉄竜。」


「大量の荷物を運搬が可能な恐ろしく長い鋼鉄の蛇車。」


「絵心のある密偵達らに、絵師に変装させて、現地で風景が描かせた物を取り寄せたのを見たけれど、これが本当に動くとわね。」


「現に昨日行われた観閲行進って言う出陣式。独特な軍事パレードだったと、今朝がたに送られて来た報告書を読む限りは、ナデシコ領軍の兵器は、トリック無しに本当に動く物らしいわね。」


「単に彼の国の兵力だけを見るなら、総兵力が約40万を超える程度に過ぎないのだけれど、潜在的な力を見るのなら、向こうが圧倒的に上なのよ。」


「恐らくこの戦いで、この世界の戦の仕方が、完全に根本から変わるわよ。」


「全く、一体全体、ゲルニアン帝国中央政府の連中や皇帝陛下は、あの少年王が首都で行った出陣式をどう見て居るのよ?」


「彼の地で披露した軍勢の中に有った兵器群の事を、中央政府と軍幹部の連中は、子供が新しい玩具を見せびらかせて居るだけと、小馬鹿にして居る始末。」


「はぁ、これだから金と権力だけの連中って奴らは、見栄をと金儲けに夢中なだけで、地方領の実情と他国の実情を知ろうとはしないんだから、ホンと頭が痛くなるわよ。」


「今回の戦は、喧嘩する相手を絶対に間違えて居るわよ。」


「喧嘩する相手が、その辺居る猫だと思って居ると、その正体が虎か獅子だと分かる頃には、大怪我をしてしまい、事態の事が決して居る。」


「恐らく・・・・・我が領地・・・いえ、我が一族は完全に、この戦争のとばっちりを喰らうわよね。」



「はぁ~お陰で良い迷惑だわ。」


 レイチェルが恨めしそうに帝国中央政府と皇帝に悪態を吐いて居た。


 彼女はフェリス辺境侯爵領の居城であるチバヤン州の州都キラサラズ市からは、ゲルニアン帝国本国から派遣されて来て居た遠征軍300万人もの大軍勢が、キラサラズ城の城下町と周辺地域の市街地、それに村落の野外にて、ごった返して居た。


 それが豪い迷惑だと言う事も頭を抱えて、頭痛の種と成って居た。



 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月17日・午後9時00分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・ムツ地方・ムツ地方自治州区・ヒロサキ町・ハコダテ山脈地帯・ハコダテ国境要塞・ゴリョウカク国境要塞郡にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 キリヤ公国連合国軍は、キリヤ公国本国軍とそれぞれ独立した準独立自治国家軍やキリヤ公国連合国傘下の独立自治国家軍等が統合連合結成させた統合連合国家軍である。


 それ故に、それらを総じた軍の事をキリヤ公国連合国軍と呼称するのだ。


 そのキリヤ公国連合軍の総軍勢は、創世記に比べて、45万人へと膨れ上がって居る。


 その殆んどが勇治旗下の軍では無く、特別自治州区軍と連合加盟傘下国軍から成り立って居る。


 これが地球に在る様な国家だったら、色々と面倒な事態に成ったり、紛争が絶えなかったりと、とてもめんどくさい国家と成るのが普通だ。


 だが、キリヤ公国連合国は別だった。


 王である勇治が、しっかりと周囲から支えられ、勇治もそれに応えるかの様に、善政を敷きつつ、連合国加盟国にも、とても友好的な外交対応を取って居る。


 だが、無法者には容赦の無い対応で挑む。


 この姿勢が連合国加盟国内や友好国の間では、とても良い評判を呼んで居たりするのであった。


 ムツ地方の統括地方自治体であるムツ地方自治州区。


 ムツ地方自治州区の北部にあるゲルニアン帝国との国境の町で、ド田舎だった町であるヒロサキ町の北部には、ハコダテ山脈地帯を中心としたゴリョウカク国境要塞郡が建てられ居た。


 公帝戦争に備えて、勇治とナデシコ地方自治州区政府が共同で建設を進めた大要塞の事で、キリヤ公国連合国とゲルニアン帝国との間に東西約100キロ、20ヶ所もの岩山を要塞化した代物である。


