第35話
桐生朱音にとっての桐原組は、少々微妙な位置にいるというか、ぶっちゃけどう対応すればいいのか分からない存在だ。
彼女の時間軸では、朱音が生まれるよりも前、グレイが賢者の石の暴走を引き起こした際の戦いで、桐原組は壊滅してしまった。母の実家だと話には聞いていたが、実際に桐原組の誰かと会ったことは一度もなかった。
織や愛美として転生したこともある。けれど今の朱音に、その頃の記憶はない。ただでさえ磨耗してしまったそれは、この時間に遡ってきた際、完全に失われてしまった。
かつて受けたであろう愛情も、温かさも、全てを忘れてしまった。
だがこうして過去に遡って、両親にも正体を打ち明けた以上、桐原組との接触は避けられない。
初めて桐原の屋敷に訪れたのは、ゴールデンウィーク前のこと。果たしてどんな目で見られるのかと覚悟して向かったその先で、朱音は盛大な歓迎を受けた。
同時に、愛美と織がここの人たちにとても大事にされてることが、よく分かった。
家族はなによりも大切に。
誰に何を言われたわけでもないが、それは亡き両親の背中を見ていた朱音が、自然と学んだことの一つだ。
事実として、朱音は織と愛美の二人からとても大切に育てられた。たくさん愛情を注がれた。それは何度桐生朱音として転生しても変わらず。転生者になる前、一番初めの自分としての記憶も、もうないけれど。
それでも、父の大きな手を、母に抱きしめられた時の温もりを、朱音は覚えている。
何度も。何度も何度も。転生するたびに受けた愛は、忘れない。忘れたくないから。
そんな両親の原点。どうしてあの二人が、あの世界で、あんなにも優しくあれたのか。
その理由が、桐原組の人たちと触れ合っていると、分かった気がした。
二度目に訪れたのは、つい昨日だ。愛美が怪盗に攫われた日。母に連れられるがままに来たのはいいが、なんだかんだで桐原組の人たちとの接し方には困る。余所余所しさを隠せない。
そんな中で愛美が誘拐されて。現れた魔物と魔術師を、怒りのままに蹂躙して。
向けられる恐怖の視線には、すぐに気づいてしまった。人は、自分の想像の埒外にあるものに対して、恐怖を抱く。
朱音の強さは、あの場にいた桐原組の人たちにとって、まさしくそれだったのだ。
けれど、その後。織と二人でとある地方都市へと向かう前に。残される桐原組構成員の、その場に居合わせた全員が、朱音に頭を下げた。
『お願いします。お嬢を、助けてください』
なにも飾ることのない、シンプルで、だからこそ真っ直ぐな言葉。そこに乗せられた家族への想いと、自分たちの不甲斐なさ。
記憶は、ないはずなのに。もう、なにも覚えていないはずなのに。
その時、朱音の胸にこみ上げたのは、間違いなく郷愁の想いだった。
鼻の奥がツンとして、流れそうになるものを堪えるのにも必死で、なんと返したのかは覚えていない。多分、素っ気なく返事をしたのだろう。
そうして無事に愛美を取り返し、両親の二人が無事にくっ付いて、ならお邪魔虫な自分はちょっとお暇を頂きますねとばかりに家を飛び出したら、向かう先は自然と決まっていて。
結果、どうなったかと言えば。
「ふげっ!」
「重心がブレてる! 足の動きがデタラメですよ! 次!」
「お願いします! ……ほげっ!」
「動きが一々大きくて隙だらけ! それじゃあわざわざ殺してくださいって言ってるようなものです! はい次!」
順番に突っ込んでくる桐原組の若い衆を、ちぎっては投げちぎっては投げ。いや、正確には足技一つで、文字通り足蹴にしているのだが。
今もまた、重心を低くして襲いかかって来た若い男、昨日朱音とも短くではあるが言葉を交わした竜太が、朱音に脇腹を蹴られて地面に倒れ伏した。
「ありがとうございます!」
……そこでお礼を言うのはどうなのだろう。なんだか変な性癖に目覚めさせてしまっていないだろうか。
現代の知識なんぞ全く持っていなかった朱音だが、今となっては普通の女子中学生と変わらぬほどの知識を有している。なにせ家にはあれだけ漫画があるのだ。朱音もまだ十四歳。そう言うことには興味のあるお年頃。
そんな幼い少女に、屋敷の庭で軽くあしらわれる大の男たち。仕方ないとは言え、見る人が見れば情けないと思うだろう。
「おーおー、揃いも揃って情けねェなオメェら。オレの娘だけに飽き足らず、孫にまでやられてやがんのか?」
縁側に現れたのは、若頭の虎徹を伴った桐原一徹。愛美の養父であり、この組の組長だ。一徹が現れた瞬間に倒れていた全員が、痛みに悶えていたものすらも立ち上がり、頭を下げる。
