15話 日本は異世界に出会いと外交を求めるのは間違っているのだろうか?5

西暦2030年・4月8日・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・関東地方・神奈川県・箱根山・箱根町・芦ノ湖周辺地域にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



紅葉が前日の15時に箱根町の芦ノ湖の周辺へと入り、一方の安元達らは、仕事の都合やスケジュール調整の関係で、先に現地入りを果たした紅葉達に遅れれる事4時間後の19時に現地に入った。


 その日の対談は、互いの顔会わせ程度にして、本格的な会談は翌日のお昼に昼食をしながらと言う事に成って居た。


 翌日、紅葉は朝食を済ませると、僅かな暇の時間を使って、箱根観光と洒落込むべく、外務省職員に何所か時間内で回れる観光スポット無いかと聞くと、それならば箱根町の景勝地の一つである大涌谷が良いと言われ、大涌谷へと足を伸ばした。



 大涌谷は箱根火山の中央火口丘である冠ヶ岳の標高800mから1000mの北側斜面にあり、地熱地帯で活発な噴気地帯で、箱根火山に多数有る噴気地帯の中では最大規模のものである。


 大涌谷園地として整備されて居り、観光地としても有名で、噴煙や硫黄をまじかで見る事が出来る景勝地である。


 ただし、硫黄の採取は原則として禁止され、火山ガス(亜硫酸ガス、硫化水素ガスなど)が噴出しているため健康上の注意が必要とされて居る。



 この地で有名なのが、地熱を利用して作られたゆで卵が販売されるように成った。



 現在も販売されて居るこのゆで卵は、同地で湧いている温泉に含まれる硫黄と鉄分が結びつき黒い硫化鉄となり卵の殻に付着して、黒く変色している事から黒玉子と呼ばれる。


 黒玉子は1個食べると7年寿命が延びると言う触れ込みで、軽食・土産物としてとても人気が有る事で知られて居る。



「火山の噴出口を観光に使うなんて発想・・・・・・私達の世界に無い物ね。」




「全くです。我々の感覚では、此処も十分な危険地帯ですよ。」


「これで観光客が呼べるのなら、南西国藩の桜花島なんかは良い景勝地に成るわね。温泉も多数湧いて居るし、モクモクと沸き立つ桜花山は、我が国自慢の霊峰だわ。」


「今度、義隆にでも提案してみようかしら?」


 桜花島とは、南西国藩の藩都いである加古島市・加古島湾から6キロ沖合いに在る火山島で、加古島市から良く見えて居る景勝地である。


 島には温泉が多数沸いている観光地でもあるも在るが、火山に関する自然物を見て回るなんと事をする考えが無いので、紅葉に取って大涌谷の観光地として光景は有り得ない事であった。




 まぁ、他所の国からすれば、我が日本列島は火山列島である。



 そんな火山が目の前にある町で暮らして居る日本人の神経を疑うとも言う人も居るらしい。



 この二人からすれば、噴火口で無くても温泉や硫黄の噴出する場所を眺める地を商売に直接使うなんて考えられないだろう。



 アイスランドでは、上手く地熱を使った設備が充実して居る等と言った特定の外国の地域を除けばだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「でも紅葉さま、絵美里お姉ちゃん。宿の温泉を使った露天風呂は最高だったよね。」



