第2話 荏隈肇はキレやすいが戸次尚弥とは親友である。





 僕と尚弥なおやは小学生の頃、家が近いと云う理由からよく遊ぶ仲だった。悪さもするほど仲が良く親同士もそんな僕らを見て微笑まくしていたものだ。

 ところが中学に上がるにつれ、尚弥は厳しい部活へと入って忙しくなり、僕は其処まで厳しくない部活へ入った為疎遠となってしまった。次第に彼との間に亀裂が生れ、所属グループも違って一切喋ることも遊ぶこともなく、そのまま高校へと進学した。


 昔から遊んでいた仲なのか入学式で再会した時も直ぐに仲良くなり、コミュ力が高い尚弥の後ろにくっついて荏隈えのくまと話すようになったのにそう日は掛らなかった。一年生の頃はこの三人組が主流となったもので、荏隈の惚気話を良く尚弥と聞いていたのが懐かしい。



「荏隈、どうした? 疲れたか?」

「……大丈夫だよ」


 彼はにかっと笑うが、無理矢理表情を作っているようだった。彼の目は全く笑っておらず僕は少し心配になる。


 荏隈と尚弥は僕が思った以上に仲が良かった。普段人間なんて興味の無い僕がそれを感じ取れる程だ。特に尚弥が荏隈と異様に仲良くしていたように思える。トイレに行くにも移動教室の時も、何なら帰りの時も遊びの時も常に一緒に居た覚えがある。そんな荏隈と尚弥は既に心が通っているのではないかと思っていたのだが、今のこの景色を見る限りどうやらそういった事はただの勘違いだったに過ぎないだろう。

 何せ荏隈は短気である。それは可成りとまでは言わないが若干器の小さい人間で、随分と溢れそうな器をしていると常日頃から僕も思っていた。尚弥はそんな荏隈に対して「彼の扱いは俺が一番慣れている」と豪語していた。そんな台詞が吐けるのなら尚弥は荏隈の事を理解しているに違いなく、またその逆も然りということだろう。


 実際、荏隈はキレていた。怒っている理由は僕は知らないが、兎に角憤慨し楽しい話題を彼に振ったとしても笑い話に変換はするだろうが、心から笑っているとは限らない。彼の短気ぶりには多少僕も悩まされたものだ。





 集合時間が近づくにつれ荏隈の怒りは大分収まっていったように思える。尚弥とも談笑し笑っていたし、何より桃園ももぞのとも隣に並んで歩いてた。怒りの感情が収まったことに安堵した僕は再び鴛野おしの上野丘うえのがおかみなみグループに戻るが、やはり荏隈が気になる。ちらちらと横目で見るが結局帰りのバスでは寝てしまい、彼と十分に話すことは儘成らなかった。

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