第41話 天覧祭


 遊びに行くことに決めた圭人たちは全員で校門へと向かう。

 この学園は二階が1、2年。三階が3、4年、4階が5、6年になっている。


 ニューガン皇国では一年~3年は中学生、4年~6年は高校生に当たる。

 小学校の六年生で私立志望校に受験するのだが、そこに入れなければ地区の公立学園に入るのが習わしだ。

 大学以降は日本と変わらないが、違うのは

 米国と日本の厳しいところだけを取っているので勉強のできる奴しか行かない上に卒業者も少ないがその代りに就職で圧倒的に有利になる。

 流石にこれほど文明が進むと頂上には一定以上の実力者で無いと仕事すら出来ない。


 高校1年生に当たる4年生の圭人達は三階から降りて校門へ向かう。

 一階は階段とその他用具室置き場になっているのでそこで靴を履き替えて校門へと向かう。

 校門は各棟ごとに分かれており、炭素系人類カタン人科学科のアイザック棟は自分たちの校門から出る。

 別に他の棟の門から出てもいいのだが住み分けの関係でこうなっている。

 校門に出る途中、運動場では各部活がすでに始まっていた。

 サッカーとハンドボールを合わせたような競技ボラースの練習は元より、格闘系部活などの生徒が走り込みをしていた。

 その様子を見て違和感を感じる圭人。


「……なんかいつもより気合入ってない?」


 心なしかいつもよりも声が大きい。やる気というか気合がこっちにまで伝わってくる。


「ああ、しょうがないよ。天覧祭が始まるから」

「天覧祭?」


 不思議そうな顔の圭人。


「天覧祭っていうのはアカシア大神殿のお祭りで年二回行われるお祭りだよ」

「それはいいけど……どうしてお祭りで部活に気合が入るの?」


 それを聞いて不思議そうなイシュタだが、すぐに思い当たる。


「ああ、そう言えばケートさんは太陽系から来たんですね」


 それを聞いて全員が納得する。


「天覧祭というのは神様が神殿から出て神庭に入る行事なんですけど、我が国の神殿では昔から格闘技の奉納試合もやっていたんですよ」


 イシュタは得意げな顔になる。


 ニューガン皇国で広く信仰されているラーラム神道はいわゆる多神教で、神様によって色んな習わしがあるのだが、ある共通点がある。


 神庭と神殿に分かれているのである。


 神殿とは神様の休むところで神庭とは神様が仕事をするところである。

 この神様たちは春に神殿から出て神庭へと向かい、春から秋まで仕事をして秋に神殿に戻って休むのがラーラム神道の特徴である。

 それを思い出して圭人は不思議そうな顔をする。


「奉納……」

「ええ、サランカと呼ばれる武道ですけど、そして勝者に神の戦士ディラ―マの称号が与えられ、その年の神事に守り手として参加するんです」

「ふ~ん……」

「ただ、途中から土地の有力者を選ぶのが当たり前になるようになって、最終的に剣舞を奉納するようになったそうです」

「あ~……なるほど」


 よくある話に苦笑する圭人。


「ただ、その一方で他の競技まで奉納するようになりまして、段々規模が大きくなったんです。それから都市ごとに大会をするようになりまして、今のようにいろんな競技で競って勝利を奉納するようになったんです。これが天覧祭です」

「あ~なるほど。要は大会が近いんだ」

「そういうことです」


 イシュタの言葉に納得する圭人。

 要するに県大会やインターハイが近いのである。


「ちなみにどれだけ参加するの?」

「運動系は全部ですね」


 あっさり答えるイシュタ。

「文科系も優劣を競う競技は全部します。マーカルやチェイカーも出ますね。ただ、クルマ―部は出ません」

「え? そうなの? 」


 圭人は不思議そうな顔で尋ねた。


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