第32話 <姿なき狙撃手>

『……しぶといね。私の矢をあそこまで避け続けるとは』

「でも、あなたの位置は把握できてないっぽいわね。」

『だが、いつ見つかるかは分からない。……カオス=フリーデン!時間を稼げ!』


 天空の六大邪神、ホルス=スコーパーは、追加で複数のカオス=フリーデンを召喚。ロミリアンの襲撃に参加させる。


『ちっ!そろそろ決めてしまうか。"水晶邪法ブレイカー"!」


 ホルス=スコーパーは、ソウルクリスタルを破壊。砕かれた破片が、ホルス=スコーパーにまとわりついていく。


『さぁ、これで終わりだ!』





「……攻撃が……止まった?」


 ヨハネスは、突然止まった狙撃に首をかしげる。

 先ほどからずっと、五秒間隔で狙い続けてきた攻撃が、突如として止まったのだ。

 当然、何があったのか気になるだろう。

 ともかく、攻撃が止まった今がチャンスだ。リーネたちの援護をして、住民の避難を完了させなくては。

 既に、七割ほどの住民の避難を確認したと聞いている。あと少し。


「よし!ヨハネス様はビートリアを!僕とレティーアでカオス=フリーデンを倒す!」


 アキトが宣言すると、新たな黒い影が複数現れる。

 間違いない。新手のカオス=フリーデンだ。


「また!?くっ……!エデンの力で……」


 その時、ヨハネスの馬に何かが命中した。今までの狙撃とは比較にならないほどの衝撃波が、アキトたちを襲う。

 爆風が収まると、被害を確認する。

 ヨハネスの馬は、左前脚を残して他がすべて吹き飛んでいた。間一髪脱出したヨハネスも、右腕からおびただしいほどの流血がある。

 想像を絶する威力。何があったというのか?

 まさかと思い、五秒数えてレティーアとアキトは跳び下がる。

 予想通り、レティーアの立っていた所に先ほどの攻撃と思われる一撃が命中。深さ十五メートルはあろうかという大穴を形成した。


「やっぱり狙撃か!……だが、急に威力が上がった!?」

『……アキト!突然ごめんなさい!』

「マリア?どうかしたか?」

『ええ!……さっき、ソウルクリスタルが破壊されたようなの。そのスナイパー、やっぱりホルス=スコーパーよ!』


 なんとなくそうではないかと疑っていた。

 アキトやヨハネスはなぜか分からないが、レティーアを狙ってきたのだ。

 当然、邪神が仕掛けてきたと思う。そして、ビートリアという大ヒントが飛び回っているのだ。

 十中八九ホルス=スコーパーだろうとあたりはつけられる。

 とりあえず、ヨハネスの治療をしなくては。

 アーチ状の建物を探し、その下で回復魔法をかける。

 その間、外にいるレティーアばかりが狙われていた。やはり、こういった所は狙われないようだ。

 回復魔法をかけていると、ヨハネスの右腕に気になるものを見つけた。


「ん?ヨハネス様……このアザは?」

「分からない。ずっと勇者の印と思っていたが、勇者はレティーア姫だからな」


 アキトは、ヨハネスが狙われた理由が分かった気がする。

 ヨハネスこそが、伝説の[解放者]ではないだろうか?

 邪神側、ホルス=スコーパーは何らかの方法でそれを確認。レティーアと同時に始末しようとしているのではないか?

 ……だが、そうなるとアキトが狙われる理由が分からない。

 もしかして、誤射?

 確認のため、外に出てビートリアを倒していく。すると、即座にアキト目掛けた一撃に襲われた。

 やっぱり、この三人を狙ってきている。なぜかは分からない。

 しかし、いつまでも手をこまねいていられない。意を決して飛び出した。

 アキトとヨハネスに一発ずつ攻撃が飛んでくる。精度も上がった攻撃で、アキトは足に軽い怪我を負ってしまう。

 転がりながら、敵の位置を考える。

 ホルス=スコーパーは、超遠距離まで見通す目と、フラム=ベルジュ並の巨体を持っている。透明化は…できなかったはずだ。

 なら、街中では目立つから違う。そして、城壁の外にもいなかった。

 ならば、まさか空から射ってきているというのだろうか?

 そう考えれば、的確に狙えたことと、途中で障害物に当たったことに説明がつく。

 答えを得たと思い、アキトは狙撃眼スナイプアイで空を見る。

 だが、空は暗雲が立ち込めており、こちらからは見えない。

 これだけの暗雲なら、雲の上からの狙撃は無理だろう。

 だとしたら、次に考えられるのは遠くの丘だ。空気をねじ曲げれば、矢でも容易に届くだろう。

 すると、アキトの番と言わんばかりに狙撃される。


「くそっ!……だが、これならどうだ!レティーア!少しだけ護ってくれ」

「分かったわ!やっちゃって!」


 レティーアに護られ、丁寧に魔術式を紡いでいく。

 周りをヨハネスが走り回ってくれているおかげで、いい感じに狙いが分散されている。

 あと少しで発動する。そう思った時だった。

 狙撃のターゲットがレティーアに集中し始めた。それも、ギリギリアキトにも当たるようなコースだ。

 レティーアの体に、少しずつ傷が目立ち始める。


「痛い……!でも……まだ……!」

「準備完了!今から放つ!"散発の爆炎柱ショット・バーストピラー"!」


 ロミリアン周辺で巻き起こる爆発の連鎖。

 アキト渾身の魔法が、ロミリアン周辺の丘すべてを粉々にした。

 これで、丘からの狙撃はない。どこにいたのか確認するため、再び狙撃眼を発動する。

 その時、アキトの正面から再び狙撃攻撃。

 それは、アキトの左足を貫通して、ロミオス王城の正門を粉々に破壊した。

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