第32話
葵と有澄の二人と修行を終えた後も、そんなことは関係なく織は夕飯の準備をしなければならない。
もし仮に一人暮らしだったなら、今日はコンビニ弁当でいいか、となるところなのだが。残念ながらと言うべきか、織は一人暮らしなどではないし、一緒に住んでいる二人はかなりの健啖家だ。疲れていようがなんだろうが、毎日の夕飯はしっかりと準備しなければならない。
幸いなのは、朱音がそれなりに家事を覚えつつあることか。
愛美と同じく洗濯機を一刀両断した時は頭を抱えたものだが、織が丁寧に教えてやれば瞬く間に覚えていった。今では洗濯機くんも安心して朱音に任せられる。
「よし、出来た。朱音、箸並べてくれ」
「はーい」
織の真横に立ってずっと料理の様子を眺めていた朱音は、言われた通り箸を三人分出して居間の机に並べていく。
夕飯までに帰ってこいと言っているし、愛美もそろそろ帰ってくるだろう。
今日のメニューは豚の生姜焼き。さほど作るのか難しいわけでもないし、これだけで白ご飯がめちゃくちゃ進む便利メニュー。味にうるさい愛美もこれだと満足してくれる。
まあ、土日くらいはしっかりとしたものを作らないと、さすがに文句を言われそうではあるのだが。
「そういや父さん、今日は何してたの?」
箸を並べ終えた朱音が、生姜焼きを皿に盛り付けている織に聞いた。ゆうに六人前はあるだろう大量の肉と野菜を溢さないよう、慎重に皿へ移しながら織は答える。
「葵が有澄さんに修行つけてもらうって言うから、それに付き合ってた。朱音知ってるか? 葵の魔術って凄いんだぞ」
「あー、纒いでしょ? たしかに意味わかんない術式だけど、あの人片腕までしか出来てないじゃん」
「それがな、有澄さんに教えてもらって全身使えるようになったんだよ。しかも翼生えてんだぞ。めっちゃカッコいいんだよな」
昼間に見た葵の魔術を思い出しながら言う織は、感嘆の色を声に滲ませていた。
特にあの翼。中二チックな翼は、織の少年心を擽るのに十分だ。あれでまだ氷と炎もあると言うのだから、その二つを見るのが今から楽しみになってしまう。
が、待て。おかしい。さすがの織でも気づく。愛美の短剣の時と同じだ。
朱音の方をチラと見やれば、真剣な表情で頷きが一つ。
「また、変わってるね」
「だな……」
朱音のいた時間軸から、明らかに逸れている。分岐してしまっている。
この際認めてしまおう。織も本当は認めたくないが、しかしそれは無理があるから。
朱音のいた未来は、変わらない。
こうして過去に遡り介入しても、時間軸の分岐が起こるだけ。仮に朱音が未来に戻ったとしたら、そこに広がっているのは変わらぬ世界だ。
ともすれば、それはここにいる朱音の努力が無駄だという証明になるかもしれない。
自分がいた世界を変えるために、こうして過去に遡ってきたのに。突きつけられた現実は、あまりに残酷で。
「なに辛気臭い顔してんのよ」
呆れたような声が届く。一階に繋がる階段の方へ振り向けば、いつ帰ってきたのか、愛美が立っていた。
お帰り、と言いながら駆け寄る朱音に、愛美はただいまと返してその頭を優しく撫でる。
「どうせあなたの事だから、朱音がここに来たのは無駄だったんじゃないか、とか考えてるんでしょ」
「……まあ」
曖昧に肯定を返すと、盛大なため息が。キッと向けられた鋭い視線に、思わずたじろいでしまう。
そんな二人を仲裁するかのように、朱音が穏やかな声で言葉を紡いだ。
「無駄なんかじゃないよ。全然、無駄なんかじゃない」
愛美の手を引いて歩み寄って来た朱音が、織の手も握る。二人を見上げる朱音の表情は、無邪気で、心底から幸せそうな笑顔。
あんな苛烈な未来からやって来たとは、とても思えないような。
年相応の子供と同じ笑みを。
「だって、二人に会えた。父さんと母さんと、こうして一緒に暮らしてる。それだけで、私はここに来た意味があったよ」
えへへ、とはにかむ朱音と、そんな朱音に優しく笑む愛美。
昔日の光景が、フラッシュバックする。
織がまだ子供の頃。今よりもっと小さい時に、織もこうして、両親と手を繋いだことがあった。二人に笑いかければ、同じ笑みを返してくれた日が。たしかにあったのだ。
不意に、鼻の奥がツンとする。胸にこみ上げるものがある。
「そもそも、私がここに来たのは未来を変えることもあったけど、一番は二人に会いたかったからだもん。後は二人が幸せになってくれれば、私の目的は達成。だからその為に、この時間軸だけでも、ね」
「そうか……」