 言わば万里の長城の現代版と例えられると言えるだろう。



 総じてこれらの要塞の事をハコダテ国境要塞と名付けられ、ヒロサキ町からは、北へ僅か7キロの距離の位置に在った。


 その中でもゴリョウカク国境要塞郡は、キリヤ公国連合国軍側の前線司令部が置かれて居る要塞と成って居る。


 この要塞郡に先陣として入ったのは、伊達軍の片倉喜多軍2千人が要塞入りをすると、黒塗りで金ぴかの塗装で身を固めた伊達成美軍2千人が後に続いた。


 その後ろに政実に率いられた6千人の伊達軍の本隊が続いて入場して行く。


 更にその後方には、鬼庭・真礼・綱元に率いられた補給部隊に加えて、ナデシコ自治統合軍から提供のあった機動九〇式野砲枷鞣大砲大隊と重機関銃大隊を運び入れる車両部隊が後に続く。



 そのお次は、毛利軍先陣大将である吉川春美の姿も見られた。


 その直営軍たる吉川軍の精鋭5千を引き連れ、アマテラスから渡海して来て居る軍勢が要塞へと入城して行く。



 春美は、伊達軍先陣部隊と共に、ゲルニアン帝国軍先鋒隊と戦う為、アマテラス神皇国独立藩王国連合軍団の総指揮官に任じられて居る伊達政実の指揮下に入って先陣の命令を受ける事に成って居た。


「お前らっ!!!伊達の連中に絶対負けんなよおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!」


「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」


「吉川のチビにっ!!!手柄を独り占めをさせるなあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!!」


「「「「「おうっ!!」」」」」


 この二人は、キリヤ城で出会って以来、何かかに付けて、意地の張り合いをしてとまって居た。


 そして、この戦場でも功を競うおうと気合を入れて張り合って居たりして居た。


 

 この事態を両家の総大将は、放って置くしかないと、呆れつつも半ば諦めていた。



 その後ろには、上杉独立自治北陸藩王国軍、通称・上杉軍が8千人の軍勢を率いて後に続く。


「・・・・・・・・・・・・・」


 総大将の上杉景勝に率いられた上杉軍は、毘沙門天の毘の字と乱れ龍文字に日章旗が掲げられ、竹に上杉雀紋の旗刺し軍旗が居並んでの要塞へと入場して来て居た。 


 景勝は馬上で行く先を鋭い眼光で見据えて居るが、これは単に彼が寡黙で口下手なだけである。



 その後ろには直江・愛華と大国・七恵の双子姉妹が、それぞれの旗印である愛一文字旗と大国隊旗の旗を掲げて、二列に居並んでそれぞの軍を率いて進む。


「この大戦で上杉家の武名を必ず高めるよっ!!」


「姉さん、余り無理は・・・・・・・・」



 上杉家始まって以来の初の国外遠征に、双子姉妹の考え方は全くの真逆であり、姉は張り切り。妹は手綱役と成り、凸凹で上手い連携力と言える二人であった。




 上杉軍の更に後ろには、正木時奈が率いるキリヤ公国第三武士軍団3千人、藤堂吉与が率いるキリヤ公国第五武士軍団の3千人。


 その更に後ろに続くのが可児才華が率いるキリヤ公国第七武士軍団3千人と続く。


 何れの軍勢も38式歩兵銃2式と防弾性に優れたジュラルミン製の鎧に、ジュラルミン製の盾が配備されて居る姿が見られて居た。



「ううっ、もう逃げないぞーっ!」


 

 最後尾に現れたのは、小田春奈とアマテラス神皇国から陸軍に仕官して、機械化軍団に配属された者達のキリヤ公国陸軍・第一機甲機械化軍団である。


 偵察バイクに戦車と自動車、トラック。


 牽引式大砲部隊が併せて1万5千は有るだろう。


 

 小田春奈は、近隣国人や大名と戦いで5度も城を捨てては、家臣の団結と地の利を活かした戦いにて、反撃を行い居城を毎回取り戻して居る事で有名な姫大名王だった。


「この戦車を使えば、戦場で・・・私にも何か出きる筈だ・・・と思いたい・・・・・・」


 彼女が機甲機械化軍団に志願したのも、丈夫で頑丈にして高火力を誇る戦車を使えば、戦が苦手である彼女でも何らかの手柄を上げられるのではと、思って志願したのである。

 


 第一機甲機械化軍団とキリヤ公国武士軍団は、攻め入るゲルニアン帝国を疲弊させると言う防衛作戦後に、敵側であるゲルニアン帝国側へと一斉に反撃攻勢に転じると言う重要な命令を受けていた。


