第34話 <逆転の策>

 マリアがその場に倒れ、眠りに落ちる。アキトの治療に全魔力を注いだため、体内の魔力が尽きたのだ。

 だが、そのおかげでアキトの左足は完全に元通りになった。

 失われた部位すらも再生させる、この世界でも使える人数は一桁の魔法、神聖回復ハイネス・ゴッドヒールの力だ。

 マリアを柔らかいベッドまで運び、アキトたちは作戦を練る。

 どうやってホルス=スコーパーを撃破するか、早急に結論を出さなくては。


「籠城……はダメだな」

「ええ。その気になれば、この城もろとも消し飛ばされるでしょうね」

「なら、全軍で突撃して……」

「カオス=フリーデンは?空にはビートリアもたくさんいる。挟まれて、動けなくなったところを狙撃されるよ?」


 色々意見は出てくるのだが、どれも決め手に欠けるものばかりだ。

 そんな中、ノーヴァ帝国の軍師であるメリダが、恐る恐る手をあげる。


「一つ、よろしいですか?」

「何だ?軍師の立場なら何か打開策が?」

「いえ、私が言いたいことは……ホルス=スコーパーの現在位置です。まだ予想ですけど……」

「えっ!?分かったの!?」

「落ち着いてくださいレティーア様。恐らく、アキト様もお気づきなのでは?」

「まだ予想だが、そうだろうな」


 なんとアキトまで大体の目星をつけていたというではないか。

 戦闘開始からずっとこちらを苦しめてきたホルス=スコーパーの狙撃。それさえ止めてしまえば、何とか戦いになるかもしれない。


「で、アキト。奴はどこにいるというんだ?」

「ヨハネス皇子、今から説明します。その前に、レティーア。狙撃眼スナイプアイの魔法を説明できるか?」

「勿論よ。、遠くの物や建物の陰を見る偵察・スコープ代わりの魔法。でしょ?」

「そうだ。だから、奴は雲の上に陣取り、こちらを狙撃していたのではないだろうか?」

「雲の上!?だって、この暗雲じゃ狙撃は無理ってアキトが言ったじゃん!?」


 そうなのだ。今、ロミリアン上空はすごい密度の暗雲で覆われている。

 実際、アキトの狙撃眼でも上は確認できなかった。

 だが、それこそが落とし穴だったのだ。


「この暗雲が、ホルス=スコーパーの魔法だったら?雲に微少な穴を開けて、そこからこちらを覗いていたのかもしれない」

「でも!そんな穴であんな正確な狙撃ができる?上からならともかく、曲射も放ってきたんだよ!?」


 そうだ。ホルス=スコーパーは、何度も矢を曲げてきた。

 上から覗いただけなら、あんな芸当は不可能だろう。

 ここでメリダが、その意見に異を唱える。


「邪神は、自らの魔物に術式を刻めると聞いています」


 そこでアキトは思い出した。

 ルクスヴァニラでは、フラム=ベルジュがガーゴイルに爆破術式を刻み込み、数名の天使を殺したのだ。

 今回も、ビートリアに何か細工しているのだろうか?

 ……まさか……!


「じゃあ……ビートリアに視覚同調の魔法を付与していたら……!?」


 王都を飛び回るビートリアの視覚情報が手に入る。

 そうなってしまえば、どこに逃げようと関係ない。全域をカバーしているも同然なのだから、どこにいても狙撃されてしまう。

 それならば、あの正確無比な狙撃精度、途中で変な物に命中する異常、おかしな早さでの発見のすべてに説明がつく。

 手掛かりをようやく掴んだ!

 ここまでピースの揃った推理だ。ホルス=スコーパーは、雲の上で確定だろう。

 だが、そうなるともうひとつ問題が出てくる。ホルス=スコーパーの高度だ。

 どの高さにいるのか知らないが、ホルス=スコーパーを倒せるのはレティーアだけだ。

 そのレティーアの飛翔フライの魔法では、精々二千メートルが限度。そこより上だと、攻撃が届かない。

 つまりは、二千メートルより高い場合、どうにか高度を落とさせなくてはならないのだ。

 それに、どれだけの犠牲が出るのかは検討もつかない。

 少なくとも、王国の魔法使いの全滅は覚悟しなくてはならないだろう。


「ヨハネス皇子。何か案はないですか?」

「ふーむ、[解放者]さえいれば、状況は打開できるかもしれないが……」

「え?どういうことです?」

「[解放者]は、勇者の能力を飛躍的に向上させる。ならば、レティーアの飛翔の上昇可能高度も上がるハズだ」


 それならば、犠牲は大幅に減らすこともできる。尤も、いるかいないか分からない[解放者]頼みなのだが……。


「いや、それでいこう」

「はあ!?この街に都合良く[解放者]なんて……」

「いる。恐らくは……ヨハネス皇子。貴方です」

「なんだと?」

「ホルス=スコーパーは貴方を狙っていた。それは、貴方が[解放者]だからではないですか?」

「それなら!お前はどうだ!?お前こそ[解放者]ではないのか!?」


 確かにアキトが[解放者]かもしれない。まぁ、どっちが[解放者]でも作戦は実行できるが……。

 

「よし!どちらでもいい!これで……ホルス=スコーパーが討てるかもしれない!」

「いよいよ決戦ね……」

「うぅ、緊張してくる」

「任せろ。ビートリアやカオス=フリーデンといった雑魚は、ノーヴァの騎士が面倒を見てやる!」


 作戦は決まった。後は、その通りに動いてホルス=スコーパーを討つのみ。

 どこかで読み違えていれば全滅。だが……そんなシチュエーションだからこそ燃える!

 ソルティア様だって、邪神王との決戦の勝率は低かった。

 自分たちは、その時よりも高い勝率があるのだ。負けるわけにはいかない。

 一階の大広間に集まる一行。最後にお互いの顔を確認して、戦地へと飛び出した!

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