第21話 技術の発展
「まあーそれはともかくとしてですねぇ~便利な事には代償もあるんですぅ~。それがさっきの授業でもありましたぁ~苦手の克服ですねぇ~」
そう言って来た当初に出した優劣の表を出す。
「魔法は無限に使えるエネルギーを直感操作可能ですがぁ~、人が介在しないと使えない代償があるんですぅ~。そのせいでコンピューターとかぁ~計算機が進歩しないんですねぇ~」
「計算機ですか? 」
不思議そうにつぶやく圭人。
「何でも力づくで動かせばいいわけですからぁ~。細かい計算をする必要がないんですねぇ~。そのせいでロボット産業がぁ~発達しないんですよぉ~」
「え~と……」
ちょっと理解が出来ない圭人。
すると先生は一つの図を出す。
図には産業用のロボット機械とそれとよく似た形の物が出てくる。
「魔法の場合はぁ~。アウルを使って動かせばいいのでぇ~、熟練の腕に頼っちゃうんですねぇ~。けど、科学の場合はぁ~コンピューターを進化させないとぉ~動かす事もできないんですぅ~。だから~、一分野だけやたらと遅れるんですぅ~。若い時に知ることを~大人になってからの勉強は難しいんですぅ~」
「若い時にやることやらないと処女童貞をこじらせるということですね」
ズキュン!
ズキュン!
ズキュキュキューン!
先ほどまで圭人が居た場所に杖から飛び出たビームが連続して飛んでくる!
間一髪で交わしたが、圭人が座っていた椅子と机が木端微塵に砕ける。
「……ちっ……」
舌打ちして悔しそうに顔を歪ませるユカナ先生。
「先生への性的嫌がらせは禁止ですよ? 」
(先生の演技がなくなった! )
冷や汗が出る圭人。
コホンと咳払いする先生。
「一方で科学はエネルギーが不足しがちという問題が常に付きまとうので、効率化は進むものの、宇宙という補給が絶望的な場所では、活動自体が難しい問題が付きまといます。そして魔法はと言えば自動制御と材料の品質の問題が付きまとうので、宇宙環境には行けても、そこから星系間航行するためにはアウローラの中を通らないといけません。アウローラの中は唸るようなエネルギーの激流が流れてますので、それに耐える宇宙船は作れないんです」
(最初っからその口調で話せよ)
心の中で毒づく圭人。
だが、一つの疑問が上がったので手をあげて質問する。
「自動制御はわかりますけど、材料はなんで発展しないんですか? 」
「魔法の場合、銃はビームです。でもこれは防御にも利用できるんです。攻撃も防御もビームで対処すればいいのならそっちの技術が発展しますよね? また、導力機関を回すと何故か浮力が発生します。このおかげで軽量かつ固い金属をそれほど必要としないのです。そのせいで高層ビルを作りにくかったりするのが魔法の欠点でもあります」
「……なるほど」
要するにビーム砲とビームバリアが発展するばかりで、材料の発展が伸びなかったのだ。
また、全体的な浮力が得られるので、飛行機のように材料の軽量化に腐心する必要もない。
要は「これぐらいで十分」なのでそれ以上を必要としなかったのだ。
「魔法型は生物改造で材料を強化してきたんですが、生物の大きさには限界値があるので中々宇宙船を全て覆うほどの船は作りにくかったんですね」
「……生物改造ですか? 」
物騒な言葉が出てきたので確認する圭人。
「そうです。作る物がなんでも生物改造で生み出していたら金属加工は自ずと伸び悩むのです。何しろ、餌与えるだけで手に入るのと高熱を使わないと取り出せないのなら、餌与えて手に入れる方が楽ですし、そうやって材料を生み出すといらない肉や葉は加工してご飯になります。だから魔法文明は食料が安いんです」
魔法は全て畑で取れるもので作るので無駄がないエコロジーな技術だ。
効率的だからこそ、必要とされなかったのだ。
圭人は画期的だと思ったが、もう一つの疑問が生まれる。
「……じゃあ、どうして科学が生まれたんですか?うちもそうですけど科学の方が無駄が多いような……」
