13話 日本は異世界に出会いと外交を求めるのは間違っているのだろうか?3

 西暦2030年・4月5日・午後21時45分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・九州島地方・福岡市・福岡国際ホテル・最上階スィートルーム『紅葉宿泊室』にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


紅葉が福岡市内を散策して居た際に見付けた気に入りの屋台である明太・豚骨・博多一番軒。 


その屋台での食事から戻った紅葉達が宿泊先のホテルに戻ると、外務省の職員が待って居たのである。


その職員が急な話で申し訳ないが、紅葉と数名だけの供を連れて、明日の朝に、福岡から箱根町の蘆ノ湖と言う湖の在る所まで来て欲しいと日本政府側からの要請があった。



 これに対して紅葉は、会談場所である箱根町へと行く事を了承したのであった。



 その夜、紅葉は南西国藩の藩主である嶋津義隆を部屋に呼び出した。



「姫様、私に何の御用でありましょうか?」




「義隆、貴方は明日の朝一番に、貴方の南西国藩水軍と共に帰国なさい。」




「ですが、それで姫様のお帰りは、如何なさるのですか?」




「それなら心配は要りません。帰りはニホン国に送って貰います。」


「それよりも、今はニホン政府からの呼び出しです。」


「恐らくは、何か有るのでしょう。」


「其処で此方も、この先の展開を考え、直ぐにでも対応と行動が出きる様に、国元のお父様達に、ニホン国の存在を逸早く知らせる事と国交開設に向けての準備をする様にと進言をするのです。」



「この手紙はお父様とお母様、それに万代国藩主の伊達愛海や他のコヨミ皇国の有力者達にも書いて置きます。」


 紅葉は両親達と親友でもある万代国藩の藩主である伊達愛海を含めた各種有力者達への根回しをする為の手紙を嶋津義隆に手渡す。


 全部を手書きにすると大変なので、本当に大事な文面と重要な相手には直筆で、その他の相手にはパソコンを使った代筆手紙を書く事に舌。


 パソコンのプリンターを使って、印刷手紙を打ち込みつつ、花押とサインだけは本物を添えた手紙を送る事にした。


 この代筆をして貰うに当たって、日本の外務省職員に手伝って貰っては居るが、その内容は当たり障りのない内容なのではコヨミ皇国側はとしは問題は無いし、日本政府や外務省としても、コヨミ皇国の第一皇女殿下に、祖国へ日本国と言う国が在ると紹介状を書いてくれるので、お互いにウインウインであると言える。


「それに我が国と二ホンとが、これから色々と国交樹立に向けて動くと言うの為らば、ニホンが送り込んで来る使節団と多くの船団や積み込まれて居る乗り物が、我が国の皇都に行くには、貴方の治めて居る加古島港よりも、万代港の方からの街道の方が道幅も広く、何より皇都・星都市に一番近いですしね。」


