絡まり合う想い

第171話

 部屋の中に怒号が飛び交う。世界各地の被害や、敵味方双方の戦力報告。それに沿った指令を飛ばすものもいれば、無理だと叫び返すものもいて、作戦司令室は早々に混沌の坩堝と化していた。


 そんな中にあっても。

 黒霧緋桜は、周囲の音全てが消えるような錯覚を感じていた。


 その原因は言わずもがな。目の前でこちらに手を差し伸べる、ひとりの少女。


「わたしたちの目的は一致してる。ダンタリオンを止めること。黙示録の獣を殲滅すること。もう一度言うよ、緋桜」


 柔らかく微笑みかけられて、視界がくらくらと歪む。こんなことが起きるなんて、思っていなかったから。

 心が掻き乱されて、けれどその笑顔から、目を離せなくて。


「助けてあげる。だから久しぶりに、一緒に戦おうか」


 深く息を吸って、吐いた。

 瞑目し、たっぷり三秒使ってからまた目を開ける。ポケットから取り出したタバコに火をつければ、ざわついていた心は落ち着きを見せ始める。


「そりゃ魅力的な提案だ。一回死んだからって、腕は鈍ってないだろうな?」


 皮肉げに口元を歪めて、その手を取った。

 満足げに笑む魔女が、ギュッと手を握り返して来る。

 その感触を、たしかめる。かつての日常で、数えるほどしか触れたことのない、その手の感触を。


 大丈夫。まだ大丈夫だ。

 まだ、この感情は押し隠せる。

 本当に、我ながら厄介な性格だ。この力も、自身の性質も、今この瞬間も。緋桜の周りは、なにもかもが面倒で厄介な事象に満ち溢れている。


 ただの恋愛感情なら、どれだけよかったか。以前織に語った想いですら嘘だと知ったら、あの探偵はなんと言うか。殺人姫は、バカだと罵ってくれるだろうか。


 魔女は、受け入れてくれるだろうか。


 それはないな、と内心で苦笑して、緋桜は頭を切り替える。

 自分の感情など、ここでは不要なものだ。やるべきことを、迅速に。


「さて、それじゃあどう動く?」

「織と愛美、それから栞がイギリスにいる。日本には朱音とか葵たちも残ってるし、敵の数は問題じゃない」

「それよりも、あの馬鹿でかい敵がどうやったら死ぬのかだね」

「お前の持ってる情報は?」

「わたしより、その子に聞いた方が早いんじゃないの?」


 桃から顎で示された先には、惚けた様子の翠が。けれどすぐにハッとして、その異能で捉えた情報を開示する。


「黙示録の獣は、十一体全てを同時に倒さなければ死にません。一体倒したとしても、他十体からの供給で復活します」

「同時にか……他の位置は?」

「わたしが確認してるのは、こことイギリス、それから日本だね」

「後はロシア、中国、エジプト、ブラジル、南アフリカの計八カ国と、北極と南極に一体ずつ、太平洋上に一体います」

「見事にバラバラだな。あいつらの具体的な強さは分かるか?」

「試してみたら早いんじゃない?」


 軽く言って、複雑な魔法陣が五重に展開される。万華鏡のように回転するそこから、遠く離れた獣へ向けて。

 光が、伸びた。


 衝撃を撒き散らして空を引き裂く魔砲は、四つ足で立つ獣の、その長い首に命中。

 その余波だけでニューヨークの上空を飛んでいた敵を殲滅して、しかし本体にダメージが通ってる様子は見られない。

 七つある顔の一つがこちらを向くが、反撃の様子もない。そもそもあれ自体に意思があるのかどうかも謎だ。


「んー、今のでダメか。結構硬いね」


 呑気に不満そうな声を出す魔女だが、こちらとしてはそれどころじゃない。いきなりとんでもない砲撃を撃たれたもんだから、衝撃の余波で吹き荒れた風は室内をめちゃくちゃにしやがった。