「確かに、あの様な風呂場を利用できるのは、我が国や他国では裕福な者達だけでしょうね。」


「本当に私達の常識の概念をトコトンぶち壊す国だわ。二ホンと言う所は・・・・・」



「そうです。(はぁ~昨晩のお風呂での姫様は美しかったな~っ!!)」




 ニヤニヤと思いだし笑いしている絵美里。


 彼女は姫様ラブを掲げる子であった。



「何やってるのよ。」



 冷やかな目線でみる紅葉。


 親友の1人である彼女の心の内は知って居るので、危ない妄想して居そうな時は、スルーするか、ツッコミを入れる事で、対処をして居た。



「はっ?!・・・・スミマセン。」



 慌てて我に返ると雪が掛かった大きな山が目に入った。




「ひっ、姫様。富士山です。此処からだと良く見えますね。」



「ああ、新幹線の車窓から見えて居たけど、もう少し近くでゆっくりと見たいと思って居たのよね。」


「宿に付いてから見ようとはしたのだけれど、結局は天候に左右されて居るせいで見れなかった日本一の山ね。」



「こうしてまじかで見ると、冬に降った残り雪が掛かって、本当に綺麗ね。」



「そうですね・・・・・・・」




 3人は改めて大きく見えた富士山を見て、その景色を堪能する。



 丸で彼の山が異世界国家の姫君とその従者二人を歓迎して居るかの様であった。



 西暦2030年・4月9日・12時00分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・関東地方・神奈川県・箱根山・箱根町・芦ノ湖周辺地域・箱根芦ノ湖ホテル内・富士の間にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




紅葉達は芦ノ湖に措ける小旅行を済ませると、一向は滞在しているホテルの広間にて会談が場始まった。



 コヨミ皇国側は暦紅葉、加藤絵美里、福島香織の三人。



 日本側には、総理大臣の安元宏孝、官房長官の高橋裕貴、外務大臣である諏訪部純二の三人である。



 会食をしながらの他愛の無い会話をし、コヨミ皇国に付いての話が主な話題と成った。


 大陸には、どんな所が在るのか、どんな生物が居るのか等、その話題は多岐に亘って居る。



 やがて食事が終わり、デザートも食べ終えると、テーブルに有った空の皿が片付けられ、いよいよ本格的な会談である。



「紅葉さん。正直に言って我が国は戸惑っています。」




 最初に話を切り出したのは安元である。



 公式な場では無いので、殿下の総称は要らないと紅葉は、日本側の人達に言って居た。



「戸惑う?」



「はい。」



「日本がこの異世界に転移をしてから、凡そ一週間が過ぎました。」


「我々も取れる対策は全て取って来ています。ただ、未接触の国家の軍との紛争は想定は有りましたが、停戦を呼びかけて無視されるのも構いません。」


「後日、説明すれば分かって貰える。」


「そんなのが当たり前と思って居ました。それが我々の世界の・・・そして、この国の常識でした。」


「勿論、例外も在りますがね」と安元総理は言う。


 彼の言う例外とは、2022年度に起きたウクライナ問題の事である。


 ロシア連邦のウクライナへの突然の軍事侵攻は、地球世界に大きな暗い影を落として居る大問題であった。


 アレから8年が経過して、今度は異世界で日本国がローラーナ帝国との武力衝突に脅かされてしまうとは、先の事は分からないものである。


「ですが、ローラーナ帝国海軍のアディーレ閣下の言葉によれば、そう遠く無い日に、日本は帝国と刃を交えなければ成らないと言うではないですか。」



「それは安元さんのせいでは有りませんもの。」


「国が・・・・・そして、国土丸ごと異界へと転移する等と言われれば、誰もが信じる事が無いでしょうし、私も貴国の鉄の船を見ただげては珍しいと言う感想を述べるだけで、信じなかったかも知れません。」



「それにこうして、ニホンをこの目で見る事で、ようやく貴国が転移して来た事実が信じられるのです。」


「でなければ、私も含めて、どんな人でも失笑するしかなかったでしょうね。」



「それは我々もですよ。」



 高橋が言った。



「ドラゴンに魔法。騎士甲冑を身に着けた者が戦場を駆け巡り、何でもやってのける冒険者が居る世界なんて物は、空想世界の産物かゲームの中にしかない事と、ずっと思って居た事でしょうね。」




