14話 日本は異世界に出会いと外交を求めるのは間違っているのだろうか?4
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月6日・午後9時20分頃・ユーラシナ大陸・コヨミ半島・コヨミ皇国・皇都・星都市・星都城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方の嶋津義隆は翌日に成ると、日本国・福岡市・博多港を出発し、自領である南西国藩の藩都・加古島市に戻ると、自領内各方面への指示と皇都へと向かう支度を整える。
また、紅葉から頼まれた有力者達への書状を送り出し、日本国との国交樹立に向けての全ての準備を整えて行く。
準備万端を整えた義隆は、その翌日には、コヨミ皇国の首都である皇都・星都市へと向うのであった。
義隆は、コヨミ皇国の首都である星都市に到着すると、この国の中心地である星都城に・・・つまり、宮中へと参内したのである。
「主上様っ!先ほど南西国藩主で在らせれる嶋津義隆様が、お越しに成り、主上様のお目通りを願ってお出で御座いまする。」
取次ぎの従者が、国皇に嶋津義隆の来訪を告げた。
何なの前触れも無い来訪の報せに、コヨミ国皇である暦力仁は、その事に驚き狼狽してしまう。
「何っ?!義隆殿がかっ!ああ、まさか紅葉が・・・あの娘が、又もや何かをしでかしたのか?」
「いいえ、御出でに成られた義隆様は、紅葉様に付いては、今の所は何も仰っては居られません。」
「ただ、火急のご用件があると言って居られます。」
「う~む、何であろうな。」
コヨミ国皇である暦力仁は、突然の義隆の来訪を聞き付けると、また、娘が何かしでかしたのかと思いつつ、頭痛がして来た様な気がした。
其処へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あなた。」
妻であり、皇室の直系でもある葛葉皇后が、何かを感じ取ったらしく、夫の下へと現れたのである。
「葛葉か、何用だ?」
「そんな事を聞くのは、野暮ではなくて?」
「はあ~」
「あなたっ!」
葛葉の声色が落ち着いた感じから冷たい物へと変わり、雰囲気と目線が冷淡に成る。
「はっ、はいっ!」
思わず力仁は直立に居直ると、ビクビクとして居た。
コヨミ皇族は女系一族である。
婿養子の王よりも皇后と成って居る女性の方が力も権力も地位も権威すも一段と上で在り、強いと言われて居た。
それでも滅多な事では、皇后は政治に口を挟む事は無い。
「何か問題でも?」
「いっ、いいえ、何も問題は御座いませんとも。ええ、そうですとも・・・・・」
此処の王様に取って、奥さんと言う存在は、とても怖い存在らしい。
「成らば、私も同行させて頂きたく思います。」
「あの娘が何かを見つけた・・・・そんな気が致しますわ。」
暦皇族の女性は、特殊な力を有して居る。
予知、予言、読心能力。市井の者らには御告げ力と言われて居た。
諸外国や皇国の政務に関わる人々からは、先読みの巫女として知られて居る。
葛葉皇后も対面の場に同行したいと申し出に、力仁は諦めに似た表情をして、それ以上は何も言わなかった。
力仁は妻である葛葉にある意味、頭の上がらない所も有ってか、この申し出を断れずに了承するしか無かった。
「もう、勝手にしてくれ」と考えて居た。
その考えをニコニコとした表情で見て居る妻が、其処には居たのである。
謁見の大広間には義隆が正座して座りつつ、国皇の来訪を待って居た。
普段なら皇国政府の重臣らが同席するのだが、今回はあくまで私的な訪問として、扱う事に力仁はしたのである。