 翠は灰色の翼で姿勢制御していたが、他の全員が尻餅ついたり壁に激突したり。かくいう緋桜も、風に飛ばされ頭を思いっきり打った。普通に痛い。

 あと風で巻き上がった桃のスカートの中も、普通に見えた。なんの飾り気もない白。うむ、悪くない。


「お前な……ちょっとは場所を考えろよ」

「ごめんごめん、なんか全体的に出力上がってるみたいなんだよね。やっぱり、力を自覚するっていうのは大切だ」


 緋桜や織たちのように、継承された力ではない。全く新しいキリの力。桃瀬桃が生み出した、『創造』の力。

 生前の彼女は、最期までそれを自覚することがなかった。しかし、今の桃は違う。


 自分の持つ力を、その使い方を、完全に理解している。

 今の魔女は強い。

 緋桜の記憶にある頃でも、人類最強と同等レベルだったのだ。今ではその頃を遥かに凌ぐほど。果たして、蒼と戦ったらどちらが勝つか。


 知らず冷や汗を流していると、ジトッとした視線がこちらに向けられた。


「ていうか緋桜、風に飛ばされながらちゃっかりわたしのスカートの中見てたでしょ」

「なんだ、見せてくれたんじゃなかったのか? サービスカットにしては、随分色気のない下着だとは思ってたけどな」

「見せるわけないでしょバカじゃないの?」

「だったらいきなりあんなの撃つんじゃねえよ。チラッとでも見えたら視線をやっちまうのが、健全な青少年ってもんなんだぜ」

「どこの誰が健全な青少年だって?」


 額に青筋を浮かべた魔女と、懐かしい軽口を叩き合う。胸の内に飛来した郷愁の念は、しかし続いて聞こえた冷たい声にかき消された。


「ふざけている場合ではありません。早く作戦を立てましょう」


 絶対零度の声音は、ちょっと頬を膨らませた翠から。どうやら、桃と仲良くお話ししているのが気に食わないらしい。可愛い妹め。


 だが急かされたところ悪いが、実は作戦なんて既に決まっている。


「とりあえず、愛美を呼ぶぞ」

「なるほど。いつも通り、ってやつだね」

「そういうことだ」


 ニヤリと笑い合う。

 やることは二年前のあの頃と同じだ。あいつが暴れて、俺たちはその援護、という名の尻拭い。


「愛美ちゃんの力なら、十一体の繋がりを完全に断ち切れる。好きに暴れさせてあげようか」

「だな。悪いが、あいつにはお前から伝えてくれ」

「いいの? 今のわたしの言葉を、あの子が素直に信じるとは思えないけど」

「おいおい、お前、そんなであいつの親友名乗れるのかよ」


 ふっと、眉根を寄せて笑みを漏らす。なるほど、拗らせてるのはこの三人の間だけじゃなかったか。

 彼女ら二人、親友同士も。

 ともすれば、緋桜より更に面倒な感情を向け合っている。


 殺人姫にとって、魔女の存在がどれだけの救いになったか。同時に魔女の死が、どれだけの絶望へ染まったか。

 向けられている本人は、案外気づかないものなのかもしれない。


「いいから行ってこい。残りは雑魚の殲滅に当てさせてくれ。普通の魔術師には荷が重いだろうが、織たちなら余裕だろ」

「……分かった。親友、だもんね」


 噛み締めるように言い、桃の姿が消える。どこにいるかは教えていないのだが、どうやら把握しているらしい。