 その防衛主力を担うのは、主にナデシコ自治統合軍のナデシコ自治統合陸軍14万人である。



 圧倒的な火力を持って、敵を打ちのめし、兵力が減った所を反撃に討って出る。



 このキリヤ公国本土を守る守備兵は、ナデシコ自治統合軍とアマテラス神皇国出身加盟国の伊達・毛利・上杉連合軍とアマテラス神皇国から渡海し、キリヤ公国へと仕官したキリヤ公国武士軍団併せると全軍で20万人を越えて居る。


 伊達・毛利・上杉連合軍とキリヤ公国武士軍団は、ムツ地方自治州区・ヒロサキ町へと続いて居る街道を守る役目を命じられて居た。



 張り切るアマテラスの武士達は、己の武勇と知略を以ってして、この大きな戦いに挑もうとして居た。



 両軍の開戦の時は近い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 マギアンティア世界統一暦・1555年・7月15日・午前9時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・東海地方・徳川大名王家領・遠江国中部地域・三度ヶ原・織田・徳川連合軍及び武田・北条連合軍激突地点・三度ヶ原の戦いにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 キリヤ公国連合国とゲルニアン帝国による旧撫子皇国領たるナデシコ地方自治州区の帰属問題を巡っての国境紛争が発端と成った公帝戦争が開戦と成る五日前のアマテラス神皇国では・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 日本の本州に相当する島の本州島の東海地方・遠江国、浜松城の北に位置する三度ヶ原にて、武田・春夜・信玄と北条・九江・早雲連合軍と徳川・千代・家康と織田・和紗・信長連合軍が激突しようとして居た。



 後世の世に言う三度ヶ原の戦いである。



 武田春夜はライバルである上杉・剣信を見送った後のこと、兼ねてからの悲願であるアマテラス神皇国の統一の為に、織田・徳川連合勢力を打ち破って首都国である山城国と皇都・平庵京を目指して居た。



 その第一歩である遠江国の制圧とその中心地である浜松城の攻略をするべく、敢えて兵力差の有利を活かした城攻めを避け、織田・徳川連合軍をやや困難な野戦に引き吊り出そうと企む。


 念の為に呼び寄せた同盟者である北条九江軍も加えると5万人もの大軍を用意して、新たなる宿敵たる織田・徳川連合軍に戦いを挑んだのであった。



 対する織田・徳川連合軍は、織田家は東海・北陸・畿内・四国・中国東部地域から4万5千人もの大軍を搔き集め、武田・北条連合軍の侵攻を阻止せんと三度ヶ原の戦いへと赴き、浜松城へと着陣する。



 当初の戦いでは、武田・北条連合軍が徳川家領内への攻撃作戦を優位にするべく、様々な作戦を展開して居たが、織田・和紗の奇策と、羽柴軍の2枚参謀看板たる雫半軍師(しずはんぐんし)と略され並び呼ばれる名参謀の名コンビによる策略と謀略。


 そして、酒井・継美の大芝居と猛将達による暴走行為が本気で行われた作戦であった。


 そして最後は、優秀な武将達による各地の転戦で、大きく織田・徳川連合軍側がやや優位に立って居ると言う図式で、三度ヶ原の戦いの決戦の日を迎えた。


 



 両軍が激突した合戦の開始時間は、午前9時30分頃に両軍が開戦し激突した。


「武田・北条連合軍の無双の勇将・猛将・知将達よっ!!!」


「この三度ヶ原の戦いに勝利すれば、アマテラス神皇国の天下は我ら物だっ!!!」



「いざっ!!決戦に及ばんっ!!!」


「それえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!!全軍突撃せよっ!!!!攻め掛かれえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!!!」



 ブオオオオオッ!!ブオオオオオッ!!ブオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!



 ブオオオオオッ!!ブオオオオオッ!!ブオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!



 ブオオオオオッ!!ブオオオオオッ!!ブオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!