未来の娘からこんなにも想われている自分は、一体どれだけ幸せ者なのだろう。多分、いや絶対、世界一だ。そう言い切れる。
俺は世界一の幸せ者だと、胸を張って言える。
朱音が既に自分の時間軸を諦めてしまっていることに関しては、思うところがないわけではない。
未来に戻ってしまえば、この子はまた過酷な戦いに身を投じるのだろう。その時のことを思えば、胸が張り裂けそうなほどにつらい。
でも、だからこそ。今ここにいる朱音の意思を尊重すべきだ。この子がやりたいことを。望むことを。
「ほら、さっさとご飯食べましょう。私、お腹ペコペコだから」
しんみりとした空気を振り払うように、愛美が織を急き立てる。朱音が二人から手を離し、盛り付けが終わっていた皿を居間へと持っていった。
どうでもいいけど、お腹ペコペコって言い方可愛いな、とか思いながら、織は夕飯の準備を再開する。
とはいっても、あとは茶碗に白飯をよそうだけだ。いつも通り二人の茶碗には山盛りに入れて、テーブルに持っていく。
三人揃っていただきます。さっきあんな話をしたばかりだからだろうか。ただそれだけで目が潤みそうになる。でも本当にそうなれば、愛美だけでなく朱音にまで揶揄われることは目に見えてるので、誤魔化すように生姜焼きと白飯を頬張った。
「そういえば」
それからしばらく談笑しながら夕飯を進めていると、不意に愛美が口を開いた。
「ねえ織」
「ん?」
コホン、と咳払いを一つして、視線を泳がせる愛美。頬は薄く染まっている。さっきまでは普通に話せていたのに、どうやらやはり、それは朱音を挟んでの会話だったからなのだろう。
いや、それにしたって。昼間までは顔を赤くしたりなんてなかったのに。
「ちょっと、聞きたいことあるんだけど……」
「なんだ?」
「その、えっとね……? あー……」
なんと言えばいいのか困っているのか、開いた口からはうめき声に似た音しか出てこない。ここ数日の中でも、これは初めてだ。なんだかんだで今までも一応会話の体はなしていたのに。
あの愛美がここまで言い淀むとは、余程言いにくいことなのだろうか。そうであるなら、無理に言おうとしなくてもいいのに。
なんて思いから、織は助け舟を出してやるつもりで、先に言葉を出す。
「俺からも一応言っとくことあるんだけど、先にいいか?」
「え? あ、待って、ちょっと待って、心の準備するから……」
「いや必要ないだろ……明日からしばらく、葵と有澄さんの修行に付き合うようになったからってだけだぞ」
「……へ?」
鳩が豆鉄砲を食ったような、とはまさしくこのことを言うんだろう。キョトンとしてお目々パチパチ。
まさかなんと言ったのか聞こえなかった、などとは言うまい。普通の会話の普通の声量。しかし愛美は、織の言葉の意味をゆっくり咀嚼している。
咀嚼するような話でもなかったのだが。
「だから、明日からしばらく、葵と有澄さんの修行に、付き合うことに……なりました……はい……」
声が尻すぼみになったのは、愛美の表情からおよそ温度と呼ばれるものが消え去っていったから。控えめに言ってめちゃくちゃ怖い。心なしか、朱音からの視線も痛い気がする。
待って心当たりがない怖い。
「そう。美人な人妻と可愛い後輩に囲まれて、楽しく修行ってわけ」
「いや、楽しいってことはないぞ……?」
おかしい。部屋の気温が二度くらい下がった気がする。おかしい。
別に疚しいことはないはずだ。むしろ正当な理由がある。だと言うのに、謎の罪悪感が込み上げてくるのは何故なのだろう。
とにかくへどもどしながらも、今日の放課後にあったことを説明する織。
葵の纒い習得のための修行、その相手を有澄が務めていて、流れで付き合うことになったら明日からは織の方も見てくれると。有澄も魔導収束を使えるらしいから、旦那よりは役に立つだろうと思い喜んでお願いした。
うん、疚しいことなど何一つとしてないはずだ。そもそもこれはなんの釈明なのか。なんか、浮気をバレた男みたいになってる。
「まあ、好きにすればいいんじゃない? 私は私で勝手にやっとくから」
「はい……」
その言葉を最後に、愛美は食事に集中し始めた。話しかけるな、と言外に告げられている。どうしてこうなったのか。
「父さんほんと……そういうとこだよ……」
どういうとこだよ。とは思ったが、口に出したらまた怒られそうなので胸に秘めておくことにした。
マジで、どういうとこなの。
「ああそれと、光と雷って同じ速さじゃないよ」
「え、違うの?」
◆
「え、違うんですか⁉︎」