 さて。桃を行かせた理由は、彼女本人から愛美に説明させるだけじゃない。一つ、緋桜にはやり残していることがあるから。

 こればっかりは、あの魔女に同席させるわけにはいかない。


「昨日はごめんな、翠」

「……どうして、あなたが謝るのですか」


 その問いに答える前に、未だ紫煙を燻らせるタバコを握り潰す。

 周りに残っていた研究員たちは、クリスが纏めて指揮を出し、外に出て行った。察しのいい友人で助かる。


 これで二人きり。

 真摯にその紅い瞳を見つめて、飾らない言葉を吐き出した。


「お前には関係ないなんて、そんなはずがないんだ。なのにお前をあんな言葉で拒絶して、傷つけて……お兄ちゃん失格だ」

「あなたのことを、兄だとは思っていません……」

「手厳しいな」


 それでも緋桜にとって、翠はもう家族なのだ。妹なのだ。実年齢がどうだとか、半分吸血鬼だとか、血の繋がりとか。そういう些細なことはどうでもいい。

 緋桜の中で、そうだと決めた。両親や灰色の吸血鬼から、プロジェクトカゲロウによって生み出された三人を託された、その時に。


「あなたは、わたしの兄じゃない……でもわたしにとって、あなたは……憧れ、なんです。わたしを救ってくれた、未来を見せてくれた、その心の輝きが……!」


 震えた声による告白に、ハッとさせられる。

 向けられた本人は、案外気づかないものだと。それは緋桜も例外ではない。


 嫌われているとは思っていなかった。自惚れでなければ、それなりに信頼されているとすら思っていた。一時期は同じ家で暮らしていたほどだ。葵と一緒に小言を言われる時はあれど、険悪なんて言葉とは程遠い。


 それなのに、まさか。

 憧れ、なんて言葉が出てくるとは。


 無感動な瞳は細められ、憎しみすら込められた色に変化する。燃えるような紅は、まるで今の彼女の心をそのまま映したようだ。


「なのに最近のあなたの心は、ずっと曇ったままだった。タバコで誤魔化して、本心を語ろうともしないで……関係ないと言われたことよりも、そのことの方が余程悲しいんです……」


 俺はお前が憧れるような、出来た人間じゃない。


 そう思ってしまうことこそ、翠の心を苛むものの正体。だから、迂闊に言葉を投げられない。


「それ以上に、そんな風に思ってしまうわたし自身に腹が立つ。わたしはまた、自分じゃない誰かに寄り掛かって、甘えて、依存して……あなたの重荷には、なりたくないのに……!」

「重荷なわけないだろ」


 それでも即答してしまえたのは、あまりにも眩しかったからだ。

 真っ直ぐ、ありのままの気持ちを叫べる翠の姿が、その心が。


 緋桜だって。そんな彼女に、憧れてしまう。もう、自分にはできないから。


「翠がどう思っていようと、俺にとってはもう家族なんだよ。だから、重荷になるわけがない。むしろもっと頼って、甘えてくれ」

「でも、わたしのそれは……そんな綺麗なものじゃないっ……今のわたしは、あの頃となにも……」

「変わったさ。翠はもう、自分の足で現在イマに立ってる。未来を歩いてる」


 きっと、分かっていないだけだ。出灰翠という少女は、これまで徹底的に自分を殺してきたから。あの男のためだけに生きて、それ以外の誰かに対して、ここまで大きな感情を持った経験がないから。