「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」


「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」


「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」



 武田春夜の命令で、武田騎馬軍団とそれを指揮する武田四天王が一斉に攻めかかると、鬨の声と法螺貝の音色が三度ヶ原に響き渡ると、同時に同盟国である北条軍も北条・九江の命令で織田・徳川連合軍の陣地へと攻め掛かって行く。



 それらに対して、織田軍の姫武将・武将達や徳川四天王。


 その他の徳川の猛将達も、主君と領土を守らんと果敢に迎え撃つ態勢を取る。


 それを連合本陣所近くで見守って居た織田・和紗と徳川・千代の二人は、あれだけ罠や策略に嵌められた武田・北条連合軍の士気は未だに高く。


 そして、その勢いは衰えて居る所か、小狡い手口で虚仮にされた事に怒り心頭の様相を呈して居り、バカにするのもいい加減にしろっ!!と言わんばかりに怒涛の勢いに乗って攻め掛かって来て居た。



 そんな時である。


 両軍は、キリヤ公国連合国を通じてユーラシアン大陸での情勢を知られる。


 武田・北条連合軍では・・・・・・・・・・・・・・・・・


「申し上げますっ!!!キリヤ公国連合国とゲルニアン帝国。間も無く開戦の兆し在りとの報せが入りましたっ!!!」


「此方も開戦したばかりですが、キリヤ公国連合国とゲルニアン帝国も開戦の運びですか?」


「何方にしても、ユーラシアン大陸ではキリヤ公国連合国とゲルニアン帝国との決戦。一方のアマテラス神皇国地方では、我ら武田・北条連合軍と織田・徳川連合とが決戦。」


「何方の戦も、勝った方が武力衝突するかも知れないわね?」


「はい。伯母上。ですから、我らはこの戦に勝ってユーラシアン大陸の覇権国家と対峙すると言う役目を担わなければ成りません。」


「下手をすれば、伊達・上杉・毛利らとも戦う可能性すら在るのです。」


「アマテラス神皇国の将軍王は、それらからこの国の民と土地を守る責務が有ります。」


「あの信長に、その素質が在るのか?それとも私の方にそれが在るのかは?三度ヶ原の戦いで明らかと成る事でしょう。」


「さて、それは如何かしらね・・・・・」と言う伯母たる九江は、この戦いが川中島の戦いと同じ結果と言う失敗を孕んで居る事に気が付いたが、姪っ子である春夜がやりたいと言って聞かないのだから、如何にも為らない。


 失敗とは、失敗して初めて失敗したと気が付く物でも在るのだ。


 九江は、まだまだ若く未熟な姪っ子を見守る事しか出来ないのであった。



「ひひっ!!和紗姉様っ!やっぱり武田の騎馬武者軍団を相手に、真正面から戦うなんて無謀ですうぅっ!!」


 織田・和紗の同盟者にして、妹分でもある徳川・千代・家康は、緒戦から武田軍にビビッて居た。


 だって、三度ヶ原を決戦場にすると和紗に言われた時は、反対すらして居たからである。


 武田軍の騎馬軍団は、上杉家の騎馬軍団と並んで勇猛果敢な騎馬武者である評判の高い者達だったからだ。


 今のアマテラス神皇国地方ないでは、一・二を争うほどの実力を誇って居るが、しかしながら、この時期のアマテラス神皇国の情勢下では、キリヤ公国連合国へと加盟した伊達家では、ライフル銃を主体とした騎馬鉄砲隊が編成され、上杉家でも似たような方針を固めて居り、終いには毛利家でも真似を始めて居ると言う。


 悲しいかなこの時期の武田騎馬軍団は、旧式騎馬軍団と成り果てつつあったのである。


 その武田騎馬軍団が再び日の目を見るには、武田・春夜・信玄が、勇治とキリヤ公国本国に臣従を誓って、キリヤ公国連合国の藩王と成るまで待たねば成らないのであるが、それはもう少し先のお話。


「お前がそんな事で如何するのだっ!!お前の家臣団も武田の猛将共にも引けは取らんのだぞっ!!!」


「でもぉっ!!」と心配そうな顔付きで、一斉にやって来る武田・北条連合軍の軍勢を見て居た千代。



 そんな時である。


 武田・北条連合軍の先鋒軍を任されて居り、武田軍団に措いて、侵略する事を火の如くと謳われし山県・虎三・昌景。  


 武田家の筆頭家老にして、武田四天王の一人であり、又の名を不死身の馬場と称されし勇猛果敢な名将としても知らて居る軍部統括大将・馬場・春香・春信の二人。


 それともう一人、北条・九江・早雲の妹である北条・勝実・正成の子で、北条五色備軍団・北条黄備え軍団を率いる地黄八幡と謳われる猛将として知られて居る北条・紗英・綱成の三名が、一気に決着を付けて見せようと両軍の腕利き騎馬軍団と供に、織田・徳川連合軍の中央突破を試みた。


