第42話 <スクイッツ>

 レティーアが剣を凪ぐ。リーネがスクイッツを切り裂いていく。ルミエールとミカエルは、魔法で動きを止めていく。

 アキトが言う逆転の一手に、かけるしかない。

 スクイッツたちは、相変わらずの再生能力ですぐに攻撃を再開してくる。

 終わらない戦い。いづれは、こちらの体力が尽きてしまう。アキトには頑張ってもらわないと。

 マリアは、後方からの支援だ。それ故に、一つ気づいたことがある。


「あのスクイッツ……。再生が遅くないですか?」

「え?……確かに。他の奴よりも三倍くらいの時間がかかってるね」

「あいつは……貴女が倒した奴よね?レティーア?」

「そうだと……思うけど…?」


 レティーアが倒したスクイッツの再生が遅かった。それは、レティーアが倒した他の個体にもみられる特徴だった。

 もしかして、再生回数に制限があるのだろうか?

 ようやく再生を終えたスクイッツを、リーネが試しに斬ってみる。すると、再生速度はそれほど変わらなかった。


「レティーアの攻撃だけ?勇者ならば倒せるの?」

「でも、私が覚えてる記録では、倒したのは勇者ではなく古代英雄のお一人でしたわ」

「じゃあ、エデンが原因でもない……。どういうこと?」


 ますます分からなくなるスクイッツの再生の秘密。この謎が解ければ、有利に戦いを進めることができるかもしれないのに。

 警戒が疎かになった。

 ミカエルとルミエールの傍を通り抜け、四体のスクイッツがアキトに迫る。

 魔法の準備をしているため、アキトは動けない。

 スクイッツが槍を振りかぶった。アキトの頭に向けて叩きつけようとする。

 間一髪でレティーアが間に合い、槍を弾く。そのまま、つばめ返しの感じでスクイッツに斬撃。遠くへと吹っ飛ばす。

 レティーアに斬られたスクイッツは、やはり再生が遅かった。


「ごめんアキト!平気!?」

「問題ない!あと、少しだけ耐え抜いてくれ!」

「「連携魔法"天の矛アマテラス"!」」


 天使二人による強力な魔法。

 スクイッツすべてを巻き込んで爆発したその攻撃は、余波で森の一部を抉り取った。

 赤々と燃える炎の海。その中で、再生を行いながらスクイッツたちが苦しそうに泳いでいた。

 あれほどの魔法でも倒しきることができなかった。実に厄介な相手だ。

 スクイッツの何体かが、勢いよく跳び跳ねる。そして、クレーターから脱出。再び襲ってくる。

 レティーアたちが武器を構え直すと、ようやく待ちに待った声。


「準備完了!いけるぞ!」

「やった!やっちゃえアキト!」


 リーネの合図で魔法が起動。アキトの正面に、光の玉が現れる。

 その光は、やがてスクイッツたちに狙いをつける。


「神代魔法!"素粒子分解術エレメンタリー・デストロイヤ"!」


 アキトの手により放たれた光は、スクイッツたちを余すことなく呑み込む。

 その光は静かに、それでも確実にスクイッツを蝕む。

 光が消えると、そこにスクイッツは一体も残っていない。さっきの魔法で、全滅したのだ。

 あまりにも呆気ない幕引き。それでも、謎の魔物たち相手に勝利を収めることができた。





 とりあえず、ルミエールたちから話を聞くことにするアキトたち。

 パイオンからの招集は、やはり巨人王アトラス討伐の依頼だった。先にやってしまったので、正直向かう必要がないのだ。

 とりあえず落ち着ける場所に腰掛けて、話を聞いていく。


「私たちは、マーロ様の伝言を預かってきたのですが……」

「道中さっきの奴らに遭遇してしまったのさ。ホントに災難だったよ」


 どうやら、レティーアに話があって急いでいたところ、襲撃を受けた……ようだ。無事でよかった。

 それにしても、わざわざマーロ様からの直接の伝言とは。嫌な予感がする。


「マーロ様が仰るには、クリスタルダンジョンで邪神を確認。一体がロミオス方面へ向かったので注意せよ。……とのことです」

「また邪神…!どうなってるの?」

「あと、邪神を放った者たちを囃し立てた者もいるそうです。そちらも、警戒しておいてほしいと」

「伝言は伝えたよ?私たちはこれからキャメロットへ戻る。いづれまた会おう」

「ミカエル様!ルミエール様!ありがとうございました!」


 アキトが挨拶すると、天使二人は翼を広げる。

 そして、キャメロットの方角へと飛んでいってしまった。

 辺りに、狼の遠吠えが響く。もうすっかり暗くなってしまっている。


「とりあえず、野営しよう。どこへ行くかは後で考えようか」

「賛成!私とレティーアで獣でも狩ってくる!」

「じゃあ、私とアキトはテントを設置しますわ」


 アキトとマリア、リーネとレティーアの二組に別れて、それぞれ準備をする。

 テントの設置中、アキトはマリアに尋ねてみる。

 やっぱり、あのスクイッツのことが気になって仕方がないのだ。


「なあ?何でレティーアの攻撃は少し効いたんだろうな?」

「……海底王国」

「え?どうした?」

「スクイッツを倒したのは、人魚族出身の英雄でしたわ。なら、海底王国になら情報があるかも」


 そうかもしれない。

 アキトは、次の目的地に海底王国を提案してみようと考える。

 テントの設営に成功。同じタイミングで、リーネたちも帰ってきた。

 猪を獲ってきていたので、夕飯は結構豪華になった。男一人に女子三人で、大きな猪一頭というのは意外とキツかった。

 食事中に、目的地として海底王国を提案したところ、全員が賛成してくれた。

 明日は早く出なければならない。そう考えて、少し早いが眠ることにした。

 空には、金色の満月が浮かんでいる。

 そして、アキトたちは真夜中に、ある来訪者たちのせいで目覚めることになるのだった。

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