充足感なき貢献

地方都市では、代理母としての出産が最大の貢献であり、他には代理母や出産を支える貢献がある程度だ。東京や大阪には他にも貢献があるが、高度な能力が必要だ。そして東京の人々だけが遺伝子を引き継ぐべく、精子や卵子を提供する。


ミサトは東京でVRの3D音響アーティストを目指していたが、自動作曲を上回れず、諦めて徳島に戻った。地元の音楽ライブラリの学芸員の職を得たが、その実、分類、タグ付け、育児向け音楽ダウンロードの集計をするのが仕事だった。


十代まで同じ学校に通っていたユミコと遭遇する。ユミコは代理母となるため健康維持と廉価なエンタメ消費をしていた。ランチを一緒にということになるが、ミサトは文化レベルの低いミサトと会うのが気が進まない。


東京から徳島に出向中のショウヘイを誘う。歴史に詳しく、未来予想のシミュレーションをしていて、徳島のデータ収集に来ていると言う。


三人のランチでは、ミサトは前衛的な音楽の話をして、さりげなくユミコの大衆音楽をこきおろす。ショウヘイの歴史の話にも熱心に耳を傾ける。ユミコは自分の魅力の無さに気づき、がっかりして帰る。ショウヘイは社交辞令と分かる挨拶をして帰ろうとする。


ミサトはショウヘイを引き止め、文化レベルの低いユミコが一緒で申し訳ないと詫びる。ショウヘイは、ミサトの文化レベルも低いし、代理母にしては不健康そうだと言って去る。


ミサトは、他人からの評価を追い求めても、充足感を偉えないと悟る。どうせ遺伝子を残せないなら、なおさら、自分は好きなことをしようと決め、東京に向かう。


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