 武田騎馬軍団と北条黄備え軍団の力を合わせて攻め入れば、如何に防備が固く、織田・徳川連合軍の猛将・勇将たちが揃おうとも、討ち破れる絶対の自信がぁったからであった。


「織田・信長っ!!!覚悟するんだぜっ!!」


「その首を討ち取ってお館様の天下をっ!!」



「やぁやぁやぁやぁ、我こそは北条・紗英・綱成なりっ!!織田・徳川の御大将の首級を頂戴せんっ!!」


「ほう、武田四天王の先駆けの山県と不死身の馬場か?この俺を意図も簡単に喰えるとでも思って居るとは、トンだ間抜けだな?」


「げげっ!?綱成って言ったら、地黄八幡と言われて居る猛将じゃないですかっ!!」


「それと合わせて武田四天王の先駆けの山県と不死身の馬場来るなんてっ!!!」


「とっても面倒な奴らが来たですぅっ!!」


「ほざけっ!!!何時までも奇策ばかりが成功する思うなんだぜっ!!!」


「その通りっ!!!我らが剛力すればっ!!!この様な馬防柵など、只の木組みに過ぎないっ!!!」


「御身城さまも武田のお館様も、そんな物を打ち破る術をお考えだっ!!やれええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」と紗英が叫ぶと、武田騎馬軍団と北条黄備え軍団の者達は、鎖で繋がれた丸太を二人一組で引き吊りながら突撃隊を汲んで、織田・徳川連合軍の陣地へと攻め入る。



「各隊っ!!慌てるなっ!!」


「そうだっ!!これも予測通りですよ~」


 中軍を指揮して居た丹羽・米実と酒井・継美の二人は、前線指揮官の武将達らに、混乱をさせないように叫ぶ。


織田・徳川連合軍が築いた馬防柵は、南北線に五キロ。


東西線に三キロに渡って築かれて居る。


各陣地が五段階の馬防柵と曲輪式防御陣地を築き上げての野戦築城である。


 城攻めも野戦に成れて居る武田・北条連合軍は、織田・徳川連合軍の先鋒陣地を破壊力すると、居残って居る織田・徳川連合部隊を構わず、そのまま攻め入って行く。


「見たかっ!!!この様な子供騙しっ!!!如何とでも出来るんだぜっ!!」


「二人ともっ!!!後衛は、拙に任せ、敵大将の下へっ!!!」


「承知っ!!」


「了解たぜっ!!姉御っ!!!」


 武田・北条連合軍の先鋒軍部隊の指揮官である山県・虎三隊と北条・紗英隊は、更に和紗の居る陣地へと目指して駆けて行く。


「虎三殿っ!このまま一気に・・・・・・」


「おうさっ!!だけどよ、このまま時間を掛けるのも面倒くさいっ!!!あたし自慢の弓で一気に・・・・・・・」


「為らば、私も・・・・・・」と先駆け武将が得意として居る弓による馬上狙撃を試みる二人。



だがしかし、その態勢に入った姿を見た和紗は、不敵に笑って見せた。



「ふっ、そう言うのはもう流行らないぞっ!地黄八幡っ!!!山県っ!!!」


「「何言うかっ!尾張の大虚けがあああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」」と二人が叫ぶ。



 その時、不死身の馬場と称されし勇猛果敢な名将たる馬場・春香は、突撃して行った二人叫び声を聞いて、ふと振り返って見た瞬間だった。


「はっ!?不味いっ!これも罠だっ!!下がれええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」と叫び声を上げる春香。



 それと同じく遠くに居た北条・紗英の母である北条・勝実も遠目で娘の勇猛果敢な姿を眺め見て居たのだが、敵野戦築城の動きが一瞬にして蠢く事にハッとした瞬間に、「紗江ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!!!!」と叫んだ。



 無情にも、先駆け隊の二人は、和紗が仕掛け張って居た罠のど真ん中に飛び込んでしまったのだった。



「佐々隊っ!!野々村隊っ!!前田隊っ!!明智隊っ!!丹羽隊っ!!滝川隊っ!!鉄砲構えええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」


「第二陣から第三陣の半列は反転っ!!」


「徳川軍も構えるのですよ~っ!!!」


「榊原隊っ!!渡辺隊っ!!石川隊っ!!水野隊っ!!奥平隊っ!!鳥居隊っ!!大久保隊っ!!成瀬隊っ!!平岩隊っ!!夏目隊っ!!鉄砲構えええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」



「なっ、なっ何なんだぜっ?!」


「なっ、なっ何っいいいいいぃぃぃぃぃーーーーーーっ!?!」和紗と千代の首級を討ち取ろうとした、北条家の猛将北条・紗英は、突如として現れた織田軍鉄砲隊を前にして、ビックリ仰天してまう。


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!


