第49話 <大海戦>

 先陣を切るのは、ギュネイルとクリカ。そして二人に乗るリーネとマリアだ。

 四人の接近を感知して、スクッイツたちが一斉に向かってくる。その数、ゆうに二万を越えているだろう。

 遭遇の直前、リーネが深海の宝珠を掲げる。


「宝珠よ!私たちに力を貸して!」


 深海の宝珠が蒼い光を放つ。その光は、リーネのミスリルソードとマリアの魔法杖に宿った。

 そして、スクッイツの先頭集団と遭遇した。

 だが、ギュネイルとクリカの泳ぐ速度は凄まじく、スクッイツたちをまるで寄せ付けない。

 海面から飛び跳ねたスクッイツに向けて、リーネが剣を一閃。体を両断する。

 問題はここからだ。スクッイツは倒せたのだろうか?

 体を真っ二つにされたスクッイツは、痙攣した後に海に沈む。海中で、小さな爆発が起きた。

 スクッイツの討伐……成功!

 まさか殺されると思っていなかったスクッイツたちに、動きの乱れが生じる。


「この機は逃しません!リーネ!」

「勿論よ!覚悟しなさい!」





 リーネとマリアが敵の注意を惹いてくれている間に、アキトとレティーアはソウルクリスタルを狙う。

 近くで見ると、とても大きい。ちょっとした家屋くらいの大きさがありそうだ。


「よし!早速始めよう!」

「レティーア!あの腕を狙って攻撃を!」


 その時、フレンに向かって槍が突きだされてきた。

 アキトが咄嗟に風を圧縮させて放ち、攻撃から逃れたが、当たれば間違いなく串刺しにされていた。


『ヤリ……カワス……アリエナイ……』


 低い声が聞こえる。

 海から、新手のスクッイツが複数現れた。

 予想外の状況に、一度退いてソウルクリスタルの周囲を旋回する。

 新手のスクッイツは、普通のスクッイツよりも一回り以上大きく、わずかに知性らしきものを確認できた。

 間違いなく、普通のスクッイツよりも強いだろう。


「ソフィア!あいつらの正体分かるか!?」

「多分だけど……スクッイツジェネラル!スクッイツの上位種よ!」


 スクッイツジェネラルは、爆発的な加速で泳いでくる。

 純粋に、速い…!

 あっという間にアキトに追いついてくる。

 ジェネラルは、手にした槍をアキトではなくフレン目掛けて突く。

 前方から返ってきたレティーアが、ジェネラルの腕を切り落とさなければ、危なかっただろう。


「注意して!油断しちゃダメ!」

「こいつ…!すまないレティーア!助かった!」

「勇者様!ありがとうございます!」

「みんな!また来るよ!」


 ジェネラルを足場にして、別のジェネラルが襲いかかってくる。

 着弾地点から退避し、隙をうかがう。

 激しい水柱があがり、大きな音が響く。

 別のジェネラルを警戒するためにアキトが周囲を見渡す。

 すると、先ほどのジェネラルの腕が再生する様子がないことに気づいた。


「まさか!ジェネラルは再生しないのか!?試しだ!"超剛弓ギガ・バリスタ"!」


 アキトが放った風の矢は、狙い違わず腕を失ったジェネラルの腹部に命中。下半身がちぎれとんだ。

 やはり、ジェネラルは再生しない。


「レティーア!こいつらをみんな殺すぞ!」

「了解!全力でいく!」


 ソフィアとフレンが最高速度で泳ぎ、ジェネラルを撹乱してトドメを刺していく。

 やがて、ジェネラルは全滅した。

 チャンスと見るや、一気にソウルクリスタルへと近づく。


「レティーア!"身体強化フィジカルブースト"!いっけぇぇっ!!」

「"大真空斬"!」


 レティーアの一撃が、腕の一本を細切れにした。

 残るは、三本。

 ソウルクリスタルに傷が入る。急がなくては。

 その時、ソフィアを狙った攻撃。ジェネラルからの攻撃だった。


「くそっ!新手か!」

「えっ!?違う!アキト!こいつらさっきの奴らよ!」

「何だって!?再生しないんじゃなかったのかよ!?」


 ジェネラルたちは、さらに凶暴になって襲ってくる。


『フハハハ。コッケイダナニンゲンドモヨ』


 突然聞こえる謎の声。

 ジェネラルからの攻撃をかわしつつ、声の主を探す。

 そいつは、ソウルクリスタルの上に陣取っていた。

 全身青色のイカと人を混ぜたような体に、ギラギラと輝く金色の鎧。

 スクッイツたちの指揮官……といった魔物だろうか?


『オレサマハ、スクッイツアドミラルサマダ!マジョリア=オケアーノサマノリソウ!ジャマハサセン!』


 アドミラルは、懐から何かを取り出す。

 それは、かつてレジーナが使っていた拳銃にそっくりだった。


『ウケテミヨ!"アビスバスター"!』


 筒から放たれた青い閃光は、一直線にフレンを狙う。

 コースを変えて回避するが、閃光もコースを変えて追尾してきた。


『オドロイタカ!コレガオレサマノワザ。アビスバスター。モットモヨワイキサマラノヒトリニアタルマデオイカケル!』


 キリがない。アキトは、自分の魔法でアドミラルの攻撃を打ち消す。

 だが、ジェネラルの存在を忘れていた。

 海中からジェネラルが奇襲。口元の触手でフレンを拘束した。

 急ブレーキがかかり、投げ出されるアキト。

 その腹を、ジェネラルが槍をバットのようにして打ちつけた。


「がはっ!?……ごふっ!」


 激しい衝撃波と空気の振動。骨が砕ける音も聞こえた。

 激しく血を吐いて飛んでいくアキト。

 遠くの海面から、水柱があがった。


「いやぁ!アキト!」


 衝撃の光景に、ソフィアが動揺を隠せない。

 レティーアは、ソフィアの背から飛んで飛翔フライを起動。

 周囲のジェネラルたちを斬り倒していく。

 そして、フレンを捕らえたジェネラルが潜っていくのを見つけ、後を追いかけた。

 海中でフレンは暴れていたが、ジェネラルはお構いなしに、彼女を一口に呑み込んだ。

 その瞬間、首を絞められるジェネラル。

 レティーアは、ジェネラルの首を絞めたまま浮上。フレンがいるであろう位置を避けて切り裂いた。

 青い鮮血を撒き散らし、海に沈むジェネラル。

 その体内から、レティーアは意識を失っていたフレンを救い出す。


『アッパレ!ダガ、マダオワラン!』


 アドミラルの鎧が光る。

 すると、倒したはずのジェネラルたちが起き上がってきた。


「そうか!あんたがジェネラルを再生させていたのね!」

『オウヨ!アットウテキナブツリョウニドウタチムカウ?モウジカンモナイゾ!』


 アドミラルの言葉と同時に、ソウルクリスタルに亀裂が入った。

 水晶邪法ブレイカー発動まで、あと少し……。

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