富士の樹海内で驚愕の声を上げるのは、綺麗な水色の髪を伸ばした女性。織が暫くお世話になる、彼方有澄だ。
昨晩朱音から聞かされた事実。雷と光の速度についてを教えた結果の反応。
織もあの後調べてみたのだが、先駆放電と呼ばれるものが秒速二百キロ。主雷撃と呼ばれるものが秒速十万キロらしい。つまり、それぞれ大体千五百倍と三倍が光の速さだ。
それはそれで、なら先日ルミと互角のスピードを出していた葵はなんなのだ、と言う話になるが。彼女の場合、その異能一つで説明がついてしまう。
「葵は知ってたのか?」
「知ってたら昨日訂正してますよ」
「だよな」
葵には情報操作の異能と、その副産物による目がある。しかし当然ながら、自分が視認していないと対象の情報は映し出せない。
自分の姿を見ることなんて鏡でもない限り無理だろうから、雷纒を使う本人であっても分からなくて無理もない。
「でも、多分これで雷纒は完璧になると思います。速度計算を光速でしてたから、そこを修正して……まあそう言わずにお願い。元素は碧の担当なんだから」
ぶつぶつと碧との会話を始めてしまった後輩は置いておき、地面でorzの態勢になってしまった有澄へと視線を向ける。
「なにやってんすか……」
「恥ずかしい……あれだけ自信満々に教えておいて間違ってたなんて……穴があったら入りたいです……自分で掘ろうかな……」
「ちょっ、ストップストップ!」
掲げられた右手に濃密な魔力が集まるのを見て、織は慌てて魔導収束を発動して強引に止める。本当に自分で掘る奴があるか。
しかし、意外な一面を見た。元々有澄とはそこまて親交が深いわけでもなかったが、まさかこんなに繊細とは。いや繊細な人は自分で穴を掘ろうとするのに、クレーターを作ったりはしないだろうけど。
「間違いくらい誰にでもありますって。俺も葵も勘違いしてたんだし、そもそも光も雷も似たようなもんですよ」
「いえ、似たようなものってことはないです」
「そこは否定すんのかよ!」
びっくりするくらいの手のひら返しに思わずタメ口でツッコミを入れてしまう。
似たようなもんだと思うんだけどなぁ……なんて頭の片隅で考えながら、さてこの吸収した魔力はどうしようかと、右手に展開したままの魔法陣を見る。
有澄がいきなりとんでもない魔力を現出させたから、咄嗟に吸収用の魔法陣を展開したのはいいが、さてここからどうすればいいのか。
織の体内に収めるには、余りにも濃い魔力。こんなものをそのまま吸収してしまえばどうなることやら。
適当な術式を上書きさせて空に放つとか、そんな感じでいいかと結論を出したのだが、実行するよりも前に復活した有澄から提案があった。
「そうだ。織くん、その魔力を使って全力の魔術を撃ってみてください」
「いいっすけど、どこに?」
「葵ちゃんに」
「私?」
キョトンと首を傾げて自分を指差す葵。
「いやいやいや、待ちましょう。有澄さん、自分の魔力がどんなもんかちゃんと自覚あるんすか? 葵が死んだらどうするんです」
「昨日と逆ですねぇ」
「呑気に言ってる場合じゃないですよ!」
葵は魔導収束がどんなものか、具体的に知っているわけではないのだろう。こちらも呑気に、昨日と同じだねぇ、とかのほほんとした笑顔で言ってる。
魔導収束による攻撃の威力は、吸収した魔力に依存する。以前織が蒼との戦闘で見せた連鎖爆発とシルバーレイのように、吸収した魔力が多く濃いほど、放つ魔術の威力も比例して上がるのだ。
有澄の魔力は、正直おかしい。蒼とは別種のおかしさ。あれは量も質も人の域を二歩ほどはみ出ていた。しかし有澄の魔力は、まるで既存の法則、概念に属さないように思えてならないのだ。
こうして魔導収束を正常に使えている以上、織の考えすぎだとは思うが。果たしてこれを、魔力と呼んでいいのか。言葉にできない違和感がある。
「話はちゃんと最後まで聞いてください。せっかちだと愛美ちゃんに嫌われますよ」
「……愛美は関係ないでしょ」
「おや? もしかして愛美ちゃんとなんかありました?」
「あ、そうなんですよ有澄さん聞いてくださいよ!」
「今はそんな話するような時間じゃないだろ!」
ここぞとばかりに葵が最近の二人について話そうとするが、織が叫べば葵もそれ以上言おうとはしなかった。
マジで嫌われてる可能性が無きにしも非ずなので、今この話題はいけない。織の精神衛生的にも。
「まあ、この辺は後でみっちり聞くことにしますか」
「勘弁してくれ……」