さすがの統率。そして、それを可能とさせるだけのカリスマが、朱音の祖父にあたる人物には備わっていた。
「楽にしろ。存分に痛い目遭ってキツイんだろうから、ちょっとは休憩しとけ」
『へい!』
大きな返事の声が重なり、中心で立ち竦んでいた朱音は肩を震わせる。若い衆は力を抜いてその場に座り込んだり、膝に手を当てたり、思い思いに寛ぎ始めた。
そんな様子を見て笑む一徹は、朱音にちょいちょいと手招き。誘われるがままに縁側まで近寄って、そこに腰を下ろした一徹の隣に座る。
「どうだ朱音。この時代にはもう慣れたか?」
「え、ええ。父さんと母さんもいますし……桃さんとかサーニャさんも、色々と助けてくれますので」
「そうかい。そいつは良かった」
辿々しくも返した言葉に、一徹は気を悪くすることもなく、上機嫌にくくっ、と喉を鳴らす。
やはり、どのような接し方をすればいいのか分からない。両親の時とは違って、朱音が元いた時間でも面識がなかったのだ。祖父というのは、一体どういった距離感で接したらいいものなのか。
以前読んだ漫画には、孫は祖父母に甘えるもの、また祖父母は孫を甘やかすもの、とあった気もするけど。それが実践出来たら、こうも悩んでいないわけで。
「しかし、愛美と織のやつらも隅におけねェな。出会ってからほんのちょっとしか経ってねェってのに、もう懇ろな関係か」
「これでお嬢も、少しは落ち着きを持ってくれたらいいんですけどね」
「無茶言うなよ虎徹。あのじゃじゃ馬が、そう簡単に落ち着くタマか」
「同感です」
背後に控える形で立っている虎徹は苦笑を浮かべる。ここにはいない二人に対して、たしかな親愛の込もった声だ。一徹と同じく、虎徹も織と愛美を家族としての愛情を向けている。そこに自分も含まれていることが、少し擽ったい。
「この世界には稀に、魔術とも異能とも違う、似て非なるナニカが存在してる。あの二人が出会ったのも、あるいはそんなナニカによる運命、なのかもしれねェな」
一徹がしみじみと呟いた言葉は、朱音も同意するところである。
今頃事務所で仲良くイチャイチャやってるであろう二人は、きっと、出会うべくして出会った。
一徹の言う通り、この世界にはそういったものが稀に存在している。
例えば、織や愛美、目の前の一徹が有するカリスマ。彼らが持つ人を惹き寄せる魅力。本人たちには決して自覚のないそれは、もはや一種の異能じみている。
話に聞いたことがあるだけだが、歴史の節目に必ず現れると言う一族も、この世界にはいるらしい。それも恐らくは、似たような類のものだろう。
それらと同じで、桐生織と桐原愛美の出会いには、既存の法則では計り知れないナニカがあったのだろう。
きっと、どの時間軸に移動したとしても、あの二人は出会うべくして出会い、今のように愛情を育んでいたはずだ。
「オレはな、家族ってのもその一つだと考えてンだ」
「家族が、ですか?」
朱音の疑問に頷き、一徹は庭で寛いでいる己の家族を眺めながら、言葉を紡ぐ。
「なにも家族だけじゃねェ。言い換えるなら、絆ってやつだな。自分じゃない他の誰かとの結びつき。家族ってのは分かりやすい一つの例にすぎねェがよ。誰かを想い、想われる心。そいつは時に、とんでもねェ力を発揮する。それこそ、魔術や異能なんかじゃ説明できねェナニカを引き起こす」
一徹に倣って、愛美も庭を見渡す。へたり込んだ者に手を貸す者や、和かに談笑している者。朱音からの指摘を受け、早速実践しようも組手を始める者も。
ここにいるのは、誰もが血の繋がらない赤の他人だ。けれど、血よりも濃い絆で結ばれている家族だ。
朱音の両親も、その中にいる。形のあるなにかがあるわけでもないけれど。それでも、彼らを繋ぐものが、たしかにある。
それは朱音の知らないモノだ。家族と呼べる人は肉親である織と愛美だけで、そんな生温い考えでは、到底生きていけない世界で。
でも、そんな絆と呼ぶものが、なによりも尊いものだということは、分かる。
大きな手が、頭に置かれた。年齢を感じさせないゴツゴツした硬い手が、織や愛美とも違った手つきで、優しく朱音の頭を撫でる。
「今は、朱音もオレたちの家族だ。色々と戸惑うこともあるだろうが、なにかあれば存分に頼れ。甘えてこい」
「……はい」
胸にこみ上げる思いを必死に抑えて、ただ一言、短く返事をした。
◆
桐生探偵事務所は、土日のみ朝の十時から開かれる。平日は学院もあるから、夕方ごろからとなってしまうが、時間的拘束のない土日ならば朝からいつでも依頼を受け付けているのだ。ここ最近は桐原家からも学院からも仕事の斡旋がないので、開店休業状態ではあるが。