「それで如何ですか、この世界は?」



 紅葉が皮肉った事を冗談を交えた積りの質問を言って見た。


「正直言って迷惑ですね。」


「好き勝手に戦争を仕掛ける国や無法な集団が居る地域が多い世界は・・・・・ですが、天災に遭ってしまった以上、此処で、この世界で暮らして行くしかない。」



「でも、タダでと言う訳には行きませんわ。」



「分かって居ります。」



「ニホン国は・・・・どれ位の事をしてくれますか?」



 香織が恐る恐る聞く。


 すると外務大臣たる諏訪部が答えた。


 公式では無い為、総理の安元が言うと、後々問題と成ると考えての受け答えだった。



「これは公式の会談では有りません。ですが我が国は、一刻も早くあなた方の国・・・・・コヨミ皇国との首脳会談又は外相会談が必要と考えて居ります。」



「本来なら外交準備を重ね。外務大臣同士の会談をした後に首脳会談、国交開設と言う流れが、どの様な世界で在ろうとも通例だと思います。」



「香織、貴方は外交官では無いのだけれども、政治に付いては多少なりとも知って居るわね?」


「紅葉様・・・・・はい。」



「それなら、此処はあくまで、貴女が諏訪部さん等に対して、質問をして居ると考えれば良いのよ。」



「はっ、はい。ええっと確か・・・・我が国でも制度的、慣例的な事柄も二ホンと同じであると思います。」



 香織は紅葉の秘書の役目も担って居る。


 香織は諏訪部に対して、それと無く日本から援助に付いての質問をしたが、日本独特のお役所的な説明をして来たので、彼女は戸惑ってしまう。



 不慣れな席での会話に香織は、後の交渉で自国が不利に成るのではないかと思って、黙り込んでしまう所を紅葉が助け舟を出してくれたのであった。



「香織さん。此処は堅く成らなくても良いですよ。既に言って有りますが、この場での発言は、公式では無いですよ。」


「この場では主に質問やコヨミ皇国との国交交渉に付いての事前準備確認に過ぎません。」


「此処での話は、外交上の約束事は有りません。本当に必要と思われる事意外は、別ですが・・・・・・・・・」



高橋が、にこやかな笑顔で、香織を落ち着くように言う。



「それなら私からも良い?」



 絵美里も、何か聞きたそうである。



「家は皇国で代々近衛軍に勤めて居るから、軍に付いての事柄が気に成るんだが、ニホン軍・・・・ジエイタイだったか、そのジエイタイは、どの程度派遣する積りだ?」


「ニホンは大陸に使節団と調査隊を出すんだろう?当然、その護衛にはジエイタイは付いて来るよな?」


 日本国政府は、ローラーナ帝国による龍雲海海域でのあさくら号襲撃事件と自衛隊との武力衝突による紛争が勃発した事により、早急にアースティア世界と隣近所に当たる大陸であるユーラシナ大陸の調査。


 それにコヨミ皇国との外交会談が必要不可欠であるとの認識を内閣閣僚全員が一致して居ると共に与党である自由民権党と公明民権党。 


 そして中立政党として名高い日本一新党がアースティア世界とユーラシナ大陸の調査とコヨミ皇国との外交会談に向かいう外交使節団の護衛の為に自衛隊を派遣するべきだとして居る。


 因みに日本一新党とは、 通称日新党と言い。


 中立的な政党で大阪府と大阪市を中心とした基盤を持った政党で、大阪市出身者で、東京都で弁護士やテレビコメンテーターとして成功を収めた元弁護士である橋元徹氏が発起人と成った政党のこと。


 政党名の由来には、マンネリ化した日本国の政治を一新をしようと言うと意味が込められて居る。



 話は少し逸れてしまったが、英美里の質問に対して、官房長官である高橋が当たり障りの無い自衛隊や国内世情に関する情報を説明する。



「軍事機密に当たるので答えられませんと言うのが当たり前だと思うのですが、まぁ、其れに付いては、その内にマスコミや政府公式発表として発表されるので構いませんよ。」


「派遣人数くらい報道をやってる会社でも素っ破抜かれたり、言い当てたりしますしね。」


「既に政治評論家や軍事評論家でも色々と予想したりしますしね。我が国での軍事機密とは、もっと別の物に成るので・・・・・・・・」



 高橋が苦笑した顔立ちで言って居た。


 この場で異世界の人達に、公表するのが時間経過しないと、とても内外に公表出来ないのが国家機密である事や最新技術の根幹的な部分が軍事機密と言っても想像と理解が追い付かないだろう。



「紅葉さん。貴国は日本使節団の護衛として、最大で五万五千人を受け入れてくれますか?」



その自衛隊の派遣人数を聞いた3人は驚いたのである。



「五万五千人ですか?貴国にしてみれば、即座に出兵できる総兵数の凡そ3割ではないですか?」



 紅葉達は自衛隊に付いての情報を書籍等や会って話をして事のある外務官僚から一般市民が知られている範囲で聞いて居たので、派遣すればどの程度に成るのかを予想していたのであった。