「で、話の続きです。織くんには全力で魔術を撃ってもらうわけですが、もちろん葵ちゃんはそれを迎撃してください。ただし、異能はなし。纒いのどれかを使ってです」
「でも私、まだ雷纒しか出来ませんよ?」
「それ一つ完璧にできるなら、後は応用の問題ですよ」
にこりと微笑む有澄に勇気付けられたのか、真剣な表情で頷きを返す葵。どうやら、彼女の方はやる気満々らしい。
「さて。織くんの方ですが、たしかシルバーレイを使えるんですよね?」
「ええ、使えますけど」
「他には?」
「チェインは一通りってとこですね」
「なるほど、なら基礎はしっかり出来てるってことですね」
織の使うチェイン系統は、魔導収束の中でも基礎的なものだ。敵の魔術から魔力を吸収し、それを使って自らが魔術を行使する。
最も単純で簡単な使い方。
これが敵から直接吸収したり、空気中の魔力を吸収したりとなると難易度は一つ高くなる。織が使える魔術だと、シルバーレイが該当する。
ただ、織は技として放てる魔術、つまり名を持つ魔術が限りなく少ない。
シルバーレイと連鎖爆発の二つだけだ。
魔術世界における名前は、かなり重要な意味を持つ。
名前を与えられれば意味を与えられ、魔術はその名を唱えることで、より強く洗練された力を発揮できるのだ。
「んー、予定変更しましょうか。二人が戦うんじゃなくて、二人と戦いましょう」
「私たちと有澄さんが、ですか?」
「はい。せっかくなので、織くんにも新しい魔術を覚えてもらおうと思うので」
「え、俺?」
「見ててくださいね。いや、直接身体で覚えた方が早いですか」
織と葵の意思を確認することもなく、有澄は二人から離れたところに転移。長杖を出現させ地面につけば、有澄を中心に魔法陣が展開される。魔導収束のものだ。周囲の空気に溶け込んでいる魔力を吸収すれば、有澄は二人へとおもむろに長杖を向けた。
まさか、と思った時にはもう遅い。
咄嗟に右手の魔法陣に新たな術式を上書きしようとして、
「絡み取れ、
放たれた氷の茨が、うねりを打ちながら地面を這い、織と葵の元へと殺到する。
回避も防御も間に合わない。身を震わせる冷気に立ち竦んでいれば、織の身体を横に押しやり、葵が前に出た。
「碧、炎纒! 全力全開で!」
出現させたのはいつもの鎌ではなく、葵の身の丈以上もある巨大な盾。それを構えると同時、葵の身体に炎が迸り、紅蓮の魔力をその身に纏う。
赤いツインテールと、背中から吹き出す炎の翼。盾にも炎を纏わせ、迫り来る氷の茨を受け止める。
氷には炎。単純な発想だが、最適解であることには違いない。
それが一般的な魔術師だった場合、だが。
「嘘でしょ……!」
盾で攻撃を防いでいる葵の表情が、苦悶に歪む。
氷が熱に弱いのは、誰もが知る常識だ。しかし、今目の前ではその常識を覆そうとする光景が広がっていて。
「言い忘れてましたけど。わたし、蒼さんと違って手加減が苦手なんですよね。だから頑張って耐えてくださいよ?」
言った瞬間。
纏っていた炎ごと、葵が氷の茨に飲み込まれた。茨の形をした透明な結晶の中に囚われ、有り体に言えば凍りついている。
「言うのが遅いだろおい……」
旦那よりもタチが悪い。蒼はまだこちらに実力を合わせてくれるが、有澄はそれをしない。織たちが相手であろうと、情け容赦なく全力を出してくる。
頬に冷や汗が伝うのを自覚しながら、織はホルスターから銃を抜く。恐らく今の魔術が、織に覚えてもらおうというものだろう。
だがまず考えるべきは、どう戦うべきかだ。
幸いにも、織の右手には未だ有澄から吸収した魔力がある。こいつはここぞと言うところまで温存しておくとして、そのタイミングまでどのように持っていくかだが。
有澄から仕掛けてくることはない。距離は離れている。織の得意とするレンジではあるが、それは向こうも同じ。
巡らせている思考が不意に止まったのは、葵の囚われた氷から、パキッと小さく音が鳴り、僅かなヒビが入っていたから。
ヒビは見る見るうちに茨の全体へと伝播し、やがて大きな音を響かせて粉々に砕け散った。
宙に舞う結晶は太陽の光を浴びて煌めく。どこか幻想的なその光景、結晶の中心に。
氷の翼を広げた、ツインテールの少女が立っていた。
「死ぬかと思った!」
辺りに冷気を撒き散らしている葵は、氷の結晶のような魔力を身体に纏わせていた。トレードマークのツインテールは真白く染まっている。
三つ目にして最後の纒い、氷纒だ。
「大丈夫、葵ちゃんが出て来てる限りは死ぬ心配なんてないですよ」
「それでも寒いし痛いんですっ! 織さん、援護お願いしますね!」
「オーケーだ!」