地球の有様を思い出しながら尋ねる圭人。
エネルギー問題などは最たるものでこの導力機関があれば地球にあるほとんどの問題が解決してもおかしくはない。だが、ユカナ先生はうんうん頷く。
「できればの話ですね。そもそも科学が発展するのは必要不可欠なものが無いからなんです」
「必要不可欠なもの? 」
不思議そうに尋ねる圭人。
「ツリマ生命体とカタン生命体です」
やや底冷えのする声で答えるユカナ先生。
気のせいか怒っているというよりも悲しそうな顔をしている。
「元々、導力機関はツリマ生命体とカタン生命体の二つの生命系統を合わせることでアウルを抽出できるので品種改良や生物改造に特化する傾向にあるんです」
微妙な顔になる圭人。
「科学が発展するのは片方の生命体しか存在しないからです。両方あれば魔法文明が出来ることが証明されており、両方の生命体が存在していれば魔法文明が。片方しか居ない場合は科学文明が発展するんです」
ユカナ先生の言い方に背筋が寒くなる圭人。
「そしてアウローラを通るにはアウル技術が不可欠ですので、両方の生命体が住める環境が必要なんです。そこまで実現して初めてアウローラを通り、外惑星へと手が伸びるのです」
ここで手をあげる圭人。
「なんでアウローラを通ると星間航行が可能なんですか? 」
待っていましたとばかりに先生が端末を操作する。
すると一本の管の内部に宇宙船がある図と船の浮かんだ川の図が出てくる。
「このアウローラは宇宙を流れる血管と言いましたが、この中を流れるアウルが光速を越える速さで流れているからです」
「……え? 」
呆然とする圭人。
先生は次から次へと図を指して説明する。
「例えば川の場合、湖の近くはどんなに激流でも緩やかですよね? 同じようにアウローラは星の近くでは穏やかな流れなんです。そこから入って光速を超える場所へと移動して流れに身を任せているんです。光速を超えられないのはあくまで相対速度ですので周りの物体が光速を超えてそれに流された場合、相対速度はほぼ0になります。こうやって星間航行をしているんです」
「……要は激流下りをして宇宙空間を航行しているんですか?」
「その通りです」
あっさりと答える先生。
「特に恒星間の全く何も無い空間では光速の何百倍もの速さをしておりますので都合がいいんです」
「そんなに早くて大丈夫なのですか? 」
普通であればそんな早さに耐えられるはずが無い。
「そこは都合がいい事に、この早さのおかげで恒星間を瞬時に移動できるうえに血管のようにパイプ状になっているのですが、流れがやたら安定しているんです。そのため、流れに挟まれて砕けるという事は無いんです」
まあ、十分激しいのですがと付け加える先生。
「これが、各星系間に必ず二本以上付いているのでこれを使って航行しているのです。だから結構大変なんですよ」
「そんなやり方で俺はここに来たんだ……」
改めて冷や汗を流す圭人。
光速を越える激流下りとは洒落にならない。
「ちなみにアウローラ内部では、アウルの取り出しは絶対に出来ませんので、アウルの補給は必ずこの次元の壁を越えて今の次元に戻る必要があります」
「それはどうしてですか? 」
「実はアウルを取り出すというのはこうやってやってるんです」
先ほどの川の図に水車が追加される。
同時に船の方にも水車がつく
「アウルの流れからエネルギーを取り出しているので、このように船に水車を付けても逆行でもしない限りエネルギーは取り出せないですよね?それと一緒なんです」
「なるほど」
圭人はようやく合点がいき、今までの魔法に対する疑問が解消される。
ここでガチャリという音がしてキナミ先生が戻ってくる。
「いいところに来ましたね」
「職員室で他の仕事しながら授業内容を聞いてましたから」
そんな利点もあるんだと感心する圭人。
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