もはや習慣となってしまった朝の早起き。織も愛美も、毎朝六時には少なくとも目を覚ましている。
愛美は朝風呂を浴びて、その間に織は朝食の準備。朝食も食べ終われば、暫くはんびりとした時間を過ごしていた。
そして時間がやって来たら一階に降りて、それぞれ仕事を始める。
なんだかんだと、街の住人、特に商店街の人たちからは小さな依頼が舞い込んだりしている。先日の迷子犬探しだったり、店のなにがしかが壊れたから修理してほしいだったり。
もちろんそれらの依頼もしっかりちゃっかり依頼料を頂いている。こちらも仕事でやっている以上、その辺りはちゃんとしておかなければならない。
探偵というか、便利屋として扱われている感じが拭えないが、まあそこは目を瞑ろう。
お金の管理は愛美がやってくれている。元々学院でも風紀委員長として事務仕事はしていたみたいだから、その手際も見事なものだ。
一方で織は、ホームページの更新や依頼の報告書をまとめたりと言ったものが、普段の仕事になっている。
二人同時に仕事をしてしまえば、事務所の中に会話など生まれるはずもなく。
織と愛美が恋仲になって、二日目である今日。土曜日。いつものように起きていつものように仕事を始めた二人は、本当にびっくりするくらいいつも通りだった。
「……ふぅ」
「終わった?」
「おう。とりあえずひと段落。ちょい休憩だ」
「そう。私も、少し休憩しようかしら」
奥のテーブルで仕事をしていた愛美が帳簿から顔を上げ、立ち上がりお茶の準備を始める。家事は壊滅的に出来ないくせして、紅茶やコーヒーは普通に淹れれるのだから不思議だ。
愛美が淹れてくれた紅茶を受け取り、短く礼をしてからそれを口に含む。
ほぅ、と息を漏らせば、クスクスと柔らかな音色が耳を撫でた。音の発生源に視線を向けてみれば、至極穏やかな顔で微笑む愛美が。
「どうした?」
「いえ、こんなに落ち着いて平和なの、なんだか久しぶりな気がするから」
「言われてみればそうだな」
ここ最近、安倍家での仕事が終わった後からは、愛美がえらく余所余所しくなったりしていたし、その前にも色々とあった。ゴールデンウィークなんて、斡旋された仕事を片付けたり、愛美と初めて喧嘩したり、更に遡れば朱音と出会ったり、アーサーと出会ったり。
ここに越してきたばかりの時には、もっと落ち着いた時間を過ごしていたのだけど。
もちろん、その合間合間に休息日がなかったわけではない。それこそ愛美と港町のショッピングモールに行ったりしている。
ただ、彼女が言いたいのはそういうことではないのだろう。
この家で、織と愛美の二人きり。今までこんな状況は、片手で数えて足りるほどしかなかった。すぐに朱音がやって来たから。
朱音との時間も当然大切だ。未来からやって来た娘に、少しでも親として愛情を捧げたい。普通の暮らしというやつを経験して欲しい。それは愛美も思っていることだろう。
それでもここは、元々織と愛美の二人で始めた事務所だ。
娘との時間とはまた違った意味で特別に思える。
「ま、いつもが忙しないだけな感じもするけどな。つーか、俺からしたら今年度入ってからずっとそんな感じだし」
「まあ、色々あったものね」
ソファの背もたれに腰を乗せて、眠っている狼を見ながら、愛美は感慨深く呟く。
本当に。本当に色々あった。
両親の死に直面して、桐原の家でお世話になることになって。かと思えば、こんな美少女と一つ屋根の下に二人暮らし。瞬く間に未来から娘が来て、今ではその美少女とこんな関係になってるのだから。
全てが始まったあの日から、まだ二ヶ月ほどしか経っていない。それにしてはあまりに濃密で、あまりに長く感じた。
「これからの方が色々ありそうだけどな」
「まだ、なにも解決してないものね」
「それどころか、次々に問題が湧いて来やがる。勘弁して欲しいもんだ」
何故織の両親が殺されたのか。グレイの目的はなんなのか。賢者の石の正体とは。
それだけじゃない。黒霧葵と緋桜、その兄妹のこともあるし、先日も戦った怪盗も。おまけに学院長の南雲仁まで。
もはや織一人だけの話ではない。魔術世界全体を巻き込む、大きな事件となってしまっている。
だからこそ、こんな時間がなによりも価値のあるものに感じる。
一体これから先、今日のような平穏をどれだけ享受できる分からないのだ。もしかしたら、明日にも崩れ去るかもしれない。いや、一分一秒先にだって。