翼をはためかせ、有澄に向かって弾丸のように真っ直ぐ突っ込む葵。迎撃のための魔法陣が展開されるが、空いた左手で魔導収束を発動させた織がその魔力を吸収する。
魔法陣が瓦解したその隙に葵の大鎌が振るわれるが、有澄の杖に難なく弾かれた。
そうして出来た空隙に、織の攻撃が割って入る。左手で吸収した魔力を用いて放たれた魔力弾は、寸分違わず的確に有澄の肩を撃ち抜いた。
オレンジに輝く瞳は、未来視を発動させている証拠。おまけに今の魔力弾は有澄の魔力を使ったものだ。つまり、その威力は有澄本人がよく分かっている。
さすがに分が悪いと踏んだのか、後方へ大きく退がる有澄。肩の傷はあっという間に塞がっていた。
「逃がさない!」
葵の鎌が、槍へと変形する。
冷気を纏ったそれを全力で投擲。それにほんの数瞬タイミングをずらし、織は右手に維持したままだった魔力を解放した。
「見様見真似は得意なんでな……絡み取れ、
銃口に魔法陣を展開し引き金を引けば、有澄と同じ魔術が放たれる。
即興の見様見真似。お世辞にも綺麗な術式構成とは言えないが、氷の茨は葵の槍に追従する形で有澄へと殺到する。
「及第点、と言ったところですね」
それを防ぐべく現出したのは、氷の盾。薄いその一枚だけでは、到底防ぎきれない攻撃のはずだ。
だが有澄の目的は攻撃を防ぐことではない。
「
葵の槍と織の魔術。その二つが氷の盾へと吸い込まれた。そして織は遅れて理解する。あれはただの盾ではなく、魔導収束の一種なのだと。
いや、それだけじゃないはずだ。
背筋に悪寒が走る。言葉にしようのない嫌な予感がして、咄嗟に叫んだ。
「葵! 離脱しろ!」
「……っ! らいて──」
「遅い」
葵が雷を纏うよりも、早く。二人を囲むようにして、同じ氷の盾がいくつも出現する。
盾から放たれるのは氷の茨だ。ただ跳ね返されているだけではない。そこに秘めた魔力、破壊力が倍になって返され、織と葵を飲み込んだ。
「さすがに葵ちゃんの槍は無理でしたか。まあ、異能絡んでるし当然ですかね」
軽い調子で言い、有澄は二人を凍らせている氷の茨を解く。
倒れ伏した二人に近寄って治療をかけつつ、仰向けになった織へと声をかけた。
「思った以上に吸収が早いですね。まさか一度見ただけで覚えるとは思いませんでした」
「変に器用なのが唯一の取り柄なんで……」
自嘲気味に漏らしながら、織は自分の放った魔術を振り返る。
即興で真似してみせただけだから、酷く杜撰な術式だった。しかし、あれを有澄と同じ精度で完成させろと言われると、今の織には出来そうにない。
まずは基礎の元素魔術から見直しだ。それから、茨というのも織的にはイマイチしっくりこない。というか似合わないにも程がある。
これはこの魔術を基盤にして、別の魔術を考案した方が良さそうだ。
織が内省している間にも葵の治療が完了したのか、元の黒いツインテールに戻った後輩は元気よく立ち上がった。
「あーもう! 悔しい! あたしが出てれば絶対勝てたのに!」
どうやら、碧と入れ替わったらしい。体は共有だから、当然疲労も共有しているはずなのに、碧は鎌を右手に出現させ、元気に騒いでいる。
「有澄さん、もう一回! 次はあたしが相手よ!」
「碧ちゃんが表に出た場合の纒いはまだ確認してませんでしたね。いいですよ、やりましょうか」
元気だなあ、とか思いながらそんな二人を眺める織には、参加するだけの気力が残っていなかった。仰向けに寝転がったまま空を見上げていると、近くで魔力の動きを察知する。
気になって起き上がり周囲を見回せば。
「織くんっ……!」
「桃? どうしたんだよ」
転移で現れたのは桃だ。その顔には珍しく、焦りの色が浮かんでいる。碧と有澄の二人も気づいたようで、現れた桃へ視線を向けていた。
あの魔女が焦るとは、果たしてどんな厄介ごとだろうか。
そんな風に呑気に考える織だったが、お下げ髪の友人から告げられた言葉に、愕然としてしまった。
◆
時間は少し遡る。
学院での授業が終わってすぐ、愛美は朱音と合流して実家に顔を出していた。
朱音は一度、桐原組の面々と会っている。織と愛美がゴールデンウィーク前に一度連れてきたからだ。
予想通り、愛美の家族たちは朱音を快く受け入れてくれた。未来から来た自分たちの娘だと言っても、誰もその言葉を疑わなかった。
当然だ。元より桐原組は、誰も彼もが血の繋がりなどない赤の他人。それでも家族として、たしかな絆を結んでいる人達。そんな彼らが朱音を受け入れないなんて、そんな選択肢は最初からなかったのだ。