 綺麗なものでも、醜く汚れたものでも。

 それは翠自身の意思と感情によって抱いた、とても大切なもの。誰かの言いなりになっていたあの頃とは、違う。


「俺はお兄ちゃんだからな。お前のことも、背負わせてくれ。可愛い妹なんだ、重くなんてないよ」


 優しく微笑みかけると、また睨まれる。

 翠のことを、全部理解してやるなんて出来ないけど。

 憧れてくれたというのなら。


 せめて、カッコいい兄をじゃないか。


「わたしは……あなたの妹ではありません……」

「お前がそう思うなら、それでいい」

「それでもあなたは……」


 一拍置いて。

 激情を発していた翠が。普段は滅多に笑わない、無感動な表情ばかりの可愛い妹が。


「黒霧緋桜は、わたしの大切な、ひとりです」


 精一杯の笑顔を見せてくれた。

 まだほんの少しぎこちなくて、硬さの取れない、それでも彼女の眩しいばかりの心が、想いが、痛いほどに伝わってくる。


 ああ、本当に痛い。

 その眩しさに目が眩んで、全部吐き出してしまえと悪魔が囁く。


 ポケットから新しいタバコを取り出して、誘惑を振り切った。


 俺はお兄ちゃんだから。

 妹のことを背負って、未来に連れて行ってやらないとダメなんだ。


「お兄ちゃん冥利に尽きるな。その調子で、今後も存分に甘えてくれていいぞ?」

「お断りします」


 だから、俺のこの想いだけは。最後の最後まで、隠し通す。ぶつけるべき相手に取っておく。


 痛みも眩みも、全ては煙とともに吐き出した。



 ◆



 イギリスで魔物を狩り続ける愛美は、妙な気配を感じて持ち場を離れた。


 栞と織の三人で手分けして逃げる人たちを助けて回っていたが、ずっとそんなことを続けていてもきりがない。

 魔物たちは一箇所に集まって、やたらとデカくなるし。そいつを殺しに行きたくても、この場を無闇に離れるわけにもいかないし。


 そんな中で現れた全く新しい気配。なにか解決の糸口が見えないかと、道中の魔物を殺しつつ向かった先には。


「や、愛美ちゃん。相変わらず楽しそうに殺してるね」

「桃……」


 敵になったはずの親友が、人々を守るように魔物を狩っていた。

 短剣を構えようとして、止める。直感でしかないが、今の桃は敵じゃない。


「どう言うつもりかしら。こいつら、あんたたちの仕業じゃないの?」

「緋桜にも同じ説明したし、二回目は面倒なんだけどな」

「はぁ……二百年も無駄に生きてたんだから、数分くらいのロスは目を瞑りなさいよ」

「無駄じゃないですー! ちゃんと意味のある二百年でしたー!」


 懐かしい応酬に、口元が綻びそうになる。なんとか耐えて、視線で説明を求めた。


 桃の話を要約すると、これはダンタリオンの独断専行。グレイとの契約を無視して、世界滅亡のために黙示録の獣を作った。世界中に十一体、あのデカブツと同じやつがいて、そいつらが完全体になるとヤバい。


