第43話 <突然の訪問>

 アキトは、外から聞こえてくる謎の音のせいで目を覚ます。

 これは……車輪が跳ねる音だろうか?それに、馬の鳴き声。金属が擦れ合う音も聞こえるような気もする。

 まさか盗賊だろうか?だとしたら、容赦はしない。

 金属音が近づいてくる。レティーアたちはまだ気づいていないようだ。

 起こす前に制圧する。


「"身体強化フィジカルブースト"」


 魔法で身体能力を向上。待機する。

 やがて、テントの幕に手がかけられた。今がチャンスだ!

 地を蹴って一気に加速。相手の手を取って組み伏せる。

 追撃として、魔法による攻撃を……。


「待った!待った!待ってくれ!」


 盗賊が慌て出す。

 いや、よくみると盗賊などではなかった。

 彼らの鎧には、ロミオス王国の紋章が刻まれている。間違いない、ロミオス王国の騎士だ。

 そして、アキトが組み伏せていたのは、以前王都までの道のりでお世話になったブルックさんだった。

 丁度、レティーアたちも異変に気づいて起きてくる。

 そこには、ブルックを拘束しているアキトの姿。


「……えーと?説明してくれるよね?」

「アキト……。何か恨みでもあったの?」

「アキト。世の中にはやっていいことと悪いことが……」

「違うって!わざとじゃないから!」


 その後、ブルックさんに謝罪し、女子三人組の誤解を解くまでに二時間かかった。




「すいませんでした」

「おきになさらず!むしろ、この時間にやって来た我々にも多少の非があるので!」


 ブルックさの前で正座をして(させられて)座るアキト。

 そんなアキトに対し、ブルックは慌てた様子だ。どうしようかと部下たちに目線を送るが、薄情な部下たちは無視を続ける。

 やがて、レティーアが話題を振ってきた。


「それで、ブルックさんは何の用でここに?」

「そうでした!アイマル陛下から依頼を預かってきたのです。アキト殿に直接頼みたいクエストとして」

「国王直々のクエスト?」


 何かあったのだろうか?

 脳裏に、ルミエールたちの言葉が浮かぶ。


【邪神の一体がロミオス方面へ向かった。警戒せよ】

「……まさかな」

「どうしました?……それで、アキト殿に王都までご同行願いたいのです」

「……どうするよ?」


 とりあえずレティーアたちにも聞いてみる。自分だけで決めるわけにはいかない。

 レティーアたちの返答は、おおよそ予想通りのものだった。


「行くべきね。困ってる人がいるかもしれない」

「私も行くべきと思うよ。次の目的地の海底王国も目の前だし」

「アキト殿。実は、今回の件は海底王国も関係している問題なのです」

「ならば、尚更行くべきだと私は思いますわ?」


 全員が行くべきだと答える。ならば、王都に戻るのが正しいのだろう。

 それに、少し引っ掛かることもある。

 海底王国がロミオス王国に何かしらの依頼を出したのと同時タイミングでのスクイッツの出現。

 どうしても、無関係とは思えなかった。

 その調査のためにも、王都へと戻る。

 ……ただ、アキトには不安材料もあった。


「……はぁ。あいつ、来てるのかな?」

「あいつ?誰のことなの?」

「いや、こっちの話さ。それに、あいつはもう自由に動き回れないからいないだろう」

「それって……大怪我でもした?」

「いや、そうじゃないが……うーん?」


 アキトは唸りながら馬車に乗り込む。

 ちなみに、森の中を突き進む馬車の乗り心地は最悪で、かなりお尻が痛くなった。




 夜明けと同時にロミリアンに到着する。

 ロミリアンは、天空の邪神ホルス=スコーパーの襲撃で壊滅状態だったが、もう日常生活に支障がない範囲まで復興していた。

 やはり、ロミオス王国の人々はたくましい。

 そして、大通りでは変わらずの大声が響いている。これもいつも通り。

 だが、その会話内容に、少し違和感があった。


「ママー。おさかなたべたい」

「ごめんよ嬢ちゃん。お魚さんはいま無いんだ。奥さんすいませんねぇ。魚が入らないんですよ」

「まぁ!ミミちゃん。お魚さんは無いんだって」

「ちょっとあなた!私がメラーニ伯爵の妻だからぼったくろうとしてるんじゃないわよね!?」

「いい加減なこと言わないでくだせぇ!練り物は今、魚が無いから値段が高騰してるんですよ!これでも安いんですから!」


 ……。

 どうやら、ロミリアンでは現在大規模な魚不足になっているようだ。

 不思議なこともあるもんだとアキトは思う。


「魚か……。毎日のに、なんで品不足に……」


 そこで気づく。今回の依頼主はどこだ?海底王国ではなかったか?

 もしかすると、この異様な魚不足もなにか関係があるのかもしれない。

 ロミオス王城が見えてきた。


「アキト殿。もうすぐ到着です。あと、お察しかも知れませんが、今回の依頼は海底王国の使者殿からお受けください」


 門が開く。何か嫌な予感を抱えながら、アキトはお城へと入っていく。

 それは、レティーアたちも同じだったようで、なぜか防御魔法までかけだす始末だ。

 そして、王の間へと入っていく。

 中には、ロミオス国王のアイマル。その娘で、重度のアキトストーカーのカトレア。

 そして……。


「初めまして勇者様方。私は、海底王国の王女……あーーっっ!アキト!」

「うわっ!嫌な予感が当たりやがった!なんでいるんだよ!?」

「お知り合いなの?アキト?」

「貴女が勇者様!これは自己紹介を!」


 アキトがぼそぼそと腐れ縁と呟くなか、その女性は自己紹介を始めた。


「私!海底王国の王女で、アキトの幼なじみ兼大大大親友のソフィアです!よろしくね!」


 有り余るほどの元気と共に、ソフィアは笑顔を見せてきた。

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