と、そんな感じで実家とは相変わらず上手く付き合いを続けている愛美。ていうか、定期的に帰らないと組のやつらが煩いのだ。やれ織に迷惑はかけてないかだの、ちょっとは進展してないのかだの、そろそろヤることやヤったのかだの。
男所帯だから仕方ないとはいえ、女子に聞くようなことじゃないだろうと毎度ため息を我慢している。
しかし。しかしだ。それは以前までの話。実家からの連絡に辟易としてはなんともないから、と返していた愛美は、既にいない。
「あのっ! バカはっ! 私の気もっ! 知らないでっ!!」
ここにいるのは、想い人が修行とか抜かして他の女とよろしくやってることに激ギレし、屋敷の庭で八つ当たりのように朱音へと拳を打ち込む殺人姫。
対する朱音は呆れた表情を隠すこともなく、愛美の拳を時に躱し、時に受け流し、愛美と全く同じ体術でその相手を務めていた。
「足元」
「……っ!」
朱音の足払いをギリギリで躱そうとし、寸前で右側頭部を両腕で庇う。完全に足払いの態勢に入っていたはずの朱音の右脚が、愛美の両腕に強い衝撃を与えた。足払いから上段回し蹴りへと動きをシフトさせたのだろう。
防がれた右脚を引き戻す朱音は、既に次の攻撃へと態勢を移している。たが、彼女らの体術の場合、攻撃の予備動作は当てにならない。直前でいくらでも動きを変えられるのだ。つまり、じゃんけんの後出しのようなことが出来てしまう。
だから愛美は無理に反撃をしない。一旦距離を取り、場をリセットさせる。回避の難しいこの体術同士の戦いだと、一度有利に攻勢を進められれば、後は一方的になりかねないからだ。
「意外と冷静だね。あんなに父さんのこと言ってるから、もっと頭に血が上ってるんだと思ったのに」
「そこはそれ。感情のまま戦うのは悪いことじゃないけど、動きにまでその影響が出だしたらダメでしょ」
「それもそっか」
短く言葉を交わし、愛美は再び地を駆け朱音へと肉薄する。初速からトップスピード。瞬く間に懐へと飛び込み拳を振るうが、朱音は涼しい顔でそれをいなす。
分かっていたことだが、朱音との実力差はあまりに大きい。練度も経験も違いすぎる。
こうしてその現実を見せつけられると、やはり愛美とて悔しさが勝る。朱音のこれまでを考えれば当然のことなのだろうけど、自分の力はこんなものなのだと、ダメな方に思考が働いてしまう。
そんな考えに引っ張られたのか、突き出した拳が朱音の右脚に弾かれ、左脚から続け様に繰り出された逆回し蹴りが襲いかかる。
「動きに影響、出てるじゃん」
愛美の顔の横で寸止めされた朱音の踵。その足を戻し、朱音は縁側の方へと戻っていく。これで終わりということだろう。実際、これ以上続けても意味がないことは愛美にも理解できていた。
ダメだ。今日はどうにも、動きにキレがない。朱音の言う通り、口ではああ言いつつも、自分の動きが無駄な思考や感情に影響を受けている自覚がある。
「お疲れ様です、お二人とも。こちらをどうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
桐原組の竜太という青年からタオルと水を差し出され、朱音は戸惑いがちにそれを受け取る。どうやら織や愛美を相手にするのとは違い、まだ少し緊張しているらしい。
未来では桐原組は既に存在していなかったらしいから、それも当然か。織と愛美は親で、家族。だが面識のない桐原組は、朱音からすれば本当にただの他人だ。
愛美も屋敷の中へと戻り、タオルと水を受け取る。水を一気に呷りタオルで汗をある程度拭うと、愛美は竜太に尋ねた。
「竜太、お風呂空いてる?」
「へい。湯も沸かせておきました」
「ありがと。朱音、汗流しに行くわよ」
「あ、うん」
竜太と呼ばれた若者にタオルと空になったコップを返し、律儀に頭を下げて愛美を追いかける。
部屋で着替えを取ってから風呂場へ。朱音の分は、愛美のを貸してやった。
互いになんら恥じることなく衣服を脱ぎ捨て浴場へと入ると、おぉ、と朱音から感嘆の声が上がる。
「広い……!」
「まあ、事務所のお風呂は狭いものね。あれの五倍くらいの大きさはあるんじゃない?」
「そうだ母さん、背中流してあげるよ!」
「あらそう? じゃあお願いしようかしら」
嬉しい申し出を笑顔で受け、二人は洗面台の前に座る。タオルにボディソープをつけて泡だてた朱音が、傷一つなく真っ白で綺麗な背中にそれを這わせた。
ちょっと擽ったい感じがするけれど、悪くない時間だ。自分のことを親と慕ってくれる子に背中を洗ってもらう。朱音の境遇を思えばこそ、こんな時間がなにより価値のあるものに思える。