非常に腹立たしいことだが、織の未来視は先の幸福を映し出してくれないから。
「よし、今日の仕事はもう終わりだ」
「まだ昼前だけど。依頼、来たらどうするのよ」
「どうせ来ないだろ。それよりせっかくだし、今日はゆっくりしとこうぜ」
「所長が言うんじゃ、仕方ないわね」
紅茶を飲み干した後、事務所を閉めてから二人で二階に上がった。
居間の畳に織が寝転がれば、その隣で愛美も横になる。甘える猫のように擦り寄ってきた愛美を包むように抱きしめれば、擽ったそうに微笑みながら見上げてきた。
「私、抱き枕じゃないんだけど」
「昨日の夜、散々人のこと抱き枕にしといてなに言ってやがる」
「それでも手を出して来なかったあたり、織って実は修行僧じゃないの?」
「こっちは必死に色々と耐えてたんだよ」
「今も?」
「……」
「図星じゃない」
「うるせ」
その辺は仕方ない。だって織も年頃の男なのだから。むしろ己の鋼の理性を誰かに褒めて欲しいくらいだ。
そういうことをしたいとは思うし、何故か愛美もウエルカムな感じになっているけれど。
いざやるとなれば、男の織よりも、女の愛美の方がキツいことも多いはずだ。それに色々と準備も必要だし、朱音がここに戻ってきた時が気まずすぎる。
「まあ、今はこれだけで満足してあげるわ」
「そうしてくれ」
小さく口付けを交わし、再び愛美の体をギュッと抱き締める。
不思議な柔らかさと、自分よりも僅かに高い体温が心地よくて。いつしか二人は、どちらからともなく、穏やかな寝息を立て始めた。
珍しく二階に上がってきたアーサーが、四苦八苦しながら掛け布団を二人に掛けてやるのは、あと一時間後の話。
◆
「金欠なんですよ……」
「……」
休日にも関わらず学院へとやって来た葵が魔女の部屋を訪ね、放った第一声がそれだった、いつものように昼過ぎまで惰眠を貪っていた桃だったのだが、寝ぼけ眼のまま聞かされた話がそれ。
聞けばどうやら、先日安倍家での失敗が葵の懐事情にかなりダメージを与えているらしい。あの時も、そろそろお金稼がないとなー、なんて思っていた時に織から声をかけられたのだ。
しかしその依頼は見事なまでに失敗してしまい、その後も有澄との修行があったため、特に依頼に行っていなかった葵の財布は寂しくなるばかり。
さすがにそろそろやばいと思い、休日返上で学院に来たのだが。
「もしかして、お金貸して欲しいとか、そういう話?」
「いやいや違います! 桃さんが人に貸せるだけのお金持ってるなんて思ってませんよ!」
ナチュラルにディスってくる葵に一瞬イラっとしたが、桃は愛美のように、この程度でキレたりはしない。魔女は懐が広いのである。葵の言う通り、温かいわけではないけど。
「じゃあ、依頼を手伝って欲しいとか、そういう話?」
「はい! どうせなので高額のやつ受けて、一気に稼いじゃおうかなーって」
「まあ、わたしも暇だしいいけどさ」
ため息を吐きつつも言ってやれば、葵はやったー! と万歳。そんなに金欠だったのだろうか。
暇、と言うのは半ば嘘のようなものだ。桃にはやることがそれなりにある。
グレイや緋桜たちの捜索に、葵を始めとした学院生たちには内密にしている学院の襲撃、その対策。そしてなにより、対グレイの奥の手を準備している最中だ。
本来なら葵に付き合う時間などないのだが、緋桜には葵のことは任せろと言ってしまった。その手前、邪険に扱うのも気が引ける。
というのは建前で、シンプルに桃が気晴らしをしたかったのが本音だ。
自室に引きこもるのは桃の得意分野と言えど、さすがにそろそろ日の下に出ないとまずい。また愛美に怒られる。
やる気満々な葵に伴われ、桃は依頼書が張り出されている掲示板まで向かう。
とは言え、報酬が高額な依頼ほど、張り出されてからすぐ誰かに取られてしまっているものだ。掲示板には案の定、塩っぱい報酬の依頼しかなく、葵は落胆してしまっている。
「今あるので一番高いのが六万……安い……」
「しかもそれ、川の水質調査だしね。葵ちゃんの目的とは合致しないよ」
金を稼ぐついでに、ここ最近の修行の成果を試したい。葵の魂胆はそんなところだろう。
このツインテールの少女が有澄と修行していたのは桃も知っているし、その結果メキメキと成長していることも知っている。
自分ではカケラも使うことのできなかった、纒いという魔術を完成させたことも。
そもそも葵は、戦いに向いた性格ではない。優しすぎるのだ。言い方を変えれば、誰かに刃を向ける覚悟が、圧倒的に足りない。
それは織も同じなのだろうが、彼には愛美がいる。あの殺人姫の姿を隣で見ていれば、覚悟だけはいやでも決まるはずだ。