ズダダダダダッダーーーーーーンンッ!!



「ぐわあああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」


「殿おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」


 北条・紗英は、二〇発近くの銃弾を鎧に受け、二発が脳震盪を起こすほどの衝撃を兜に受けてしまった。


それにより、乗って居た馬から落馬してしまう。


「紗英っ!!」と、それを見て居た虎三は、叫ぶが、自分自身も銃弾を受けてしまった筈と気が付くと、その周りを見渡すと赤備えの騎馬武者たちがパタパタと倒れて行く光景を目の当たりにする。



「はっ!?あたしも銃弾を受けて居た筈?如何して無事なんだぜっ!!」


「・・・・・・・・・・お前たちっ!!」


「山県さま・・・・・」


「お下がり下さい・・・・・」


 山県・虎三は、直参馬周り衆の五名の犠牲者を出す事で、何とか助かったが、北条・紗英は、和紗が伏兵を配置して置いた部隊に命じて、北条家では地黄八幡と言われて謡われて居る猛将北条・紗英・綱成を容赦なくハチの巣にしてしまう。


 北条・紗英は、母である勝実からこれから鉄砲と言う物騒な武器が流行るだろうからと、ある程度厚くして有った武者鎧が送られ居たお陰で、命に関わる大事には至らなかったが、旗下の旗本衆に運ばれて最前線から退いて行く。


「見たか千代っ!!これからは鉄砲や大砲を多く持った国が台頭するのだっ!!!」


「このユーラシアン大陸周辺国に措いて、最早っ!猪武者同士たちが、一騎打ちをする事は無く成るだろうっ!!!」


「うわあああぁぁぁっっ!!!流石ですっ!!!和紗姉様っ!!!」


「だが、数が多いな。柴田・仙石・森・池田・金森の各隊は、鉄砲隊の防御陣の周囲を警戒っ!!決して突破されるなっ!!」


「徳川衆もやるですよっ!!」


「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!」」」」」


「和紗様・・・・・」


「拙者たちの出番は・・・・・・」


 真っ向勝負をするからと言われた織田・徳川連合軍の猛将達は、大量の鉄砲を使っての決戦が行われた事に、又もや騙されたと嘆いて居たが、勝って居る事には変わりは無く。


 後半からは防御陣地での防戦での戦いに参加が出来たが、不完全燃焼と言った感じの気分に苛まれてて居た。


 


 その後も三度ヶ原の戦いでの両者の戦いは、苛烈を極めて居た。


 だが、やがて午後に成ると、やや兵力の多い武田・北条軍側が織田・徳川連合軍を徐々に押し返し始めた。


「信長様、火薬・銃弾の在庫がっ!!」と徳川四天王が一人、酒井・継美・忠次が補給物資の類で、一番重要な玉薬の底が尽きそうだと報告して来た。


「家康様っ!織田軍・徳川軍の第四馬防策陣地が突破され居りますっ!」


「柴田殿、仙石殿、森殿等が懸命に戦って居るで御座るが、一時撤退して行った筈の武田軍の馬場軍、山県軍らは、内藤隊と高坂隊。それに北条家の北条・勝実隊と笠原隊らが援軍に駆け付け、そのの勢いが凄まじいで御座るよっ!!」


「此処は我ら徳川四天王に任せ、お二人は浜松城に退いて下さいっ!!」


 徳川四天王の榊原・康江・康政。本多・八重・忠勝。井伊・直虎・直政らも武田軍の猛攻を防ごうと最前線へと出て行く。 



 その軍勢が押され始めた原因は、織田・徳川連合軍内での弾薬の残りに限りが、徐々に底が尽き始めて居たからだ。


「くっ、火力を主力とするのには、もう少し弾薬や火器類を多く用意せんとな。」


「くううっ、此処は無念ですが、浜松城にそろそろ引き上げましょう。」


「信長様。此処は、この明智・十華にお任せをっ!!」


「明智殿。松下隊も出ますっ!!」


「助かります。」


「和紗殿っ!!早くっ!!追い詰められてから逃げるのは大変と成ります。」と三好・慶香・長慶も敗戦経験から和紗に撤退を早くと促す。 


「真澄。悪いですが、少々付き合って貰いますよ。」


「はぁ~、畏まりました。慶香様。」と松永・真澄も、嫌な局面で旧主に目を付けられと溜息混じりに諦めた様にして、この撤退戦に付き従った。



 その他にも朝倉・浅井・今川と言った織田家に敗れて生き残ってしまった残党軍達等も、撤退戦を支援に動いて行く。


 