「更に港も大きく広く在って、多くの船が停泊が出きます。」


「まぁ、あの愛海なら、二ホンの鉄船を見るだけで、大儲けが出来ると大騒ぎをするでしょうけど・・・・・・・」


「分かりました。」



「ああ、それと、ニホン国の海上保安庁なる水上警備隊が、我が国の水軍船団を曳航してくれるそうです。」


「これなら貴方の水軍船でも、二ホンからコヨミ皇国へと行くのに、数日は掛かる所を1日ちよっとくらいで済みますしね。」


「そうそう、帰国する序でに、貴方には渡して置く物が有ります。」


「それはニホン政府から我が国への民間船を救ってくれた事に対する感謝状の手紙とお土産。」


「そして、我がコヨミ皇室に、献上品をくれそうですよ。」


「それと天皇と言う日本国の皇帝地位に当たるお方から、あさくら号を助けた時の感謝状も、私達宛てとコヨミ皇国宛てに送られて来るそうよ。」



「ニホン国が我々や姫様にお土産を送り。更には、民を助けた功績のお礼として我が国への献上品が送られる理由は、分かるのですが・・・・・」


「ニホン政府自身が送る書状が、何故、感謝状だけなんですか?」


「直ぐに国交開設の交渉したいと言う書状が何故、無いのでしょうか?」



「どうもニホンの国内事情に配慮したのだと思うわ。」


「ニホン国内に少数居ると言う、一部の反政府的な思想を持つ者達へのね。」


「その者達は様々な思惑と思想を持った者達が、一見して纏まって居るかの様に見えるけど、各陣営やその中の活動家達は、てんでバラバラに動いて居るらしいのよ。」



「それがマスメディアとか言う情報屋の目に留まる事で、自分達の思想的考えを広めて、己が組織に加入させたい人材や活動資金の確保を狙って居るのよ。」



「何ともまぁ、民が自由に出きると言う思想の国の中には、気の長い面倒なやり方をする反政府組織も在った物ですな。」


「しかしながら、たった数日の滞在でしたが、この様に国力が高く豊かで、平和そうなこの国にも、国内には色々と面倒な事情が在る様ですな。」


「姫様もそう言った日本国の国内情勢に急変が起こる前に、手を打ちたいとお考えから、この私めを帰国させたい。そんな所ですな?」


「そうよ。早く手を打たないと、この国はギリギリまで日和見しそうな体質だもの、ある程度は追い込まないと変な方向へと決断し兼ねないわ。」


「そうなる前に、お父様や国元の皇族に近しい大名家や官僚らを味方に付けて置きたいのよ。」


「姫様の慧眼と先読みの力は当代随一、きっと良い結果を齎すのでしょうな?」


「姫様のお考え、確かに分かりました。我々嶋津の者達は、明日の朝に出立致します。」


「それと、国交開設や連絡員の為に、某の国元からも人手を送り込みましょう。それくらいの人員ならば、二ホン国も入国を嫌とは言いますまい。」


「それに加え、日本国からの外交官の初期の当面の滞在先として、加古島市内の皇室御用別邸を用意させ、当藩の藩士が世話役として付かせる事に致します。」


「それなら、私は南郷幸之助を推薦したいわね。」


「私の世話役をして貰って居たけど、この騒ぎでお役が無くなってしまうから、その代わりに任せさせて上げられないかしら?」


「何んとっ!あの南郷の奴目ですと?うーむ・・・・まぁ、良いでしょう。」


「此方の都合と勝手のせいで、急にお役が無くなると言うのも、彼の者には不憫てしょうからな。」


「それならば、随行員の補佐として小久保仁蔵と言う者も付ければ、上手くやってくれるでしょうし。」


「小久保仁蔵?私が加古島に居た時には、聞かない名ね。」


「それはそうでょう。小久保は南西国藩やコヨミ皇国の南西国藩領の外交課の役人の一人ですので、姫様とはお会いになる事は有りません。」


「一方の南郷は、この私や嶋津一族の供回り、近習をして居る役人の一人に過ぎませんので、そんな事情から小久保の名を知らないのも無理はありません。」


「それに小久保と南郷とは、生家が隣近所同士で、父親同士も同じく在郷士同士の付き合いです。」


「ですので、二人は幼い時からの付き合いが有るので、互いの勝手が分かるかと・・・・、・」


「そんな関係ならば丁度良いわね。」


「義隆、南郷には詫びを言って置いて、私が急に嶋津を去る事を・・・・・・・」


「ははっ、奴めも、姫様からのその言葉を聞けば、喜び事情を理解する事でしょう。」



 そんな訳で義隆は、コヨミ皇国に日本国の存在と国交開設の交渉準備などを含めた諸々の事を伝える為に、居残る紅葉達よりも一足早く帰国する事と成った。




 西暦2030年・4月5日・午後9時10分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国内にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 翌朝、博多駅に向った紅葉達一行は、総勢15名。


 あさくら号事件後に様々な事情から日本に滞在する事と成った2000名ものコヨミ皇国人の内、居残る事と成ったのは近衛隊の隊長を勤める絵美里と香織と供回りの30名が、日本国との国交に向けての下準備の為に残る事と相成った。



 それに2000名ものコヨミ皇国人らを殆んど帰国をさせたのも、紅葉は余り長く大勢の兵士らが滞在し続けるのは、費用面で日本に迷惑が掛かると考えての事だった。


 それに加えて、一刻も早く、本国に日本の存在を知らせ、無用な衝突を避けさせ、帝国勢力よりも逸早く、この異界の大国との国交開設の交渉を始める様にと、両親に伝える為でもあった。



 自動車や巨大な船と空飛ぶ乗り物に驚いた紅葉達であったが、鉄道と言う物にも驚く事に成った。


 彼女が乗り込むのは300キロ以上の速度で走行する事が出来る新幹線と言う乗り物。


 高速で走行し、数分数秒単位で運行管理をする事に驚き、数多くのトンネルと架橋を成し遂げた技術力は、更に彼女達らを驚かせて居た。


 貸切にした新幹線が走り出し、その快適さと乗り心地の良さに関心しつつ、関門海峡のトンネルに入ると、そのトンネルが海底の地下深くを掘り進んで作られていると説明を受けると、彼女らは更に驚いていた。



 更に関門海峡には、以下の施設が作られて居るとも外務省の職員から説明を受けて居た。



関門国道トンネル - 一般国道(国道2号、歩行者用トンネルも設置)


関門鉄道トンネル - 在来線(山陽本線)


新関門トンネル - 新幹線(山陽新幹線)


関門橋 - 関門自動車道(高速自動車国道)



 他に瀬戸内海には3ルートもの本州と四国連絡道路がある。


 西瀬戸自動車道(しまなみ海道)


 瀬戸中央自動車道(瀬戸大橋)