万が一にも娘の不始末・・・・お転婆娘の厄介で傍迷惑な話を重臣達に聞かせるのは、体裁が良くないと思ったからである。
皇室家庭内の事ならば、両親である自分達が対処するのが筋であると考えたからだった。
「主上さまのお越しに成られました。」
取次ぎ役の従者が、謁見の間で待機して居た義隆に、力仁の来訪を告げる。
義隆が頭を下げて礼を取った。
謁見の間には、力仁に続き、葛葉も後に続く。
「主上様、皇后様に措かれましては、ご機嫌麗しゅう御座います。」
「義隆殿。遠路遥々苦労を大儀である。」
「それで今日は、どの様な御用向きで参られた?また、娘の紅葉が、又もや何かしでかしたのか?」
何やら不安そうな顔立ちで、娘の近況を力仁は聞きだそうとした。
「あなた・・・・・」
「はっ、はいっ!」
「そんなに不安そうな声だして、あの娘の沙汰を決めるのは、義隆殿のお話を聞いてからでも遅くは無いのではなくて?」
繰り返して言うが暦皇族の女性はとても強い。
昼は夫を尻に敷き。夜の床では妻の思いの儘にさせられる。
ある意味、奥さんに迎えたくない手合いであるが、歴代の婿養子の国皇は、妻の智謀と能力、妖艶さとその美しさに翻弄されがらも、決して逆らえ無い立場に在った。
あっ、そうそう、そんなヤバくて、怖ーいお嫁さんだけど家庭内の方は、夫婦円満だから大丈夫。
ちょっと嫉妬深い所と真面目な所が玉に瑕で、夜の営み後は旦那さんはやつれて居るとの噂が後を絶たないだけだから・・・・・・・・・・・・
「はっ、姫様は・・・紅葉様は、何処に出しても恥かしくない我が国随一の皇女様で御座います。」
「それよりも、今日はある国より書状を預かりまして、こうして参った次第です。」
「ある国?」
力仁は首を傾げた。
わざわざ改まって書状を直接自分に出してまで、何かを取り付ける様な国が在ったかなと思ったからだった。
「義隆殿、その様な書状は、外交省にでも取り次げば良いのでは無いのか?」
「まあまあ、兎に角ご覧くださりませ。姫様に関する事でも御座いますれば・・・・」
娘の事と聞かされると、またもや不安と嫌な予感が脳裏に過ぎる。
果たして、今度は何処で何をしでかしたのやらとね。
義隆から力仁へと手渡された書状は全部で3通である。
一つ目は感謝状と書かれ、差出人は日本国総理大臣、安元宏孝と書かれて居た。
「日本国総理大臣として、コヨミ皇国の皇族方及び政府の皆様へ、我が国の民間人300名の命を救ってくれた事に感謝を致します。」
「また、これを機会に知り合えた両国の友好を願って、細やかながら、我が国の産物をお送り致します。」
「ご笑納くださいましたら、幸い御座います。」
「日本国総理大臣、安元宏孝。」
手紙の入った封筒には、簡単なお礼の文章が書かれて居た手紙と贈り物の目録が書かれた手紙の2通が入って居た。
「ニホン?ニホンとは聞いた事もない国だ。しかも・・・感謝状を貰らう覚えも無いぞっ!」
「それは姫様の御功績に御座います。」
「実は5日ほど前に龍雲海にて、帝国海軍がニホン国の客船を襲う事が有りましてな。」
「ちょっと待て、帝国が何故ニホン国なる国の客船を襲うのだ?」
「客船など珍しくも無いであろうに・・・・・・奴隷にでもする積りか?」
「いいえ、そのニホン国の客船は鉄で造られた船で有りまして、その珍しさから拿捕しようとしたのではないかと。」
「何?鉄の船とな。鉄が水の上に浮くなど古代の発掘船や復元船、それに魔動力を使わない限りは、有り得ん事だろう。」
「いえ、それが在るのです。」
「ニホン国なる国、それは言葉では説明し尽くせない物が在り、今陛下が仰られた様に、どの様な人物でも同じ事を言われる事でしょうな。」
