第35話 追憶

 何もない白い空間が広がるだけの世界で、家具をお茶の間のように置いただけの場所で運命神トリニアは一人テレビを見ていた。


『うわぁぁぁぁぁ!!』

『なんだこの黒いの!』


 画面では圭人達を襲った悪夢の詳細が映し出されている。

 その老人のような子供のような顔に付いている口でパリッと煎餅をかじるトリニア。


「他の子は速攻で忘れているのに彼だけがこれを何度も悪夢として見るのよね……」


 困り顔でその様子を見るトリニア。


「クールぶって……賢そうに見えるのに、こういった割り切りが出来ない。頭が良い分、妙に色んな物を背負い込む……狡賢い癖にこういった信頼関係を求めるのよね」


 面白いもので狡賢い者ほど人を信じやすかったりする。

 騙す奴ほど騙されやすいのだ。


 そして、騙すのが得意な者ほど、信頼を大事にする。


「古の賢人、張良、賈詡は人を欺くのに長けていたが、その分疑われやすかった……」


 当り前だが、謀略を操る謀将の最大の敵は『味方』である。

 味方から信頼されないと誰も動いてくれないのだ。


「故に立ち居振る舞いには細心の注意を払い、疑われるような真似は一切しなかった……」


 李下で冠を正さず、瓜田で靴を履れず


 共に盗人として疑われるような真似をしてはならないと言う意味だ。

 その気になれば主君ですらも欺ける智謀の士には常に付き纏う『業』である。


「人を信じたいのに、人を信じないのだから矛盾も良い所ね……」


 そう苦笑するトリニアだが、そんな彼女の後ろに突然歪みが生まれた。

 歪みは大きく形を変え、それが一つの形を成す。


 そこに居たのは『白い小人』だった。


 髪も髭も肌も服も真っ白な小人で、小汚い白いポンチョを着けている。

 そんな小人がぴょんっと跳んでトリニアへと襲い掛かった!


「おっぱいちゃぁぁぁぁぁん!!!」


ゲシ


 ルパンダイブしてきた小人を肘で迎撃するトリニア。

 苦笑しながらトリニアは言った。


「相変わらずスケベね」

「そなたが相変わらず美人じゃからしょうがない」


 臆面もなく言い放つ小人にトリニアはくすりと笑う。

 だが、小人は不服そうに口を尖らせる。


「そなたが呼んだから来たのに何で肘鉄を食らわせるのだ?」

「いきなり襲い掛かれば肘で迎撃されても文句は言えないでしょう?」

「いきなり呼び出したんだから乳揉まれても文句は言えんだろう?」


 臆面もなく言い返す小人にあきれ顔を見せるトリニア。

 平然とする小人に呆れながらもトリニアは画面を見せた。


 画面はすでに圭人が病院で目を覚ました所になっていた。


「この子を助けて欲しいの。もうすぐ『そっち』に行くわ」 


 それを見た小人は不思議そうに画面内の圭人を見て、少し考える。

 そしてポンっと手を打った。


「そのたわわなオッパイ揉ませてくれたらいいぞ?」

「それならいいわよ。その代り絶対助けてよね?」

「勿論だとも」


 ガスカルドがそう言うとトリニアは衣服をはだかせて、オッパイを見せた。


 






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