「ええ、その通りです。」


「但し、それは陸自のみの人数です。」


「海自と空自も含めると8万には成るでしょう。ですが、我が国としてはあくまで護衛です。」



 この世界に転移した日本の自衛隊は総合で30万人。



 その内の15万に以上いる陸上自衛隊。



 対帝国戦で戦う主戦力に成るであろう陸上自衛隊。



 それを3割から4割程度の派遣が可能であると言って居るのだ。


 この事からあさくら号襲撃事件での事柄の顛末を受けた衝撃で日本政府が今までの平和一択の考え方から方針転換をし、積極的平和主義を掲げつつも、対外派兵がある程度は本気であると言う事を派遣人数から示して居ると言えるだろう。




「護衛にしては人数が多いと言えますが。それも何か思惑があるのでしょうか?」



「変な企みは有りませんよ。ですが我が国が・・・・と言うより自衛隊が大陸で活動するには、大きな拠点と上陸に必要な施設が無いのです。」


「それを最初に作るのが施設科と呼ばれる部隊が港湾施設、海自基地、航空基地、駐屯地などの施設に、活動拠点となる都市へと続く街道を日本式の道路へと作り変える事ですね。出きれば物資輸送の為の鉄道も敷きたいですね。」


「そんな施設を作る為に、自衛隊員が多く派遣したいのです。」


「そして、自衛官だけでは施設の建設も完璧では有りません。」



「専門家である建設業者や資材運搬に必要な運送業者等の多岐に渡る民間業者の手も借りねば為りません。」


「そう言った業者の人達の護衛や不測の事態に対処する初期の自衛隊の派遣人数と成って居ます。」


「施設建築の仕事や帝国との武力衝突が少ないと見られれば、必要人数を最低限まで減らして行く予定です。」


「皆さんには自衛隊の派遣人数に付いては、大げさに聞こえてしまったかも知れませんが・・・・・・・・」



「それは・・・・・・・・」



「勿論、ある程度開発が進んでくればコヨミ皇国の皆さんも利用が出きるように調整は付きますよ。これ等の施設は、戦後は経済発展にも寄与するでしょうね。」



 安元の言葉は、紅葉達とコヨミ皇国に取っても願っても無い申し出である。



 土地を提供し基地や軍事関連の施設を造らせる。


 更には日本関連の車両や物資に人等の流れに必要な港湾施設と街道の改修してもらい等日本にして貰えば、後々コヨミ皇国も使用が出来て、自国の国防にも繋がる。



 正に両得な提案だった。


 最初は自衛隊と日本の企業の使用が優先されるが、拡張がされれば、コヨミ皇国も使用出来る様になり、最終的にはコヨミ皇国が優先権を持てるように成れるのである。


 これは将来的なコヨミ皇国の発展に莫大な物を持たらしてくれるのは確約されたような物である。



 自衛隊の基地が必要だから莫大な税金を使うだけと言えば、日本国内からは国民達からの反対の声が大きい。



 それならば、土地を提供している国に対しての経済発展に寄与すると言えば、嫌な顔くらいはされるだろうが、反対の声は小さくて済むと言う裏技を安元内閣は用いて居るのである。



「ですが、この話はコヨミ皇国の皇政府の決定がなければ成りません。私は迂闊な返事が出来ないのですが・・・・・・」



「それは勿論ですとも、これはあくまで仮の話です。派遣人数もお互いの都合も有りますし、応交渉と成るでしょう。」



 安元内閣では使節団と護衛の自衛隊の派遣は決まって居た。



 初期は陸自を中心に、4千人から6千人程度を予定して居る。


 自衛派遣法案と外交使節団派遣法案の決議を先送りにしたのは、彼女達の会談が有った為である。



 その受け答え次第では、派遣人数を変更も法案成立その物の見送りすら有り得たのである。



 日本政府の総意として、時刻をアースティア世界唯一無二の帝国と称するローラーナ帝国成る覇権国家は、かなりの危険思想軍事大国国家との認識が有った。


 あさくら号襲撃事件で捕虜と成ったアディーレからの事情聴取で、その実体が明らかにされるに連れて、自国民を助ける為とは言え、この世界最大の軍事覇権大国と一戦してしまった以上は、帝国側が日本国とは戦い続けるのは無理だと折れて、停戦又は講話会談を申し入れない限り、敵対行動を取り続けるだろうと防衛省と軍事専門家は分析して居る。