「その様子だと、単にニホンとやらが、お前を帰国させる為だけに国元へと送って来ただけとは思えん。」
「はい。その通りです。そして、姫様は今は、ニホンに居られます。」
「姫様は日本国に居残り、帝国勢力よりも早く国交を結ぶべく外交締結の地均しをして居られます。」
「何だと!?あの馬鹿者がっ!!また、勝手に動き、今度は外交官の真似事をしおってからにっ!!」
「あなた。」
「ぐっ!」
また、奥さんの冷淡な叱責が飛んでいた。
「それであの娘は、今何をしようとしているの義隆。」
「はっ、今はまだ、恐らくは挨拶だけかと。」
「「挨拶??」」
二人が揃って首を傾げた。
「はい、有り体に申せば、助けて貰って有り難うと言う事に御座います。」
「確かに、無辜の民草を救った功績で礼を述べるのは、至極当たり前の事だが、仮にも紅葉は、我が国の第一皇女であるのだぞ!」
「それ故なのか。それとも他に目的が有るのか?」
力仁は色々な思惑を考察した。
日本が何を考えて娘であり、皇女でもある紅葉を彼の国に留め置いているのは何故なのかと・・・・・・
国交の無い国であるなら、用が済んだのならとっとと帰国させる筈である。
しかし、一体如何して、其処から先の要求をしてこないのだ?何故なんだと思ったのである。
それに加えて何故、用が終ったのに、その二ホン国からあの娘は帰国して来ないのだと・・・・・・・・・
「其れには事情が御座います。」
「事情?」
「ニホン国は、別の世界・・・異世界から国ごと転移と言う災害でこの世界へとやって来てしまった国家で御座います。」
「異世界から国ごと転移だと?」
「そんな事が・・・いや、古の昔に、その様な出来事が有ったな。」
「だが、そんな出来事がそう何度も定期的に在っても・・・・うーむ・・・・・・」
「いえ、義隆殿言われて居る事は、如何やら事実のようですわね。あなた。」
「葛葉・・・力を・・・」
葛葉は紅葉と同様にコヨミの先読みの巫女の力が使えるのだ。
黒い目が目が赤く染まり、力の発現がされて居ると見た力仁は、彼女の目を見て能力が使われて居る事が直に分かったのである。
葛葉は義隆の心の内を読み、その先の出来事を予知して見ると、如何やらコヨミ皇国の未来は、日本との関係を良くする事であると出て居たのであった。
「あの子は自分の力に導かれてニホンへと行ったのよ。」
「成らば私達も、あの娘の行う事を応援してやるのが国皇として、親としての勤めではなくて?」
「でっ、でもな。これは外交や国事だぞっ!」
「皇女であり、我が娘と言えども、そう簡単に勝手な事をされてもだな。」
「あ・な・た~っ!!・・・・・・・」
「ひっ!」
怖ーい奥さんに情けない声を出して脅える婿養子の国皇様。
何所の婿養子と言うのは、奥様には逆らえない様である。
そんな逆らえない典型的な婿養子が、此処にも居るのだった。
「義隆、随分と素晴らしい贈り物を貰い受けたのと、日本に付いての資料も持って来て居る様ね。」
「直ぐに出しなさい。」
「流石は葛葉様。もう全てをご承知の様ですな。」
義隆は本来なら、この国の皇たる力仁に手は渡す筈の日本に関する事を書かれたカタログの様な厚さをして居る資料を葛葉に手渡したのである。
流石は裏の女皇と言われて居る皇后でるある。
実に恐ろしい威圧感を持って居た。
「・・・・・あなた、これなら問題無いわね。」
半ば無理やりに葛葉が受け取った資料を開き、資料の中身を数ページ捲ると、夫の側に近寄り、資料の中身を見せてやる。
「うーむ。確かに。義隆殿、ニホンから他に何か言われて居らぬのか?」