なまじ強力な異能があるからだろう。それがどれほどの力を持っているのか理解しているから、自身の一挙手一投足が相手の命に関わるということが、分かってしまう。
修行のような命が危険に晒されないのなら兎も角、実戦で本当に命が懸ってくると、葵は刃を下ろしかねない。
どうしようどうしようと、もう一人の自分に狼狽えながら話しかける葵。頭の中でどんな風に言われているのか、きっと碧が日頃から云々と説教しているのだろう。なんとなく想像できてしまって、桃はつい微笑ましい気持ちになる。
「仕方ない。お困りなら若者のために、ここはお姉さんが一肌脱いであげちゃおうかな」
「お婆さんの間違いでしょ」
「葵ちゃん?」
「……えっ、ちがっ、今のは……! ちょっと碧⁉︎ 本人が気にしてること言わないの!」
どうやらその一言を言うためだけに碧が出てきたようだが、桃的にはやはり葵の言葉の方が刺さった。悪意がないだけに責めづらい。
いや、別に歳のこと気にしてるわけじゃないし。そもそも今生きてる人間は殆どが歳下だから、気にするだけ無駄だし。
心にたしかなダメージを負いながら、桃は転移の魔法陣を展開させる。
一瞬にして移動した先は、どこかの街の高層マンションの入り口。およそ二十階ほどはあるだろうか。いわゆる富裕層が住まうマンションであることは、外観を見ただけでも理解できる。
「生徒向けの依頼じゃなくて、プロ向けのやつなんだけどね。本当は織くんたちか小鳥遊にでも回そうと思ってたんだけど、丁度いいしここで一緒に片付けちゃおっか」
「因みに、報酬は……?」
「基本は百万。条件次第で百五十万かな」
「ひゃくごじゅう?」
「そ、百五十。もちろん葵ちゃんが全部持って行っていいよ」
「百五十万……それだけあれば当面の生活費はおろか、新しい服も買えるしヘアゴムも新調できる……!」
いや、ヘアゴムくらいそこら辺で安く売ってるだろう。思いはしたが、桃はそんな野暮なことを口に出さない。恐らく、本人にはなにかしらの拘りがあるのだろうし。
さて、お金に食いついてくれたのは僥倖。問題はここから先だ。
「それで、具体的にどんな依頼なんですか?」
「このマンションを支配してる魔術師を始末すること。可能なら生け捕りにして欲しいんだって」
百五十万は生け捕りにした場合の金額だ。なぜ生け捕りなのか疑問に思うが、クライアントの事情に首を突っ込めば痛い目を見る。二百年の人生経験から、桃はそれを学んでいる。
葵もそこが気になる様子だったが、その疑問を口にするよりも前に、碧が無理矢理入れ替わった。
「理由なんてどうでもいいでしょ。さあ桃さん、早く行きましょう、早く」
「まあまあ、慌てないの。分かってる? これ、元はわたしたち向けの依頼だし、報酬が高いってことは、それだけ危険ってことだからね?」
「前までのあたしたちならいざ知らず、纒いを完全に使えるようになった今のあたしたちに敵なんていないわ」
「だったらいいんだけどね」
勇み足な碧を宥めながら、桃が先導する形でマンションへと入っていく。オートロックのはずの自動ドアはなにもせずとも勝手に開き、碧もその後ろに続いてマンションに一歩踏み入れた。
途端、言葉では言い表せられない嫌悪感がこみ上げた。肌にまとわり這いずるような、生理的に受け付けない感覚。全身に鳥肌が立ち、碧は殆ど反射的に異能を発動させてその感覚を遮断した。
「なに、今の……」
口にした疑問の答えは、碧の中でも既に出ている。その目に情報としてしっかりと映し出されている。
それでも、分かっていても、聞かざるを得なかった。
あんな気持ち悪い魔力が、この世に存在していいのか、と。
「おお、やっぱり碧ちゃんなら耐えられるんだね。偉い偉い」
「こんな……バカみたいに舐め腐った魔力……どういうつもりなのよ、このマンションの支配者とやらは……」
碧の瞳には、ありとあらゆる情報が映し出される。
彼女を襲った嫌悪感は、このマンション内に満ちている魔力が原因だ。ならばその魔力は一体どう言ったものなのかも分かっているし、その事実こそが余計に碧の気分を悪くする。
「このマンションに元々住んでた人の魂を、そのまま魔力に変換させたんだろうね。人間の魂っていうのは、魔力を作り出すのにこの上ない上質の素材となるから。その魔力で、ここを迷宮化させた」
人の命をなんだと思っているのか。それが吸血鬼などの魔物ではなく、同じ人間の手によって行われている。瞑目して短く嘆息した桃。次に瞼を開いた時には、そこに怒りの色が込められていた。
