閑話1 ルークが思っていること
僕の父さんは人間じゃない。
“伝説”と呼ばれる
けど、そんなの関係ない。ドラゴンでも僕の父さんには変わらない。むしろかっこいいよね!父さんが実はドラゴンって。誰になんと言われようと、僕はこれからも一緒に暮らしたい。
そういったら父さんは僕を抱きしめて、抱っこもしてくれた。久しぶりに抱っこされて恥ずかしかったけど、嬉しかった。何より“父さん”ってしっかり言えた。中々言えなくて、魔物たちに協力してもらった甲斐があった。ドラゴンでも僕の父さんだもん、ちゃんと言いたかった。
そんな父さんは、身長が高くて髪が真っ黒だ。まさに漆黒。けど、よく見るとたまに紫色に見えることがある。光に照らされて、色の見え方が変わるのかな…。
その色も、僕は気に入ってるんだ。僕の髪は白銀っていう色、父さんが教えてくれた。あと、父さんの瞳は翡翠色で、僕が
父さんと同じ系統の色でちょっと嬉しいかも、なんて。
あと、僕がもう少し大きくなったら、色んなとこに連れてってくれるって約束をした。特に町ってとこはとても楽しいらしい。食べ物も、果物以外にも“オコメ”っていうのがあるんだって。早く行ってみたいなぁ。
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僕と父さんが暮らしている場所は、テジャの森の中に建てた2階建ての家。一緒に住む時に、父さんが魔法でつくってくれた。
森の魔物たちは町の人が言うほど怖くはない。父さんと森の中を散歩した時も木の実なんかを教えてくれるから、僕はみんなのこと大好き。
しかもこの森の朝は静かで、2階から周りを見渡すと太陽の光が差し込んで、緑の葉がとても綺麗なんだ。空気も澄んでて気持ちがいい。住んでる場所がこの森でよかったと思う、恐ろしい森だなんて言われてるけどね。
そんな僕の朝は、父さんを起こすことから始まる。父さんは意外とお寝坊さん。2階の寝室にはベッドが隣同士に並んでて、父さんは右のベッドで寝てる。父さんのベッド、僕のより少し大きいから一緒に寝る時はゴロゴロって遊んでるの。
いつもは僕が父さんより先に起きて、身体を揺すって起こす。一緒に朝ごはんを食べて魔力操作の訓練をする。これが僕の一日。
たまに父さんは、毛布の中に身体が収まってない時がある。そんな時は、そっと毛布をかけてあげるんだけど、音とか気配に敏感らしくてすぐ起きちゃうんだ。
僕だって分かると、そのまま毛布の中に引き込まれて、二度寝を促される。父さんの腕はとても安心するから、起きなきゃって分かってるのに結局そのまま夢の中へ。
そして寝坊して、訓練の始まる時間が遅れて筋トレが2倍になる。
一緒に寝るのはいいけど筋トレが2倍になることを考えて、毎回引き込まれたら抜け出そうと試みるんだけど、気づいたら寝てる。
しかも二度寝した日の訓練は、毎回なぜか調子がいい。父さんと寝るとより深く眠れるのかな…?熟睡できる空気とか匂いを出してるとか…。
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父さんは僕に魔力や魔法のことを教えてくれた。
本当は訓練の前に教会って呼ばれる場所に行って、お祈りをして魔力栓をなくすらしいんだけど、何故か僕は魔力栓が生まれた時からなかったらしい。
しかも、テジャの森がもつ魔力に僕の身体が順応してるみたい。その証拠に僕の魔力量はとても多いらしい。平均的な魔力量の人は、この森に3日もいれば酔って正常な判断ができなくなる。
中には森の魔力に耐えられなくて命を落とす者もいるらしい。それくらい、この森の魔力は強くて、そして唯一魔物たちが安心して暮らせる森だ、と父さんや
魔力操作の訓練は、簡単なものじゃなかった。
現に今も、苦戦している。
『魔力操作は、体内の魔力量が多ければ多いほど難しい。ましてやルーク、お前はまだ4歳。もう少し身体も大きくなってから訓練を始めてもいいんだ』
父さんはそう言ってくれたけど、僕はすぐに訓練を始めたかった。早く強くなりたかったというのもあるけど、何より年齢や体格を理由に訓練を先延ばしにしたくなかった。
それに、将来どうせやるなら今からやって、あとは父さんと旅でもしながらたくさんの国や文化を見てみたい、なんて。
そんな理由で始めた魔力操作訓練。いざやってみると、これが全然上手くいかない。いくら手をかざしても目の前のバケツに入った水は動く気配がない。
けど絶対諦めたりするもんか。
『水を自分の身体の一部だと考えるんだ。体内に駆け巡っていると意識すると、自然と水はお前が考える方向に動いたり、形を表したりする』
アドバイスを聞きに行くと、父さんはそう答えた。
身体の一部…。何かわかるような気がして、その日一日ずっと挑戦したけど、結局上手くいかなかった。けど、何となく分かった気がする、父さんが言ってること。
ちょうどこの日は、訓練を始めて1週間が経っていた。
魔法操作、完璧にして父さんに褒められたい!
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