 なるほど、つまりはいつも通り暴れてくれ、ということか。


「分かったわ。とりあえず緋桜と合流しましょう」

「……え、分かったの?」


 呆気に取られた顔の桃。

 目を丸くして、まるで信じられないと言いたげに愛美を見ている。


「なによ、文句でもあるの?」

「いや、別にそういうんじゃないけどさ……ほら、わたしたちって今は敵対してたわけじゃん? なのにそんな、簡単に決めていいのかなーって」


 思わずため息を吐いた愛美は、きつく魔女を睨め付ける。


 こいつはなにも分かっていない。

 敵として現れたとしても、再び会えたことがどれだけ嬉しかったか。あの時、あの瞬間、愛美の胸に去来した様々な感情の、その一欠片も理解できていない。


「たしかに今のあんたは、私たちの敵よ。でも、だからってあんたが、桃瀬桃が私の親友であることは変わらない」


 真っ直ぐすぎる愛美の言葉に、果たして桃はなにを思うのか。ただ驚いたような顔で、目の前の親友を見つめている。


 結局のところ、愛美の中ではそこに帰結するのだ。

 この長くはない人生で初めてできた、唯一無二の親友。それが愛美から見た魔女、桃瀬桃という人間。

 彼女が死んだ時、何も出来ずに倒れて目を覚ました時。一体どれだけの悲しみと絶望に包まれたか。


 本当は、全部投げ出してしまいたいほどだったのだ。けれどそれが許される立場にはいなくて、必死に強がりながらも戦い続けて。

 その果てに待っていた再会は、決して望んでいたものではなて。


 勝手に死んで、勝手に背負わせて、文句の一つや二つは言いたかった。

 なにせ愛美には、桃が背負ってきたものを代わりに背負うつもりなんて、毛頭なかったのだから。


「あんたとこうやって、また会えた。あの時みたいな軽口を言い合えた。それがどれだけ……どれだけ大きな意味を持つのか、あんたはなにも分かってない」

「かもね……今のわたしを親友って言ってくれるなんて、思ってなかったよ」


 いっそ泣き出してしまいたかった。らしくもなくわんわん泣いて、再会を喜びたかった。もうどこにも行かないでくれと、みっともなく縋りつきたかった。


 その気持ち全てを抑えつけ、殺人姫はゆっくりと足を進める。親友である魔女の元へ。


位相接続コネクト


 桃が、その姿を変えた。

 アウターネックの黒いドレスに三角帽子ウィッチハット、胸元には半透明の石を露出させた、桃瀬桃が魔女と呼ばれる所以のドレスへ。


「一緒に戦う前に、やるべきことは済ませておこうか」


 虚空に手を翳し、ガラスの割れたような音が響く。次いで魔女の手元に、刀が現れた。

 封印された学院本部に置いてきたはずの、愛美の刀だ。


「はい、これ」

「ありがと、さすがは魔女様ね」

「まあね。これで、小鳥遊たちも動けるようになったでしょ」


 本部に施された封印。その制御権を略奪した。

 学院本部の、更に地下に広がる迷宮に施されていた封印と絡み合っていたのだが、魔女の手にかかれば一瞬で解除できる。元からあった封印に一切の影響なく。


「他のやつらに状況の説明は?」

「小鳥遊が出てきたら、全部察してくれると思うよ。翠ちゃんも把握してるし、そっちに任せようか」


 桃が転移の魔法陣を展開し、一瞬にして二人はアメリカのネザー本部、そのビルのすぐ傍に移動する。

 そこにいたのはたった一人。タバコを咥えた元風紀委員長。二人の関係を語る上で、決して無視できない男だ。


「来たな」

「翠ちゃんは?」

「他の連中に状況説明を任せた。あとは葵たちと合流して、ダンタリオンを叩くように言ってる」


 タバコの火を消した緋桜は、ジーッと怪訝な目で愛美を見てきた。なにか言いたいことがあるのだろうけど、こちらには心当たりがない。

 視線でなんだと訊ねれば、いつものイラつく軽薄な笑みが。


「お前、そのドレスだと胸の小ささが際立つよな」

「あんた今言ったらいけないことを言ったわね⁉︎」

「どうどう、愛美ちゃん。事実を指摘されただけでキレたらダメだよ」

「うっさいわね! 桃だって大して変わんないでしょうが!」

「たしかに……」

「たしかにじゃないよ緋桜のバカ! 地味に気にしてるんだからね⁉︎」


 ゴッ! と鈍い音を鳴らして、緋桜の頭に拳骨が落とされる。

 ていうか、地味に気にしてたのか。体は自由に作り替えれるんだし、その辺もいい感じにすればいいのに。


「まったく……呆れるくらい変わらないね、このセクハラ野郎だけは」

「本当よ。これ以上葵たちに嫌われても知らないから」

「バカお前、俺が葵にどれだけ信頼されてるのか知らないのか? 嫌われるなんてあり得ねえよ」

「現実逃避の上に痛い妄想まで始めちゃってるよ」

「かわいそうに……」

「マジで哀れんでるんじゃねぇよ!」


 懐かしいやりとりを終えると、三人顔を見合わせて吹き出す。


 今この瞬間だけの、夢のような時間だとしても。きっと、また三人で集まれたことには、なにか意味がある。そう信じたい。


「さて、久しぶりに三人での大仕事だ。いつも通り暴れてこい」

「だね。好きに動きていいよ、愛美ちゃん」

「なら援護は任せたわよ、桃、緋桜」


 もはや胸の高揚は隠しもせず、殺人姫がレコードレスを顕現させて駆ける。

 三人でいられるのは、最後かもしれないから。この瞬間を、存分に楽しむために。

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