第15話 彼女たちが普通に過ごすために。





 僕の居場所がなくなっても、彼女がいるだけでそれだけでいいと思えるようになったのは、鴛野のおかげといっても過言では無い。それだけ彼女という言葉に僕は不思議な力を持っていると思っている。欺瞞でもなく、ただ単純に僕が感じた感情を抑えるのに、たったの数日で治ったのはやはり彼女の存在が大きい。しかしとは言っても僕の心は決して平穏ではなかった。怒りは収まったにしろ、鴛野おしの真緒まおに対する憎悪は一向に消えそうにない。


 僕と鴛野真緒は部活が一緒で、写真部に共に所属していた。一年生の頃はクラスも違っていたので、当時話す他クラスの生徒として、尚且つ同じ部活と言う中だけでよく話していた。さらに一学期後半にはみなみ朱莉あかり上野丘うえのがおか沙羅さら、鴛野真緒というグループが定着し、僕はそれこそ話す機会は減るように思えたが、減るどころか南朱莉や上野丘沙羅までとも話すようになった。いつの間にかそのグループに属していて、どうやら一目置かれていたようだが、僕は陰キャで彼女らのようなパーリーピーポーではないと散々思い続けていた。


 中間考査は案の定ボロボロであった。初めて彼女が出来て浮かれていたかもしれないけれども、初めて一位から二位へ下がってしまった。それでも少しだけあのグループに対する距離の取り方を、僕はずっと考えていたのも要因の一つだと思う。


 悩みに悩みすぎて、僕は結局あのグループから一度距離を置くことした。

 休み時間は一人で本を読んで過ごして、放課後は部活中以外は話さずに、帰りはどこにも行かないで帰るようにした。


 きっと僕が彼女たちと絡めば、楓が怒ってしまう。僕は怒られるのに慣れていないので、楓が憤慨しても宥める方法を知らない。

 きっと僕が彼女たちと絡めば、楓が怒ってしまう。僕は怒られるのが嫌いなので、楓が憤慨してもそれを容認するしか方法を知らない。



 きっと僕が彼女たちと絡めば──、きっと──、きっと──。



 誰が悪いわけでも、彼女が悪いわけでも、鴛野が悪いわけでもない。



 悪いのは僕だ。僕が悪いから、僕がすべて責任を負うしかない。




 楓を泣かしたのは僕だ。




 楓を怒らせたのは僕だ。




 楓を悲しませたのは、心配させたのは僕だ。




 楓の交友関係が崩れてしまったら僕のせいだ。




 これを解決するには、僕が独りになるしか方法がない。そうするしか方法がない。方法を知らない。考えれば考えるほど、この解決方法しか浮かばない。





 独りになれば良い。それが最善策だ。

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卯の花腐し、五月雨、酒涙雨。 犀巛向葵 @Mksi_aoi

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