 それに加えて帝国側も、兵力では勝って居るのに、軍事技術と兵器の質で負けて居るからと言う理由だけでは、簡単には退き下がらないだろう。



「あの~、首脳会談と言うのは、簡単に出来る物なのでしょか?」



 次に質問したのは香織だった。



「どう言う意味ですか?」



 高橋が聞き返す。



「私達の世界の国々では定期的な国際会議でも外交を担う大臣か外交官が代理で会議に出席して行うのが慣例です。」


「滅多に王や政務の代理実権を持って居る宰相同士が会っての直接会談は滅多に在りませんので・・・・・・・・・」



 この異世界の特異な事情に諏訪部が地球での慣例の内容の説明して答えた。



「近年の地球では当たり前ですよ。」


「此処200年で交通網が良くなったお陰も有り、国の代表や外務担当の大臣が直接会って話すのは当たり前ですよ。」


「それ処か政府の要職に付いて居る全ての大臣同士が直接会うのも珍しくありません。」


「我が国としては、何れある程度の交通網を整備して、日本での会談や、総理を始めとした閣僚やその代理に加え、官僚等が此方から出向く事もあるでしょう。」



 この世界では国家元首や大臣、使者として向う官僚でも他国へ向う旅は危険と隣り合わせだ。


 盗賊・海賊・暗殺・事故に病気と危険を幾つも挙げたら切りが無いだろう。



 日本はその安全を保障できる交通手段が用意できると言って来ていた。



「そんな事が出きるようになれば、国同士の結びつきが良くなりますね。」



 そう香織が一言述べると、彼女がしたかった質問を終えた。



「最後に成りますが、私から一つ提案があるのですが。」



 紅葉が何やら切り出そうとしていた。



「何でしょうか?」



「貴国に住まう市政の民である、とある人物を貴国に雇って貰いたいのです。」



「それは一体どう言う事でしょうか?」



 高橋が紅葉の提案に疑問に思う。



 当然だ、高橋だけでなく、安元に諏訪部も訳が分からなかった。



 其処へ絵美里が補足説明をする。



「私が説明する。此処に居る二ホンの皆々様らには、姫様が仰る事を信じて貰えないかも知れない。」



「何がですか?」



益々持って訳が分からなく成って来たと言う安元。



「コヨミ皇国の皇族には・・・・正確には女系の血族のみに受け継がれるある特殊な力が有るんだ。」



「特殊な力ですか?」




 高橋が目を丸くして腑に落ちない感じで居た。



 オカルトめいた話は、科学立国である日本では迷信とされて居るからだ。




「我が国の臣民や他国の市政の民等からは、お告げの力と呼ばれて居るが、親しい者や他国の首脳には先読み力と呼んで居るものだ。」



「コヨミ皇家では、星読みと呼んで居る。」



「具体的には、どんな力なんだ?」



 諏訪部が迷信みたいな事に、話半分と言った感じで質問して来た。


「心の内を読み解く読心能力。未来の出来事を言い当てる予言の力。身近な出来事を感知する予知能力。この3つが皇族の女性にのみ受け継がれ使える力が在る。」



「う~ん。急にそんな事を言われてもな。」



「そうですね。」



「科学が当たり前だと言われてきた手前、正直言って、オカルトめいた能力に関しては、如何したものかと・・・・・・・・」



 安本、高橋、諏訪部はおでこをへの字にして困った顔していた。



 一番、胡散臭い力の筆頭と言うべき力が目の前の皇女様に、備わって有ると言われれば、正直言って困った顔をせざる負えない。


 科学万能な現代社会に措いて、予知予言に読心と言えば超能力で偽物扱いが定番であった。



「安元さん、貴方は趣味でお料理を為さって居ますね。」


「先月の月末には、東京都内のフレンチの料理店へ行かれましたね?銀座と言う町のお店に・・・・・」



「えっ?」



 安元の国会議員としてのホームページ内のプロフィール一覧にも書かれていない事を紅葉は言ってのけたのである。