「ここは文字通りの迷宮になってる。魔物も出るし、上の階に上がったと思ったら下に降りてたとか、上下左右の感覚がめちゃくちゃになったりとかもあるしね。元の構造は留めてない。さて、そんなこの迷宮を、碧ちゃんたちならどうやって攻略する?」
「そんなの、一つしかないでしょ」
右手に鎌を現出させ、全身に雷を纏う。その魔力に呼応したのか、奥のエレベーターが開けば、三つ首の犬が二匹現れた。地獄の番犬とも呼ばれる、神話の時代から存在する魔物。ケルベロスだ。
計六つの首は目の前の獲物を捉え、息も荒くヨダレを垂らしている。
だが、碧の視線が向く先はそこではない。天井、その更に上。てっぺんで胡座をかいてるであろう、巫山戯た魔術師へと。
「こっから一直線に、直接乗り込んでボコボコにしてやるわ」
鎌が、槍へと変形する。碧が望むのは貫通力。ここからてっぺんまで、一撃で貫けるだけの力を。
全身に纏う雷の魔力が、翼が、バチバチと音を立て始める。それに反応したのか、もしくは自身に興味を向けられていないことに憤ったのか。ケルベロスは唸り声をあげながら、強靭な四肢で地を蹴り駆けた。
脆弱な人間など、爪の一振りでただの肉塊に変えることができる。この二匹は、事実としてこれまでも、攻めてきた魔術師を瞬く間に裂き殺し、食らってきた。
食った魔術師の数だけ二匹の力は増し、今やこの迷宮の奥に足を踏み入れる者は誰一人としていない。
だから今回も同じ。餌がノコノコとやってきただけ。
そのはずだったのに。
「誰の前で、誰に手を出そうとしてるのかな? なんてね」
お茶目に友人のセリフを真似てみた魔女が、腕を軽く一振り。ただそれだけで、二匹のケルベロスは不可視の衝撃に押し潰されて、身体をひしゃげさせ絶命した。
神話の時代から存在しているとはいて、現代で格の落ちた魔物ならこの程度かと、どこか落胆してしまう桃。
さて、と碧に視線を戻せば、その頭上には三重に展開された魔法陣が。複雑で精巧な術式のもとに広がるそれは、魔女の目から見ても感嘆する他ない。
「演算終了、全魔力解放!」
叫んだ碧が、勢いをつけるように翼をはためかせた、その瞬間。
轟音と閃光を撒き散らし、天に向けて雷が落ちた。
結界で身を包んだ桃は視覚も聴覚も無事だったが、生身のままなら確実に失明、失聴していただろう。
その余波が収まるのも待つことなく、転移のために上階への座標を取得する。
本来ならこの迷宮は、力づくのゴリ押しで破れるようなものではない。仮に天井を突き破ったとしても、元の構造が意味をなしていない以上は、そのまま一つ上の階に進めるわけではないはずだ。
だが、黒霧葵の異能を前にすれば、そのような魔術的付加は全て無意味と化す。
光が収まり上を見上げれば、最上階どころかその天井にまで大きな穴が。その中心に、雷の翼で浮遊している碧の姿を見つけた。
急ぎ最上階へと転移し、その床に降り立つ桃。かなり広い部屋だ。辺り一面がコンクリートの壁に囲まれ、天井に穴が開いていなければ光の一つも届かなかっただろう。
そして部屋の奥には、依頼書に示された通りの魔術師が。まさか迷宮がこんな力技で突破されたとは思わなかったのか、驚愕に目を見開いて、桃と碧の二人を見ていた。
「なっ……! 何故だ、何故だ何故だ何故だ! 私の完璧極まりない迷宮が! 何故貴様らのような小娘に!」
痩せこけた頬。ブロンドの髪は日本人のものではないだろう。羽織っているローブはボロボロで、魔術師としての経歴の長さが窺える。きっと、人生の長い時間を研究に費やし、やっとの思いでこの迷宮を作ったのだろうけど。
そのような事実、冷徹な魔女の前では何の意味もなさない。
「小娘、だなんて心外だな。わたし、こう見えても百九十五歳なんだけど」
「百九十七じゃなかった?」
「碧ちゃん、ちょっと黙ってて」
百九十七歳である。無意味な鯖読みだとは分かっているが、その辺り気にしてるからちょっとでも若くしておきたいのである。
まあ、桃は見た目だけなら立派なJKなのだが、それはさて置き。
「リカルド・アークレイ。学院からあなたに討伐依頼が出てる。可能なら生け捕りで、って言われてるから、素直に降参してくれるなら危害は加えないよ」
「私の最高傑作を……土地も人間の数も、全ての条件を同時に満たしていたのに……この場所を探し、作り上げるまで、どれだけの時間を有したか……!」
桃の忠告は、もはやリカルドと呼ばれた魔術師の耳に届いていない。ぶつぶつと呟き頭を掻き毟るだけ。