 二人は旗下に在る様々な武将達らに殿を命じて、浜松城へと撤退を開始するのであった。


 その時だった、織田・徳川連合軍が撤退しようとした矢先の事である。


 武田・北条連合軍の本陣で異変が起きたのである。


「ううっ、お腹があぁぁ・・・・」


「あらら、また腹痛なの?」


「すみません。九江の叔母上。戦前に食した食べ物の中で、何かに中ったらしい様です。」



「はぁ~、これで貴女のアマテラス神皇国の天下統一への夢が遠のくわねぇ・・・・・・」



 武田・春夜・信玄は腹痛を良く起こす事で知られて居た。


 まぁ、偶に神経胃痛と軽めの食あたりを起こす事が良くあったりして居た。


 今日は前日のお昼に食べて居た貝類・・・・・特に大好物のアワビが、胃に合わなかったらしい。


 アマテラス神皇国・甲斐国の人達は、日本の山梨県民と似たような気質らしく。


 海無し国の割には、海の物が大好きで、わざわざちょっと高い金を払ってでも食べたがる魚貝類好き。


 執政に関わる権力者達は特にで、時より食べた者は、食中りを起こす事が多々あるらしいのだ。


「夏夜、全軍の指揮を・・・・・後ちょっとで勝てるのにぃ・・・勝って近江・瀬田の端に武田菱の旗を立て・・・・・・ううっ、無念。」ってな具合に、ガクっと倒れる武田・春夜。


「ねねっ!!姉さんっ!?誰か医者をっ!!」


「はぁ、ホンと全く面倒な姪だわ。」



 武田家から夫を婿に向かえて居る北条九江は、肝心な時に腹痛を起こす姪を呆れながらも、良く面倒を見て居た。


 才覚は有ると思って居るが、武田家と言う所は、胃痛が起きたくなるほどに忙しく、稀に食べるご馳走が貝類を調理した食べ物である事の多いので、武田家内では腹痛に成るものが多いと言う。



 両軍の決着は後日に持ち越され、数か月後に行われる長鹿野ヶ原の戦いにまで延長と相成ったのであった。


その時には織田家・徳川家らは、キリヤ公国連合国へと加盟を果たして居り、キリヤ公国連合国と大戦と成ってしまう事に由り、この三度ヶ原の戦いでの畿内地方へと攻め入られる最後にして、最大の好機を失ってしまうのは、実に勿体無い事をしてしまった武田・春夜・信玄。


 武田家は、この戦いの腹痛による撤退は、アマテラス神皇国地方の天下統一を夢のままを終わらせてしまう事にも成ったのであったが、彼女が真に名を馳せる事に成るのは、キリヤ公国連合国へと臣従し、アルビオン王位継承・独立干渉戦争へと参戦をする事に成ってからに成るのだが、それはもう少し先のお話。



 三度ヶ原の戦いの戦いの結果は、織田・徳川連合軍と武田・北条連合軍の痛み分けと言う残念な物と成ってしまった事に由り、幕を閉じたのであった。

 



マギアンティア世界統一暦・1555年・7月16日・午後12時00分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部地方・キリヤ公国連合国本国・キリヤ地方・キリヤ公国・公王都キリヤ市・キリヤ城・宮中王妃居公邸・セレジアーナ・ユリテリア・ガリアナ居室エリアにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 間も無くゲルニアン帝国と大戦争を控えたキリヤ公国連合国だが、キリヤ城・宮中で過ごし働く者達らは、殆んど関係が無い毎日を送って居た。


 だって、公王都キリヤ市の発展振りを見て居ると、中央世界第一文明圏を謡って居るゲルニアン帝国が大国で無い事は明きらかだし、後進国に過ぎない事を理解させられてしまうのだ。