 それに彼女は、日本に来て日が浅いのに、安元の個人的な情報を知って居る筈が無い。



 余りにも突拍子で在り得ない事を見せ付けられた安元は、只々ビックリした顔をして居た。



「それと高橋さんは、この間の記者会見で・・・・・・・・」



「?!!・・・でっ殿下、取りあえず分かりました。貴女様のお力は十分に分かりましたので、その辺でご勘弁を・・・・・・・・・・・・・」



 高橋はあの時に思って居た心の内を暴露されるの恐れてしまい。

 つい、紅葉に対して丁寧口調になっていた。


 諏訪部はどんな事を暴露されるのだろうと、冷や冷やして居たが、慌てた高橋が話を逸らしたお陰で、事無きを得てホッとして居た。



「読心能力・・・・使われれば、ある意味、恐ろしい代物だな。くわばら、くらばら・・・・・・」



 安元は正直な感想を溢していた。



「うふふっ、どうですか?皆さん?」



 悪戯ぽっく振舞いつつも、満面の笑みで得意げな顔をした紅葉。



「まぁ、貴女の力の一端は分かりました。」


「ですが・・・それが何故、我が国の一市民を政府が雇うと言う事に繋がるのでしょうか?」



「私の力の一つには未来予知が有ります。もう一つは未来予言。この二つは似ていますが、少しだけ違い外が有ります。」


「未来予知は、少し先のの出来事、分かり易く言えば、感が鋭く当たる確立も8割を超えます。」


「未来予言は、5割強と言った確立で未来が当たる事なのです。」


「ですが、予言と言うのは、あくまで予言に過ぎません。」


「元来、未来と言うのは、変わり易く。確実に当たる可能性は若干くらいは、下がりますので・・・・・・・・・・・」



「ですが姫様は、歴代の皇女の中でも最も強いお力を備えられたお方です。」「先の帝国との開戦前に貴国との遭遇を予言なされて居ました。」と英美里は、数日前の出来事で、紅葉が日本との接触する事を予期して居た事を告げる。



 日本側に取っては、俄かには信じられない話だが、この会談の場に居る者達は、その力の一端を見せられたのであった。


「・・・・紅葉さん。貴女の力の有無に付いては、今の我々には確証が持てないが、此処に居る3人は恐らく、信じられるでしょう。」


「個人的な事を何の調べもなく言い当てるなど、普通なら有り得ない。感が良いにしても出来過ぎていますからね。」と安元は言う。



「その提案に付いては分かりました。紅葉さんが推薦するその人物をこれから如何するかは、その人物と直接会って、面接した上で取り決めましょう。」



「安元さん?」



「どうして?」



高橋と諏訪部は驚きを隠せない。


 だがしかし、安元が気でも狂ってとも思えなかったので、この話を最後まで聞いて見る事にしたのであった。



「それで、その人物とは、如何なる人物なのですか?」



「はい、あさくら号に乗っていた乗客の一人です。」


「名前を高見竜史と言います。」


「群馬と言う所の生まれで、趣味はアニメとか言うものや関連する書籍を読むのが趣味とか。」


「その彼とは、縁が在ったのか、偶然にも貴国の軍船である護衛艦ひゅうがにて、私とは既に会って居ます。」


「その時に彼と接触した事で、私と彼とこの世界の未来に付いての啓示。それに彼の心の内を垣間見る事が出来ました。」


「それは数奇な出会いで在りながらもとても困難な道のりを越えた先には良い未来が待って居るとも出て居ります。」



「これは貴国にとって、そして・・・・この世界に取っても良い結果と成る道へと続いて居り、これから起こるであろうアースティア世界の趨勢を決める騒動に対処するには、ピッタリの人選かと思いますわ。」



「アニメに詳しいか・・・・確かに我々を含めて、公務に従事する者や学者先生達では、このアースティア世界の様な世界感を持った世界の問題への対応が出きない部分も多い。」