裏の魔術師ではよくいるタイプだ。理性のタガが外れ、己の力に酔い、狂気に染まる。結果一般人すらも巻き込み、この迷宮のような馬鹿げた代物を作り出す。
今までにそんな魔術師を、何千何万と見てきた。殺してきた。こいつも、そのうちの一人に過ぎない。
これは生け捕りなんて出来なさそうだ。世界の平和とやらのためにも、この様なタイプは生かして置けない。
葵たちには申し訳ないが、五十万分は諦めてもらおう。
「どうして……どうしてここの住民たちを殺したんですか!」
術式を構成しようとして、しかし頭上から降ってきた声にその手を止める。
入れ替わった葵が、瞳に怒りの炎を灯し、大声で問うた。鎌へと戻したその得物で今にも斬りかかろうとしているが、それを必死に堪えながら。
その声に、リカルドの頭を掻き毟る手が止まる。ゆるりと視線を上げ、宙に浮いている葵を見やった。
「どうして? そんなことも分からんのか……? そんなことも分からん小娘に、私の迷宮が破られたと……?」
さすがに様子がおかしい。今までも問答の出来なかった魔術師はいたが、このリカルドの様な、生気を失った瞳は初めて見る。
むしろ逆のはずだ。己の魔術、その研究成果を破られたとなれば、やつらは必死にこちらを排除しようとしてきた。若しくは、自らよりも格上の存在に歓喜し、桃を拘束して利用しようとするやつらまで。
「ならぬ……あってらならぬ……」
怪訝な視線の先で、リカルドが懐から何かを取り出した。
半透明の石。ただの石ではない。ただそこにあるだけで、空間を歪めるほどの魔力を秘め、半永久的に生み出し続けるもの。
他の誰でもない桃瀬桃が、己の体に埋め込まれたそれを見間違うはずなかった。
「葵ちゃん下がって!」
「え……?」
「我が名を持って命を下す! 現出せよ、其は万象を拒絶せし巨人の檻!」
鋼鉄の棒がリカルドを囲むように降り注ぎ、その上から巨大な鉄板が蓋をして檻が完成した。
だが桃の目的は、リカルドの動きを封じることではない。これから起こる被害を、可能な限り抑え込むことだ。
「その様なこと、あってはならぬのだ!!」
叫んだリカルドが、手に持っている賢者の石を口に入れ、躊躇うことなく嚥下した。
途端、濃密な魔力による衝撃波が辺りに撒き散らされる。滞空していた葵は姿勢を崩したため、桃の後方、少し離れた場所に降りて鎌を盾に変形、その後ろに隠れた。
桃も結界で身体を覆い身を守るが、同時に檻の維持にも力を割く。
部屋を囲むコンクリートの壁は容易く破壊され、天井も吹き飛び、床がめくれ上がる。
同じ賢者の石、そのオリジナルの力を総動員させて抑えているのに、そんなものは意にも介さず魔力が暴走し続ける。
いや、桃の檻がなければここら一帯は、二百年前のあの場所と同じことになっていただろう。そう考えれば、魔女はよく抑えている方だ。
「いい加減に……大人しく、しろッ!」
檻に更なる魔力を送れば、ようやく魔力の暴走が収まった。しかしその代わり、檻の中からは途轍もない力が感じられる。
やがて檻が消滅し現れたのは、ひとりの青年だった。ブロンドの髪と、新品同様に綺麗なローブ。痩せこけた姿はどこにもなく、魔女と全く同じ存在へと変貌したリカルド・アークレイが立っていた。
「くはっ! くははははははは!! これが賢者の石! あの魔女と同じ力か! いい、いいぞ! 力が漲る! この力があれば私は! 更なる高みへと辿り着ける!!」
これは、正直非常にマズイ状況だ。
今の一瞬で、桃の賢者の石はオーバーヒートを起こしかけている。一度に魔力を使いすぎた弊害だ。暫くは、石からの魔力供給が望めないかもしれない。
葵たちをアレの前に立たせるわけにもいかない。死にに行けと言うようなものだ。
ギロリと。リカルドの視線が、葵に向けられる。獰猛に細められた両目は、獲物を前にした肉食獣のそれ。
「まずは貴様からだ、小娘」
「ぁ……」
「碧ちゃん!」
恐怖で体が震えて動けない葵。その中にいるはずの碧に呼びかけるも、入れ替わる様子はない。
ただその場に硬直してしまった葵の足元にまで、死は迫っていた。
「死ね」
展開されていた魔法陣から、光の柱が聳え立つ。濃密な魔力が天を衝き、その空間にあった一切を破壊し尽くす。
だが手応えを感じなかったのか、リカルドは眉を顰める。
「外したか……いや、避けられた……?」
柱が聳え立った場所には誰もおらず、その少し後ろで、葵が倒れ伏している。
あの状態の葵が、あそこから躱せるとは思えない。なら、もう一人のあの子か。