 神戸淡路鳴門自動車道(明石海峡大橋)


 これ等を見た紅葉は、次の感想を述べていた。



「ニホンと言う国を訪れて今の私は何と言うか、只々驚くばかりだったわ。もう驚き過ぎて感覚が麻痺をし過ぎて居る感じね。」



「巨大な船に、空飛ぶ鉄の鳥に風車を取り付けた籠。町には自走する鉄車に高速で走行する蛇の様な鉄の乗り物。」


「どの街にも高層の建物で埋め尽くされて居て、頑丈で作られた民家もお金を掛ければ誰でも造れると言う。」


「今、私は新幹線と言う高速で移動する乗り物に乗って東へと向って居る。」


「その通り過ぎる道には、海底坑道を通り、車窓からは瀬戸内海と言う内海の美しい風景が広がって居る。」


「どの都市も雑多に見えるが、古き良き歴史を感じられる姿と先進的な物で溢れて居るわ。」



「こんな巨大な橋を海の上に架ける何て事を人間が成し遂げる等とは、とても信じられ無い事だわ。」


「いえ、こんな国を作れる事が可能な事態が信じられないと思って居るわ。丸で伝承に伝え聞く、古の文明の物語を間近で見て居るかの様な感じね。」



「これだけ進んだ技術を持って居ても、車窓から時より見える古い建物を大事にして居る事にも驚いて居る。」



 彼女が見た風景には、瀬戸内海、広島の原爆ドーム。


 岡山城と姫路城、神戸や大阪の町並み。


 京都市の現代都市と入り混じった古都の風景。


 日本一の湖である琵琶湖。


 東海地方の工業地帯と茶畑。


 新しい物と古い物、自国と外国との文化と技術が上手く交じり合った風景だった。


 どれもこれも、この異世界でも有り得ない国の姿形であった。



 地球でも日本は、東西の文化が本当の意味で入り交じり合った国家と言える地であろう。



「先読みの御告げの力に有った太陽の国とは・・・・恐らくは、此処の事よね。」



「幾らコヨミ皇家の血筋の力で、こんな国が現れる事を言い当てるなんて、ご都合主義も良い所で、出来過ぎとしか思えないわよ。」



「姫様、これなら戦時の備えも相当な物では?」


「海軍も物凄かったですし、市井の者が気軽に利用出きる乗り物が、たくさん有ります。」


「それならば、工業生産力も相当な物に成るかと・・・・・・・」



「造船は全て鉄で賄われて居るらしいわね。」


「鉄の生産も含めて、冶金技術も相当な研鑽と研究開発の上で成り立って居る技術が、物凄く進んで居ると見て間違いないわ。」


「我が国でも、やっとの思いで生産体制に扱ぎ付けた大砲。」


「その大砲の製造も難しいと言われて居るのに、ニホンは連射と装填が自動な上に、百発百中の大砲を作って居るのよっ!」


「それもかなりの大型な物をよ。」



「どんな魔法を使ったのかと聞きたいくらいだわ。」



「ニホンは帝国との戦争に関して協力・・・いえ、せめて武器やその素材等を交易をしてくれるでしょうか?」



  絵美里は日本国との話し合いがどうなるのかと、不安そうになる。


 果たして、日本はどんな考えと答えを持って居るのかと・・・・・・・・・・・・



「少なくとも、会って話す気はある様ね。」



「でも、この国の国民の一部は戦争自体を嫌がって居ます。」



「それは法律と教育に加え、敗戦がトラウマが原因と成って居るせいで、自国に対して卑屈に成って居るせいよ。」


「まぁ、それ自体が悪い訳じゃ無いわ。」



「寧ろ、その反戦と平和教育が行き届いて居て、理性的な考えが出きると言う事よ。」


「それでも卑屈が過ぎて居る気がするのだけど・・・・・・・」


「ただ、それは過去の大戦での敗戦が原因でトラウマに成って居るだけで、更に世代交代で戦争自体が他人事なのよ。」



「無理強いで戦争して貰うよりも、直ぐそこに危険が有ると丁寧に説明するしか無いわよ。」



「確かに、そうですね。下手な小細工は、返って信用が失墜しますしね。」



 香織が言う。



「兎に角、今は行くしかないわ。この異世界から現れた島国大国の宰相に居る所へ・・・・・・・・」



 彼女達は、程なくして静岡県の富士川の鉄橋に入る所で会話が中断し、風景を見入るのである。遠くには徐々に日本一の山である富士山が見え始めて居た。


「「「うわあああぁぁーーっ・・・・・・」」」


「あれが話に聞く、富士山・・・・」


「実に風情が有ります。」


「日本人の誰もが、最も好きな山だと言うのも頷ける。」



 富士山に感激した一行は、新幹線を三島駅で下車し、警護を担当するSPと私服警官に守られながら会談予定と宿泊地でも有る箱根へと向かうのだった。



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