「成るほど・・・・・それなら、いっその事、それに詳しいオタク達をこの事態に対処をさせる専門の部署を作り、やらせて見るのも面白い一案かも知れん。」



「でも素人に仕事をさせてしまっては、国民からも議員からも不安に不満、それに苦情が殺到するのは目に見えて居ませんかね?」



 高橋は事後の展開が目に見えて居ると言う事に、諏訪部も頷いて居た。



「成らば、その素人に多くの補佐を付ければ良い。」


「何なら各省庁から官僚と職員を選抜させたり、専門の人間を集めれば良いさ。これには学者や技術者だけでは無く、その道専門のオタクでも構わん。」


「何せ、この異世界に対処するに当たって政府も省庁も専門家にも分からない事だらけの世界だ。」


「余程の無茶でも言わん限りの出きるだけの大きな権限を与えてな。」



「それは丸で怪獣映画の金字塔であるゴジラシリーズに登場する日本国政府が立ち上げた専門部署であるコジラ対策班見たいですね。」



「それ言い得て的を中てた言い方だな。」



 安元は話を更に続ける。



「今の国会は野党と市民団体の連中は、この危機的状況だと分かって居る。だが、面子と虚栄心が邪魔をして真実を見たくない。」


「こんな連中の言う真実を何時、国民が鵜呑みするとも限らん。」


「国民は国会内の決められない言い争いを嫌うからな。成らば、その人物とやらを政府の政策実行する際の反対意見を言って来る輩達に向けての盾代わりにする。」



「それって、かなりの大博打に成りませんか?」



 諏訪部が、その大博打に呆れつつも面白いなと言った顔付きで居たりする。



「成るだろうな。それに各省庁が秋葉原や中野に池袋の二次元作品の専門に並ぶなんてニュースがあるし、実際に資料集めも其処で省庁や地方自治体の職員が並んで集めて居るんだ。」


「そんな事は、今更だろう。」



 この世界がファンタジーな異世界と言う情報が各省庁に行き渡って行くと。この世界での対応を迫られる各関係省庁機関や地方自治体関連の部署の者達は、挙って秋葉原などに資料を買い求めた。


 交代でモンスターをハントするゲームに興じる自衛官らは、駆除命令や戦闘での戦い方をゲームで、シミュレーションして居たりする。


 法務省や厚労省では、新たに確認され、この世界の居ると言う亜人種族を対象とした法案を検討を始めて行く。


 経産省では、異世界の国家の港の改築に関する資料集めと、建設計画を検討を始めて居た。



 環境省では、飛来と上陸が予想される異世界外来生物の対応マニュアル作成。


 これ等の対策参考資料として、アニメ・漫画・ゲーム・ライトノベル等の設定資料集を求める職員と官僚らが、長蛇の列を組んで並んで居る光景がニュースで取り上げられて居た。



「紅葉さん、貴女が指名する人物は、日本政府が責任を持って採用を検討しましょう。」



「宜しくお願いしますわ。」



 こうしてある意味、後の歴史に余り語られる事の少ない異世界国家の皇女と日本の首相との会談が終わった。



 そして、迷惑にも彼の皇女に指名されたアースティア世界を救うと言われてしまった彼はと言うと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 西暦2030年・4月9日・午前10時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・関東地方・群馬県・霧野市・堤野町・三丁目・高見家にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「だだいまーーーっ!!」



 福岡で一泊してから約3日ほど掛かって、ようやく家路に着いて居た竜史。


 福岡市の在る九州から群馬県の在る関東地方へと一気に帰えると疲れるので、ゆっくりとした旅路に成って居た。


 日本政府は、被害にあった乗客のそれぞれの要望に応える形で、最長で3泊4日で帰れるように配慮して居た。



 飛行機は燃料統制と各空港が海外の空港会社の飛行機の着陸の混乱が収まって居らず、空路が使えなくなって居る事も在ってか、鉄道を使っての帰えり道と成って居た。



 因みに新幹線の本数は電力の統制の影響で減って居るので、竜史を含めた者達らは、特急か急行列車を使わなければ成らなかったのだ。



「あっ、お帰り。」





 サッパリとしてた性格の母であるすみれが出迎えた。




「心配した?」




「全然。死んだり、行方知れずなら、それが天命だろうし。」



「親に心配されないのか、信用されて居ないのか、放置されているだけなのか、実の親にネガティブな答えしか浮かばないのは、この僕が諦めて居るだけか。」



「それはお互い様でしょう。それよりも、はい。」



 竜史は母から封筒を受け取る。差出人は彼が旅行前に面接を受けた派遣会社からだった。



「上州セントラール・サービスとか言う、竜史が高校生時代にアルバイトを斡旋してくたれ派遣会社よね。旅行の出発前には、正社員としての面接を受けた会社からの重要通知書だよ。」