 そんな近代化大都市たる公王都キリヤ市で暮らしにもすっかり慣れて来た新米世界神ユイテルシアが化けて居るユイン・テルシーアこと、ユイは、すっかり都会っ娘に成りつつあった。


 ユイは同僚の女友達と定時上がりでの仕事が終わり、今日の夜と明日の休暇日である余暇を楽しもうと話して居た。


「ねえねえ、今度の休暇日、何処に行く?」


「ショッピングモールも良いけど・・・・・・」


「商店街の仕立て衣服屋さんや下着屋さんも良いわね。」


「あっ、そうそう。今度、東町商店街に出来たケーキ屋さんも美味しいって聞くわ。」


「ユイは何処に行きたい?」


「ええっと、あたしは・・・・・(はっ!?すっかり忘れてたわ。勇治への罪滅ぼしに来て居るのに。すっかり公王都キリヤ市での便利な暮らしに毒されてしまって・・・・・)」



 ユイは、此処に来てからと言う物の。


 すっかり公王都キリヤ市での便利な暮らしに毒されてしまって居た。



 気が付けば、年頃の近い同僚の女友達と一緒に成って、遊びに出掛ける日々の毎日を送るように成って居た。


(ダメダメ、このままだと新米女神である事を忘れてしまうわっ!!)


(気を引き締めて行かないとっ!!)


「ユイーっ!晩ご飯に行こうっ!!」


「あっ!!待ってえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」と、同僚達を追い掛けて行くユイは、おっちょこちょいのドジっ子メイドとして有名に成って居た。


 それでも解雇をされないのは、勤勉で努力家である事が、セレジアとベルからの評価が高く買われて居たからである。



そんな日々を送って居たユイに、一大事件が発生する。



「あっ!!」と言うとユイは、セレジアの前で盛大にズッコケてしまい、お茶が入ったティーセットを割ってしまった。



「はぁ~、また、やったのね。」と呆れながら言うセレジア。


「ごめんなさい。セレジア様。直ぐに片付けます。」と言いながら、割れてしまったティーセットを掃除して行くユイ。


「ああ、そう言えば、勇治から聞いた昔話に、貴女の様なドジっ子が居たわね。」と言った瞬間だった。


 その話に動揺をしてしまうユイは、うっかり塵取りを落としてしまい。


 折角、掃き取った陶器のティーポットやカップを更に粉々に割ってしまう。


「・・・・・・・何だか、貴女の事を見て居ると、勇治から聞かされた話に聞く、ドジっ子を見て居る様な気がするわ。」


「あはは・・・・まさか・・・あたし如き、勇治陛下のお顔を知る筈も無いですよ。」


「何で其処で、自分だと言うのかしら?」


「あっ!!」


「はぁ~、まさか、此処に居る貴女が本物の本人だったとわね。」


「ええっと、その・・・・・・」


「ドジだ、ドジだと思って居たけれど、此処までだったとわね。オマケに、それが新米女神で在ると来たら・・・・・呆れるしか無いわ。」


「・・・・・解雇ですか?」


「はぁ~、そんな事をする訳が無いわ。勇治がこの世界に来た時の経緯での話は、大まかに聞いて居るわ。」


「貴女が原因だったとも聞いて居るけれど、貴女の主神様は、勇治に取って命の恩人。」


「そして、私との出会いを作ってくれたお方よ。そんなお方に大事にされて居る子を無下には出来ないわ。」


「それに、この2ヶ月もの間、貴女の仕事振りは評価するのには十分よ。失敗は多いけれど、その分を努力して補って居るのよね。」


「仕事をめげずに、辞めずに頑張って、やって来た子を解雇する訳が無いじゃない。」


「引き続き、私の専属をやって貰うわ。それと貴女が居る事も勇治には言って置く。」


「それはっ!!」


「だって、言わないと伝わらないわよ。御免なさいってね。」


「はっ!?(そうか、この人は陰からコソコソと詫びるくらいなら、真正面から堂々とアイツに尽くせって言いたいのね。何て浅はかだったのかしらあたしは、こんな簡単な事を人間に諭されるなんてね。)」


「・・・・・・」


「くすっ!(此処まで人間臭い女神なら、此処でも、やって行けるわ。)」とセレジアは、ユイの行く末を楽しみに成りだして居たのであった。


 右も左も初めてで、判り難い地上世界で、ユイが女神から人間として生き始めた事に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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