だがそんな穏やかな時間は、呆気なく崩れてしまうことになる。
「ところで母さん」
「なに?」
「父さんのことだけどさ」
ドクッ、と。自分でも音が聞こえるほど、心臓が跳ねた。後ろにいる朱音にも、その音が気づかれていないかと思うほど。
いや待て、落ち着け。まだ織のことを話題に出しただけで、なんの話なのかまでは聞いていない。なにか重要なことかもしれないし、別に私が動揺する理由なんてどこにも──
「母さんって、父さんのどこが好きなの?」
あった。なんなら愛美が動揺する要素しかない質問が飛んできた。
恐る恐る顔だけ後ろを向けてみれば、そこには純粋な笑顔で愛美の背中を洗っている朱音が。この質問にもこれと言った他意があるわけではない、こともなさそうだけど、そんな笑顔でいられると、愛美としては弱い。
「昔からずっと不思議だったんだよね。母さんって美人だから、寄ってくる男も沢山いるでしょ? 未来でも、アイクさんが毎日のように言い寄ってたし」
「アイクのこと知ってるのね……」
「うん。母さんのこと好きなくせに父さんとも仲良かったから、なんかよく分かんなかったけど」
アイクのその辺は、本当に紳士的というか。今でも彼は織のことを友人として見ているし、晴樹と三人で連んでるのをよく見る。
アイザック・クリフォードは変人ではあるし迷惑なやつには違いないが、悪いやつではないのだ。
と、あんなやつの話はどうでも良くて。
「で? で? 母さんは父さんのどこが好きなの? 教えてよ」
「……まあ、朱音になら」
愛美が織に恋心を抱いていることは、三人で剣崎魔導具店へ向かった時にバレている。朱音に隠すつもりはなかったし、そのうち言おうかとも思っていたけど、まさかあんなに早くバレるとは思っていなかったのだ。
しかも気づいたという事を、織もいたあの場で報告してくる始末。
なにより、未来の娘だ。隠していても仕方ない。未来の自分たちはこの子にそういう話をしなかったのだろうか、と思うものの、そういう話が出来る世界でもなかったのだろう。
「そうね……織のどこが好きか……」
前に向き直り、顎に手を当てながら少し考える。どこが好きか、と改めて聞かれてみれば、答えに窮する。
例えば優しいところとか、努力家なところとか、料理が美味しいところとか、挙げようと思えば幾らでも挙げられるのだけど。
そういうのでは、どうにもしっくり来ない。
言葉にしろと言われれば難しいけれど、それでもどうにか言語化してみるのなら。
「カッコいい、のよね。見た目云々の話じゃなくて、あいつの生き方とか、在り方が」
桐生織は大した力も持っていない凡人だ。特筆すべき点はその異能くらい。使う魔術が多少特殊とは言え、彼本人の技量に眼を見張るものがあるわけでもない。
けれど、それでも織は、自分よりも余程強大だと分かっている敵に立ち向かっている。地面を這ってでも、どれだけ意地汚くても。先の見えない嵐の中を、ただひたすら前に進んでいるのだ。
今は見えない未来を、その瞳に映すため。
そんな彼の在り方に、愛美は心を奪われたのだと思う。そんな生き方をする彼を、隣で支えてやりたいと。だから事務所を開く提案をしたし、こうして二人、今は三人で、どうにか探偵業を営んでいる。
彼のことを好きだと気づいたきっかけは別のところにあれど、好きになった理由、好きな理由を聞かれれば、そう答える。
「母さんのそんな笑顔、久しぶりに見たかも」
「え?」
囁くほどの声で呟かれた言葉。聞き返す拍子にキョトンと首を傾げてしまって、愛美は自分がさっきまでどんな風に笑っていたのか、分からなくなってしまう。
けれど、愛美の後ろから鏡ごしに、朱音はしっかりと見ていた。心底から幸せそうに、花のような笑顔を浮かべていたのを。
見ていた朱音に嫌という程伝わってきた。それだけ、愛美は織のことを想っているという事実が。
「そんな笑顔って、どんな笑顔よ」
「すっごい幸せそうな笑顔だよ。昔、何回か見たことあったんだけどね。久しぶりに見たら、やっぱり破壊力が凄いや」
破壊力、とは些か表現がおかしくないだろうか。ていうか、朱音も愛美とよく似てるのだから、同じ笑顔を浮かべれば同じ破壊力になると思うのだけど。
なんて呑気に思っていると、朱音がシャワーを取って背中の泡を水で流す。
「はい、おしまい。じゃあ次私の番ね!」
「ええ。ついでだし、髪も洗ってあげる。せっかく私に似て綺麗な髪してるんだから、手入れはちゃんとしなきゃダメよ?」