「こんな世の中に成っちゃっただから、何か有ったんだろうね。」



 竜史は封筒を開けて見た。



「あー、採用の撤回か?」



「あ~あ~、そりゃそうだろうね。この辺の会社だけじゃ無く。」


「日本中の会社が輸出と輸入がストップしてるからね。あたしとお父さんは幾らかマシだよ。これから如何すんだい?」



「取り敢えずは、ハローワークでも当たるしか無いよ。無ければバイトでも・・・・・・」



「それでも厳しいとも思うよ。」



「あ~あ~旅行なんて無駄でしかなかったかな。」



 天災に遭い仕事すら亡くした竜史が頭を抱えてしまう。


 すると其処へ、プルルルル、プルルルと電話のベルが鳴った。



固定電話の近くに居た、すみれが電話を受ける為に居間へと急いだ。



「はい、高見ですが。はい、はい。ええ、たった今帰えって来た所なんですが?」


「あの~家の息子が、何処かで何かをやらかしましたか?」



「ちょっと、それは酷いよ。母さん。」




 竜史は理由の分からない事で、何か貶された様であった。



「何処から?」



「何でも内閣官房長官の高橋裕貴だって、このあたしでも知ってる人だよ。でも何で竜史に会いたいって言うんだろうね?」


「兎に角、電話に出てくれって、向こう側は言ってるわよ。」



 母に促されるままに電話を変わる竜史。


 その声はテレビニュースの記者会見でも馴染みの有る声だった。



「お電話を代わりました。竜史です。」



「初めまして高見君。私は・・・・・」



「高橋さんの事は、テレビを見て知っているので前置きは良いですよ。それで僕に何か御用でしょうか?」



「なら、前置きは抜きにしょうか。悪いけど、これから直ぐに東京に出て来られるかな。」



「はぁ、でも何でですか?」




「悪いがまだ、それは言えないんだ。此方に来てくれたら事情も話すよ。」




「???」



「あさくら号に乗っていた関係者でもある君に、如何しても頼みたい事が在ると言う、さる御方が居てね。勝手ながら連絡を取らせて貰って居るんだ。」



「でも・・・・そのとあるお方ですか?そんな訳の分からない人との接点なんて、就職浪人しそうな青年にあるとは思えないのですが・・・・」


「それに高橋さんの様な日本国を動かして居る内閣閣僚に関わる人と、こうして話をして居る事すら、場違いな気がするんですけど・・・・・・・・・・・・」



「ああ、確かね。でも、それなら直ぐにでも着た方が無難だね。」



「それにこっちの呼び出しに来てくれたら、今の君の悩み事も一瞬で解決が出来るかも知れないよ。」



「うーん。」



「それに断るにしても、当人と合って断わる為にも、直接こっち来て言って貰わないと、此方としても困るんだけれど・・・・・・・・・」



 何だかゴリ押しで何かを頼もうとしてる節が在ると竜史は勘ぐって居た。



「はぁ~、何方にしても、断る為には、其方へ行かなければ成らないんですね?」



「ああ、そうだよ。旅費に関しては心配は要らない。全部、此方持ちだから安心して。」



「分かりました。それで明日の特急で行ける様に手配して下さい。」



「分かった。乗車券は、夜までには市役所を通じて、君の自宅に届けさせるよ。それじゃ宜しく。」



 電話が切れると、竜史は何だか途轍もなく面倒で、厄介な出来事に巻きまれそうな予感がして居た。


 それも決して逃げ切れない予感である。



 憂鬱で気だるい気持ちを抱えながらも、母に明日は東京に行くと告げ、旅行鞄の中身の整理と入れ替えを始めるのであった。

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