第34話 観戦者
何も無い白い空間に1人の女が寝そべってテレビを見ている。
年齢が今一つわかりかねる容姿で老熟しているようにも幼稚にも見える女だ。
運命神トリニアである。
トリニアは寝そべりながら、テレビの様子を見ている。
テレビには圭人がベッドで再会を誓っているところが映し出されている。
煎餅をかじりながらぼやくトリニア。
「英吾の次に大冒険する男がようやく立ち上がったか……」
そう言ってリモコンを操作するとビデオ1になった。
幾つかのウィンドウが出てその一つを再生させる。
先程よりも明るい顔の圭人が端末で電話をしている。
「ありがとよ英吾」
そう言って笑って端末を切る圭人。
部屋の中は色んな私物で溢れており、とても同じ人物の部屋には見えない。
「まあ、こっちの時に比べてハードモードだからねぇ……」
するとトリニアの後ろの空間が急に歪み始めた。
ヒュオン
現れたのは年齢不詳の美女であった。
明らかにトリニアと違うタイプだが、年齢が今一つ計りかねる女性で、トリニアと違って気難しそうな顔をしている。
その女が得意げにトリニアに声を掛ける。
「ふふん♪ 前回と違ってそいつらの場所はわかってるからねぇ♪ きっちり先手を打たせていただきましたよ♪ 」
「お陰であんなに明るかった圭人君がこんなに暗くなっちゃったよ」
苦笑するトリニア。
ビデオの方の圭人は顔が明るく悪戯っ子のような雰囲気を出している。
「そいつは前の時もキーになった奴だからね! そいつを叩いて置けば後の戦局が有利になるってもんよ! 」
「駒を先に取っておく戦法をするつもり? 」
ニヤニヤ嗤う女に余裕の表情を見せるトリニア。
「果たしてそんなにうまく行くかねぇ……メルンは人間をバカにし過ぎだと思うよ? 」
「どういう意味よ? 」
じろりと睨みつけるメルンと呼ばれた女。
「メルンの手駒はずるいけど、いつもメルンの頭の悪さが出てるから簡単に取れるからねぇ……」
それを聞いてプルプルと震えるメルン。
「絶対に取らせやしないんだから! 」
「はいはい」
そう言ってトリニアが手を振るうとメルンは消えた。
元通りテレビが出てきて何もない自室で泣きながら寝る圭人が映し出される。
それを見てトリニアは眉を顰める。
「こんなに感傷的な性格だったんだねぇ……騙すのが得意な少年だったのに」
感受性が強いから騙すための「観察力」に長けているのだ。
相手の性格を素早く読み取って裏をかく。
そういったことに強い少年だった。
「メルンはいつも手駒を強くしようとするけど……」
にやりと笑うトリニア。
「言いなりの駒よりも考える駒の方が強いのよねぇ」
そう言ってトリニアはテレビ画面を指さした。
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