「魔術使ったらいつでも綺麗に保てるんだけどね」
「そんなことに使えるだけの魔力があっていいわね……」
その後は愛美が朱音の背中と髪も洗ってあげ、二人で広い湯船に浸かり他愛のない話で盛り上がった。織のご飯が美味しいとか、昔愛美が行ったおかしな仕事の話だとか、朱音に似合いそうな服がモールに売ってあったとか。
そうやって時間を過ごし、逆上せてしまう前に風呂から上がる。
服を着替えて部屋に戻る最中。廊下の前から若頭の虎徹が歩いてきた。
「ああ、お嬢。丁度良かった」
「虎徹? どうしたの、っていうな、なにそれ?」
「お嬢宛の荷物がさっき届いたんですよ。だが、ただの荷物じゃなさそうでして」
虎徹が手に持っているのは、そこまで大きくはないダンボール。抱えるほどの大きさでもなく、持っている様子を見るに重くもなさそうだ。
だが、一点だけ気になる箇所が。
「認識阻害が掛けられてるね、これ」
愛美の後ろから覗き込んだ朱音の言葉に、虎徹も頷く。
その名の通り、他者からの認識を阻害する魔術。朱音の仮面に掛けられているものと同じだ。違う点を挙げるとするならば、このダンボールは『ただのダンボール』に認識、知覚されるように魔術が掛けられている点。
朱音の仮面のように、問答無用で正体を隠すようなものではない。相手の油断を誘うような魔術の使い方だ。
「結界に反応がなかったんで、取り敢えずお嬢のとこに持っていこうと思いまして」
「お父さんは?」
「組長は出掛けてらっしゃいます」
「そう。結界に異常があったら、お父さんが連絡寄越すはずだものね……」
桐原の屋敷に張り巡らされている結界には、様々な効果が内包されている。
防音だったり、内側の魔力が漏れないように遮断されていたりとあるが、一番効果を期待されているのは、敵意の感知だ。
桐原の人間に対する敵意、害意を感知し、屋敷内に警報を鳴らす。それは人のみならず、物や魔術でも同じ。
例えばこの荷物。これに誰かの敵意が込められていたのなら、結界がすぐに作動するはずなのだ。いくら認識阻害が掛けてあるとは言え、その認識阻害自体の敵意を感知出来るのだから。
それがないということは、この荷物は安全ということか。そう考えるのは安直過ぎると思うが、それでも中身を確かめてみないことにはわからない。
「取り敢えず、中を見てみましょうか」
虎徹からダンボールを受け取り、中を開けてみる。そこに入っていたのは、野球ボールほどの大きさの球体。取り出してよく見てみれば、どこかで見た覚えのあるものだ。
それが何処だったかと思い出そうとして。
パンッと、愛美の手の中で球体が弾けた。
それがなんなのかを思い出した時には、既に遅い。愛美の体から徐々に力が、魔力が抜けていき、膝から崩れ落ちてしまう。
「母さん⁉︎」
「お嬢⁉︎」
「くっ……やられた……魔障EMPね……」
それも先日使われたものとは違い、もっと効果範囲を限定的に絞り、代わりにその威力を増大させたものだ。
つまり、愛美個人のみを対象にして、魔障の力が増したもの。
明らかな異物が体内を侵食しているのが分かる。上手く魔力を練れず、また外からの魔力も受け付けないだろう。
苦悶の表情で胸を抑える愛美だったが、それだけに終わらない。
朱音がなにかに気づいたように顔を上げれば、それに遅れて屋敷の警報が鳴り響く。
「魔物が来た……虎徹さん、母さんを安全なところへお願いします!」
「分かった! さあお嬢、行きますよ!」
「ちょっ、待ちなさい……わたし、も……」
一緒に戦う。そう言おうとして、しかし立ち上がれもしないことに気づいてしまった。指先にも力が入らない。剣を持てない。
それどころか、身体中の魔力が言うことを聞かなくて、徐々に抜け落ちていく感覚まではっきりとしていて、頭が朦朧としてきた。
「お嬢、今は退きますよ。桃さんと織にも連絡するんで、あなたは休んでください。とても戦える状態じゃない」
虎徹に無理矢理おぶられる愛美。朱音はいつの間にかその場からいなくなっていた。外に来ているという魔物の対処に向かったのだろう。
屋敷には今、どれだけの構成員がいたか。朱音と彼らだけで大丈夫なのか。敵の正体は、目的は。いくつもの思考が浮かんでは消えて行く中、ついに限界を迎えた愛美は意識を失う直前、たしかに聞いた。
「悪いな愛美さん。今回のお宝は、あんたなんだよ」
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