第40話 <隻眼の巨人>

 アキトたちは、一度パイオンへと帰ることにした。

 本当は、ロミリアンの復興を手助けしたかったのだが、パイオンの冒険者ギルドから緊急招集を受けたのだ。無視はできない。

 アキトたちは、街道を歩いていた。


「このタイミングでの緊急招集か……。嫌な予感しかしないな」

「確かに。この間なんて豪腕巨人ギガンテスの相手をさせられたしね」

「リーネ。そういうこと言ってると、また豪腕巨人と戦う目にあいますわ」

「心配ないよ!また私が蹴散らすから!」


 ギルドの招集内容を考えながら進むアキトたち。

 丁度、パイオンまであと半分という辺りで、森に異変が見られ出した。


「……なあ?木がへし折られてるんだが?」

「……これって、物凄い力で引き抜いた……みたいな?」


 アキトたちに沈黙が流れる。

 こんな芸当ができるのは……恐らく……。


「リーネが余計なこと言うから!」

「ひどっ!?アキトだって思ってたじゃん!私だけのせいじゃない!」

「静かに!気づかれるよ!」

「残念レティーア。もう遅かった。アキト!前方から来ますわ!」


 マリアの警告と同時に、地鳴りが聞こえる。どうやら、大物が近づいてきているようだ。

 そして、そいつは現れた。

 普通の巨人よりも大きな体。手には、丸太……のような木そのものを持って振り回している。

 ……そして、片方の目から流血していた。何かに穿たれたかのような傷だ。

 もうひとつ大きな特徴がある。頭だ。

 そこには、人間の骸骨をはじめとする、多くの動物の骨で作られた王冠のような物が乗っかっていた。

 間違いない。国指定の最強クラスモンスターである、巨人王アトラスだ。

 突然の大物に、さしものアキトたちも動揺を隠せない。


「そこは豪腕巨人だろ!お前じゃないだろ!」

「い……言ってる場合じゃない!レティーアファイト!」

「私!?リーネも手伝ってよ!?」


 醜い言い争いを繰り広げていると、巨人王は関係ないと言わんばかりに、手にしていた木をリーネへと振り下ろした。

 その馬鹿力から放たれるエネルギーは凄まじく、辺りの木が根こそぎ飛ばされる。

 激しくあがった土煙で、リーネの姿は確認できない。


「おいっ!?リーネ!」

「リーネェ!!ちゃんと……避けたわよね…?」


 不気味な沈黙。最悪の事態を想像する三人。

 だが、何が起きたのかを理解しきれていないのは、リーネだった。


「……ねえ?あんまし痛くないけど?」

「「「えっ!?」」」


 煙が晴れると、そこには片手で攻撃を防いでいるリーネの姿があった。

 巨人王の攻撃を片手で防ぐとは、人間やめちゃったレベルの異常事態である。


「……どゆこと?」

「もしかして……邪神との戦闘が成長に繋がったのかしら?」


 確かにそうかもしれない。

 リーネはこれまで、フラム=ベルジュと戦闘を行い、討伐こそしなかったものの、無数のカオス=フリーデンも撃破しているのだ。

 何かしらの成長に繋がっていてもおかしくはない。

 リーネに攻撃は通じないと学習した巨人王は、矛先をマリアへと向ける。

 右手に力を集中させ、マリアに向けて突き出す。

 だがその一撃も、マリアが張った防御障壁に阻まれる。


「嘘っ!?弾けた!?」

「ええ!マリアも成長したのよ!」


 さすがは巨人王。自分では敵わないと悟り、逃げの姿勢に転じる。

 それを見逃すアキトたちではない。

 

「行かせない!"麻痺魔法パラライズ"!」


 巨人王の足が麻痺により動けなくなる。そこへ迫るリーネ。

 強化魔法はかかっていないが、その剣技はとてつもない威力だった。

 巨人王の足元に潜り込み、全力の一撃をお見舞いしてやる。それは、巨人王の左足を切断した。

 絶叫しながら崩れ落ちる巨人王。追撃を仕掛けるリーネ。

 頭上まで飛び上がり、脳天に剣を叩きつける。勢い余ったその攻撃は、頭だけにとどまらず、体をも切り裂いていた。

 誰が見ても分かる、絶命。

 自身の成長振りに驚くリーネ。豪腕巨人も倒せなかった以前とは比べ物にならないほどだ。


「やった!勝てたよ!」

「マジか……。すごい成長だな」


 巨人王を倒したことを素直に喜ぶ四人。

 とりあえず、死体の処理をしようと動く。

 処理の途中、やはり目の傷が気になった。


「マリア。この傷……槍だよな?」

「ええ。でも……巨人王にこんな傷を与えるなんて……」

「やっぱり……邪神関連か?」

「でも……槍を使う邪神なんて……まさか、煉獄の!?」

「いや、煉獄の邪神の仕業なら、とっくにこいつは死んでるだろうな」

「じゃあ、一体誰が…?」


 その時、近くの森の中から、金属音が聞こえてくる。それと、魔力の波動もだ。

 感じる限り、かなり強力な魔法が使われているようだ。救援に向かった方がいいかもしれない。


「急ごう!もしかすると……巨人王はこの戦闘から逃げてきたのかもしれないから!」

「巨人王を恐れさせる存在なんて……放置できない!」


 何が起きているのかを確認しなくては。

 アキトたちは、異常な音が響いている森へと足を向ける。

 何となく、気づいてしまっている。

 また、新たな異変が起き始めていると。これは、その序章に過ぎないと。

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