ともあれ、葵が無事なことに安堵しつつ、桃はリカルドに向き直った。
「本当に、誰の前で誰に手を出してるのか、だね。愛美ちゃんのセリフを真似たくもなるよ」
「貴様、賢者の石の力を手に入れた私の前に立つか。愚かな娘だ」
「愚かなのはどっちだろうね」
ああ、本当に愚かだ。この魔術師は。自分の力ですらないそれに酔いしれ、敵を知ろうともしない。本来ならば共鳴しあって分かるはずなのに、それすら分からないほどに、狂気に呑まれているのか。
瞑目し、一つ息を吐く。次に開かれた桃の瞳からは、一切の感情が消えた、酷く冷徹なものとなっていて。
その眼光に射抜かれた魔術師は、一瞬たじろいだ。背筋に悪寒が走る。賢者の石をこの身に取り込んだはずの自分が、目の前の小娘一人に恐怖している。
そして皮肉にも、その恐怖がリカルドに理性を取り戻させ、共鳴し続ける体内の石に気がついた。
目の前に立つ、小娘と蔑んでいた女が何者なのか、事ここに至って理解した。
「リカルド・アークレイ。死ぬ準備は出来てるか?」
「ま、まさか、貴様は……⁉︎」
魔女の周囲に、魔力が渦を巻く。限界まで魔力を引っ張り出したはずの賢者の石は、これ以上使いようがないはずで。
だが、忘れてはならない。賢者の石には、もう一つの機能があることを。
即ち、術式の記録。器となった魔術師が使う術式の全てを記録し、そこに残している。
桃よりも以前に賢者の石を宿した者はいない。過去どの文献を漁ろうとそのような事実はないし、転生者のあの男もそう言っていた。
それでも、ひとつだけ。桃の宿すオリジナルの賢者の石には、存在している。
「
記録されているはずのない術式を起動させる。桃の姿が光に包まれ、それが弾けて消えれば、魔女の姿は一変していた。
くるぶしまで裾を伸ばした、アウターネックの黒いドレス。頭には
女性の魔術師が多くいるこの世界で、桃瀬桃だけが魔女と呼ばれている、その所以となったドレス。
纏う魔力の質が違う。同じ賢者の石を持つリカルドでも、いや仮に、リカルド以外の誰かがこの石を使ったとしても、あんな魔力は引き出せない。
そもそもあれは、本当に賢者の石から引き出した魔力なのか?
「
冷え切った声と、桃の眼前に広がった魔法陣。それを知覚した瞬間にリカルドも術式を構成するが、魔法陣が展開されない。魔力が使えない。
何故だ。自分は賢者の石を取り込み、その力を使えるのに。何故。
そんな疑問が晴れることもなく、リカルドの体は桃の砲撃に呑まれ、骨ひとつ残すことなくこの世から消え去った。
◆
「ふぅ……」
ドレスから元の制服へと戻った桃は、あまりの疲労感から地面にへたり込んでしまった。
予想外の事態が、三つ同時に。さしもの魔女も、これは手に余る。
まずは賢者の石だ。グレイが量産できることは、先日盗み聞いた会話から知っていたが、まさかもう裏の魔術師にばら撒いているとは。今回は相手がバカで助かったが、次も上手く行くとは限らない。それに、織や愛美がもし賢者の石を持つ魔術師とぶつかれば、呆気なくやられてしまうだろう。
恐らくは学院祭での攻勢にも、賢者の石は使われるはずだ。純粋な魔力源としてか、魔物どもに埋め込むか。どちらにしても、厄介なことに変わりない。
次に、あのドレスをこうも早期に使用してしまったこと。出来るなら温存しておきたかったのが本心だ。対グレイの切り札の一つとして。
消耗の激しいレコードレスは、そう何度も使えるものではない。桃自身、あれを使ったのは片手の指で数えて足りるほどだ。そもそも、どうして存在しているのかすら不明な術式。使えるから使っているが、その出自が全く分からない。
最後に、葵のこと。彼女に掛けられている呪いが薄れている。怪盗と戦った時にももう一人が出てきたみたいだし、色々と限界なのかもしれない。
ただこれに関しては、桃ではどうしようもない。他ならぬ葵自身の問題だ。緋桜がなにをしようとしているのかは見当がつくけど、それが解決に繋がるとは思えない。
「ホント、勘弁して欲しいなぁ……」
体を地面に投げ出し、空を仰ぎ見る。天井も壁も全て崩れ落ちてしまったから、視界にはどこまでも青空が広がっている。真昼間から派手にドンパチやりすぎたか、と少し後悔。
自分がこんな大変な目に遭っているのに、友人二人は今頃自宅でイチャイチャしてるんだろう。
そう考えると腹が立って来たので、今度会ったら嫌味の一つや二つ投げてやろう。
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