「いえ、何も。先ほどの話の続きに成りまするが、ニホンは転移による災害の影響もあり、国内に混乱を来たして居ります。」
「ほう・・・・混乱とな?」
「はっ!目下の問題は、国内の戦争反対の声で有りますな。」
「何故、民が戦争を反対するのだ?」
「国家の為に軍が様々な行為に及ぶのは、国と軍が余計な事でもしない限りは、反対する理由が有るまい?」
「それはニホンが過去の大戦争で敗戦をして居りましてな。それが原因で新たな法律を作った時に、戦争放棄と言う法律が制定されました。」
「それ故に、国防の為に措ける自衛戦闘行為と外国の復興支援に国防軍を派遣をし、その地で自衛と味方を守る以外の戦闘行為を一切認めて居らぬのです。」
「何と・・・・異世界から現れた異界の国には、その様なヘンテコリンな法律が、在るの国なのか?」
「先ほど申し上げましたが、80年ほど前の異世界での大戦争で、彼の国が敗戦をし、もう戦争はこりごりだと思ったのでしょう。」
「今では戦争に関する事柄が、全てタブーと成って居る所が多いとか聞き及びまする。」
「それは・・・余程・・・・・酷い負け方をしたのであろうな。」
「まぁ、良い。」
「義隆殿。ニホン国の情勢が、少しでも落ち着き次第だ。隣国と成った彼の国との話し合いが必要であろうな?」
「はっ、少なくと数週間以内には、何かしらの動きが有るやもしれませぬ。」
「相分かった。」
「あの娘が先走った行為は咎めねば成るまいが、二ホン国の民を救った事での事情聴取やお礼をしたいとの招きによる訪問ならば、致し方が有るまい。」
「おお、そう言えばもう一通の書状が有ったな。何々・・・天皇?」
「天皇陛下は、ニホン国の皇帝陛下に当たります。」
「おおっ!!紅葉はニホンの皇帝陛下からもお礼状を貰ったのか?!この字は、中々の達筆であるな。」
「見て下さいあなた。」
「こんなにも見事な絹の生地です。」
「色取り取りの反物、真珠の指輪にネックレス。耳飾。変わった加工を施した綺麗な硝子グラスが有るわっ!」
「それに焼き物の皿と茶碗も見事ですね。」
「こっちは菊の紋章の入った漆細工はとても品を感じさせて、黒と赤色の絵図と金箔細工がとても美しい。」
「他にも、たくさん在りますわよ。」
「葛葉っ!お前は送られ来た高価な献上品を誰の許しも無く勝手に開けるとは、はしたないぞっ!」
「おっ?ほう・・・・刀も在るのか?」
「それに加え・・・・多数の種類の調理包丁も在りますな。」
何時の間にか義隆も、物珍しさから近くに寄りつつ、工芸品を物色して居た。
贈り物には日本の伝統工芸品の数々と実用的な品々が送られた。
葛葉は箱を開き包装を解いて勝手に品定めを始めたのである。
「この桐箪笥は中々物ですわね。あっ!?戸の開きも大変に使い易いですのね。」
「こらっ!勝手な事をするんじゃないっ!」
「良いじゃないですか、どうせ貰い物ですもの。」
「あれとこれは、私の部屋に・・・・・・」
「まぁ、化粧道具箱の一式?手鏡や化粧台も在るじゃない。」
「物凄く気前が良いのねニホンって。」
献上品の中でも女性向けの品物で、目ぼしい高価で物珍しい物は葛葉が全て女中や従者命じて自分の部屋へと運ばせてしまうのであった。
こう言うちゃっかりして居る所は、親子で似て居るのである。
葛葉は、この後ホクホクした上機嫌な顔で自室へと戻って行ったのである。
「はあ~っ・・・・・・・・」
奥さんの自由奔放な性格に振り回される旦那様は溜息を付くばかりである。
それは兎も角として、力仁は娘からの報せを待って日本との関係を構築をする事を決意したのだった。
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